インタークーラー

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シングルインタークーラー(図は2ストローク機関の例)とツインインタークーラー(図は4ストローク機関の例)における冷却方法の比較

インタークーラー: intercooler)は、船舶鉄道車両自動車航空機発電機などに用いられる過給機ターボスーパーチャージャーなど)付き内燃機関用補機で、過給機の圧縮により温度が上がった空気を冷却する熱交換器である。燃費効率と出力(トルク仕事率)が向上する。

解説

本来、インタークーラーとは多段過給において過給機と過給機との間に置かれ、1段目の過給機で圧縮された空気を冷却する中間冷却機のことを指す。エンジンの手前の冷却器はアフタークーラーであるが、今では自動車用語でインタークーラーが後述のものを指す言葉として用いられることがある。過給機と過給機との間にあるものがインタークーラーと定義された時期は不明であるが、1930年代 - 1940年代の航空機開発ではタービンからインタークーラー、インタークーラーからキャブレター、と過給機とエンジン間の物として通例的に使われている。この種の吸気冷却器全般を指し、「チャージクーラー」とも呼ばれる。舶用エンジンなどでは、「アフタークーラー」という語が用いられることが多い。イギリスのロールス・ロイス マーリンではインタークーラー、アリソンV-1650では「アフタークーラー」と呼ぶが、習慣の違いである。外気による空冷式と、水冷式とがある。ラジエーターオイルクーラー同様、放熱するためのフィンが並んでいる。

熱機関熱サイクルの低温熱源と高温熱源の温度差が大きいほど効率が良く、内燃機関は同圧力では吸気温度が低いほど単位容積当たりの吸気質量が増え、より多くの燃料を燃焼させることが可能となり、出力が向上する。過給機付きエンジンは自然吸気より圧縮比が低くするために効率が下がるが、インタークーラーによる吸気温度低下に比例して圧力が低下する(圧縮空気の密度は変わらない)ため、そのぶん圧縮比を高く設定できる。さらに圧力低下をなるべく抑えたり、インタークーラーを前提に過給機を設計することにより、さらに空気の密度が増す。

自動車への設置方式

構造の簡便さから空冷式が多いが、近年は大排気量エンジンをターボ過給した小排気量エンジンに置き換えることにより燃費の向上を目指したエンジン(ダウンサイジングコンセプト)が増えつつあり、吸気流路の容量の抑制、経路の短縮および安定した冷却のために専用のラジエーターによる水冷式が採用されることもある(後述)。

ターボによる過給エンジンではターボラグが生ずる場合があるが、スーパーチャージャーによる場合でもインタークーラーを設置すると、空気が圧縮されてからエンジンに供給されるまでの吸気系距離が長くなり、輸送時間が増加することでレスポンスが低下する。そのため、フォルクスワーゲン社のTSIでは水冷式を採用し、吸気通路を短縮して応答性の向上に努めている。大型化など冷却性能を上げるほどレスポンスが低下することになるので、最適に設計される。

フロントエンジン車の場合は車体前部に、ミッドシップリアエンジン車の場合は車体後部に取り付けられることが多い。改造によって新たに設置されたり、別の個所へ移動させられることもある。

車体に空気取り入れ口を設け、そこから導入された外気をインタークーラーにあてる構造のものも多数存在する。エンジンルームの構造によっては外気を効率良く当てるため、ダクトを利用したものもある。

主に採られる設置方式を記す。

前置き
ラジエーターの前に平行になるよう設置。純正の配置で採られる車種もあれば、チューニングにより配管を変更して前置きにする場合もある。
中置き
ラジエーター後方に平行に設置。水温対策やクラッシュによるエンジンブローなどを防ぐ目的で採られる。
水平
エンジンルーム上部に水平になるよう設置。ボンネットには、インタークーラーにエアを導くためのダクトが存在するのが一般的。
Vマウント
ラジエーターとインタークーラーがVの字になるよう設置。

水冷式インタークーラー

過去の市販車ではトヨタ・ソアラトヨタ・セリカXXのM-TEU搭載車、トヨタ・セリカ GT-four RC、ホンダ・レジェンド V6 Ti、スバル・レガシィの初代モデルなど一部の車種で、水冷式が採用されたことがある。水冷式は同じ熱効率でも空冷式よりもクーラーコアを小型に設計でき、低速走行時の熱交換率にも優れるため、当初はインタークーラーにおいても水冷式の普及が期待されたが、水経路をエンジン冷却系統と共有した水冷式には「吸気温度の下限がラジエーター水温に依存する」という欠点があった。例えばラジエーター水温がサーモスタットで81度に保たれた場合、インタークーラーを通過する空気は81度以下には冷却されない。これを回避するにはエンジン冷却系統とは別に、インタークーラー用の冷却系統を設ける必要が生ずる事になる。エンジン冷却系統から独立したサブラジエーターを設けた場合、エンジン冷却系統のウォーターポンプが使用できないため、ベルト駆動あるいは電動式のウォーターポンプが別途必要となる。当然ながら停車中や低速走行時の冷却も考慮し、インタークーラー用のサブラジエーターには(エンジン冷却系統とは別の)クーリングファンを設けなければならない。このような結果、トータルのシステムで比較した場合の水冷式は空冷式に比べて複雑で大規模なシステムとなってしまい、当初期待されたダウンサイジングは達成できなかった。

予混合燃焼のガソリンターボ車で吸気温度が極端に高い場合、自己着火によるノッキング(プレイグニッション)のリスクが高まるが、ラジエーターにはファンが取付けられており、吸気温度は冷却水温と相関する一定の範囲に収まる、という利点も存在する。

以上の様に空冷が主流ではあったが、2000年代中盤からのVWTSIを端緒としたダウンサイジングコンセプトの流行により様相は若干変わってくる。過給を伴うダウンサイジングでは自然吸気に近いレベルのレスポンスが求められるため過給ラグを抑制する吸気経路の最適化は優先事項でもあり、レイアウトの自由度の高い水冷式とするメリットは大きくなった。また冷却に関しても低速域で優れているだけではなく、比熱が大きな冷却水を介する水冷式は空冷に比べて急激な高過給圧による吸気温の急上昇に対しても変動が少ないというメリットがある。これは緻密なノッキング・プレイグ制御を全領域で行う現代のエンジンにおいては大きなメリットとなる。依然、空冷のままダウンサイジングを行っているエンジンもあるがインタークーラーの水冷化は別系統の冷却系が必要となるデメリットは伴うもののダウンサイジングにおける一つのトレンドとなっている。


4代目マツダ・デミオディーゼルエンジン仕様車は、インテークマニホールド内蔵型の水冷インタークーラーを採用している。これは、狭小なコンパクトカーのエンジンルームに格納する必要があることと、吸気管長を短縮して(一般に)緩慢なディーゼルエンジンのレスポンスを改善すること、従前のディーゼルエンジンに比べ圧縮比が極端に低いことによる自己着火性の悪さを改善する為のものである。

船舶、艦船への設置方式

外部から取り込んだ水を使用する水冷式のため、効率が高い。

脚注

  1. Auto Prove 編集部 (2015年4月27日). “トヨタ ついに登場したトヨタのダウンサイジング直噴ターボエンジン”. Auto Prove (モータープランニング). https://autoprove.net/toyota/4660/ . 2018閲覧. 

関連項目