エアロパーツ

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ファイル:Osaka Auto Messe 2014 (4) Nissan GT-R NISMO GT500.JPG
レース車両には数多くのエアロパーツが装着される GT-R nismo GT500の例

エアロパーツ (aero parts) とは、自動車の部品の一種。空気力学的な抵抗揚力の低減、操縦・走行安定性の向上、エンジンブレーキの冷却効果増大、車体の汚れ防止などを目的とする。車体外部に取り付けるものが多く、エアロ空力パーツなどとも呼ばれる。またフロントスポイラー、サイドスカート、リアスポイラーの3つを合わせてフルエアロと呼ぶ場合がある。一般の乗用車用として市販されているエアロパーツの多くは空力解析を行っていない単なるファッションアイテムとして売られている場合が多いが、レーシングカーに使われるエアロパーツは徹底的に風洞実験を行って開発され、純粋なレースカーでは車体性能のうちの7~8割を空力性能が占めると言われており、レースの勝敗を大きく左右するほど重要なパーツである。

種類と効果

フロントスポイラー

ファイル:VW Golf MK1 Kamei.jpg
VWゴルフに付けられたフロントスポイラー

エアダムとも呼ばれ、主に車体下面への空気の流入をダムのようにせき止めて車体が浮き上がるのを低減する部品。これによって空気抵抗はかなり増えてしまうが、フロントスポイラーの後ろが負圧になるため車体下面のアンダーパネルにダウンフォースが発生する。また最近のレースカーでは、あえて気流を底面に導き、ベンチュリ効果で更に大きなダウンフォースを得る設計が主流になりつつある。

フロントバンパーと一体式になったものは「フロントバンパースポイラー」と呼び、フロントバンパー下部に装着するものを「チンスポイラー」「リップスポイラー」「フロントアンダースポイラー」「フロントハーフスポイラー」などと呼ぶ。

公道用車両に取り付けたフロントスポイラーはウインカーなど重要保安部品がついていた場合はオーバーハング規定が採用され、その最低部が最低地上高となる場合が多いが、何も着いていなかったりリップスポイラーなどの場合は、その規定が当てはまらないため最低地上高の対象外となる。

フロントウイング

車体最前部に設けられた翼、車輪が剥き出しになっている競技専用車両フォーミュラカー等に専ら用いられ、フォーミュラ1では1967年頃より見られるようになった。

サイドスカート

サイドステップ、サイドスポイラー、サイドシルプロテクター(主に日産純正部品)とも呼ばれる。両サイドに装着し、車体横の気流を効率よく後部に受け流し、サイドから底面に入る空気をせき止めフロントスポイラー及びリヤディフューザーのダウンフォース効率を上げる。リヤディフューザーによって車体底面を負圧にするためには両サイドからの空気の侵入をなるべく防ぐ必要があるが、車高を十分に低くすることが出来ない場合サイドスカートを地面近くまで伸ばすことによって同様の効果が得られる。また横風時に底面に入る空気を低減してリフトを抑え車体のふらつきを抑える役割もある。

アンダーパネル

ボディ下面をフラットにするために追加するパネル。車の下面には通常マフラーやプロペラシャフト等、数多くのパーツが付いているため走行中に空気抵抗になっているが、これを滑らかなパネルで覆うことで風切り音が低減し空気抵抗が減るため、高速走行時のパワーロスが減り燃費を向上させることが出来る。また底面が滑らかになり流速が上がるとダウンフォースが発生し、走行安定性が良くなる。

アンダーフロアスポイラー

グランドエフェクター(GroundEffector)とも言われる。ボディ下面にアングル状のスポイラーをハの字に取り付けサイドに気流を逃すとともに、空力的にフロアを膨らませベンチュリ効果でダウンフォースを得るためのパーツ。底面が滑らかで車高が低い車ではこれを付けることにより大きなダウンフォースが得られるが、底面を流れる気流の抵抗になるため空気抵抗は増大する。三菱・ランサーエボリューションX用純正オプションとしてフロアエアガイドと言う名前で販売されており、そのダウンフォース発生量は180km/h走行時フロント3kg・リア6kgである。TRD / トヨタテクノクラフトでは同様の機能のフロントエアロスパッツと言う商品が売られている。

GroundEffector空力解析動画 https://www.youtube.com/watch?v=8B6i5Vjl3AA

リアアンダースポイラー

リアバンパーの下に取り付けられるドレスアップパーツ。リアバンパーと一体式になったものは「リアバンパースポイラー」と呼び、リアバンパー下部に装着するものを「リアハーフスポイラー」「リアスカート」などと呼ぶ。フロアよりも下にバンパーを出してしまうと底面を流れる速い空気の流れを遮り抵抗が増えてしまう(通称パラシュート効果)ため、空力的なメリットは無く単なるドレスアップのために取り付けられる事が多い。レース車両や高性能スポーツカーでは、この部分はスポイラーではなく空気抵抗を減らしダウンフォースを得るためのディフューザーが取り付けられるのが普通であり、サーキット専用に改造した車ではトップスピードを上げるため、空気抵抗になるリアバンパーの下半分を切り取る改造を施す場合もある。

リアウイング

ファイル:R34gtt.png
リアウイングを装着したスカイライン

リアウイングは車体後方上部に装着して車体後方に発生する渦を制御し風見安定効果とともに車の安定性を高め、ダウンフォースにより主に後輪のグリップ力を増大させる効果がある。またレース専用車両等では車体下面の気流を加速するためディフューザーの効率もアップさせる場合もある。

十分な効果を発揮するにはリアウイングまできれいに気流を導く必要がある。流線型のスポーツカーならば、気流が滑らかに流れるためウイングが低い位置にあっても十分な効果が得られるが、セダンタイプの場合はリアガラスが立ちぎみのため気流が剥離し、リアウイングは乱流の中にあるため十分な効果を発揮しない事が多い。黎明期に「エアロパーツは150km/h以上じゃないと効果を発揮しないので公道仕様の車では付ける意味が無い」と言われていたのはそのためである。セダンタイプの場合リアウィングに気流を導くために、ルーフ後端にルーフベーン(スバル)やボルテックスジェネレーター(三菱)が付けられることがある。

一般公道用車両で大型リアウイングを装着する場合は構造変更申請が必要となる場合もあるが、スポーツカーラグジュアリーカー等のオーナーの中には、そうと知らずに装着している者も多く、度々話題になる。メーカー純正のリアウイングには構造変更申請が不要な物が多い。社外品でも翼端板をR5以上のものにし鋭利な角をなくしてから全幅の片側16.5センチ以内に装着する、翼端板を大きくし車体との間が2センチ未満とする等、合法化する手段はある。メーカーによっては車種専用に取り付け幅を設定し車検対応品として売り出しているものもある。

ガーニーフラップ

GTウイング

リアスポイラー

ボディ上面の後端を跳ね上げるように取り付けられる空力付加物である(翼断面でボディより高い位置に取り付けられるエアロパーツは一般的にウイングと呼ばれ、スポイラーとは区別される) 。ボディ後端の形状をスポイラー状に整形してダウンフォースを生成し、駆動輪のトラクションを稼ぐ手法は1960年代初頭のスポーツカー(フェラーリ・TR61など)で既に散見されていることから、エアロパーツとしては最も古いものといえる。主にスポーツ系の車両に装備されるものだが、車体後端にまとわりつく気流をすみやかに剥がし空気抵抗を減らすために、燃費向上のためエコカーに取り付けられている場合もある。(例 プリウスなど)

テールゲートスポイラー

ファイル:Honda Civic silver hl.jpg
テールゲートスポイラーを装着したシビック

ハッチバック車の後部ガラス上端部にスポイラーを設けるもので、ルーフウイングとも呼ばれる。ハッチバック車の後部は窓ガラスで占められているが、整風効果により降雨時の後方視界の確保に効果的に作用する。ハイマウントストップランプを内蔵することもある。

リヤディフューザー

エアロガーニッシュ

グリルガーニッシュとも呼ばれる。グリル部に装着し、エンジンルーム内に進入する気流と受け流す気流を調整する。一定の冷却効果を狙ったものもある。

エアロガーニッシュは一見してドレスアップの目的のみに装着されると考えられる場合が多いが、実際にはサイドスポイラーより気流の影響を受けるエアロパーツとして知られ、各メーカーでは度重なる風洞実験を繰り返しながら設計される。ラジエターがフロントグリル後部に設置されているタイプの自動車においては、開口部の大きさに重きが置かれ、アンダーグリル部にラジエターが装着された自動車は、ボンネット上部に風を受け流すパーツとして、その角度に重きが置かれて設計される場合が多い。ちなみに冷却関係の空気抵抗は思いのほか大きく、車全体の33.4%と言われている。[1]

カナード

別名スラストスポイラーとも呼ばれる。競技用車両のフロントノーズ部の前面から側面にかけてのR部に装着し、圧力の高い車体前部から気流を側方および上方へ押しやり、車体側面に計算された縦渦を発生させる空力デバイスである。ホイールハウス内の空気の動きは、タイヤの前方に当たった気流がホイールハウス内の上方へ向きを変えて吹き込みリフトを発生させているが、カナードから発生する縦渦によりホイールハウス内の空気が吸い出されリフトを低減させダウンフォースを発生させる。また、ボディ横の乱流を抑制して直進安定性を増やす効果がある。[2]見た目のイメージから間違えやすいが、カナード自体が受け止めるダウンフォースはそれほど大きくなく、その後ろの空気を最適化させることによりダウンフォースおよび大きな直進安定性を得ている。

ファイル:Geneva MotorShow 2013 - Audi R8 LMS ultra front light and spoiler.jpg
Audi R8 LMSに付けられたカナードとスプリッター

他にブレーキの放熱にも大きな効果があり、ホイールの回転から気流を離すなどの効果がある。公道で使用する場合は人を傷つけないように5R以上の丸みをつけたり、縁に5R以上のゴムモールなどを巻くなどの処置をする必要がある。2cm程度の突起でも高速道路等における直進安定性向上の効果は十分に得られる。

スプリッター

バンパーの下にフロアを延長させる形で前方に向かって水平に取り付けられる板状の空力パーツである。ボディ正面から下面に潜り込もうとする気流をこのパネルで受け止める。フロントバンパー前方は高速走行中に非常に高い正圧が発生する部分であるが、この正圧と路面近くの圧力の差によりスプリッターは下向きに強く押さえつけられるため、高速走行中に大きなダウンフォースを発生させる。 スプリッターはカナードと違い直接ダウンフォースを受け止めるパーツのため、ワイヤーやステーで吊るなどして非常に強固に車体に取り付ける必要がある。

参考 https://www.mooncraft.jp/blogstaff/aerodynamic/cfd-evora-2017/

他にラジエターに行く気流を増やすので冷却効率を上げる作用もある。

エアロミラー

純正のドアミラーは形状的に風切り音を誘発しやすいことから、主に風切り音を防止するための空力的なデザインがされているミラーのことである。小さな突起物を取り付けて乱流翼の原理で風切り音を低減している場合が多い。

ミラーレス

カメラとディスプレーを使って、騒音・乱流・空気抵抗の元となるドアミラーサイドミラーフェンダーミラー等を廃する。日本では2016年6月より公道で合法化された。

エアロフェンダー

ファイル:DTM Brands Hatch (7232664888).jpg
フェンダー上部の穴(DTMマシンの例)

空力的なデザインがされているフェンダー。タイヤハウス内には走行中にフロントタイヤ前方から気流が上がってくる他、タイヤの回転に沿って後方からも気流が上がってくるので、タイヤハウス内の上部に正圧が発生しリフトの原因になっているが、その空気を抜くためフェンダーの後ろや上部に穴を開けるなどして、リフトを抑えて車を安定させる効果を狙っている。またフェンダー上に丸みがあるデザインの場合は飛行機の翼の上面のように負圧によりリフトが発生するので、この部分に穴を開けることによりタイヤハウス内の正圧を抜くと同時にフェンダー上面のリフトをある程度抑える効果を狙っている。またブレーキ冷却のための気流をスムーズに排出するため冷却効果を高める作用もある。

ボンネットスポイラー

ファイル:Mazda RX-7 police car of Niigata Prefecture Police.jpg
ボンネットスポイラーを装着した新潟県警察のマツダ・RX-7

高速走行時のフロントガラスへの虫除けとして装着される空力パーツ。商品名では「バグガード」とも呼ばれる。高速道路交通警察隊などがよく装備しており、機能するように取り付けられた場合、一定の実用性がある。

フェンダースポイラー・フェンダーフィン

ボンネット両端(フェンダースポイラー)やフェンダー後部(フェンダーフィン)に付けたフィンが、ボンネットから横に回る気流を車体上部により多く逸らし、ダウンフォースを増やす物。

ワイパースポイラー

高速走行時のワイパーの浮きを抑え、ワイパーの効きを維持する。

タイヤディフレクター

ファイル:2007 Mazda Atenza-Sport 01.jpg
馬蹄型のタイヤディフレクターを採用したマツダ・アテンザ。車両下部の前輪前方部分にディフレクターが確認できる

タイヤに当たる空気を抑制し、ホイールハウスになるべく空気を入れないようにタイヤ前方の床下に直角に装着される整流板。 タイヤスパッツ、タイヤストレーキなどメーカーにより呼び方は異なる。回転体であるタイヤに気流が当たった場合、回転により生じた乱気流により気流が撹乱され、それが大きな空気抵抗および操縦安定性が不安定になることを改善するため取り付けられている。またタイヤハウスの空気を排出するためダウンフォースを発生させる。これは汎用品や社外品で販売されることはほとんど無く、純正で装着されていることが多いパーツである。 ほとんどのものは板状だが、中には型にすることにより整流板自体の空気抵抗の低減とブレーキ冷却性を高めたものを用いるメーカーも存在する。

ファイル:Toyota AQUA.JPG
トヨタ・アクアのテールランプに一体成型された突起状のボルテックスジェネレーター(エアロスタビライジングフィン)

ボルテックス・ジェネレーター

車体に小さな突起物を取り付けて乱流翼の原理で安定した小渦を発生させ、大きく不安定な渦を抑制することで、空気抵抗を減らし燃費を向上させるとともに、風切り音を低減し操縦安定性を向上させるパーツである。 トヨタではエアロスタビライジングフィンと呼ばれ、近年発売される殆どの車のテールランプに一体成型で取り付けられている。

アルミテープ

2016年にトヨタ自動車は車体にアルミテープを貼る[3]ことで静電気を放電させ、空力を最適化する発明の国際特許を申請済み[4]であることを公表した。(最近のトヨタの車両にはバンパーの裏側などにアルミテープが貼ってある)近年の車はプラスチックなどの非金属素材を多用しているため走行中にタイヤや空気摩擦により静電気が溜まりやすい状態にある。その静電反発は形状抵抗[5]を増大させ、剥離領域の拡大により本来の空力性能が十分に得られなくなる。他にダクト類に貯まる静電気はダクトの中の空気の流れを阻害している可能性もある。[6] そこで車体に除電器として糊部分も導電性があるアルミテープ[7]を貼り付け電荷を大気中に放出することで、本来の空力特性に近づけることが出来る。 その効果は空気抵抗減少による燃費改善[8]・操縦安定性向上・直進性向上・運動性向上などで、効果的な設置場所やテープの加工方法なども公開されている。[9] ちなみに適さない部分に貼り付けると、かえって性能を落とす場合もあるので注意が必要である。

NACAダクト

ファイル:Ferrari F40 in IMS parking lot.jpg
フェラーリ F40。ボンネット上とドアの部分に三角形状に凹んだNACAダクトがある。

NACA ダクト[10]はNACA スクープまたはNACA インレットとも呼ばれる低空気抵抗のインレットの形状で、原型が1945年にNASAの前身であるアメリカの国家航空諮問委員会(NACA)によって開発されたことからこの名称で呼ばれる。

NACAダクトの目的は空気流の乱れを最小に抑えた状態で冷却用途等の目的で空気をダクト内に導くことである。このデザインは航空機等の流線型の機体の表面に突起物を設けずに空気を取り入れる構造から、元々は"サブマージド・インレット"と呼ばれていた。

設計上、大流量の吸気には適さないため、ジェットエンジンの吸気口での使用はYF-93ショート SB.4等、少数に限られる。内燃機関を使用する車両などにおいては一般的に使用される。

公道用とレース用のエアロパーツ

ファイル:2003-2006 Audi TT (8N) 1.8 T coupe (2011-11-08) 02.jpg
リアスポイラーが追加されたアウディTT

エアロパーツの効果は低速域でも存在するが、速度が上がるほど速度の2乗に比例して空力がおよぼす影響の比率が高くなる。古い時代ではルーフの乱流の中に低めのリアウイングを取り付けている例などを見ても、現代ほど空力設計が確立されていなかったため、エアロパーツは150km/hを超えないと効果が無いと言われていたが、風洞実験により正しく設計された現代のエアロパーツであれば、25km/hから効果が発生し始め60km/hぐらいの速度では効果を十分体感できる。一方殆どのエアロパーツはそれがない状態より質量増加をもたらし、特に低速領域では加減速コーナリング燃費登坂性能等の低下というデメリットだけが表れる傾向になりかねない。

通常、車体の空力設計が高いレベルの車両は通常に走行する際にさほどエアロパーツは必要は無いが、車両の揚力や乱気流、不要な熱を生じる箇所に適切に用いればより効果を発揮する。 アウディ・TTが超高速域での事故多発を受けリコール扱いでリアスポイラーが追加された例があるが、これは気流の向きを変えリアの揚力を減らすのが主たる目的である。 車両全体の気流の1/3は車体下を通過するが、車体下の整流は排気管やサスペンション、駆動系などが配置されている都合上、車両形状デザインのみでの整流は制約があるため、燃費向上を目的とした空気抵抗低減のためメーカー純正でもアンダーカバーやタイヤディフレクター等のパーツで整流が行われる例が増えている。 一般車に比較してレースカーに装着されるエアロパーツの大半は、積極的にダウンフォースを得ることとドラッグ(空力的な走行抵抗)の低減に重きを置いて設計される。

ファイル:Porsche 919 Hybrid.JPG
ル・マン用マシンは最新の空力設計がされている

GTレースカーのように車高を落として低重心化した上で、高速走行のために、より大きなダウンフォースも得る必要がある車両には、車両底部を平坦にし(フラットボトム化)、フェンダーや、ボンネットにとどまらず統一した空力設計をする必要がある。全体の空力を考えないまま一般自動車を車高調等で低重心化すると高速走行時に後方にできる空気の渦等を適切に処理できなくなり、狙いとは逆にドラッグを大きくして操縦性に悪影響を及ぼすこともある。

保安面

保安上空力的に実効的なパーツは技術的に難しいためにドレスアップ性主眼が置かれ優れている製品が多い。対してレース用の車両は乗員の保護が考慮されているので規則で許される限りの空力設計が可能である。

ドレスアップ目的のエアロパーツ

近年ではセダンミニバンステーションワゴンなどを中心に、ファッション性を重視したドレスアップパーツとしてのエアロパーツが人気である。これらの大半は空力性能の向上を目的としてはおらず、レース用のエアロパーツをモチーフにしたものが多いものの、主にスタイリングの変化を楽しんだり、オーナーの個性を演出するといったファッションパーツである。現在、乗用車向けに販売されているエアロパーツの中で風洞実験等で空力効果を実証して開発された商品は限りなく少数である。これは風洞設備の使用料が高額であり、中小企業が多いパーツメーカーらが容易に使用できないことが大きく関係している。このような状況から、エアロパーツと呼ばれながらも空力効果の立証されていない物が大半を占めており、ほとんどのエアロパーツが機能パーツではなくファッションパーツ寄りとなっているのが現状である。ただしエアロダイナミクス以外の要素(例えば吸気面積の増加によるもの、軽量化など)もあるので「全くの飾りである」とも言い切れない。

トラック用のエアロパーツ

トラックにもエアロパーツが設定されている。トラックの場合はキャブ(運転台)よりも高さや幅のある荷台への空気抵抗を軽減する目的で装着されるため、主にバンボディを架装し、高速道路を走る機会が多い宅配便や企業間物流の路線トラック、冷凍車・保冷車、引っ越し業者などに見られる。スピードリミッターの装着が義務づけられているため最高速度は90km/hだが、乗用車よりも投影面積が大きい分、空気抵抗の軽減は燃費節約の効果をもたらす。参考までに三菱ふそう・スーパーグレートの場合、バンボディを架装した場合の空気抗力係数(cd値)は0.53となるが、エアロパーツを装着することによって0.44まで軽減され、巡航時の燃料消費量は3-8%低減される。

エアデフレクター(ウインドデフレクター)
運転台の上に装着し、荷台上方への空気抵抗を軽減する。別名導風板(どうふうばん)。メーカーによっては「ウインドデフレクター」「ドラッグフォイラー」と称する。
サイドパニエ(ギャップシールド)
運転台と荷台との間の隙間を埋める。エアデフレクターとセットで装着すると効果が上がる。
コーナーベーン
フロントの左右端に装着。フロント部で圧縮されて速度の高まった気流を強制的にサイドに導き、気流の剥離を抑制して空気抵抗を減少させる他サイドウインドウの汚れ防止に効果がある。
フロントバイザー(ひさし)
本来は車内の日よけでは遮りきれない直射日光を抑えるために装着されるが、エアロパーツとして開発されたフロントバイザーはフロントガラス部分の空気抵抗をキャブ上方へ送り込むことで減少させる。
サイドスカート・リアスカート
目的・効果は乗用車用と同じ。ただし、通常のトラックではこの部分に燃料タンクやスペアタイヤ、冷凍装置、荷役用の機器などが装着されているためむき出しになっていることが多く、装着例は少ない。
サイドミラー
トラックは構造上死角が多くなるためフロントに多数のミラーを装着して視界を補う。しかしミラーが多くなると空気抵抗が大きくなるため、サイドミラーとサイドアンダーミラーを一体のケーシングに収めることがある。
ボルテックス・ジェネレーター
高速走行中に荷台の背後に生じる巨大な渦は大きな走行抵抗になるが、この部材により小さな渦を発生させて大きな渦の発生を抑える。

素材

エアロパーツの材質は主に合成樹脂である。競技車両用のエアロには、より軽く高剛性で小ロットで製造できるガラス繊維強化プラスチック炭素繊維強化プラスチックが用いられることが多い。乗用車向けエアロパーツに関しては、アフターマーケット向けパーツメーカー製は小ロット生産、加工性に優れ、また万が一破損した際も補修が容易なガラス繊維強化プラスチックが主流である。また純正用品やディーラー向けアクセサリーとして用意されているエアロパーツには、大量生産に対応でき、リサイクル性に優れたポリウレタンABS樹脂などを採用する場合が多く、真空成型射出成形等によって成型される(破損時の補修は不向きとされている)。なおアフターマーケット向けパーツメーカーの中にもリサイクル性を重視したり、大量生産が見込める人気車種にはポリウレタン、ABS樹脂等を採用している場合もあるが、あくまでも一部に限られている。

公道用のエアロパーツの注意点

公道用の車両の場合はパーツを装着後、車両の全長など車検証の記載内容から一定範囲を超えた場合には、記載事項の変更をしなければならなくなったり、車検の更新が受けられない場合や検挙の対象になることもあるので、市販品といえども注意が必要である。

一般市販車向けとして販売されているパーツには、小企業、零細企業、あるいは個人工房などでドレスアップ性を重視して製作しているものも多数ある。CFDを用いた空力設計や風洞による空力の検証などはほとんど行われないので、例えばGTウイングをつけることで単純に体感出来るほどのダウンフォースは獲得できても、その裏では体感し難いとされるドラッグも大幅に増大する結果にもなりかねず、本来の空力的な目的である最小限のドラッグ増(場合によってはドラッグ低減)で効率的にダウンフォースを獲得するといったシビアな効果は期待薄と割り切ったほうがよい。メーカーによってはラリースーパー耐久SUPER GT等で得られたデータを基に作成していることを謳っている所もあるが、実際のレース車両とは車高や構成エアロパーツの違いなどで全く別の車(別のセッティングが必要)と考えたほうが良いことも多く、単に販売元が消費者の信頼獲得を目的とした謳い文句となっているのが実情である。

脚注

  1. http://www.sifo.jp/aerodynamics/aerodynamics-newsletter-007.html
  2. https://www.mooncraft.jp/blogstaff/aerodynamic/cfd-evora-2017/
  3. トヨタ純正「アルミテープ」をボディに貼るだけで走りが激変! AUTO MESSE WEB
  4. 国際・国内特許データベースのトヨタのアルミテープ該当ページ
  5. 空気抵抗の大半を占め、圧力抵抗ともいう
  6. 車はタイヤ(カーボンブラックにより導電性を持つ)である程度接地されているが、速度が上がるにつれ賄いきれなくなる。
  7. 良導体なら何でもよいが、経済性や施工性から安価なアルミテープが適す
  8. トヨタ86 アルミテープ装着テスト Car Watch
  9. 2016年9月19日 トヨタ考案アルミテープ貼る場所を伝授いたす 自動車評論家 国沢光宏 公式サイト
  10. Frick, Charles W., et. al. NACA ACR No. 5120, An Experimental Investigation of NACA Submerged- Duct Entrances. NACA, November 13, 1945. Abstract, Full report.

参考文献

  • Staniforth. Race and Rally Car Sourcebook. ISBN 1859608469.  (Practical guidance on designing and building NACA ducts for motor-racing applications)

外部リンク