スピーカー

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スピーカーシステム

スピーカー: speaker)は電気信号を物理振動に変えて、音楽や音声などのを生み出す機械である。語尾を伸ばさずにスピーカラウドスピーカー: loudspeaker)、拡声器とも呼ばれる。スピーカーユニット(後述)と区別するために、エンクロージャー(後述)に纏められたものをスピーカーシステムと呼ぶことがある。

目的と方法

電気によって音を出す機器には、スピーカー以外にチャイムブザーベルなどがあるが、これらは警告音など、単に報知のために音を発生させることを目的としており、決まった振動数の音や固定されたメロディを発生させるのが普通である。それに対してスピーカーは、声や楽器音などの自然音をマイクロホンなどで変換した電気信号を、再び元の音波として再生することを目的としている。したがって、入力された電気信号の波形を忠実に音の波形へ変換する必要性から、生成される音に歪みや雑音などがなるべく加わらないように設計される。現在では様々な方法で直接に電気信号として作られた音源を、音として再生するのに使われる場合もある(電子音楽)。

スピーカーは、肉声や音楽をその場で大音響にして遠くまで伝える拡声器(メガホン、ウェアラブルスピーカー)、携帯電話ラジオテレビ受信機、そして、音楽などをより原音に忠実な音で再生するための高級オーディオ機器に到るまで様々な音響製品に組み込まれ、それぞれの目的に応じた多くの形式がある。

スピーカーユニット

スピーカーの音の出る部分をスピーカーユニット(または単にユニット)と呼ぶ。これらは単体で使われることは少なく、エンクロージャーに取り付けられたり、テレビや電話などの部品として内蔵されたりする。

ひとつのユニットでヒト可聴域(およそ 20 — 20,000 Hz)全てを再生するのが理想であるが、現実には製作が難しい。そこで、特定範囲の周波数に特化したスピーカーユニットも存在する。各ユニットは担当する周波数によって、以下のように分類される。

なお、どの範囲の周波数が超低音・低音・中低音・中音・高音・超高音なのか、厳密な定義は存在しない。

ファイル:Jr149net.JPG
ネットワークの一例、スピーカーユニットの振動を避ける為エンクロージャーの外側に設置されている

これらのユニットを搭載することで以下のスピーカーシステムが作られている。

  • 1ウェイ(フルレンジ)スピーカー - フルレンジユニットのみを使用したもの。音域は広くないものの、ボーカルなどの中音域の音質に優れているとされる。後でツイーターやサブウーファーを追加することもできる。構造が単純で比較的低コストでありながら良好な結果が得やすく、また市販されるスピーカーの多くが2ウェイ以上のスピーカーであることもあり、自作スピーカーによく用いられる。2ウェイ以上のスピーカーではスピーカーの理想的条件の一つとされる点音源から乖離してしまうため、フルレンジユニットのみでの再生そのものを理想的な条件の一つとして扱う場合もある。近年は人間の可聴帯域を遥かに超えた高周波を再生できるフルレンジユニットが数多くあり、低音側にも音域が拡大される傾向がある。
  • 2ウェイスピーカー - 音域を2分割し、2種のスピーカーユニットで再生する。主に「ウーファー+トゥイーター」で構成される(例外もある)。
  • 3ウェイスピーカー - 音域を3分割し、3種のスピーカーユニットで再生する。主に「ウーファー+スコーカー+トゥイーター」で構成される(例外もある)。
  • 4ウェイスピーカー(以上) - 音域を4(以上に)分割し、4種(以上)のスピーカーユニットで再生する。2ウェイ・3ウェイと異なり、構成はまちまちである。

2ウェイ以上のスピーカー(フルレンジ以外のスピーカー)をマルチウェイスピーカーと呼ぶ。マルチウェイスピーカーにおいては、各ユニットの音域が重複しないように音域を制限する電気回路や電子機器を用いるのが通常である。パワーアンプの前(電圧信号の段階)で分割し音域毎に別のパワーアンプで駆動することもあるが、多くの場合パワーアンプで電力増幅後に分割される。各ユニットの音域の境界にあたる周波数をクロスオーバー周波数という。2ウェイであれば1つの、3ウェイであれば2つのクロスオーバー周波数が存在する。

マルチウェイスピーカーでは必然的に各ユニットの取付位置が異なるため、フルレンジと比較して楽器や声の位置がぼやけるという意見がある。これを解決するため、トゥイーターの上下を挟むように2つのウーファーを配置し、取付位置を見かけ上一致させたスピーカーシステムも販売されている。特殊な例として、ウーファーの中心部にトゥイーターを組み込むことで1つのユニットとした2ウェイユニットがあり同軸型(コアキシャル)2ウェイユニットと呼ばれる。

なお、上記のスピーカーシステムに、サブウーファーを別筐体として付加する場合もある。これは低音(超低音・重低音)のみを出すための専用スピーカーシステムである。ホームシアター製品のほとんどに付属しており、AV機器として広く普及しているといってよい。なお、サブウーファーについては、ドルビーデジタルなどのシステムにおいてLFEチャンネル(0.1ch)として付加される場合があるが、これはスピーカーが担当する音域を分割するものでなく、独立したチャンネルとして超低音を付加するものである。

クロスオーバー・ネットワーク

受動素子のみで構成した音域分割用電気回路を「クロスオーバー・ネットワーク」あるいは「パッシブ・ネットワーク」(ないし単にネットワーク)と呼ぶ。

ネットワークはキャパシタインダクタによるローパスハイパス等のフィルタによるチャネルディバイダと、各帯域のスピーカーの能率の違いによるアンバランスを調整する抵抗によるアッテネータから成る。

ネットワークの設計が正しく行われないと、位相特性や周波数特性が悪化する。このため、特に複雑なものは測定や試聴をくり返して最適な回路を組み上げていくのが普通である。

複雑なネットワークはその原理上位相がばらばらとなるし、バランスを取るのは組み合わせの数だけ難しくなる。そのため、音質上、それでも音域を分割したほうが良いのか、シンプルな構成のほうが良いのかについては、メーカー、ユーザーともに意見が分かれている。

ネットワークの設計において最も重要なのは、クロスオーバー周波数を適切に設定することである。ユニットを増やせば増やすほど再生できる音域は広がるが、反面クロスオーバー周波数が増えることでネットワークの設計が難しくなる。

ダイナミック型スピーカーユニット

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内部構造:右端の振動板で空気を振動させ音を出す
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スピーカーの振動板(コーン紙)
ファイル:DoubleConeSpeakerUnit.JPG
ダブルコーンスピーカー

一般的な音響機器に組み込まれているスピーカーユニットのほとんどがこの方式を採用している。1924年にチェスターW.ライスとエドワードW.ケロッグによって発明されてから現在に到るまでその基本構造が変わっていないのは、この方式がシンプルで優れているからである。

ダイナミック型のスピーカーユニットにはドーナツ型の永久磁石が用いられる。このドーナツの穴にあたる円筒形の空間に、それよりわずかに直径の小さい筒「ボイスコイル」が挿入されている。ボイスコイルはコイルの一種であり、紙やプラスチックの筒に導線を巻きつけたものである。この導線に音声信号が流れると、電磁石になるためボイスコイルが波形に合わせて前後方向に振動する。ボイスコイルには振動板が直結しており、この振動板が一緒に振動することで音声信号と等しい波形の音が空気中に放射される。これはリニアモーターの原理そのものであり、ダイナミック型スピーカーはリニアモーターの一種であるといってもよい。

上記の各パーツはフレームと呼ばれる骨組に固定され、1つのユニットとして完成したものになる。永久磁石はフレームに強固に固定されるが、ボイスコイルと振動板は振動する必要があるため、ボイスコイルはダンパーを介して、振動板はその外周を取り巻くように張られた「エッジ」と呼ばれる柔軟な膜を介して、それぞれフレームに固定される。ダンパーとエッジは振動板をフレームに固定するサスペンション(懸架装置)であるが、前後方向の動きだけは妨げないようになっている。また、ダンパーは振動板の固有振動を抑える役割もしている。フレームには通常ねじ穴があり、それによってユニットがエンクロージャーなどに取り付けられる。

磁気回路に使われる永久磁石には高い磁束密度が求められる。コストパフォーマンスに優れたフェライト磁石がよく使われるが、小型スピーカーには磁力の強いサマリウムコバルト磁石ネオジム磁石なども使われる。なお、以前はアルニコ磁石も高級品を中心に使われていたが、ニッケル価格が高沸したため現在ではほとんど見られなくなった。またアルニコ磁石には磁気抵抗が少ないというメリットがあるが、減磁しやすい、特殊な磁気回路が必要というデメリットもある。

ダイナミック型スピーカーの振動板の構造

理想的なスピーカーに求められる性能としては、原音に忠実で歪みがないこと、点音源であること、全ての方向に同一の音圧、同一の音質で音を放射すること等が挙げられる。これらを実現するため、振動板の形状や大きさ、取り付け方法が工夫されている。

振動板の形状としては、低音用にはコーン型(くぼんだ円錐形)、高音用にはコーン型やドーム型(ふくらんだ半球形)が主流である。1980年代前半に平面型が流行したが、現在はほとんど使われていない。正面から見て真円形のものがほとんどであるが、テレビなどへの内蔵用として楕円形や多角形のものも使われる。

なお、大きなコーン型振動板の中央に小さいコーン型振動板を取り付けることで、広い帯域の再生を狙った「ダブルコーン型」(サブコーン型、またはメカニカル2ウェイとも呼ばれる場合も)もある。

ダイナミック型スピーカーの振動板の材質

振動板には、分割振動や共鳴による固有振動が少ないこと、変換効率が良いことが求められる。このため、硬く(=高ヤング率)、内部損失が大きく、かつ軽量な素材が使われる。また、経年劣化が少ないことも重要である。これら全てを高い次元で満たす材料を求めるのは容易でない。このため、ユニットの担当する音域に合わせて素材を変えるのが一般的になっている。なお、振動板の材質として軽量なものが好ましいと言っても、限界がある。あまりにも軽量だと低音に比して中音、さらには高音の音圧レベルが高くなり過ぎる。トゥイーター用としては好ましい特性であるが、ウーファー用としては好ましい事ではない。よって、ウーファー用のスピーカーユニットの振動板は、他のスピーカーユニットのそれよりも重い場合が多い。

  • 紙 - 時代を問わず最も多く利用されている。適度に内部損失があり、比較的丈夫で軽量なため、廉価品から超高級スピーカーまで幅広く使われている。全ての音域に使用できるが、高音用にはあまり使われない。パルプに種々の材料を混漉することで特性を改善した紙も多く使われる。またホヤコンブの繊維を使用したり、バクテリアに産生させたバイオセルロースを使用した製品もある。
  • 高分子 - ポリエステルアラミドポリプロピレン炭素繊維樹脂など。繊維状にして編んだり、ハニカム構造にして利用することが多い。主に低音~中音用ユニットに使われる。などの繊維を構造基材にし、強度確保や物性改善を目的にこれら高分子材料を含浸させることも行われる。
  • 金属 - アルミニウムチタンホウ素ボロン)、ベリリウムマグネシウムなど。薄く軽量化でき、ヤング率が高い反面、内部損失が小さいので固有振動が発生しやすい。このため、主に高音用ユニットに利用される。高音用は振動板が小さいため、固有振動を可聴周波数外に追い出すことができるからである。これらの金属にダイヤモンド薄膜をコーティングしたり、炭化処理、窒化処理、酸化処理、非球面加工、ダンプ剤塗布などして、固有振動を分散化する処理も広く行われている。
  • その他 - 合成ダイヤモンドそのものを振動板としたもの、薄くスライスした木板を振動板としたものなどがあるが、いずれも主流にはなっていない。

エンクロージャー

エンクロージャーとはスピーカーユニットを取り付ける箱のことである。音には障害物の向こうに回り込む性質(回折)があり、低音になるほど顕著である。このため、ユニットをむき出しのまま使うと、裏から出た低音が前に回り込んで打ち消しあい、低音が小さくなってしまう。そこで、ユニットをエンクロージャーに取り付けることで裏から出た音を遮断するのである。ユニットをエンクロージャーに組み込んだものをスピーカーシステム(または単にスピーカー)と呼ぶ。ほとんど全てのスピーカーはこの状態で市販されている。

エンクロージャーは、振動板の反作用によって振動する。また、内部で音が反射して定常波が発生する。これらは音質を悪化させるため、補強材や隔壁で強度を確保し、フェルトなどの吸音材で定常波を吸収する。このエンクロージャーの設計によってスピーカーシステム全体の音質が決定され、製品の個性となる。つまり、音質の悪化を限りなくゼロに近づけるには巨大な面積を持つ1枚の板にユニットを取り付ければ理論上可能である(平面バッフル)。しかし、事実上困難である為「箱型」になった。

箱の材質は固有の振動を持たないことと加工性と強度が要求されるため、通常は木質材料MDFパーティクルボード合板)が使われる。樹脂製や金属製のものもあるが、樹脂製は小型で安価なもの、金属製は小型のものや高級品に限られている。

エンクロージャーには数多くの方式があるが、市販品のほとんどは「密閉型」か「バスレフ型(位相反転型)」である。以下に主な方式を記す。

  • 密閉型 - 箱を密封し、振動板背面から発せられる音の影響を完全に遮蔽する。癖の少ない素直な音質が特徴である。反面、エンクロージャーが過小でスピーカーユニットの磁気回路が非力な場合、振動板の動きが制限され、低音の少ない詰まった音になりやすい。
  • バスレフ型 - エンクロージャーの前面や背面に筒状の貫通穴(ポート/ダクト)を設け、ヘルムホルツ共鳴の原理でユニット裏面から発せられた低音を共振、増強する。これが振動板の前面から発せられた低音に加算され、豊かな低音が得られる。反面、共振周波数よりさらに低い低音がほとんど出なくなる。また、設計が悪いと音に癖が付いたり、貫通穴のところで風切り音が出たりする。
  • バックロードホーン型 - エンクロージャーの内部に、少しずつ太くなってゆく音の道(ホーン)が折りたたまれており、箱のどこかにホーンの出口がある。振動板の裏側から出た音のうち低音はホーンで増強され、中音高音は折り曲げ構造により減衰し、出口から放射される。バスレフ型に比べて低音増強効果は大きいが、反面、バスレフ型ほど低い帯域まで低音を増強させる事は困難である。設計や製作に手間がかかる。自作スピーカーや、海外メーカーの超高級品に使われている。

エンクロージャーの形式は、スピーカーユニットとの相性がある。

  • 平面バッフル - 振動板重量が軽く、かつ磁気回路が弱いユニットに向く。磁気回路が強いユニットでは過制動になりやすい。
  • 密閉型 - 振動板重量が重く、かつ磁気回路が強いユニットに向く。 振動板重量が軽く、かつ磁気回路が弱いユニットを用いる場合は、背圧の影響を抑えるため内容積を大きく取る。
  • バックロードホーン - 振動板重量が軽く、かつ磁気回路が強いユニットに向く。振動板が重いユニットとの組み合わせは、低音過剰になりやすい。磁気回路が弱いユニットではホーンを駆動するのに能力不足で、音質に悪影響がある。
  • バスレフ型 - 設計によりユニットの適合範囲が広い。振動板重量が軽く、かつ磁気回路が弱いユニットを用いる場合は、密閉型の場合よりも内容積が小さくて済む。振動板重量が重く、かつ磁気回路が強いユニットでは、低音過剰になりやすいのでポートを小型にして効果を弱める。振動板重量が軽く、かつ磁気回路が強いユニットでは、ポート断面積を大型にして低音増強効果を強める反面、あまり低い帯域の低音増強は避ける。

なお、ユニットの前にラッパ状の曲面(ホーン)を取り付けたスピーカーを「フロントロードホーン型」と呼ぶ。これは上記の各エンクロージャーと組み合わせて使用されるものであり、エンクロージャーの方式を指す用語ではない。指向性をコントロールでき能率に優れている反面、大型になりやすい。超高級スピーカーや大型の自作スピーカー、コンサート用の大音響スピーカーに利用される。なお慣例として、ある程度以上の大きさかまたは後付のホーンにしか使われない言葉である。たとえばトゥイーターユニットには最初から数cmの小型ホーンが一体化されていることが多いが、これをフロントロードホーンと呼ぶことはない。

音質の指標

オーディオ用のスピーカーは「周波数特性」「歪率」「過渡特性」「指向特性」などを改善するために様々な工夫がなされており、音質の良し悪しの指標として使われる。

  • 周波数特性 - 人間が可聴域の音程を全域再生でき、かつどの周波数でも均一な音圧が得られることが求められる。
  • 歪率 - スピーカーに入力された音声信号の波形に相似する音声波が出力され、余分な音が加わらないことが求められる。
  • 過渡特性 - スピーカーに複数の周波数の音が混じって入力された際、位相が正確であること(それらの音に時間的ズレが生じないこと)が求められる。
  • 指向性 - スピーカーから、全方向に均等な音圧が放射されることが求められる。
  • 音の好み - 人間の好みに基づく音を追求したもの。フラットでない周波数特性にする、エンクロージャーを共鳴させる、歪を増やすなど、様々な方法で音の色づけを行う。

歪率

スピーカーは、グラム単位の質量を有する振動板を動かすという構造上、歪みはどうしても大きくなる。適切に設計されたスピーカーの中には、可聴域(100Hz以上)の歪率が0.5%を切るものも存在するが、それでも他の機器(CDプレーヤー、アンプなど)の歪率が0.01%を切っていることを考えると2桁以上大きな歪率である。

歪みを発生させる非線形部品としてはダンパーやエッジ、そして設計が悪い磁気回路などが挙げられる。これらの非線形の影響が顕著になるのは振幅が大きい低音域のときである。等ラウドネス曲線が示しているがごとく、ヒトの聴覚は低音域の感度が鈍い。そのためたとえ低音・中音・高音がバランスよく鳴っているように聞こえる楽曲であっても、音響エネルギー分布は低音域に偏りがちであり、そのエネルギー分布を再現(再生)しようとするスピーカーは低音域で大きくストロークする。大きいストロークは振動系支持部材の非線形領域に踏み込み易いのである。また、低音用の振動板は重いため慣性による逆起電力(制動力)を発生させ、これも歪みの原因となる。このためスピーカーの歪みは低音域で発生しやすく、実際に測定してもそのような結果になる。

指向性

オーディオ用スピーカーが広い指向性を理想としているのに対し、指向性を絞って特定の方向に大きな音を伝えたい場面も存在する。たとえば学校教育現場のアナウンス、交通機関の案内放送、街宣車などである。

理論上は指向性を絞るには振動板を大きくすればよいが、直径数m以上ものが必要となり非現実的である。そこで、ホーンと呼ばれる円錐形に広がる管を取り付けたスピーカーが、上記用途の拡声器として使われている。

周波数が高ければ指向性が増すため、超音波を小さな振動部から指向性の強いビーム状で送り出し、音の歪みを利用して可聴音として人間が聞き取れるようにしたパラメトリック・スピーカーというものもある。[1]

スピーカーの分類

内蔵アンプの有無

  • アンプ内蔵のものを指すアクティブスピーカーという語がある
  • (内蔵しないものを指す対義語としてはパッシブということになるが、そのような使い分けは「能動的」「受動的」という語の本来の意味にはそぐわない)

ユニットの変換方式による分類

  • ダイナミック型
  • コンデンサ型(静電型)
  • リボン型
  • イオン型(放電型)
  • マグネティック型
  • 圧電型

振動板の形状による分類

  • コーン型
  • ドーム型
  • 平面型
  • ベンディングウェーブ型
    • ウォルシュユニット
    • マンガーユニット
    • ハイルドライバー
    • リニアムドライバー

振動板の配置による分類

1種類のスピーカーユニットで低音から高音まで全て再生する。
  • マルチウェイ
複数種類のスピーカーユニットで、再生する音域を分担する(ユニットの種類数により2ウェイ、3ウェイ、‥‥というふうに増える)。
  • バーチカルツイン(仮想同軸)
マルチウエイにおいて、高音用のスピーカーユニットの上下に低音用のユニットを配置する。
  • 同軸ユニット
低音用のスピーカーユニットの中央部に高音用のスピーカーユニットを組み込み、それぞれのユニットの中心位置を一致させるもの。

特定の振動板がない振動スピーカー

コーン紙など特定の振動板ではなく、直接に振動体(圧電振動子の耐熱樹脂ケース入など)を設置し家の壁、床、その他自動車の天井や花など共鳴するものを振動板とするスピーカーである。

また、放電型(イオン型)スピーカーやサーモホンのように振動板を使うことなく音を発生させるスピーカーもある。放電型スピーカーは高周波放電で発生する空気の振動を利用するもので、過渡応答が優れているという特徴がある。サーモホンは熱音響効果を利用し、周期的な熱の変動による圧力の変化を利用し音を発生させる。十分な音圧が得られなかったため長く忘れられていたが、カーボンナノチューブなどの新しい素材の発明に伴いシート状スピーカーなどへの応用が研究されている[2]

エンクロージャーによる分類

※これらは組み合わせて使用されることも多い。

形状・サイズによる分類

用途による分類

その他

  • スピーカーはエレクトロニクス関係の業界用語では「ラッパ」と呼ばれることがある。なお、1950年代までの古いラジオ関連の技術文献では「高声器」(こうせいき)という標記がされている。
  • スピーカーはマイクロフォンとして使うこともでき、かつてインターホンなどで実用された。逆にマイクロフォンをスピーカーとして使うことも可能だが、小形で繊細な構造のものが多く、配慮しないと壊れやすい。
  • 人間の耳で聴き採りが可能な音の周波数は、年齢等で個人差はあるが単音で測定すると40~18,000Hz程度である。しかしスピーカーから音楽等の複合音を再生する場合、可聴外と言われる超低音や超高音の有無が、音の自然さの再現に影響をもたらしていることが実験的に判っている[3]。特に音の倍音成分の再現が重要で、近年では、20,000Hzを超える音の再生を可能とするスピーカーが一般的になっている。また、音楽記録媒体でも20,000Hzを超える高音域、または40,000Hzを超える超高音域再生が可能な「SACD」や「DVD-Audio」、ごく一部に限られるが「BD-Audio」が市販されている。また可聴外の超低音については、耳で聞こえなくとも空気の振動として肌や毛穴で感じる事ができる[4]
  • エンクロージャーの特殊なものとしては、チャンバーやポートチューブを複数使用して低音の共鳴を最大限に増幅させる事により通常よりも小さな容量にした物や、エンクロージャー自体をわざと共鳴(箱鳴き)させて音を出すようにしたものなど、数多く開発されている。

出典

  1. 日本音響学会 1996.
  2. Colin Barras (2008年10月31日). “Hot nanotube sheets produce music on demand”. New Scientist. . 2011閲覧.
  3. {{#invoke:Footnotes | harvard_citation }}は、対象者に高音を聴かせ、その時の脳波を測定する事によって、当人が音を聴いたと自覚が無くとも、間違い無く音を聴いている事を実証した。
  4. DIATONE70周年 スペシャルサイト 特別コラム Vol.02「オーディオ再生の現在 ハイレゾデータが変えたものと変わらないもの」(貝山知弘)” (日本語). 三菱電機 (2016年11月). . 2016閲覧.

参考文献

  • 『音のなんでも小事典: 脳が音を聴くしくみから超音波顕微鏡まで』 日本音響学会、講談社〈ブルーバックス〉、1996-12。ISBN 4-06-257150-1。
  • 大橋力岡ノ谷一夫、ほか 「至福の音体験と脳─全方位非分化型アプローチの射程から」『脳科学と芸術』 小泉英明編著、工作舎、2008年。ISBN 978-4-87502-414-9。

関連項目

外部リンク