トルコ語

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トルコ語(トルコご、Türkçe)は、アゼルバイジャン語トルクメン語と同じテュルク諸語の南西語群(オグズ語群)に属する言語。

概要

テュルク諸語のうち最大の話者数をもつ。トルコ共和国公用語として人口約7,200万人の話者を擁し、ブルガリアに約75万人、ギリシャに約15万人、キプロスに約25万人の話者がいる。ドイツオーストリアスイスリヒテンシュタインなど西ヨーロッパ東部〜中央ヨーロッパのトルコ系移民社会(200万人以上)でも話されているが、現地で生まれてトルコ語が満足に話せない若者も増えている。

アラビア語・ペルシア語からの借用語が極めて多い他、日常語にはブルガリア語ギリシャ語など周辺の言語からの借用語も多く、近代に入った外来語にはフランス語からのものが多い。

方言

イスタンブール方言を基礎とする共通語を持つ。

表記体系

文章語はオスマン帝国時代にイスタンブールのエリート階層の人々が使用していたオスマン語を、アラビア文字表記からラテン文字表記に改め、アラビア語ペルシア語の語彙・語法を減らして簡略化したものを基礎とする。この言語改革はトルコ共和国を建国したムスタファ・ケマル・アタテュルクによって強力に進められたもので、古語からの語彙の復活や新造語によって旧来のアラビア語・ペルシア語からの借用語を置き換える形で進められた[1]。ただし両言語からの借用語は非常に多岐にわたっていたために完全に置換することはできず、言語改革後も多くの借用語がいまだ存在している[2]

現代トルコ語のラテン・アルファベット

1928年にそれまでのアラビア文字を廃止して制定された[3]

大文字 小文字 音価 備考
A a [a]
B b [b]
C c [dʒ] 英語のjの音。日本語のヂャ(語頭のジャ)行に近い。
Ç ç [tʃ] 英語のchの音。日本語のチャ行に近い。
D d [d]
E e [e]
F f [f]
G g [g]
Ğ ğ - ほとんど発音しない[4]
H h [h]
I ı [ɯ] 標準日本語のウに近い。積極的に唇を横に開く。
İ i [i]
J j [ʒ] フランス語の"je"のj、英語の"pleasure"のsの発音。
K k [k]
L l [l]
M m [m]
N n [n]
O o [o]
Ö ö [œ] ドイツ語のÖの音。「オ」と「エ」の中間音。
P p [p]
R r [ɾ] 語末以外では日本語のラ行音に近い。語末では多く無声化して「シュ」のように聞こえる。
S s [s]
Ş ş [ʃ] 英語のshの音。日本語の「シャ」行に近い。
T t [t]
U u [u] 英語の "pool" の母音。日本語の「ウ」より唇を丸めて発音する。
Ü ü [y] ドイツ語のÜの音。「ウ」と「イ」の中間音。
V v [v] 摩擦が弱まって [ʋ] で発音されることもある。下唇を軽く噛み弱くヴ、ワの子音に近いとする者[5]、英語の [v]、母音aıouに挟まれると、英語の [w] になるとする者もいる[6]
Y y [j] 日本語の「ヤ」行に近い。
Z z [z] 英語のzの音。日本語の「まずまず」の「ず」の音に近い。語末では無声化ぎみ。

文法

日本語助詞助動詞のように、単語の末尾に接尾辞を付着させて文法関係を示す膠着語であり、語順も日本語に似て、原則として主語を文の先頭、述語を文の末尾に置く(SOV型)。形容詞も日本語同様、前置修飾である。母音調和を行うことも大きな特徴である。

例: Ben dün mektubu yazdım.(私は昨日、手紙を書いた。)
Ben(私) dün(昨日) mektub(手紙) u(「を」に当たる格語尾) yaz(「書く」を意味する動詞yazmakの語幹) (過去形を作る接辞) m(主語が一人称単数の場合に用いる人称語尾)

ここでは、日本語との違いとして、助詞「は」に当たる主題を表す接尾辞が存在しないこと、主語の人称によって動詞の語尾が変化することが挙げられる。

このほか、トルコ語には所有接辞が存在する。

例: kitap(本)+ım(所有接辞。所有者が一人称単数で、所有対象が子音で終わる場合、-im/-ım/-um/-ümの4種類があるが、ここでは母音調和により-ım)=kitabım(私の本。kitapのpは子音交替という現象によりbに変化)

母音調和

現代トルコ語には、aeıioöuüの8母音があり、下の表のように分類される。

ファイル:Turkish vowel chart.svg
Zimmer & Orgun (1999:155) [1]
前舌母音 後舌母音
非円唇 e a
i ı
円唇 ö o
ü u

日本語の前舌、後舌母音のことをトルコ語では「細い母音 (ince ünlü)」「太い母音 (kalın ünlü)」という。前舌母音と後舌母音はそれぞれ一語中で共存せず、非円唇母音と円唇母音、広い母音と狭い母音がそれぞれ整然とした対応関係を持つ。

簡単には、「eおよび点の付く母音」と「それ以外の(点の付かない)母音」に分け、前者は「e」で受け、後者は「a」で受けると覚えると分かりやすい。

例えば、時点、地点を表す接尾語(助詞)は「〜de」と「〜da」だが、

  • 「2時に」は saat ikide(「時」「2」「に」)
  • 「6時に」は saat altıda(「時」「6」「に」)

のように、直前の母音により使い分ける(deとdaに意味上の区別はない)。

熟語を形成した単語も、

  • 「どこに」は nerede(「ne」は「どの」)
  • 「ここに」は burada(「bu」は「この」)

となる。

方向を表す「〜に」は「〜e」と「〜a」、「〜から」は「〜den」と「〜dan」だが、これらも同様にそれぞれ、

  • İzmir'e(イズミルに)、İzmir'den(イズミルから)
  • İstanbul'a(イスタンブールに)、İstanbul'dan(イスタンブールから)

になる。

また、「8」、「9」を表す数詞はそれぞれ「sekiz」、「dokuz」だが、これらから派生した「80」、「90」はそれぞれ、

  • sekiz (8) → seksen (80)
  • dokuz (9) → doksan (90)

となる。

関連項目

脚注

  1. 「事典世界のことば141」p266 梶茂樹・中島由美・林徹編 大修館書店 2009年4月20日初版第1刷
  2. 「アラビア語の世界 歴史と現在」p487 ケース・フェルステーヘ著 長渡陽一訳 三省堂 2015年9月20日第1刷
  3. 『図説 世界の文字とことば』 町田和彦編 60頁。河出書房新社 2009年12月30日初版発行 ISBN 978-4309762210
  4. Ğ / ğは「ユムシャック・ゲー」(Yumuşak-G:軟らかいG)と呼ばれ、本来は喉の奥で出すガの摩擦音 [ɣ] または y と同じ半母音 [j](平凡社百科事典、白水社エクスプレスなど)であったが、現代トルコ語では以下のように発音する。
    • 音節頭および母音間では、ほとんど発音しない。 - 例: 「ボスポラス海峡Boğaziçi [boazitʃi]
    • 音節末では、直前の母音を長母音化する。 - 例: 「山」dağ [da:]
      ちなみに、ヨーグルト: Yoghurt)のghもこれである(yoğurt、トルコ人の発音は「ヨーウルト」に近い)。
  5. 飯沼英三『トルコ語会話』ベスト社、2001年 p.7
  6. 大島直政『CDエクスプレストルコ語』白水社、2004年 p.14

外部リンク


テンプレート:テュルク諸語