パイ

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パイ: Pie: die Pastete, der Blätterteig: Tarte, Tourte)は、小麦粉バターなどから作った生地(パイ生地)に、甘く煮た果実類や、ナッツ類、食肉類その他を包み込むなどして、オーブンで焼き上げた料理あるいは菓子。バターの代わりにショートニングラードを用いることもあり、砂糖を入れる場合もある。

なお、パイ生地を用いないパイや、食品としての使用目的以外に作られるパイも存在する(後述)。

由来

原型として、古代エジプトの「ウテン・ト」や中近東の「バクラバ」が挙げられ、現代のパイの発案者として、クロード・ロランとコンデ侯爵家のフィユ(Feuillet)の2説がある[1]

オックスフォード英語辞典によれば、パイに関する最初の記録は1303年、ヨークシャーのボルトン修道院の出納帳であるという。イギリスでの初期のパイはベイクド・ミート・パイのようなパイ包み焼き料理だった。原始的なかまどでの長時間の炙り焼きに耐えられる容器として、パイ皮は非常に厚く硬く作られ、食用には適さなかった。16世紀になり、オーブンの改良とペストリーの進歩により、食べるためのパイ皮のレシピが現れ始める。一方、かアラブ世界から伝わった菓子パンの影響から、イタリアではルネサンス期に小さくて甘いパイが発展し、ヨーロッパ全域に広まった[2]

基本的なパイ生地の作り方

パイ生地中には多量のバターが含まれる。加熱によりバターが溶け、沸騰する際に生地中に気泡を生じ、さっくりした独特の食感を生み出すことが出来る。パイ作りの作業中にパイ生地が温まると、焼く前にバターが溶けてしまい軽い口当たりが損なわれるため、上等な生地作りには多少の熟練を要する。冷凍のパイ生地も市販されており、家庭でも短時間で簡単にパイをつくることができるようになった。

折りパイ

  • 折りパイ(フィユタージュ(仏)、パートフィエテ Pâte feuilletée (仏)、Blätterteig(独)、Puff Pastry(英)、Flaky Pastry(米))
  1. ふるった小麦粉に水と塩を加えて均一になるまで混ぜる。
  2. 溶かしバターを加えてさらに混ぜ、しばらく休ませる。
  3. 生地を四角く伸ばし、冷しておいたバターの塊を包む。
  4. バターを包んだ生地を麺棒などで平たく叩き伸ばす。
  5. 平らになった生地に打ち粉をし、麺棒で平らに伸ばす。
  6. 生地を三つ折にしてしばらく休ませる。
  7. 最初の伸ばしと直交する方向に再度伸ばし、三つ折にする。
  8. この工程を合計5-6回行い、最後に生地を数時間休ませて完成。
  9. これを適宜切って具材を包んだり、パイ皿に伸ばして具材を盛って焼きあげる。

練りパイ

  • 練りパイ(パートブリゼ Pâte brisée(仏)、Short Crust Pastry(英))(一般的にアメリカン・パイと呼ばれるタイプ)
  1. ふるった小麦粉に冷やしたバターを入れ、粉をまぶしながらバターを切り込む。
  2. 粉とバターが全体に薄黄色を帯びたさらさらの状態になるまで切り込む。
  3. 全体が細かい粒状になったら両手で軽くすり合わせて粉とバターを均一にする。
  4. 水に塩を溶かした仕込み水を加え、全体が均一になり生地がまとまるまで混ぜる。
  5. 台に軽く打ち粉をして生地をのせ、軽く麺棒を転がしながら生地を伸ばす。
  6. 折りパイ同様に調理する。

代表的なパイ

甘いパイ

ファイル:Pumpkin Pie.jpg
パンプキンパイ

以下は「パイ」とは呼ばれるものの、オーブンで焼いたものではなく、焼いたパイ生地や砕いたグラハム・クラッカーなどをバターと混ぜたものを敷き詰めたパイ皿(上述のパイのように練りパイ生地だけを台にしているものもある)にクリームなどを盛り付けた生菓子の仲間である。

日本にはパイ生地を用いて、中に小豆、カボチャやサツマイモなどの餡を詰めた折衷様式の和菓子もある。

甘くないパイ

ファイル:Melton Mowbray pork pie.jpg
メルトン・モーブレー・ポークパイ

パイ生地を利用した料理

  • パイ包み焼き:肉類や魚類の香りを逃がさないように、全体をパイ生地で包み込んでオーブン焼きした料理。
  • ポットパイシチュースープを入れた耐熱容器の口に蓋をするようにパイ生地を貼り付け、容器ごとオーブンで焼いたもの。中のシチューやスープにパイを崩し入れながら食べる。パイ生地で具を包んで焼くこともある。
  • アップルダンプリング:皮をむいたリンゴをパイ生地で包みこんでオーブンで焼いた菓子。果実を丸ごと包むブールドロ(これのリンゴをセイヨウナシに変えるとドゥイヨン)という菓子もある。

食べにくさ

パイは、層になっているためフォークやスプーンでは切り取ることが難しい。中でもミルフィーユは食べにくいパイの代表格であり、美しく食べることが難しい。横に倒してからナイフで切ると、散らかさずに食べることができ、これはマナーにも適っている。

菓子パイ

上述の折込パイでの製造過程において、砂糖の粒(主にグラニュー糖)を練り込んだり表面にまぶした後、形を整えて焼き上げた菓子である。ただし、ケーゼシュタンゲンのように砂糖を用いない菓子パイも一部にはある。なお食品成分表での食品名はパフパイと表記されている。

焼き上げの時に溶けた砂糖が、出来上がった後に冷えて固まることから、他のパイよりも硬い食感がある。

  • リーフパイ
  • スティックパイ
  • パルミエ
  • ケーゼシュタンゲン

食品でないパイ

  • パイ皿(厚手の紙やアルミ箔でつくられた深さのある皿)にホイップクリームや食品ではないシェービングクリームを盛ったものは、コメディバラエティ番組において良く用いられるガジェットで、特にアメリカの映画やテレビドラマ、アニメによく登場する。他の登場人物の顔にぶつけるため、あるいは互いにぶつけ合うために用いられる。そういったシチュエーションは「パイ投げ」と呼ばれる。欧米では政治家や大企業の経営者の会見などで敵対意識を持った人に投げつけられることもある。
  • 一般にパイは切り分けて食べられ、食べる人数によって1人あたりの量が変わることから、「複数者によって分け合われる収益や顧客などの総量」の比喩に使われ、「パイを奪い合う」「パイが大きくなる(=市場規模が大きくなる)」などと言う。ちなみに円グラフを英語でパイチャート(pie chart)と呼ぶ。
  • 様々なスポーツ競技に使われるフリスビーは、もともとはパイ皿を使った射的遊技であった。

脚注

出典

参考文献

  • 猫井登 『お菓子の由来物語』 幻冬舎、2008-09。ISBN 978-4779003165。
  • ジャネット・クラークソン 『パイの歴史物語』 竹田円訳、原書房、2013。ISBN 9784562048854。

関連項目

外部リンク



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