ヒョウタン

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ヒョウタン瓢箪、学名:Lagenaria siceraria var. gourda)は、ウリ科の植物。漢語では(ひょう、とも表記)、瓢瓠(ひょうこ)、胡盧(ころ、葫盧壺盧とも表記)ともいい、和語ではひさごふくべという[1]。 この植物の果実を加工して作られる「ひょうたん」は、「瓢」の「箪(容器)」という意味である。

概説

最古の栽培植物の一つで、原産地のアフリカから食用や加工材料として全世界に広まったと考えられている。乾燥した種子は耐久性が強く、海水にさらされた場合なども高い発芽率を示す。

狭義には上下が丸く真ん中がくびれた形の品種を呼ぶが、状から楕円形、棒状や下端の膨らんだ形など品種によってさまざまな実の形がある。

ヒョウタンは、苦み成分であり嘔吐・下痢等の食中毒症状を起こすククルビタシン[2]を含有し、果肉の摂取は食中毒の原因となる[3][4][5]

種類

ヒョウタンには大小さまざまな品種があり、長さが5センチくらいの極小千成から、2メートルを越える大長、また胴回りが1メートルを超えるジャンボひょうたんなどがある。

ヒョウタンと同一種のユウガオは、ククルビタシンの少ない品種を選別した変種で、食用となり干瓢の原料として利用される。 また、ヒョウタン型をした品種の中にも、ククルビタシンの少ない食用品種が存在する。

歴史

日本では、縄文時代草創期から前期にかけての遺跡である鳥浜貝塚から種子が出土している。文献史学上では『日本書紀』(720年成立)の中で瓢(ひさご)として初めて公式文書に登場する。その記述によると仁徳天皇11年(323年)、茨田堤を築く際、水神へ人身御供として捧げられそうになった茨田連衫子という男が、ヒョウタンを使った頓智で難を逃れたという。

利用

主に容器へ加工されて利用されるほか、強壮な草勢からスイカカボチャ台木としても利用される。

容器

果肉部分を除去し、乾燥させたものが容器として水筒の貯蔵に利用されていた(微細な穴があるために水蒸気が漏れ出し、気化熱が奪われるため中身が気温より低く保たれる)。

軽くて丈夫なヒョウタンは、世界各国で様々な用途に用いられてきた。日本では上記のように水や酒を持ち運べる容器としてのほか、二つに割って水などを汲んだり掬ったりのにも使われた。ヒョウタン(瓢箪)を指す瓢(ひさご)の読みを柄杓に当てて「ひしゃく」と呼んだとの説もある。朝鮮半島ではヒョウタンを二つ割りにして作った柄杓や食器を「パガチ」と呼び、庶民の間で広く用いられてきた。韓国ではプラスチック製パガチが現代でも売られている[6]。また、アメリカインディアンタバコパイプに、南米アルゼンチンウルグアイブラジルではマテ茶の茶器に、またインドネシアイリアンジャヤパプアニューギニアなどでは先住民によってペニスケースとして使われている。

楽器

ラテン音楽では、ヒョウタンの内側をくりぬき外側に刻みを入れて棒でこすったり叩いたりして演奏するギロという打楽器がある。ほかに多くの弦楽器コラ)、打楽器管楽器などに使われる[9]

浮きと漁具

済州島海女浮き用にヒョウタンを抱える[10]漁具としても使われる[11]

神具

出雲大社の爪剥祭では、生のヒョウタンを胴切にし、麻茎製の柄を付けたものをヒシャクとして、御神水を供える時に使用する伝統がある。これはヒョウタンに宿る霊力を用いるという意味を含むという[12]

航海術

ポリネシア人航海をする際に用いたとされ「魔法のヒョウタン」と呼ばれた[13]

装身具

ニューギニア島の先住民が股間に着用するコテカに加工される。

加工方法

ヒョウタンは水筒、酒器、調味料入れなどの容器に加工されることが多い。

加工には、まず、完熟したヒョウタンの実を収穫し、ヘタの部分に穴を開ける。そこから棒を突き入れ、果肉をある程度突き崩す。その状態で重石を載せ、水中に漬け込む。

1週間-1ヶ月ほど経ってから、表皮を剥がし、腐ってペースト状になった果肉をすべて掻き出して綺麗に洗う。その後で水を取り替え、一週間ほど漬けて腐敗臭を抜いてから陰干しする。乾燥したヒョウタンは、表面に柿渋ベンガラニスなどを塗って仕上げる。水筒や食器など、飲食関係の容器に用いる場合は、酒や番茶を内部に満たして臭みを抜く。

なお果肉の腐敗臭はかなり強烈なので、屋内や住宅密集地での作業は控え、手にはゴム手袋をするのが望ましい。手に臭いが移った場合、石鹸で洗っても臭いは容易に落ちないため、手に灯油有機溶剤を塗ってから石鹸で洗うと臭いがよく落ちる(ただし皮膚に灯油や有機溶剤が付着することは有害なので、あくまでも緊急時の対処とするのが望ましい)。臭気を抜く方法に、塩素系(キッチンハイター)などの溶液に漬け込むことも有効である。

現在は酵素を利用して果肉を分解する加工液も市販されており、これを利用すると腐敗による加工よりもはるかに早く、腐敗臭もなく加工できる[14]

毒性

観賞用のヒョウタンの中にはククルビタシンという苦味成分のある植物毒を含有しているものがあり、嘔吐下痢を伴う重篤な胃および腸不全を引き起こし、稀に死亡することもあるため、注意が必要である。

中毒事例
  • 茨木市立彩都西小学校において、事前にヒョウタンの植物毒を認知していた校長から制止されたにも関わらず、これを無視した教諭が児童28人にヒョウタンを食べさせ、17人が中毒症状を起こし懲戒免職になったことがある[15]
  • 「グリーンプラザ山長」(奈良県生駒市)が、生産した苗に誤って「育てて楽しい、食べておいしいシリーズ」のラベルを付けて出荷し、ホームセンター大手「ロイヤルホームセンター」(本社・大阪市西区)で販売された。このうち、押熊店(奈良市押熊町)の購入者から苗を受け取った知人の40歳代女性が実を食べ、腹痛や吐き気などの症状を訴えて2日間入院したが命に別状はなかった[16]
  • 兵庫県篠山市の男性が、自宅の庭で栽培したヒョウタンを素揚げにして友人と食べ、おう吐や下痢の症状が出て救急車で搬送された[17]

意匠

瓢箪は、「三つで三拍(三瓢)子揃って縁起が良い、六つで無病(六瓢)息災」などといわれ、縁起物として掛け軸や器、染め物などの意匠にも見られる。そのため、豊臣秀吉の「千成瓢箪」に代表されるように、多くの武将が旗印馬印などの意匠として用いた。大阪府の府章は、この豊臣氏の千成瓢箪をイメージしたものである[18]

ギャラリー

因んだ名前

真ん中でくびれている、ひょうたんの独特の形(ヒョウタン型)から、それに因んだ名を持つ生物や地形がある。

植物

真ん中がくびれた実をつける。

地形

脚注

  1. Weblio シソーラス”. . 2016閲覧.
  2. 化学物質及び自然毒による食中毒等事件例(第17報) -平成11年- (PDF) 東京都立衛生研究所 研究年報 2000 年
  3. “授業でひょうたん食べ児童17人がおう吐・腹痛”. NHK. (2013年7月4日). オリジナル2013年7月5日時点によるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20130705025830/http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130704/k10015804921000.html . 2013閲覧. 
  4. ヒョウタンで体調不良 食べさせた小学校教諭、懲戒免職の処分 大阪府教委 朝日新聞 2013年11月15日
  5. ひょうたん苗、食用と誤表記し販売 腹痛で入院した人も 朝日新聞 2014年7月13日
  6. 【モノごころヒト語り】柄杓(ひしゃく)清らかな白木で水汲み日本経済新聞』夕刊2019年1月26日(社会・スポーツ面)2019年2月9日閲覧。
  7. 湯浅[2015:89-90]
  8. 湯浅[2015:93]
  9. 湯浅[2015:117-148]
  10. 湯浅[2015:106-107]
  11. 湯浅[2015:104]
  12. 出雲大社教布教師養成講習会』発行出雲大社教教務本庁平成元年9月全427頁中319頁
  13. 茂在寅男 『古代日本の航海術』 小学館〈小学館創造選書 (25)〉、1979年。
  14. バイオひょうたんごっこ®”. サカタのタネ. . 2017閲覧.
  15. 2013年11月15日08時01分 読売新聞
  16. 2014年7月13日15時32分 朝日新聞
  17. 2016年8月2日16時29分 神戸新聞NEXT
  18. 18.0 18.1 大阪府の府章 大阪府ホームページ
  19. 動物名辞典”. 日外アソシエーツ (2016年5月4日). . 2016閲覧.

参考文献

  • 湯浅浩史 『ヒョウタン文化誌』 岩波書店岩波新書(新赤版)1564〉、2015-9-18。ISBN 978-4-00-431564-3。
  • 『古文化財の自然科学的研究』 古文化財編集委員会、同朋舎、1984年。ISBN 978-4810404104。

関連項目

  • 大井町 - 昭和45年に上大井駅で日よけにひょうたん棚を設け話題になったことから、ひょうたんの町として祭りなどを開催している。
  • 金角・銀角 - 『西遊記』の登場人物。呼び掛けに答えた相手を吸い込んでしまう魔法の瓢箪を用いて三蔵法師一行を苦しめる場面がある。