ピンクサロン

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ピンクサロン(イメージ)

ピンクサロン(和製英語:pink salon)とは、女性店員がフェラチオを主とした性的なサービスで接客する風俗店ソフトドリンクアルコール飲料も提供される。略してピンサロサロンと呼ばれ、同義語にピンキャバがある。

概要

後述する通り法律上の建前は飲食店であるが、性的なサービスを行うものがピンクサロンである。実際に「本番」行為(性行為)が行われることも少なくなく、これは本番サロン、本サロと呼ばれる(詳しくは後述)。

手頃な料金で性的サービスが受けられることから、繁華街を中心に日本全国に普及した。

歴史

発祥は1960年とされている。「ピンクキャバレー」や「ネグリジェサロン」などと呼ばれるおさわり専門の業態に、口での“抜き”(フェラチオ)サービスを取り入れて現在の形が完成した。1977年にブームとなり、1980年代に入ってからサービス内容が過激化していった。かつてはロンドングループや日の丸グループが有名であったが、現在東京都内では大きな看板を掲げているところは少ない。

法律上の位置づけ

多くの店舗は、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律風俗営業2号営業、もしくは深夜における酒類提供飲食店営業の届け出で営業しており、すなわちこれはキャバレーの様な建前であって、他の性風俗店と異なり性風俗関連特殊営業に位置づけられていない[1]。にもかかわらず性的なサービスを行っているため、当局による営業停止処分を受ける程度のことはそう珍しくない[2]。更にピンクサロンは建前上飲食店であるため、個室やシャワーを設置することができない。

また、条例により性風俗店の出店が禁止されている地域でも、飲食店として出店し営業していることもある。

立地

多くはJR私鉄周辺の繁華街に立地している。入口付近にネオンサイン等の店名入りの看板(料金だけが書かれたものもある)が置かれ、キャバクラなどと同様に店員やフリーのキャッチが客引を行う店舗もある。雑居ビルの一テナントとして入居していることが多い。

都心部では地下に店舗を構えるケースが多い。その場合、非常口が1つしかなく防災面で問題を抱えている店舗が多い。[3]

一般的な店内の様子

上述の通り個室が設けられていないため、ある程度の間仕切りを伴ったブースでサービスが行われる[4]

出勤している女性の写真源氏名に番号付きで貼られており(地域、店舗によっては写真の掲示はない)、好みの女性がいる場合はここで指名する(別途料金が発生)。指名をしない「フリー」での入場も可能である。但し、この場合指名料が入らないため、フリーの客に対して“地雷”と呼ばれる女性[5]を付ける店もあるが、新規客層の獲得をするためにフリーの客でも人気嬢を付ける店もある。入店時にの伸び具合をチェックされ、客の手の消毒用に消毒液を備えている店舗もある。

店内は暗く、音楽が大音量で流されている。曲は派手でアップテンポな曲が多い。これは、個室でのサービスではないため他の客の会話や脱衣に配慮されたものである。

シートは横長のベンチシートが一般的だが、靴を脱いであぐらをかいたり横になったりできるフラットシートの店舗もある。席に着くとすぐに飲み物が提供される。一般的には飲み物は無料であるが、アルコール飲料のみ有料とする店舗もある。また、地域によってはテーブルに煎餅やスナック菓子と灰皿が置かれており、自由に食べたり、煙草を吸ったりすることができる。前述のようにピンクサロンは建前上飲食店であるため、テーブルの設置と飲食物の提供は必須であり、飲食店としての実態を取り締まりの口実とする地域では飲み物や菓子類がなくなると直ちに補充される。

一般的なシステム

深夜営業の届け出をしている店舗は多くなく、営業時間は夕方16時頃から深夜1時位の店舗が多いが、早朝(7時前後)や正午前後から営業する店も存在する。料金は5000円 - 8000円程度で、時間帯によって料金がスライドして高くなっていく。ピンクサロンが集中する地域では2000円程度からの格安店も存在する(※朝またはイベント限定)[6]。なお、主要都市以外の地方では1万円前後するところもある[7]。サービス時間は30分 - 45分辺りが主流で、店によっては割増し或いは延長料金によって60分 - 120分までのコースを選択できる。

通常、店内はブースごとに席が分かれており、原則女性従業員がマンツーマンで接客する。店によっては時間中に複数の女性従業員が入れ替わりサービスを行う「花びら回転」というシステムも存在する。花びら3回転の店の場合、3回射精できるため、射精1回当たりの料金は他の風俗と比べて格段に安い。

キスを中心とした軽いスキンシップの後、お絞りウェットティッシュで客の陰部が清拭され、手コキまたはフェラチオを基本として、クンニリングスシックスナインサービスを行なう女性でも、ヘルプに入った場合やハッスルの客には行なわない場合もある。サービス中、コンドームを着用する店・しない店、また女性従業員が服を脱ぐ店・脱がない店[8]など、地域や店舗によって、または女性によってサービス内容が異なる。

フェラチオの後、口内に射精(口内発射)させるサービスが一般的であるが、格安店や周囲に同業者がいない店の中には手コキのみで射精させる場合もある。

客が射精した後は口内の精液をおしぼりに吐き出し、客の性器を清拭する。

サービス時間が終了すると、最後に付いた女性の見送りを受けて退店する。

ピンサロ嬢

ピンクサロンの特徴の1つは、接客する女性の中に他の風俗では見られないような年齢層や容姿[9]の女性がいることである。その理由としては、店内が暗いために客が女性の年齢や容姿を判別しにくいことと、採用時の年齢基準が甘い店が多いこと等が考えられる。また、寮を備えた店もあり、家出中或いは多重債務ドメスティックバイオレンスから逃げている女性がピンサロ嬢になるケースも見られる。他の風俗でも寮を備えた店はあるが、ピンクサロンは性風俗関連特殊営業で届けられている一般の風俗店のように従業員の身元確認が厳しくない[10]ため、このような女性達にとっては就職し易い。

一方、ソープランドファッションヘルスにはシャワーや風呂の設備があり、デリヘルの場合も行為の前に客の身体を清浄することができるが、ピンクサロンではお絞りで清拭しただけの客の性器を口にしなければならない。にもかかわらず、1人の客に口内発射させた際の報酬は他の風俗に比べて格段に安い[11]。人気店では客が絶えることがないため、約7時間の勤務時間中殆ど休憩なくフェラチオをし続けなければならず、肉体的にも過酷である。また、ピンクサロンは正式に届けられた性風俗店ではないため、風営法違反や公然猥褻による警察の取り締まりを受ける危険が常にある。

しかしながら、風俗店やキャバクラには抵抗のある女性にとっては入店しやすい業態である。また、飲食店だと思って入店した女性や、他の風俗店やキャバクラで働けるような女性の中にもピンクサロンで働き続ける女性は多い[12]。他の風俗と比べたピンクサロン勤務の利点としては以下のことが挙げられる。

  1. 他の風俗店の報酬は歩合制が一般的であるが、ピンクサロンは時給+歩合給であるため収入が安定している。特に、人気店は客の入りも安定しているため、高い収入が安定して得られる[13]
  2. 他の風俗では個室で客と一対一で接しなければならず、安全上の不安がある。ピンクサロンでは客とのトラブルがあっても比較的安全である[14]
  3. 店内が比較的暗いため、ルックスに難のある女性でも問題が少ない[15]
  4. 接客に於いて、もちろんそれなりに若年で容姿端麗であることに越したことはない。しかし、会話能力や容姿を技術でカバー、総合的な接客を経験でカバーできるため、必ずしも年齢を重ねていることが不利とは言えない。
  5. シャワーを頻繁に浴びる必要がないため、肌荒れの心配が少ない。

このような理由と、年齢が高くても勤められることから、他の業種より長期間勤務する女性が多く見られる。

ピンクサロンに関連する用語

  • ピンサロ嬢 - ピンクサロンで接客することを職業とする女性。略して「嬢」とも。希に受付や会計を行なう女性従業員もいるが、ピンサロ嬢とは呼ばない。
  • 新規(ご新規) - 来店が初めての顧客。フリーや指名のない割引チケット利用顧客にも呼ばれることもある。
  • ハッスル - 指名のない客が席に付いたときに使われる。
  • 花びら回転 - 女性器を花びらに見立て、時間内に数人の女性が入れ替わるサービス。元祖は五反田のピンクサロンであると伝えられている[16]
  • ヘルプ - 花びら3回転の場合に於いて、2番目にサービスに付く女性従業員。
  • 店外 - 店外デートのこと。キャバクラなどと違い風俗業界では原則的に禁止されており、勧誘した客は入店禁止、女性従業員は退店になるのが建前である。しかし、女性(特に早番にされて収入が減った女性従業員)が客を勧誘して個人的に売春行為を行なっている場合もある。
  • フリー - 顧客が接客女性を指名しないこと。指名料が掛からないものの、不人気な女性や新人がつくことが多いが、基本的には空いている嬢が付く。
  • 地雷 - 容姿、スタイル、サービスの劣る女性のこと。指名せずフリーで入店した場合指名料が不要だが、地雷が割り当てられてしまう可能性が高くなる。店舗によっては著しく容姿の劣る女性もフリー顧客担当として採用していることもある。
  • 指名 - 顧客が嬢を選ぶこと。指名料が必要となる。
  • 本指名 - 他の風俗店やキャバクラ同様のシステムで、写真指名やネット指名ではなく、以前に接客されたことのある嬢を指名すること。女性への報酬やインセンティブがフリーや写真指名よりアップする。
  • NK流 - 西川口流とも。2000年代中頃までの西川口地域のピンクサロンやヘルスは本番(性行為)サービスを行なう店が多く存在していたことに由来し、本番サービスのことを示す。また、本番サービスを行うピンクサロンは本番サロン(本サロ)と言われることが多い[注 1]
  • キャンパスパブ - 主に愛知県で使われている名称。ピンクサロンの名称ではイメージが悪い、ということでキャンパスパブという名称を用いている。
  • V(ブイ) - 女性従業員が管理者に伝える隠語で、客が射精に至ったことを示す。歩合給に影響するため、精液を吐き出したおしぼりを男性従業員に確認させる店もある。
  • JOKER(ジョーカー) - 女性従業員が管理者に伝える隠語で、客が射精に至らなかったことを示す。
  • エンジェル - 昇天(射精)した客のことを言う。
  • フラワータイム - サービス終了5分前を示す。
  • 社交さん - 接客する女性従業員のこと。ピンサロ嬢が職業を指す言葉であるのに対し、社交さんは店内での役割として使われる。
  • ゲンダイデー - 日刊ゲンダイに自店の広告が出ている日に行われる割引システム。
  • 改装工事 - 警察の取り締まりによって休業を余儀なくされたときに使う言い訳。
  • 早番・遅番 - 早朝或いは12時開店の店では勤務がシフト制になっており、12時開店の店の場合18時に交代する。早番の時間帯は客が少ないため、遅番の女性従業員より歩合給が少ない。早番の女性従業員には主婦のアルバイトもいるが、風俗専業の女性が早番にシフトされた場合、収入の減少を補うために夜間は別の風俗店[17]で働くこともある。
  • ごっくん - 精液を飲み込むこと。女性によっては行うこともある。
  • 時短 - 指名をしない顧客や、指名客が待機している場合は、サービス時間が短縮されて効率化を図ることもある。
  • ブラックリスト - 店内で暴れたり、本番行為を求めたりした者を出入り禁止にする。場合によっては身分を証明するものを取られる。

性感染症の危険性について

最近までピンクサロンは性病に感染しやすいと言われていた。しかし、個室で素股や本番行為などが行われ客との性器の接触が多いヘルスのほうが、性感染症にかかる確率が高いのは当然である。最近のピンクサロンは警察の手入れなどで衰退し、サービスも縮小、素股や本番ができるような店が少なくなっているのが現状である。

代表的な性感染症の種類

ピンクサロンにおける感染予防対策

イソジンは細菌、真菌、ウイルスなど広範囲の微生物に対し、迅速な殺菌・消毒効果を発揮する殺菌消毒薬である。のどの洗浄(うがい)をすることにより多くの細菌から感染予防に効果的として、フェラチオサービスを主とするピンクサロンでは必需品となっている。客の射精後に女性が離席し、イソジンでのうがいが義務づけられている店舗が多い。ただし、イソジンは全ての感染症を防ぐものではない。

予防には感染源に接触しないコンドームを利用することが最適だが、衛生器具を付けてサービスをする店舗はごくわずかである。

代表的な症状に対する診察方法と主な対策

代表的な症状はわずかな痒みと残尿感(おしっこのキレが悪くなる)といった前立腺、尿道の炎症。これらを医師が判断する一般的な簡易検査方法として、肛門に指を入れて前立腺を強く押してカウパー腺液を出し、顕微鏡で観察して細菌の活動状態を検査する。

体の中でも前立腺内部は養分が非常に高いため、一度でもここまで侵入すると細菌が温床しやすく、薬品でなければ排除できない。幅広い病原微生物に効果的なクラビットが主に処方されることが多い。抗生物質のため長期間投与を要する。一時的な改善で服用をやめると耐性菌ができてしまい、何度も感染を繰り返す可能性がある。パートナーへ感染させる可能性もあり、他の抗生物質治療薬と同様に2 - 3週間は必ず服用して完全に前立腺から排除する必要がある。

海外のピンクサロン事情

欧米ではピンクサロンだけを主としたサービスは存在せず、日本特有。性行為の一環にフェラチオ行為が行われることがある。しかし、海外ではエイズなどに対する意識が日本よりも高いため、様々な病原菌対策としてコンドームは絶対に付けることが常識となっている。

脚注

  1. 『セックスというお仕事』 p.68
  2. 『セックスというお仕事』 p.73
  3. 都内でのピンクサロン放火事件
  4. 『セックスというお仕事』 p.68
  5. 一般的な男性の感覚では不快感を催す容姿の女性。このような店では、明らかにそれと分かる写真が貼ってあり、店員が写真指名の有無を確認する可能性がある。
  6. 但し、同じ地域にある他の同業者より格段に安い店はサービスが著しく劣ったり、追加料金を請求されたりする場合が多い。この場合ドリンク1000円が一般的。
  7. ファッションヘルス」等の看板を掲げて1万円以上の料金設定をする店もある。しかし、サービス内容は周囲にある1万円以下のピンクサロンと同じである。
  8. 公然猥褻の判断基準が管轄の警察署によって異なるため、地域により異なる。服を全て脱いでも、パンティが脚に掛かっていれば良いとされる地域もある。
  9. 他の風俗でも熟女や超熟女、デブ専、或いは非合法な未成年者を使う店があるが、これらの店はそれに特化していることが殆どである。一般的な風俗嬢は20代〜30代前半で、人並みかそれ以上の容姿を持った女性である。肥満体型ではあるがデブ専店の採用基準には満たないような女性が風俗店に就職する場合は、選択肢がピンクサロンに限られる傾向にある。
  10. 性風俗関連特殊営業として届けられている店は従業員の身元確認状況を検査されるため、厳しい場合が多い。
  11. 2000円 - 4000円程度。
  12. 『セックスというお仕事』 p.68 - p70、p.73 に、ピンクサロン従業員の談話などが紹介されている。
  13. 歩合給は指名数と射精させた客の人数で決まる。『セックスというお仕事』(1990年)では、一人あたり500円、指名料が1000円 - 2000円との例が紹介されている。
  14. 『セックスというお仕事』 p.73 従業員の談話。
  15. 『セックスというお仕事』 p.73 従業員の談話。
  16. 『戦後性風俗大系』p.238 - p.239
  17. 同業者の場合、信義的な問題がある上に発覚しやすいため、ピンクサロン以外の業種。
  18. 1型は三叉神経に忍び込み、日和見感染症で自覚しにくい。一方2型は仙骨神経節に入り込む通称性器ヘルペスで症状は顕著に現れる。いずれも一度感染するとウイルスは生涯神経の中で生き続け、完全には消滅しない。
  19. 他人に感染することはないため厳密には性感染症ではないが、亀頭を刺激することから発症しやすい。

注記

  1. 『戦後性風俗大系』p.268によれば、吉祥寺蒲田にも本サロが見られるとのこと。

参考文献

  • 石井慎二 他編著『別冊宝島124号 セックスというお仕事』 1990年12月 JICC出版社
  • 広岡敬一 『戦後性風俗大系 わが女神たち』朝日出版社 2000年4月 文庫版:新潮社 2007年

関連項目