ペクチン

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ペクチン (Pectin) とは、植物の細胞壁や中葉に含まれる複合多糖類で、ガラクツロン酸 (Galacturonic acid)が α-1,4-結合したポリガラクツロン酸が主成分である。ガラクツロン酸のカルボキシル基がメチルエステル (methyl ester) 化されたものをペクチン、メチルエステル化されていないものをペクチン酸 (Pectic acid) と呼ぶ。天然ではガラクツロン酸の一部にメチル化が見られ、人工的に脱エステル化することによってペクチン酸が得られる。ガラクツロン酸の他にも、いくつかの多様なを含むことが知られる。分子量は50,000 - 360,000で、特に植物の葉、茎、果実に含まれる。アンリ・ブラコノーによって1825年に初めて単離された[1]EDTAクエン酸シュウ酸などのキレート剤と共に加熱することで可溶化され、抽出される。

食品添加物として使用され、冷やすと甘味が増す。

構造

天然では以下の構造の異なる3つのドメインから構成される。

ホモガラクツロナン

ホモガラクツロナン (Homogalacturonan, HG) は最も主となる構造。ガラクツロン酸のみの連続したα-1,4-結合。ガラクツロン酸のカルボキシル基へのメチルエステル化や水酸基へのアセチル化が存在し、構造に変化をもたらしている。エステル化されていないガラクツロン酸のカルボキシル基がカルシウムイオンと結合してゲル化するため、メチルエステル化の頻度が強度を決める要因となる。

ラムノガラクツロナン‐I

ラムノガラクツロナン‐I (Rhamnogalacturonan-I, RG-I) は、ガラクツロン酸とラムノースのα-1,4/1,2-結合の繰り返し構造である。ラムノースからは、1,4-ガラクタン、1,3-アラビナンの側鎖が分岐している。

ラムノガラクツロナン‐II

ラムノガラクツロナン‐II (Rhamnogalacturonan-II, RG-II) は、約30の糖からなる複雑な構造である。ガラクツロン酸、ラムノース、の他、アピオースメトキシ化したグルクロン酸フコースなどを含む。

食品添加物としてのペクチン

食品工業においては増粘安定剤(増粘多糖類)として使われており、サトウダイコンヒマワリ、アマダイダイ(オレンジ)、グレープフルーツライムレモン、またはリンゴなどから酸抽出される。ペクチンは酸性の食品にも使用できることから、ジャムゼリーなどのゲル化剤やヨーグルト飲料などの乳タンパク安定剤として使用される。カルシウムとのゲル化作用を直接利用する、フルーチェのような食品もある。また、食品添加物のペクチンは食品用に精製されたものであり、ミカンやオレンジなどペクチンを含む果物を牛乳と直接混ぜ合わせても凝固しない。

人体への作用

ヒトの消化管内では微生物が分解するが、ヒトの消化酵素では分解されないことから食物繊維として機能し、整腸作用やコレステロール低下作用などを有すると言われている。また、抽出する植物の種類によってはアレルギー緩和作用があるという報告もあるほか、ワイン酵母などでペクチンを含むものを醗酵させると、メチル・エステルがエステラーゼによって加水分解され、人体にとっては有害なメチルアルコールが生成される。セシウムを効率的に排出するという、バンダジェフスカヤ(バンダジェフスキー博士夫人)による論文があるが、十分に精査されていない論文のため、否定的な意見もある。

ペクチンを食事と同時に摂取すると血糖上昇が抑制され、インスリンの分泌も抑制された[2][3]

脚注

  1. Braconnot, Henri. Keppler, Frank et al. Methane emissions from terrestrial plants under aerobic conditions. Nature 439, 187-190
  2. Jenkins, D.J.A., Lees, A.R., Gassull, M.A.,Cochet, B. and Alberti, G.M.M.: Ann. Intern. Med., 80, 20 (1977)
  3. グルコマンナン, プルランならびにセルロースの血糖上昇抑制効果の比較、奥恒行ほか、日本栄養・食糧学会誌Vol. 36 (1983) No. 4

関連項目