ホップ

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ホップ勿布学名Humulus lupulus)はアサ科つる性多年草。雌雄異株。和名はセイヨウカラハナソウ(西洋唐花草)。

毬花ビールの原料の一つで、苦味、香り、泡に重要であり、また雑菌の繁殖を抑え、ビールの保存性を高める働きがある。

全国の山地に自生する非常によく似た植物にカラハナソウ(H. lupulus var. cordifolius)があり、しばしばホップと混同される。これはホップの変種であり、ホップに比べて苦み成分が少ないのが特徴である。本来のホップは、日本国内では北海道の一部にのみ自生する。


植物の特徴

雌雄異株の蔓性(ツル性)植物。ツルの高さは7から12メートルになる。また多年生植物であるため、一度植えられるとその根株は10~30年引き抜かれずに使用される。雌株には「毬花」と呼ばれる松かさに似た花のようなもの(本当のではない)をつけ、この毬花がビールの苦みなどの原料になる。また、有効な成分も含んでいるため、ホップ畑では、雄株は限られてしか栽培されない。 日本では未受精の毬花が用いられるが、地域によっては受精した毬花もビール醸造に用いられる。

かつてはクワ科とされていたが、托葉が相互に合着しない、種子胚乳がある等の理由でアサ科として分けられた。同じアサ科の植物にはカンナビス大麻)があり、さらに同属にはカナムグラがある。大麻などには下記のフムロンα酸)は存在しない。

歴史

原産はカフカス付近(黒海カスピ海に挟まれた地域)と考えられている。紀元前の相当古い時代から西アジアおよびヨーロッパの山地に野生のホップが自生していたとされ、紀元前6世紀頃には、メソポタミア地方新バビロニア王国カフカス山脈付近のカフカス民族がビールに野生ホップを使用していたようである。エジプトでは薬用にされていたとも言われている。8世紀になるとドイツでホップの使用・栽培が始まり、次第にヨーロッパ各地に普及した。12世紀にはホップがビールの味付けに使われ始めた。しかし当時の主流はグルートビールと呼ばれる薬草や香草を使用したビールであった。

14世紀から15世紀にかけてホップビールの持つ爽快な苦味や香り、日持ちの良さなどが高く評価されるようになり、ビールの主流になった。その理由はホップのもつ香味からではなく、むしろホップを入れて煮た麦汁から作ると腐りにくく長持ちするということからであった。ビールにホップが入れられるようになったこの頃からホップの栽培が普及するようになった。

オランダでは14世紀から、すでにビール作りに用いられ、16世紀になってオランダから亡命した新教徒たちがイギリスに伝えた。それ以前は、モルトなどの苦みを持つハーブが用いられていたが、これらはエールと呼ばれ、ホップを用いたものだけがビールと呼ばれるようになった。イギリスではヘンリー8世によって毒草として使用を禁止され、次の王であるエドワード6世のときに(1551年)ようやくホップ栽培者に特権が与えられる。その後もイギリスでは、1608年にいたんだホップの輸入が禁止されている[1]。ドイツでは、1516年バイエルン公ヴィルヘルム4世により、ビール純粋令(「ビールは大麦、ホップ、水のみを原料とすべし」)が定められた。日本での栽培は1877年明治10年)に、北海道開拓使が外国から苗を持ち込み栽培したのが始まりと言われる。

栽培地域

世界的にはドイツアメリカで最も多く栽培されており、チェコイギリスフランス中国スロベニア南アフリカオーストラリアニュージーランド日本などで栽培されている。日本では東北地方北海道でビール会社との契約栽培で生産されている。生産地としては北海道上富良野町青森県三戸町秋田県横手市大雄地区岩手県遠野市奥州市(江刺区)、軽米町山形県東根市長井市白鷹町長野県安曇野市等が挙げられる。

国別の生産量

2011年における国別の生産量は以下の通りである[2]

順位 国名 生産量(千トン) 全世界に占める割合(%)
1 ドイツ 38.1 29.6
2 アメリカ合衆国 29.4 22.8
3 エチオピア 28.1 21.8
4 中華人民共和国 10.0 7.8
5 チェコ 6.1 4.7
6 ポーランド 2.6 2.0
7 スロベニア 2.2 1.7
8 北朝鮮 2.0 1.6
9 イギリス 1.6 1.3
10 アルバニア 1.3 1.0
世界計 128.7 100.0

ビールの苦味

ホップの毬花には、ルプリンと呼ばれる黄色の粒子が存在し[3]、ビールに香りを付与する物質や苦味を付与する物質はこの中に含まれる。ルプリンに含まれるフムロン(α酸)は、ビール醸造の煮沸工程において、イソフムロン(イソα酸)へと変換される。このイソα酸こそがビールの苦味成分である。

ビール以外への応用

ビール以外の目的では、生薬としても健胃、鎮静効果があるとされ、またハーブの一種としてヨーロッパでは民間薬として用いられている[4]。ホップには苦味成分、香り成分の他、キサントフモールEnglish版イソキサントフモールEnglish版8-プレニルナリンゲニンといった機能性を持つ物質が多く含まれている。8-プレニルナリンゲニンは、吸収しにくいものの組織に蓄積しやすいとされる[5]。これらホップ由来物質の多彩な機能性が科学的に研究され、エストロゲン様作用による更年期障害の改善作用[6]、睡眠時間延長作用、鎮静作用[7]、II型糖尿病患者に対するインスリン感受性の改善作用[8]、胃液の分泌増加作用[9]、イソフムロンの肥満予防効果、などが報告されている。機能性食品の素材としても注目したい植物である。

2006年6月には、サッポロビールによって、ホップ抽出物に含まれるポリフェノールの一種であるホップフラボノールに花粉症症状を軽減する効果があることが突き止められた[10]

2014年1月、京都大とサッポロビール研究チームが、ホップの成分にアルツハイマー型認知症の予防効果があることを確かめたと、米科学誌プロスワンに発表した。ただしビールの製造過程では、現在この成分は取り除かれているため、ビールを飲んでも効果は期待できないとしている。[11]

2014年2月、クラシエホームプロダクツ (旧カネボウホームプロダクツ)が、ホップの成分に表皮細胞アロマターゼを活性化させる効果があるとのプレスリリースを行い[12]、洗顔料への配合を始めた。一方、ホップに含まれるプレニルフラボノイドEnglish版が、乳癌細胞のアロマターゼを抑制するという論文もある[13]

ツルをよく伸ばすことから緑のカーテンに利用されることもある[14]

耐用年数

平成20年度税制改正において、法人税等の「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」が改正され、別表第四「生物の耐用年数表」によれば平成20年4月1日以後開始する事業年度にかかるホップの法定耐用年数は9年となった。

脚注

  1. ハーブの事典 北野佐久子 2005年 東京堂出版
  2. 地理 統計要覧 2014年版 ISBN 978-4-8176-0382-1 P,63
  3. ホップとはなんですか?”. サントリー. . 2018閲覧.
  4. 北川勲、三川潮、庄司順三、滝戸道夫、友田正司、西岡五夫 共著「生薬学」(東京、廣川書店、1980年)253-254頁
  5. プレニルフラボノイドの生体利用性: プレニル化は体内滞留時間を延長させて,組織への蓄積を高める 日本農芸化学会 2015年
  6. エストロゲン作用による更年期障害の改善作用
  7. 睡眠時間延長作用、鎮静作用
  8. II型糖尿病患者に対するインスリン感受性の改善作用
  9. *胃液の分泌増加作用
  10. サッポロビール/ホップと花粉症” (2006年). . 2008閲覧.
  11. サッポロビール/ホップ抽出物でアルツハイマー病の発症を抑えることに成功
  12. 「大人ニキビ」の原因について ストレスにより、表皮細胞内で酵素「アロマターゼ」が減少することを初めて確認 「アロマターゼ」を活性化させる成分として「ホップエキス」を発見 クラシエホールディングス 2014年2月6日
  13. Modulation of breast cancer cell survival by aromatase inhibiting hop (Humulus lupulus L.) flavonoids. Monteiro R, Faria A, Azevedo I, Calhau C. The Journal of Steroid Biochemistry and Molecular BiologyEnglish版 2007年
  14. 緑のカーテン ホップのカーテンの取り組み 札幌市” (2011年10月4日). 2015年12月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。. 2015年7月30日閲覧.

外部リンク