ポール・ボキューズ

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ファイル:Paul Bocuse 2007.jpg
ポール・ボキューズ(2007年)

ポール・ボキューズPaul Bocuse, 1926年2月11日 - 2018年1月20日)は、フランスリヨン近郊にあるレストラン「ポール・ボキューズ」のオーナー3つ星シェフで、ボキューズ・ドール賞の創設者。

来歴

リヨン近郊、ローヌ県コロンジュ・オ・モン・ドールの料理人の家系に生まれる。1942年、16歳でリヨンの「レストラン・ド・ラ・ソワリー」(Restaurant de la Soierie)で見習いを始める。1944年には志願して従軍。第二次世界大戦後の1946年、リヨンの「ラ・メール・ブラジエ」(La Mère Brazier)で修行した後パリでもキャリアを積み、「ラ・ピラミッド」のフェルナン・ポワンに大きな影響を受けた。1959年に生家のレストラン「ポール・ボキューズ」を継いで、1961年には国家最優秀職人章(MOF)を取得、1965年に得たミシュランの3つ星を50年以上維持した。

パイ包み焼きや、料理人としてはじめてレジオン・ド・ヌール勲章を受勲した際、ヴァレリー・ジスカール・デスタン大統領に捧げたトリュフのスープはあまりに有名。クレーム・ブリュレを今の形にしたのも彼である。

日本での展開としては、かつてボキューズとの提携店として、銀座の「レンガ屋」や、六本木アークヒルズ内の「ル・マエストロ・ポール・ボキューズ・トーキョー」が営業していたが、その後いずれも閉店した。2007年からはひらまつと提携して再びボキューズ・ブランドによる店舗展開を行っている。

日本における弟子としては、ボキューズのスー・シェフを務めた後1972年に銀座レンガ屋開店のため来日し、現在は東京ミッドタウンの「キュイジーヌ・フランセーズJJ(cuisine francaise JJ)」のシェフを務めていたジョエル・ブリュアン(Joel Bruant)がいる。また、日本人では、「アピシウス(APICIUS)」の総料理長である小林定や、「シェ・ナカ(Chez Naka)」のオーナ・シェフ中村通武、「ラ・ベカス(La Becasse)」の渋谷圭紀、「レ・クレアシヨン・ド・ナリサワ(Les Creations de NARISAWA)」の成澤由浩などがレストラン「ポール・ボキューズ」で修行している。

2018年1月20日にリヨン近郊のボキューズにて91歳で死去[1][2]。死去時点で小野二郎(当時92歳)に次ぐ高齢3つ星シェフであった。なお、レストラン「ポール・ボキューズ」は、ポール・ボキューズ逝去後の2018ミシュランフランス版でも、3つ星を維持した。

スペシャリテ

前菜

オマール海老サラダ仕立て トリュフ風味 ソース・オロール(Salade de homard aux truffes, sauce aurore) 
新鮮なオマール海老と酸味をきかせたオーロラソースの前菜。
サーモンマリネ ディルの香り(Saumon Frais Marine a l'Aneth) 
1980年代にパリ8区にある北欧料理のレストラン「コパナーグ(Copenhague)」からポール・ボキューズが取り入れたといわれているサケのマリネ。

スープ

V.G.E.に捧げるトリュフのスープ / 1975年にエリゼ宮にて(Soupe aux truffes noires V.G.E. / Plat créé pour l'Élysée en 1975) 
1975年にフランスの料理人として初めてレジオンドヌール勲章(シュバリエ級)を受勲したポール・ボキューズが、その際のエリゼ宮での晩餐会で、時の大統領ヴァレリー・ジスカール・デスタンに捧げた伝説のスープ。
スープ鉢の上面に、懐石料理の「」のふたに見立てたパイをかぶせて焼き上げたもので、パイにナイフを入れた瞬間立ち上るトリュフの香りと、パイ自身の持つ芳香が絡みあうことで独特の効果を上げた、懐石料理をフランスで再現したものといえる。
「スープ・エリゼ」または「スープ・ヴェ・ジェ・ウ」(V.G.E.はジスカールデスタン大統領の頭文字)とも呼ばれている。
ムール貝のスープ サフランの香り(Soupe de moules de bouchot aux pistils de safran) 
ブイヤベースに似た魚のスープにたっぷりのムール貝と生クリームを加えたもの。

魚料理

ルージェ(ヒメジ類の白身魚)のポワレ ジャガイモのクルスティヤンをうろこに見立てて (Rouget en ecailles de pommes de terre croustillantes)
薄くスライスしたジャガイモをきれいに並べてうろこのように見立てたもの。
スズキのパイ包み焼き ソース・ショロン (Loup en croûte feuilletée)
フェルナン・ポワンから伝えられた料理で、スズキ一匹を魚の形そのままパイで包んで焼いたもの。ポワンの時代はシンプルなブール・ブランソース(バターソース)が添えられていたという。ボキューズは酸味の効いたショロン・ソースベアルネーズソーストマトピューレを加えたもの)を泡立てて使い、この料理を完成させた。

肉料理

牛フィレ肉のロッシーニ ペリゴール風(Filet de boeuf Rossini aux legumes de marche, sauce Perigueux) 
別名 「トゥルヌド・ロッシーニ(Tournedos Rossini)」
美食家でもあった音楽の巨匠ロッシーニが愛した料理で、オーギュスト・エスコフィエ(Auguste Escoffier)の名著「料理の手引き(Le guide culinaire)」(1903年パリ刊)にも作り方が書かれている。
フォアグラ胸肉包みとモリーユ茸(Supreme de Volaille au Foie Gras et Morilles) 
フォアグラをブレス産の鶏胸肉で包んだもので、周りに新鮮なモリーユ茸、下にはわずかにしんなりするまで茹でたホウレンソウを敷いたもの。
ブレス鶏のヴェッシー(豚の膀胱)包み ソース・フルーレットVolaille de Bresse en vessie "Mère Fillioux") 
風船のように膨らんだ膀胱のなかに、しっとりと火が通ったブレス鶏が入ったもの。

デザート

クレーム・ブリュレCrème brulée) 
「Creme」は「クリーム」または「プディング」、「brulée」は「焦げた」の意味で、こくのあるカスタードプディングの表面に砂糖をふりかけて表面をこんがり焼いたもの。
スペインカタルーニャ地方クレマカタラーナ(Crema Catalana)をもとに、1980年代に今の形にしたのはポール・ボキューズで、映画『アメリ』で有名になった。
ウ・ア・ラ・ネージュ(Œufs a la Neige 泡雪卵) 
フランス語で、「Œufs」は「卵」、「Neige」は「雪」のことで、「Neige」は卵白を泡立てた状態を表すときにも使う。
卵白に砂糖を加えて泡立てたメレンゲに火を通して固め、クレーム・アングレーズ(Crème Anglaise)に浮かべたもの。ポール・ボキューズの著書では、祖母におそわったとある。
同じようなデザートにイル・フロタント(Île Flottantte 浮島)があり、これはクリームにメレンゲをひとつだけ浮かべた盛り付けからきている。

略歴

  • 1926年2月11日: リヨン郊外コロンジュ・オ・モン・ドール(Collonges au Mont d'Or)で生まれる。
  • 1946年: リヨンの「ラ・メール・ブラジエ」(La Mère Brazier 1933年3つ星 オーナー・シェフ: ウジェニー・ブラジエ Eugénie Brazier(1895~1977)に見習いに入る。
  • 1950年: 様々なレストランで修行した後、ヴィエンヌの「ラ・ピラミッド(La Pyramide)」に入り、フェルナン・ポワンのもとで修業を続ける。
  • 1959年: 生家のレストラン「ポール・ボキューズ(Paul Bocuse)」を継ぐ。
  • 1961年: フランス国家最優秀職人章(MOF)を取得、ミシュランの1つ星を獲得
  • 1962年: ミシュランの2つ星を獲得
  • 1965年: ミシュランの3つ星を獲得
  • 1972年辻静雄がポール・ボキューズらを招き、公開技術講座を開く。
  • 1974年: 辻静雄がフランス料理の研究と日本における正しい知識の普及につとめた功績からMOF名誉賞を受けたとき、ボキューズはトロワグロ兄弟らと来日し、辻調理師専門学校において、MOFの料理とはどのようなものかについて講義した。
  • 1975年: フランス料理界における功績が評価され、レジオンドヌール勲章シュヴァリエ(Chevalier dans l'Ordre de la Legion d'Honneur)受勲
  • 1987年: レジオンドヌール勲章オフィシエ(Officier dans l'Ordre de la Legion d'Honneur)受勲、ボキューズ・ドール国際料理コンクール(Bocuse d'Or)を設立
  • 1989年: フランス国家最優秀職人(料理・レストラン部門)選抜委員長に就任
  • 1993年: フランス国家功労賞の受賞
  • 1994年: リヨンにブラッスリー「ル・ノール(Le Nord)」(フランス北西部を中心とした伝統的料理)を開店
  • 1995年: リヨンにブラッスリー「ル・スュド(Le Sud)」(南フランスを中心とした“太陽の料理”)を開店
  • 1997年: リヨンにブラッスリー「レスト(L'Est)」(フランスから東方への旅の料理)を開店
  • 2003年: リヨンにブラッスリー「ルウェスト(L'Ouest)」(フランスから西方への西インド諸島を中心としたエキゾチックな料理)を開店
  • 2004年
    • 6月3日: ポール・ボキューズ財団(la Fondation Paul Bocuse)設立
    • 6月10日: レジオンドヌール勲章コマンドゥール(Commandeur dans l'Ordre de la Legion d'Honneur)受勲
  • 2006年: 「アルジャンソン(Argenson)」開店
  • 2007年
    • 1月21日 ブラッスリー「ポール・ボキューズ・ル・ミュゼ(Paul Bocuse Le Musée)」(東京・六本木、国立新美術館内)開店
    • 9月1日 ブラッスリー「ポール・ボキューズ銀座(Paul Bocuse Ginza)」(東京・銀座、マロニエゲート内)開店
  • 2016年旭日小綬章受章
  • 2018年1月20日:リヨンにて91歳で死去

著書

  • 「リヨンの料理人 ポール・ボキューズ自伝」 晶文社 ISBN 978-4-7949-6451-9(4-7949-6451-X)
  • 「ボキューズさんちの家庭料理」 新潮社 ISBN 978-4-10-226101-9(4-10-226101-X)
  • 「ボキューズのフランス料理入門」 柴田書店 ISBN 978-4-388-05594-4(4-388-05594-8)

ほか多数

出典

関連項目

外部リンク