マディソン・バンガーナー
マディソン・カイル・バンガーナー[1](Madison Kyle Bumgarner, 1989年8月1日 - )は、アメリカ合衆国ノースカロライナ州ヒッコリー出身のプロ野球選手(投手)。左投右打。MLB・サンフランシスコ・ジャイアンツに所属。愛称は名前を短縮した「MadBum(マッドバム)」[2]。
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経歴
2007年のMLBドラフト1巡目(全体10位)でサンフランシスコ・ジャイアンツから指名を受け、プロ入り。
2008年は傘下のA級オーガスタ・グリーンジャケッツで7月28日から8月27日にかけてマイナーリーグでシーズン最長となる38イニング連続無失点を記録[3]するなど15勝3敗・防御率1.46・164奪三振の好成績でリーグ三冠を達成[3]。球団のマイナーリーグ最優秀選手に選出された[3]。
2009年のシーズン開幕前に発表されたベースボール・アメリカ誌のプロスペクトランキングにおいてチーム内で1位の評価を受けた[4]。A+級サンノゼ・ジャイアンツで開幕を迎え、AA級コネチカット・ディフェンダーズに昇格を果たし、オールスター・フューチャーズゲームの米国選抜に選出された[5]。9月8日にメジャー昇格[6]。同日、先発予定だったティム・リンスカムが登板を回避し、その代役として先発登板。20歳38日のメジャー初先発は、1958年にサンフランシスコ移転して以降の球団史上マイク・マコーミック(メジャー初先発はサンフランシスコ移転前の1956年)に次ぐ若さとなった[7]。
2010年は後半戦から先発ローテーションに定着し、7勝6敗・防御率3.00だった。テキサス・レンジャーズとのワールドシリーズでは第4戦に先発し、8回無失点の好投で勝利投手になった。
2011年は年間を通じてローテーションを守り、規定投球回のみならず、200イニングの大台に到達。成績は13勝13敗・防御率3.21だった。
2012年は16勝11敗・防御率3.37だった。デトロイト・タイガースとのワールドシリーズでは、第2戦に先発登板し、6回無失点で勝利投手となった。
2013年は31試合に登板し、13勝9敗・防御率2.77だった。7月にはオールスターゲームに選出されたが、登板はなかった。
2014年5月、6試合に登板し、5勝0敗、39イニングで防御率2.08、48奪三振などの成績を残し、自身初のピッチャー・オブ・ザ・マンスを受賞した。7月13日、本拠地AT&Tパークで行われたアリゾナ・ダイヤモンドバックス戦の6回裏に満塁本塁打を放った。5回裏にバスター・ポージーが放った満塁ホームランと合わせ、同一試合でバッテリーの2人が共に満塁ホームランを打った史上初の出来事であった。また、投手としてシーズン2本の満塁本塁打を放ったのは1966年のトニー・クロニンガー以来史上2人目の記録である。またオールスターに選出されたものの、前々日のこの日に先発登板したため、規定により登板することはできなかった。
10月1日のピッツバーグ・パイレーツとのワイルドカードゲームで、ポストシーズンでは自身初の完封勝利を挙げ、ディビジョンシリーズ進出に大きく貢献した。続くセントルイス・カージナルスとのリーグチャンピオンシップシリーズでは第1戦先発投手としてマウンドに上がり、7回2/3無失点の内容で勝利を収め、第5戦では8回3失点の粘りの投球を見せ、勝敗はつかなかったもののジャイアンツのワールドシリーズ進出に活躍したことが評価され、リーグチャンピオンシップシリーズ最優秀選手賞に選出された[8]。
カンサスシティ・ロイヤルズとのワールドシリーズでは敵地での第1戦の先発に起用されて7回3安打1失点、本拠地での第5戦では4安打完封と2勝を挙げると、中2日で迎えた最終戦では5回からリリーフ登板してロイヤルズ打線を封じ込めてセーブを挙げ、ジャイアンツを8度目のワールドシリーズ制覇に導くと同時に、自身もワールドシリーズ最優秀選手に輝いた[9][10]。自身初めて、シルバースラッガー賞と投手部門で受賞した。
2015年も先発陣の柱として32試合に登板し、218イニングを投げ防御率2.93・18勝9敗・4完投(リーグ最多タイ)・2完封と昨年からほぼ横ばいの成績だったが、奪三振/与四球(K/BB)の数値が5.09から6.00と向上し、ピッチングのクオリティが増した。得意の打撃では、2014年のサイ・ヤング賞及びMVPのクレイトン・カーショウからの決勝アーチを含む5本塁打を記録し、そのバッティングを買われ投手ながらしばしば代打としても起用された。
2016年は開幕から安定した投球を続けた。6月30日のオークランド・アスレチックス戦、MLBで40年ぶりに先発の指名打者を放棄して先発投手のバンガーナーが打席に立った[11]。前半戦終了時点で全ての登板試合で5イニング以上を投げ、4失点以下に抑えた。防御率、イニング数でリーグ2位となり、オールスターにも選出されたが、7月10日の試合に登板したことを理由に辞退した。後半戦は勝ち星が伸び悩んだが、最終的に自己最多の226.2イニングを投げ抜き、15勝9敗、いずれもキャリアハイとなる防御率2.74・251奪三振を記録した。
10月5日のニューヨーク・メッツとのワイルドカードゲームで完封勝利を挙げ、ディビジョンシリーズ進出に大きく貢献した[12]。続くシカゴ・カブスとのディビジョンシリーズでは敵地での第2戦の5回表にジョージ・コントスの代打で起用されると(結果は三塁クリス・ブライアントの失策)、本拠地での第3戦に先発、2回に投手のジェイク・アリエータに先制の3ラン本塁打を浴びるが、それ以降は粘りの投球で5回をこの3失点で抑えたものの、自身に勝敗はつかなかった。チームは1勝3敗でディビジョンシリーズ敗退に終わった。
2017年4月2日のアリゾナ・ダイヤモンドバックスとの開幕戦で、2014年から4年連続、自身4度目の開幕投手に起用されると[13]、この試合で自ら2本塁打を放った[14][15]。ピッチングでは7回を3失点で11三振を奪い[13]、4対3と1点リードで勝利投手の権利を持ってマウンドを降りたが、その後後続が同点に追いつかれ自身に勝敗はつかなかった[16][17]。 4月21日に、その前日の休日に遠征先のコロラド州デンバーでダートバイクに乗っていた際に事故を起こし左肩を負傷。肋骨打撲と左肩関節捻挫により自身初の故障者リスト入りとなった。オールスターゲーム明けの7月15日に復帰した。長期離脱の影響で17試合の先発に留まり、7年ぶりに規定到達を逃した。防御率も3.32と5年ぶりに3点台となり、味方の援護も得られず4勝9敗と大幅に負け越した。
2018年3月23日に行われたロイヤルズとのオープン戦で左手に打球を受けて降板。第5中手骨の骨折で、復帰まで6~8週間かかる見込み[18]となったため、3月29日に3月26日に遡って10日間の故障者リスト入りし、4月11日に60日間の故障者リストに移行した[19]。
選手としての特徴
投球スタイル
球種は、平均91-92mph(約146-148km/h)・最速95.1mph(約153km/h)[20]の速球(フォーシーム・ツーシーム)と、平均87mph(約140km/h)のスライダー、平均76mph(約122km/h)のカーブ、平均84mph(約135km/h)のチェンジアップ[21]。
投球フォームは角度が大きいサイド気味のスリークォーターで、特に左打者にとっては背中側からボールがくるように感じられ、非常に打ちづらい。
安定して奪三振率9前後を期待できるほど三振を奪える力がある一方、下半身が安定したフォームのおかげで、制球が優秀であり、四死球は少なく、与四球率は2前後である。
年々制球力は向上しており、2015年には一般的に3.50を超えれば優秀とされるK/BB(奪三振数を与四球数で割ったもの)で6.00を記録した。
また、開幕から先発ローテーションに定着した2011年から6年連続で200イニング以上を投げ防御率も3.4以下を維持しており、不運な事故以外では基本的に怪我にも強く大崩れしない安定感が持ち味である。
打者として
シルバースラッガー賞を2度受賞。
2014年7月13日、バッテリーを組むバスター・ポージーとアベックで満塁本塁打を記録(史上初)[22]。
2014年、シーズン2本の満塁本塁打(投手としてトニー・クロニンガー以来2人目)
2016年6月30日、先発の指名打者を放棄して9番投手として出場(40年ぶり)[23]。
2017年4月2日の開幕戦で2本塁打を記録(投手としては史上初)[24]。
詳細情報
年度別投手成績
2009 | SF | 4 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | ---- | 40 | 10.0 | 8 | 2 | 3 | 1 | 0 | 10 | 0 | 0 | 2 | 2 | 1.80 | 1.10 |
2010 | 18 | 18 | 0 | 0 | 0 | 7 | 6 | 0 | 0 | .538 | 472 | 111.0 | 119 | 11 | 26 | 2 | 5 | 86 | 1 | 1 | 40 | 37 | 3.00 | 1.31 | |
2011 | 33 | 33 | 0 | 0 | 0 | 13 | 13 | 0 | 0 | .500 | 844 | 204.2 | 202 | 12 | 46 | 5 | 5 | 191 | 0 | 1 | 82 | 73 | 3.21 | 1.21 | |
2012 | 32 | 32 | 2 | 1 | 0 | 16 | 11 | 0 | 0 | .593 | 849 | 208.1 | 183 | 23 | 49 | 6 | 7 | 191 | 3 | 2 | 87 | 78 | 3.37 | 1.11 | |
2013 | 31 | 31 | 0 | 0 | 0 | 13 | 9 | 0 | 0 | .591 | 803 | 201.1 | 146 | 15 | 62 | 6 | 6 | 199 | 6 | 0 | 68 | 62 | 2.77 | 1.03 | |
2014 | 33 | 33 | 4 | 2 | 1 | 18 | 10 | 0 | 0 | .643 | 873 | 217.1 | 194 | 21 | 43 | 3 | 6 | 219 | 4 | 1 | 81 | 72 | 2.98 | 1.09 | |
2015 | 32 | 32 | 4 | 2 | 2 | 18 | 9 | 0 | 0 | .667 | 869 | 218.1 | 181 | 21 | 39 | 2 | 7 | 234 | 1 | 0 | 73 | 71 | 2.93 | 1.01 | |
2016 | 34 | 34 | 4 | 1 | 1 | 15 | 9 | 0 | 0 | .625 | 912 | 226.2 | 179 | 26 | 54 | 0 | 8 | 251 | 4 | 1 | 79 | 69 | 2.74 | 1.03 | |
2017 | 17 | 17 | 1 | 0 | 0 | 4 | 9 | 0 | 0 | .308 | 450 | 111.0 | 101 | 17 | 20 | 3 | 3 | 101 | 0 | 0 | 41 | 41 | 3.32 | 1.09 | |
MLB:9年 | 234 | 231 | 15 | 6 | 4 | 104 | 76 | 0 | 0 | .578 | 6112 | 1508.2 | 1313 | 148 | 342 | 28 | 47 | 1482 | 19 | 6 | 553 | 505 | 3.01 | 1.10 |
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- 2017年度シーズン終了時
- 各年度の太字はリーグ最高
表彰
- シルバースラッガー賞:2回(2014年、2015年)
- ピッチャー・オブ・ザ・マンス:2回(2014年5月、8月)
- リーグチャンピオンシップシリーズ最優秀選手:1回(2014年)
- ワールドシリーズ最優秀選手:1回(2014年)
- ベーブ・ルース賞:1回(2014年)
- ウィリー・マック賞:1回(2014年)
- Sports Illustrated Sportsperson of the Year:1回(2014年)
記録
- MLBオールスターゲーム選出:4回(2013年 - 2016年)
- 開幕投手:4回(2014年 - 2017年)
- ワールドシリーズ通算防御率:0.25(歴代1位、25イニング以上の投手が対象)
- 1シーズンでのポストシーズン投球回:52 2⁄3(2014年、歴代1位)
背番号
- 40 (2009年 - )
脚注
- ↑ NHKなど一部メディアでは「バムガーナー」と表記されることがある。
- ↑ Chris Haft (2017年8月24日). “Giants Players Weekend nicknames explained” (英語). MLB.com. . 2018年4月12日閲覧.
- ↑ 3.0 3.1 3.2 “Sandoval and Bumgarner named inaugural Minor League Player and Pitcher of the Year” (英語). MLB.com (2008年9月23日). . 2009年9月16日閲覧.
- ↑ Andy Baggarly (2009年1月28日). “San Francisco Giants: Top 10 Prospects” (英語). BaseballAmerica.com. . 2009年9月16日閲覧.
- ↑ “U.S. roster for Futures Game” (英語). ESPN (2009年7月2日). . 2009年9月16日閲覧.
- ↑ “San Francisco Giants Transactions September 2009” (英語). MLB.com. . 2009年9月16日閲覧.
- ↑ Chris Haft (2009年9月9日). “Bumgarner solid, but Giants lose ground” (英語). MLB.com. . 2009年9月16日閲覧.
- ↑ MVPのバムガーナー「何も不安はない」と頂上決戦に自信 スポーツニッポン 2014年10月17日閲覧
- ↑ 記録ずくめのジ軍バムガーナー チームメートも「人間離れ」 スポーツニッポン 2014年10月30日閲覧
- ↑ ジ軍バムガーナーがMVP 5回無失点 日刊スポーツ 2014年10月30日閲覧
- ↑ “No DH for Bumgarner: Ace to bat vs. A's” (英語). MLB.com (2016年6月30日). . 2016年8月14日閲覧.
- ↑ Alex Pavlovic (2016年10月5日). “Late Heroics Lift Giants Over Mets in NL Wild-Card Game” (英語). NBC Bay Area. . 2016年10月12日閲覧.
- ↑ 13.0 13.1 Haft Chris (2017年4月2日). “Giants' Madison Bumgarner strikes out 11” (英語). MLB.com . 2018年4月12日閲覧.
- ↑ Posnanski Joe (2017年4月3日). “Madison Bumgarner homers on Opening Day” (英語). MLB.com . 2018年4月12日閲覧.
- ↑ “バムガーナーがメジャー史上初、開幕投手による2本塁打”. CYCLE. (2017年4月4日) . 2017年4月8日閲覧.
- ↑ Haft Chris (2017年4月3日). “Mark Melancon can't close out Giants debut” (英語). MLB.com . 2018年4月12日閲覧.
- ↑ “San Francisco Giants at Arizona Diamondbacks Box Score, April 2, 2017” (英語). Baseball-Reference.com. . 2017年4月8日閲覧.
- ↑ Manny Randhawa (2018年3月25日). “Bumgarner has surgery on hand, out 6-8 weeks” (英語). MLB.com. . 2018年4月12日閲覧.
- ↑ MLB公式プロフィール参照。
- ↑ 2015年記録
- ↑ FanGraphs PITCHf/x
- ↑ “ジ軍バッテリーが初の快挙 揃って満塁弾 - MLBニュース : nikkansports.com”. 日刊スポーツ (2014年7月14日). . 2017年7月29日閲覧.
- ↑ “バムガーナー 大リーグで40年ぶりのリアル二刀流”. 日刊スポーツ (2016年7月1日). . 2017年7月29日閲覧.
- ↑ “投手が開幕戦で2発!バムガーナーがメジャー史上初の快挙”. スポーツニッポン (2017年4月3日). . 2017年7月29日閲覧.
関連項目
外部リンク
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- Madison Bumgarner stats MiLB.com (英語)
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