伊豆急行2100系電車

提供: miniwiki
2018/8/12/ (日) 23:51時点におけるAdmin (トーク | 投稿記録)による版 (1版 をインポートしました)
移動先:案内検索
第29回(1986年
ファイル:Izukyu-2100-Resort-21-2nd.jpg
2100系「リゾート21」(2次車)
ファイル:Izukyu-2100-Resort-21-4th-Kurofune.jpg
2100系「黒船電車」(4次車)
ファイル:Izukyu-2100-Alpha-Resort-21.jpg
2100系「アルファ・リゾート21」(5次車)下田方
ファイル:Izu Kyūkō 2100 series EMU 022.JPG
2100系「アルファ・リゾート21」(5次車)東京方
ファイル:Resort21 Kinme Densha.jpg
2100系「Izukyu KINME Train」(3次車)

伊豆急行2100系電車(いずきゅうこう2100けいでんしゃ)は、伊豆急行が保有する電車。「リゾート21」の愛称がある。

第29回(1986年)鉄道友の会ブルーリボン賞受賞。

概要

1985年(昭和60年)7月20日に営業運転を開始した。先頭車に展望席を設置し、海側の景色を視認しやすくする目的で座席配列が独特になっているなど、普通列車用ではあるが観光客の利用を見込んだ豪華な設備が売りとなっている。当初計画では100系の機器流用車である1000系第3編成を東急車輛製造に発注していたが、方針を転換し、社内全体での検討により本形式が開発された。

車両の海側と山側でデザインが異なり、側窓は海側は展望を考慮した大型の連続窓、山側は当時日本の鉄道車両ではほとんど採用例のなかったベクワラットタイプ(中折れひんじ式)となった。塗色も当初メーカーから提案されていた帯を巻くカラーリングは廃案となり、左右非対称のデザインを強調した前面で海側の赤帯と山側の青帯が斜めに入る塗装となっている。

8両編成5本の計40両が製造され、R-1からR-5までの編成番号が与えられている。R-1・2編成は一部の制御装置や主電動機を100系から流用した。1988年(昭和63年)登場のR-3編成以降は足回りを含め完全な新製車両である。制御方式は全編成とも抵抗制御である。ブレーキシステムは発電ブレーキ併用電磁直通ブレーキ (HSC-D) であり、合わせて抑速ブレーキも装備する。主電動機はTDK806/5-A、歯車比は5.31で100系よりも高速向きに設定された。

2次車(R-2編成)は1986年(昭和61年)に落成した際、まず東京急行電鉄に搬入され、同年6月18日から22日までの5日間イベント列車として、新玉川線(当時)・池上線を除く鉄道線各線を走行した。

3次車(R-3編成)も2次車同様、1988年の落成後すぐに、東急各線を走行している。R-3編成については、伊豆急への搬入後間もない同年4月20日に快速「リゾートライナー21」で私鉄車両として初めて東海道本線東京駅まで入線し、これが後述する特急リゾート踊り子」へと発展する。

東海道本線・伊東線乗り入れ用の保安装置としてATS-P形をR-4・R-5編成は新製当時から装備しており、R-1 - R-3編成は伊東線へのATS-P導入時に装備した。1990年(平成2年)に落成した4次車(R-4編成)は「リゾート21EX」となり、集電装置(パンタグラフ)を菱形から下枠交差式に変更し、前面を大きな一枚窓にするなどの仕様変更点がある。特筆点は横3列座席のグリーン車「ロイヤルボックス」(サロ2180形)を落成当初から連結したことで、寝台車のようなハイルーフを採用し、トンネルに入ると特殊塗装とイルミネーションによる演出で天井が星空になる工夫がなされている。この仕様が乗客から好評だったことから1991年(平成3年)にR-1 - R-3編成にも内装に小変更を加えて「ロイヤルボックス」が増結され、星空天井も採用された。

また、1993年(平成5年)に落成した最終編成の5次車(R-5編成)については、車体と塗装を車体側面で斜めに赤帯と青帯が交互に入るものに変更し、リゾートシリーズに+αという意味で「アルファ・リゾート21」の愛称とした。この編成では「ロイヤルボックス」の特殊照明が星空から海底に変更された。

2004年(平成16年)にはR-1編成が下田開港150周年を記念して黒船を模した黒色に塗装が変更され、車内で下田開港当時の資料を展示した「黒船電車」としてリニューアルされた。この編成は2006年(平成18年)3月10日をもって定期営業運転を終了し、同月11日・12日・18日・19日に「さよなら運転」と撮影会が実施された。R-1編成の運転終了を前に、後継車両としてR-4編成が2代目「黒船電車」として塗装変更された。

R-1 - R-4編成では新製時から前面に字幕式の行先表示器が設置されている。R-5編成は落成当初設置されていなかったが、2007年(平成19年)にLED式のものが設置された。表示は特急「リゾート踊り子」の東京行きの場合「特急 東京」と「リゾート踊り子」を交互に表示する。なお、その際に屋根部分は青色に塗装された。側面に行先表示器は設置されていないが、特急運用時は各車両に行先標が掲出され、前面にはR-4までの編成では台形状のヘッドマークが掲出される。R-5編成は前記したように列車名も行先表示器に表示するためヘッドマークは掲出されない。

普通車の客用ドアはR-4編成までは引き戸であったが、R-5編成ではプラグドアに変更されドアチャイムも設置された。「ロイヤルボックス」は全車両4枚折り戸である。

運転台は全編成とも主幹制御器とセルフラップ式ブレーキ弁が個別の2ハンドル式である。主幹制御器はR-4編成までは縦軸タイプであったが、R-5編成では横軸タイプが採用された。速度計はR-3編成まではアナログ式、R-4・R-5編成はデジタル式である。

車内

普通車は、海側に窓向きバケット型ロングシート、山側は2人がけボックス席が並んでいるのが基本である。海側車端部にはグループ客の利用を想定した4人がけボックス席がある。ただしR-5編成の一部の車両は全席4人がけボックスシートであり、それ以外の車両も海側のシートにはボックスシートと同タイプの2人掛け座席を窓向きに並べて配置している。いずれも固定式であり、回転やリクライニング機構は装備されていない。両先頭車には階段状になった展望席があり、運転士の頭越しに前面展望を楽しむことができる[1]

「ロイヤルボックス」は海側に1人がけリクライニングシート、山側に2人がけリクライニングシートが設置されている。1人がけシートは回転させる際に45°ずつの固定が可能で、たとえば海側にシートを向けるということも可能である。普通車との間には仕切り扉が設けられており、営業運転中は客室内の通り抜けができないようになっている。

その他、特急運用時に使用される車内案内表示器が各車両の車端部(展望席は運転席背後のみ)に設置されている。

各編成デッキには天井に小窓が設置されている。またR-5編成は喫煙室を設置していたが、全面禁煙化にともない使用停止となった。

トイレは8両編成の3, 5, 7号車、7両編成の3, 6号車(R-3編成は3号車のみ)に設置され、汚物処理装置はカセット式が採用されている。

使用列車

主に熱海 - 伊東 - 伊豆急下田間の普通列車に使用される。また、土曜日・休日および繁忙期には東京始発の特急「リゾート踊り子」や、このほか、毎年元日の早朝には「伊豆初日の出号」(品川→伊豆急下田間の片道のみ運転)などにも使用されている。立川発着の特急「リゾート踊り子」91・92号や高尾発着で新宿経由のリゾート踊り子で使用されたこともあったが、利用率が悪く早々に設定されなくなった。

特急「リゾート踊り子」などに使用される際には全車指定席であり、「ロイヤルボックス」を連結する。「ロイヤルボックス」は普通列車でも連結されていたが、2003年3月31日をもって廃止された[2]。それ以来、普通列車では7両編成で運行されている。なお、普通列車としてJR伊東線内を運行する場合の「ロイヤルボックス」は、グリーン料金と同額の料金を徴収するもののグリーン車扱いではなく(時刻表にグリーン車マークはない)、「青春18きっぷ」でも別途料金を支払えば乗車できた。

2009年5月16日から17日にかけて、静岡県下田市で開催された「黒船祭」にあわせ、南武線立川 - 伊豆急下田間でR-4編成(ロイヤルボックス非連結の6両編成)により、臨時特急「リゾート踊り子」91・92号が運行された。運行経路は「南武線#優等列車」を参照。南武線には2007年に武蔵溝ノ口駅で車両展示を実施した際に初めて入線し、その後団体専用列車として数度入線しているが、多客臨時列車として南武線を走行したのはこれが最初の事例である。なお、2009年は7月11日・12日と9月26日・27日にも運行された。

また、2010年3月13日には横須賀線武蔵小杉駅開業を記念して新宿 - 伊豆急下田間でR-4編成(7両編成)により、臨時特急「リゾート踊り子」65号が運行され、同時に武蔵小杉駅において出発式が開催された。なお、同編成の新宿駅入線はこれが最初の事例である。

近年の動向

第1 - 3次車(R-1 - R-3編成)は製造されてから20年程度であるにもかかわらず、沿線の潮風による塩害の影響などで車体の腐食が目立ち、また、R-1・R-2編成の一部車両の機器類は100系の廃車発生品を使用していたため足回りの老朽化も進んでいたことから、R-1・R-2編成については8000系への置き換えにより順次廃車・解体された。前記の通り、1次車は2006年3月10日に定期運用を終了した(一部中間車はR-2編成と組替を実施)。

2009年5月31日には、R-2編成の「さよなら運転」が実施された。この時のさよなら運転はR-1編成の事例とは異なり、下り伊東発伊豆急下田行快速列車のみの設定で上り列車の設定はなかった。R-1編成のさよなら運転時と同様に伊東駅出発後に乗車証明書が配布された。

R-3編成についても置き換え対象に上がっていたものの計画が中止となり、2008年10月に全般検査を実施し、窓枠部を車体色と同一塗色に変更・屋根塗装の変更・客室内自動扉の動作検出方式をマットスイッチ式からセンサー式に変更・床材交換などの更新が行われた。長らくR-3編成が唯一のオリジナルカラーの車両として運行していたが、2011年8月18日にR-3編成の車体カラーのリニューアルのため「リゾート21オリジナルカラーさよなら運転」を実施、R-1編成・R-2編成のさよなら運転等と同様に伊東駅出発後に記念乗車証が配布された。リニューアル後の車体カラーは100系車両のカラーであるハワイアンブルーに変更され、「リゾートドルフィン号」という愛称が付けられた。2011年10月22・29日にデビュー記念臨時快速列車として運転した後、普通列車として運行される。その後、2016年7月には同年8月下旬からの定期検査により塗装変更され、「リゾートドルフィン号」としての運行は終了することが発表され、同年8月21日にはリゾートドルフィン号および、後述のアルファ・リゾート21としての運行終了を記念したイベント「リゾート21・フェスタ」が実施されることが発表された[3]。フェスタ終了後に実施された定期検査により、同編成は伊豆を代表する特産品である金目鯛をPRする地域プロモーション電車として、赤を主体として鉄道車両では珍しいシルバーグレーのグラデーションを施した塗装へと変更され、こちらは「Izukyu KINME Train」という愛称が付けられた。2017年2月4日より営業運転に復帰している[4][5][6]

R-5編成(アルファ・リゾート21)は2016年2月10日より同年7月までの予定で、2015年でリゾート21が運転開始から30周年を迎えたのを記念して、2011年まで運行されたオリジナルカラーである前面で海側の赤帯と山側の青帯が斜めに入る塗装をモチーフとしつつ、白を基調として現代的にアレンジされた塗装へと変更された[7]。なお、R-5編成については同年10月に、2017年7月より横浜 - 伊豆急下田間で運行を開始する予定の水戸岡鋭治デザインの観光列車「THE ROYAL EXPRESS」への改造工事を受けることが発表され[8][9]、フェスタ実施後、R-5編成は同年9月までこの塗装で運行された後運用を離脱し、翌10月には改造のため東急長津田車両工場へと甲種輸送された[10]。そして、2017年7月21日より「THE ROYAL EXPRESS」の運行を開始した[11][12]

なお、R-1 - R-3編成に連結されていた「ロイヤルボックス」はすでに廃車・解体されている。

ラッピング車両

ファイル:Izukyu2100 natsuiro.jpg
ラッピングされたR-5編成

2012年7月29日に開催された「伊豆急電車まつり2012」にて、下田を舞台にしたテレビアニメ夏色キセキ』のラッピングを施したアルファ・リゾート21が公開され、翌30日より10月31日まで運行、[13]10月25日から31日にかけてはラストラン企画も行われた[14]。同編成はそれに先んじて6月より同作品のメインキャラクター4人による車内放送を期間限定で実施した[15]

2014年7月~8月の2か月間、テレビアニメくつだる。』のラッピングを施したアルファ・リゾート21が運行された。

脚注

  1. 全席自由の普通列車として運用される際は安全上の観点から展望席部分の立席利用はできず、車内放送でもこの旨の注意喚起が行われている。
  2. 「鉄道記録帳2003年3月」、『RAIL FAN』第50巻第6号、鉄道友の会、2003年6月1日、 18-19頁。
  3. 伊豆急「リゾート21・フェスタ」開催決定!~リゾート21の3編成が揃う最後の撮影会など(8/21・日)~ (PDF) - 伊豆急行、2016年7月15日
  4. 沿線市町と共同で伊豆の特産品をPRリゾート21・地域プロモーション電車平成29年2月から運転開始 (PDF) - 伊豆急行、2016年12月26日
  5. マイナビニュース (2016年12月27日). “伊豆急行「リゾート21」3次車、赤い金目鯛電車に - 沿線各市町が車内でPR”. . 2017閲覧.
  6. マイナビニュース (2017年3月8日). “「伊豆急キンメトレイン」展示、伊豆高原駅で「伊豆急でんしゃまつり」開催”. . 2017閲覧.
  7. リゾート 21 デビュー30 周年記念 第2弾企画アルファ・リゾート 21 期間限定塗装にて運転開始2016 年 7 月までの半年限定! (PDF) - 伊豆急行、2014年3月6日
  8. 2017年夏、横浜と伊豆を結ぶ定員数国内最大級の観光列車が誕生アルファ・リゾート21を改造し、上質な空間で魅力的な車内サービスを提供 (PDF) - 伊豆急行・東京急行電鉄共同ニュースリリース、2016年10月7日
  9. 横浜と伊豆を結ぶ観光列車の名称・デザインが決定! ~美しさ、煌めく旅 「THE ROYAL EXPRESS」~ 列車運行開始にあわせて、横浜駅カフェ・ラウンジ新設や、下田東急ホテルリニューアルを実施 (PDF) - 伊豆急行・東京急行電鉄共同ニュースリリース、2016年11月17日
  10. 伊豆急「アルファ・リゾート21」が甲種輸送される - 『鉄道ファン』交友社 railf.jp 鉄道ニュース、2016年10月6日
  11. ~伊豆観光列車「THE ROYAL EXPRESS」~ 「美しさ、煌めく旅」を提供するクルーズプランの概要を発表  列車内の料理・飲料監修者も決定 (PDF) - 伊豆急行・東京急行電鉄共同ニュースリリース、2017年3月1日
  12. 伊豆観光列車「THE ROYAL EXPRESS」7月21日運行開始 (PDF) - 伊豆急行・東京急行電鉄共同ニュースリリース、2017年5月26日
  13. 【伊豆急行】"アルファ・リゾート21" 「夏色キセキ」仕様へ 鉄道ホビダス(RMニュース) 2012年8月6日、同年10月24日閲覧。
  14. 「夏色キセキ仕様 アルファリゾート21」ラストラン特別企画実施 鉄道ホビダス(RMニュース) 2012年11月1日閲覧。
  15. 夏色キセキ駅長|伊豆急「オモシロ駅長」情報! 伊豆急公式サイト 2012年7月31日閲覧。

参考文献

  • 鈴木隆文「現有私鉄概説 伊豆急行」『鉄道ピクトリアル』48巻4号(通巻652号・1998年4月臨時増刊号)、鉄道図書刊行会。
  • 寺田裕一「ローカル私鉄車輌20年 路面電車・中私鉄編」(2003年 JTB
  • 『鉄道ピクトリアル』1985年9月号 No.453「新車紹介 伊豆急行2100系」、1987年9月号 No.484「小集 伊豆急行」

外部リンク

テンプレート:伊豆急行の車両