内部観測

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内部観測 (internal measurement) とは、観測に関するとらえ方の一つで、(従来、観測について考察する時一般に暗黙裡に仮定されていた)外部からすべてを一瞬で見ることができるような観測者による観測ではなく、物質が相互作用を通して相手を検知する行為のこと[1]

代表的な研究者として松野孝一郎郡司ペギオ幸夫、辻下徹がいる。

概説

以下、松野孝一朗(2000)による定義を紹介する。

経験を「間断のない観測」から成り立つものとする。この「間断のない観測」は、経験世界においてのみ生じる。経験世界において、任意の個物が他の個物と関係を持つならば、これは「他の個物を同定する観測」である。ただし、この観測は他の個物から受ける影響特定可能であるときに限る。また、この「他の個物を同定する観測」は経験世界において間断ない。このように、任意の個物がどの別の個物を観測しても、その観測が「間断のない観測」を内蔵するような観測を内部観測と呼ぶ。[2]

また松野孝一郎は次のようにも説明した。

物質世界内にあってそれぞれが相互作用するとは、その相手が何であるかの同定が先ず前提となる。相互作用には同定、識別という行為が必ず付随する。内部観測とは 相互作用に不可避となる同定、識別行為を指す。[1]

それに対して観測をしても相互作用が誤差の範囲内であるとする観測を「外部観測」と呼んでいる。分野によっては外部観察という。社会調査法では内部観測を内部関与という。

内部観測の例

ここでは、松野孝一朗(2000)より、内部観測の例として「説明」を紹介する。

説明の際には、「説明するための問題案件を抽出、特定、そして それを説明する」必要がある。対話において、説明される相手は 非難、批判、条件付き同意、称賛、絶賛、またはそれらの混合したものになるが、 その際に、説明される相手も同様に、 「説明するための問題案件を抽出、特定、そしてそれを説明する」という説明の連鎖がある。

このとき、 内部観測の「他の個物を同定する観測」は「問題案件を与えること」に、 内部観測の「間断のない観測」は「説明」にそれぞれ対応する。

内部観測はものごとの説明原理ではなく、 説明されるべき案件を特定し、それを記述するための手段であることを付記しておく。

歴史

内部観測は松野孝一郎が発見し、郡司ペギオ幸夫が開拓した。その後、辻下徹により、内部観測についての数理が模索された。[3]

内在物理学との関係

オットー・レスラーによる内在物理学は、内部観測と良く似た考え方であるが、内部観測は事前・事後の論理的非対称性を持つ点で異なる[4]

内部観測と数理

辻下徹(1998)によると、高次元圏論と呼ばれる圏論の一般化は、内部観測の不定性を考えるための隠喩となる数理を構築できる可能性を持つ。ただし、ここでの不定性とはランダムネスのことではなく、選択肢すら存在しないようなレベルのもののことである。 高次元圏論と内部観測に関するサーベイは辻下徹 (1999a)を参照のこと。

脚注

参考文献

  • 井庭崇,福原義久 『複雑系入門: 知のフロンティアへの冒険』 NTT出版、Japan、1998年。ISBN 4871885607。
  • 松野孝一郎 『内部観測とは何か』 青土社、Japan、2000年。
  • 辻下徹「複雑系の数理 高次元圏論序説」、『Computer today』第15巻第3号、サイエンス社、Japan、1998年、 25-35頁。

関連項目

外部リンク