労働関係調整法

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労働関係調整法
日本の法令
通称・略称 労調法(ろうちょうほう)
法令番号 昭和21年9月27日法律第25号
効力 現行法
種類 労働法
主な内容 労働争議の調停・仲裁など
関連法令 労働基準法労働組合法日本国憲法など
条文リンク 労働関係調整法
施行令
労調法関連通達集
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労働関係調整法(ろうどうかんけいちょうせいほう、昭和21年法律第25号、英語: Labor Relations Adjustment Act[1])は、労働関係の公正な調整を図り、労働争議を予防し、又は解決するための手続きを定めた法律である。前身は、労働争議調停法

構成

  • 第一章 総則(第1条-第9条)
  • 第二章 斡旋(第10条-第16条)
  • 第三章 調停(第17条-第28条)
  • 第四章 仲裁(第29条-第35条)
  • 第四章の二 緊急調整(第35条の2-第35条の5)
  • 第五章 争議行為の制限禁止等(第36条-第43条)
  • 附則

概要

いわゆる労働三法の一つで、その目的は「労働組合法と相俟つて、労働関係の公正な調整を図り、労働争議を予防し、又は解決して、産業の平和を維持し、もって経済の興隆に寄与すること」である(第1条)。具体的には大規模な争議行為ストライキロックアウト)が発生して社会生活に影響を与えるような場合、労働委員会による裁定を行うことを規定している。

この法律は、日本国憲法公布以前の、1946年9月27日に公布された。そのため、文体は口語体であるものの、一部旧仮名遣い(例えば「行ふ」、「ゐる」、「差し支へない」、「ラヂオ」など)が混在する。また、法改正の結果、第12条には、漢字表記の「斡旋員」という文言と、ひらがな表記の「あつせん員」という文言が併存している。

なお労働組合は、労働組合法第2条・第5条への適合性を問わず、労働委員会からあっせん等のサービスを受けることは可能である。これは本法が、あっせん等の手続きにあたって労働委員会の資格審査を必要としていないからである。

定義

  • 「労働争議」とは、労働関係の当事者間において、労働関係に関する主張が一致しないで、そのために争議行為が発生している状態又は発生するおそれがある状態をいう(第6条)。
    • 紛争の種類としては「権利紛争」(裁判所における訴訟手続になじむもの)も「利益紛争」(当事者の合意によってのみ解決されうるもの)も含まれるが、労働組合又は労働者集団が当事者となっているもの(集団的紛争)に限られる。「争議行為が発生するおそれ」とは、実際上は集団的労使関係の当事者間で意見の対立があれば当然に争議行為発生のおそれがあるものとして扱われる。
  • 「争議行為」とは、同盟罷業怠業作業所閉鎖その他労働関係の当事者が、その主張を貫徹することを目的として行う行為及びこれに対抗する行為であって、業務の正常な運営を阻害するものをいう(第7条)。
  • 公益事業」とは、次に掲げる事業であって、公衆の日常生活に欠くことのできないものをいう(第8条1項)。これら以外の事業であっても内閣総理大臣は、国会の承認を経て、業務の停廃が国民経済を著しく阻害し、又は公衆の日常生活を著しく危くする事業を、1年以内の期間を限り、公益事業として指定することができる(第8条2項)。
  1. 運輸事業
  2. 郵便信書便又は電気通信の事業
  3. 水道電気又はガスの供給の事業
  4. 医療又は公衆衛生の事業

義務・努力義務・制限

本法は、労働関係の当事者が、直接の協議や団体交渉によって、労働条件その他労働関係に関する事項を定め、又は労働関係に関する主張の不一致を調整することを妨げるものでないとともに、又、労働関係の当事者が、かかる努力をする責務を免除するものではない(第4条)。また、労働関係の当事者は、互に労働関係を適正化するように、労働協約中に、常に労働関係の調整を図るための正規の機関の設置及びその運営に関する事項を定めるように、かつ労働争議が発生したときは、誠意をもって自主的にこれを解決するように、特に努力しなければならない(第2条)。

争議行為が発生したときは、その当事者は、直ちにその旨を労働委員会又は都道府県知事に届け出なければならない(第9条)。公益事業に関する事件につき関係当事者が争議行為をするには、その争議行為をしようとする日の少なくとも10日前までに、労働委員会及び厚生労働大臣又は都道府県知事にその旨を通知しなければならない(第37条1項)。工場事業場における安全保持の施設の正常な維持又は運行を停廃し、又はこれを妨げる行為は、争議行為としてでもこれをなすことはできない(第36条)。

労働委員会による調整

労働委員会による争議調整の基本原則は「労使自治」であり、労使の対立については自主的交渉で解決すべきとの考えから、解決の強制はしない建前となっている。したがってこれらの手続きを使うか否かは当事者の任意であり、また提示された解決案を容れるか否かも当事者の任意とされる。

  • 斡旋(あっせん)(第10条~第16条)
    あっせん員(労働委員会の会長が指名)が、関係当事者の中間に立ち、双方の主張の要点を確かめ、事件が解決されるように媒介役を務める。関係当事者の双方若しくは一方の申請又は職権に基いて行われる。
    あっせん員があっせん案を提示するかどうかは任意であり、提示したとしても拘束力はない。
    手続が簡易で機動的なため、争議調整の大部分の事件はあっせんである。厚生労働省「平成27年労働争議統計調査の概況」によれば、平成27年に労働委員会が関与した全127件のうち123件があっせんであった[2]
  • 調停(第17条~第28条)
    調停委員会(公労使の三者構成)が関係当事者の意見を聴いた上で調停案を作成して、これを関係当事者に示し、その受諾を勧告する。関係当事者の双方若しくは一方の申請(一方からの申請の場合は労働協約の定めに基づくことが必要)に基いて行われる。公益事業に関する事件の調停については関係当事者の一方の申請又は職権に基づいて行われる。
    調停委員会は調停案を作成し提示するが、拘束力はない。
  • 仲裁(第29条~第35条)
    仲裁委員会(公益委員のみ)が労働争議の実情を調査した上で裁定を下す。関係当事者の双方若しくは一方の申請(一方からの申請の場合は労働協約の定めに基づくことが必要)に基いて行われる。
    仲裁裁定は書面に作成され、労働協約と同一の効力を有する。

緊急調整

内閣総理大臣は、事件が公益事業に関するものであるため、又はその規模が大きいため若しくは特別の性質の事業に関するものであるために、争議行為により当該業務が停止されるときは国民経済の運行を著しく阻害し、又は国民の日常生活を著しく危くするおそれがあると認める事件について、そのおそれが現実に存するときに限り、緊急調整の決定をすることができる(第35条の2)。緊急調整の決定をなした旨の公表があったときは、関係当事者は、公表の日から50日間は、争議行為をなすことができない(第38条)。緊急調整の決定については、行政不服審査法による不服申立てをすることができない(第35条の5)。

脚注

  1. 日本法令外国語訳データベースシステム; 日本法令外国語訳推進会議 (2009年6月16日). “日本法令外国語訳データベースシステム-労働関係調整法”. 法務省. p. 1. . 2017閲覧.
  2. 平成27年労働争議統計調査の概況厚生労働省

関連項目

外部リンク


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