国際原子力機関

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国際原子力機関
International Atomic Energy Agency
(IAEA)
団体種類 国際機関
設立 1957年
所在地  オーストリア ウィーン
Wagramer Strasse 5, A-1400 Vienna, Austria
主要人物 日本の旗天野之弥(事務局長)
活動内容 原子力技術の平和的利用の促進、軍事転用の監視・防止
ウェブサイト http://www.iaea.org/
テンプレートを表示
ファイル:IAEA members.svg
IAEA加盟国 (2009年4月1日):[1]
  加盟国
  脱退国(北朝鮮
  非加盟国
  地域(台湾西サハラ
*Approved states : IAEA総会ですでに加盟が承認されていて、必要な手続きさえ取れば加盟国になれる状態。
ノーベル賞受賞者ノーベル賞
受賞年:2005年
受賞部門:ノーベル平和賞
受賞理由:原子力エネルギーの平和的利用に対する貢献

国際原子力機関(こくさいげんしりょくきかん、: International Atomic Energy Agency、略称:IAEA)は、国際連合傘下の自治機関[2]である。本部はオーストリアウィーンにあり、トロント東京の2ヶ所に地域事務所、ニューヨークジュネーヴに連絡室がある。

目的

原子力の平和的利用の促進。原子力の軍事的利用に転用されることを防止。

創立の背景

  • 1942年 アメリカ合衆国は1942年、エンリコ・フェルミらによって、シカゴ大学で世界最初の原子炉「シカゴ・パイル1号」を完成させ、核分裂の連鎖反応の制御に史上初めて成功した。
  • 1945年 アメリカ合衆国が広島、長崎に原子爆弾を投下して約10万6000人が死亡、約11万人が負傷した。
  • 1948年 アメリカが太平洋で核実験を行った。
  • 1949年 ソビエト連邦が核開発能力を備え、以後アメリカはより強力な水素爆弾の開発を進める。
  • 1952年 アメリカ合衆国が水素爆弾の最初の爆発実験に成功した。
核兵器の大型化が進んだが、大陸間弾道ミサイルではなく航空機による爆撃を想定していたため、大型化は核兵器の輸送を困難にした。このため、アメリカ合衆国は西側諸国への核兵器配備を進める必要があった。
  • 1953年12月8日アメリカ合衆国大統領ドワイト・D・アイゼンハワーによる国際連合総会演説「平和のための核」(Atoms for Peace)。「アメリカ合衆国が追求するのは、単なる、軍事目的での核の削減や廃絶にとどまらない。この兵器を兵士の手から取り上げるだけでは十分でない。軍事の覆いをはぎとり、平和の技術に適合させるための方法を知る人々の手に渡されなければならない。」と主張した。この中で同盟・友好国に対する100キログラムの濃縮ウラン供与と、機関創設を提唱。真の目的はソビエト連邦やイギリスに先行された核体制の主導権奪還だった。
  • 1954年 第五福竜丸事件を受け、アメリカ合衆国がさらなる核開発を進めていること、とくに表面的には核削減や廃絶を主張していたアメリカ合衆国が水素爆弾の実験を行っていることが明るみに出ると、国際的に反核運動が高まった。特にアメリカ合衆国が冷戦における地理的にも重要な国と位置づけていた日本での反核運動は、日本の共産化を危惧するアメリカ合衆国と、反米思想に傾倒させたいソビエト連邦双方によるプロパガンダ合戦に利用された。
このような背景のもと、同年、ソビエト連邦がオブニンスク原子力発電所の運転を開始した。西側諸国、東側諸国それぞれの中で、国同士の原子力協定の締結の動きが進み、1954年7月には国連において原子力に関する国際会議、第一回ジュネーブ会議が開催された。
同時期に西側諸国では、イギリス、カナダ、フランス、ノルウェー、日本などで運転が開始されたが、西側諸国の中で最初に商用原子力発電所となったのはイギリスのコールダーホール一号炉を待たなければならなかった。当時、原子力発電所は経済的コストが高く、政府の支援なしでは建設運転することが困難であったが、東西冷戦の中、核開発、核配備を行うことは特に重要であり、米国の同盟国への原子力技術の移転は積極的に行われた。
  • 1957年 国際原子力機関、米国主導で設立。

沿革

1953年アメリカ合衆国大統領ドワイト・D・アイゼンハワーによる国際連合総会演説「平和のための核」を契機とし、1957年に創立された。

事務局長は、1981年から1997年までハンス・ブリックス、その後はモハメド・エルバラダイ。2009年12月より天野之弥が就任した。任期は4年。

2013年スワジランドの加盟により、加盟国は159ヶ国となった。なお北朝鮮は1974年に加盟し、1994年に脱退している。

加盟国

指定理事国
その他加盟国

構成

主な組織としては以下の三つが存在する。

  • 総会: General Conference
  • 理事会: Board of Governors
  • 事務局: Secretariat

総会

総会(: General Conference)は全ての加盟国の代表者から成り、理事国の選出、新規加盟の承認、予算の承認などを行う。

理事会

理事会(: Board of Governors)は35ヶ国の理事国によって構成され、機関の任務遂行を行う。

  • 指定理事国(designated members)
指定理事国は、前任の理事会が原子力に関する技術の最も進歩した13ヶ国を指定。日本は機関の創立当初から指定理事国である。
  • 選出理事国(elected members)
地域選出20カ国、付加選出2カ国が総会から選出される。
  • 地域選出
南アメリカ5カ国・西ヨーロッパ4カ国・東ヨーロッパ3カ国・アフリカ4カ国・中東アジア2カ国・東南アジア・オセアニア1カ国・極東1カ国の計20カ国
  • 付加選出
以下の2カ国を選出
  1. アフリカ・中東アジア・東南アジア・オセアニアから持ち回りで1カ国
  2. 中東アジア・東南アジア・オセアニア・極東から持ち回りで1カ国

事務局

事務局長は事務局の長であり、機関の代表として、総会の承認を得て理事会が任命する。事務局長以下に以下の6局がある。各局長は事務次長を兼ねる。

  • 管理局 (Department of Management)
  • 原子力局 (Department of Nuclear Energy)
  • 保障措置局 (Department of Safeguards)
  • 技術協力局 (Department of Technical Cooperation)
  • 核安全・セキュリティ局 (Department of Nuclear Safety and Security)
  • 核科学・応用局 (Department of Nuclear Science and Applications)

2013年6月1日現在の専門職以上の事務局の正規職員の定員は1142人である。

専門職以上の正規職員(現員)分布 (2013年6月1日現在)[3]
国籍 DDG ADG D2 D1 P5 P4 P3 P2 合計
アイルランド 2 5 5 1 13
アゼルバイジャン 1 1
アルジェリア 1 4 1 1 7
アルゼンチン 1 1 1 7 1 11
アルバニア 1 1 2
アルメニア 3 1 4
イエメン 1 1
イスラエル 1 1 2
イタリア 1 5 12 11 1 30
イラク 1 1
イラン 1 1 1 3
インド 1 3 11 2 5 22
インドネシア 3 5 8
ウガンダ 3 1 4
ウクライナ 6 6 12
ウズベキスタン 1 1
ウルグアイ 1 1 2
英国 1 27 21 18 3 70
エクアドル 1 1 2
エジプト 3 4 3 10
エチオピア 2 2 1 1 6
オーストラリア 2 9 10 2 23
オーストリア 2 13 13 5 33
オランダ 4 1 4 1 10
ガーナ 1 3 4
カザフスタン 2 1 3
カナダ 1 9 12 11 2 35
カメルーン 1 3 1 5
韓国 2 3 14 10 1 30
キューバ 3 5 1 1 10
ギリシャ 1 5 4 10
キルギスタン 1 1
グアテマラ 1 1
ジョージア 1 1 2
クロアチア 3 2 2 7
ケニア 3 3
コートジボワール 1 1
コスタリカ 1 1 2
コロンビア 1 3 1 1 6
コンゴ民主共和国 1 1
ザンビア 1 1
ジャマイカ 1 1
シリア 1 3 2 1 7
シンガポール 1 1
ジンバブエ 1 1 1 1 4
スイス 2 2
スウェーデン 5 5 1 11
スーダン 2 4 6
スペイン 1 6 11 3 2 23
スリランカ 1 1
スロバキア 3 5 8
スロベニア 1 4 1 6
セネガル 1 1
セルビア 1 3 1 5
タイ 1 2 3
タンザニア 1 1
チェコ 1 8 3 12
中国 1 5 6 7 2 21
チュニジア 3 3
チリ 1 1 2
ドイツ 1 3 13 16 7 40
ドミニカ 1 1
トルコ 1 4 5 10
ナイジェリア 1 2 3 6
ナミビア 1 1
ニカラグア 1 1
日本 2 6 6 9 1 24
ニュージーランド 1 1 2 4
ノルウェー 1 1
パキスタン 2 6 1 9
パナマ 1 1
ハンガリー 1 4 7 3 15
バングラデシュ 1 3 4
フィリピン 1 3 2 1 7
フィンランド 4 1 5
ブラジル 2 6 3 3 14
フランス 1 1 1 15 28 11 1 58
ブルガリア 1 4 5 1 11
ブルキナファソ 2 2
米国 1 3 3 44 44 31 2 128
ベトナム 1 1 2
ベナン 3 3
ベネズエラ 1 2 3
ベラルーシ 2 3 1 1 7
ペルー 3 1 4
ベルギー 1 5 5 1 1 13
ポーランド 3 2 2 7
ボスニア・ヘルツェゴビナ 2 4 1 7
ボリビア 1 1
ポルトガル 2 2
マケドニア 1 4 5
マリ 1 1
マルタ 1 1
マレーシア 1 2 3 2 8
南アフリカ 1 3 4 4 12
ミャンマー 1 1
メキシコ 1 1 2 4 8
モーリシャス 1 1
モルドバ 1 1
モロッコ 1 3 1 1 6
モンゴル 2 2
ヨルダン 2 3 1 6
ラトビア 1 1 2
リトアニア 2 4 6
リビヤ 1 1
ルーマニア 4 4 4 12
レバノン 2 3 5
ロシア 1 1 6 20 9 1 38
総計 6 2 11 28 248 417 268 45 1025

動向

2003年11月の定例理事会では、イランの核開発問題が取り上げられ、イギリスフランスドイツ日本が共同提案した非難決議案を全会一致で採択した。アメリカの主張する国際連合安全保障理事会への付託は見送られた。

創立以来、当機関の査察を拒否したと明確に当機関から認定されている国はイラクイラン朝鮮民主主義人民共和国の3カ国である。

なお一部のWebサイトにおいて、日本が2007年に発生した新潟県中越沖地震に際して柏崎刈羽原子力発電所についての「査察」を一時拒否したとする主張がなされているが、IAEAの公式文書等にはその旨の記述は存在していない。

当時の日本政府が一時受入れ見送りを表明したのは地震の影響等に関する技術的な「調査」である(その後、新潟県知事らの要求を受けて受入れに方針転換し、実際に調査が行われた)。核拡散防止条約に密接に関連するIAEA憲章等が定める「保障措置」に基づいて行われ、核物質の軍事転用の可能性の有無等につき確認を行う「査察」とは区別されている。

元IAEA広報部長の吉田康彦によれば、「IAEAは核廃絶・核軍縮推進機関ではない」「原子力産業と原子力関連政府機関からの出向者が職員の大半であり、日本の場合も40名のうち4分の3が文部科学省・経済産業省・原子力研究開発機構(旧原研・動燃)・関連企業からの出向である」「反原発運動や反核運動を行った前歴があれば絶対採用されない、もし隠していてそれが発覚すれば即解雇」との旨を述べている[4]

ノーベル平和賞

2005年度のノーベル平和賞を、当時の事務局長モハメド・エルバラダイとともに受賞した。

脚注

  1. About IAEA: Member States
  2. http://unic.or.jp/un_agency/iaea/iaea_j.html
  3. "Personnel Staffing of the Agency's Secretariatt", GOV/2013/34-GC(57)/14, International Atomic Energy Agency
  4. ノーベル平和賞受賞の秘訣教えます吉田 康彦

参考文献

  • Global power knowledge: science and technology in international affairs, John Krige, Kai-Henrik Barth, John Krige, Kai-Henrik Barth
  • Encyclopedia of Cold War Politics (Facts on File Library of World History), Facts on File; illustrated edition版 ,ISBN:978-0816035748
  • 『CIAと戦後日本』平凡社新書、2010年
  • 『原発・正力・CIA 機密文書で読む昭和裏面史』 新潮新書、2008年
  • 現代史スクープドキュメント NHK 1994年放送, http://video.google.com/videoplay?docid=-584388328765617134&hl=ja#

関連項目

外部リンク

座標: 東経16度24分58秒北緯48.23389度 東経16.41611度48.23389; 16.41611 テンプレート:ノーベル平和賞受賞者 (2001年-2025年)