在日朝鮮語

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テンプレート:言語 在日朝鮮語(ざいにちちょうせんご、朝鮮語: 재일조선어)または在日韓国語(ざいにちかんこくご、재일한국어)とは、在日韓国・朝鮮人によって話される、朝鮮語の変種のことを指す。後述するように話者による変異がある。

概説

在日韓国・朝鮮人の主流を占める旧移民の一世は朝鮮半島南部、なかでも慶尚南道・慶尚北道・済州島出身者が多い[1]ため、彼らの話す朝鮮語はソウルの標準語とは多少違っていた。さらに、二世以降の日本で生まれ育った世代は、母語日本語であり、、彼らの話す朝鮮語は日本語の影響を受けることとなる。この結果、日本生まれの世代が中心となった現在の在日韓国・朝鮮人社会では、朝鮮語が使われる時も朝鮮半島のものとは大きく違う独特の在日朝鮮語が使用されることになった。

現時点で在日韓国・朝鮮人によって話される言語は主に日本語であり、朝鮮語を話す者は少数派である。そのうち一部は朝鮮半島出身の朝鮮語母語話者であるが、大多数は朝鮮学校などでの民族教育で朝鮮語を習得している。朝鮮語の学習が上手くいかなかったり途中で諦めてしまうような場合、在日朝鮮人によって話される朝鮮語は、日本語に強い影響を受けたものとなる。また、日本人の朝鮮語学習者においても、この在日朝鮮語とほぼ同じ現象が起きる傾向にある。

日本人との会話においては特に在日韓国・朝鮮人固有の特徴はないが、在日韓国・朝鮮人同士で日本語を話す場合、親族名称などに朝鮮語由来のものを使う場合がある。また、朝鮮学校関連の朝鮮語語彙も使われる。

例:うちのアボジはウリハッキョでウリマルを勉強しています。(うちの父は朝鮮学校で朝鮮語を勉強しています)

音韻

母音

在日韓国・朝鮮人の朝鮮語では、母音は日本語と同じ5母音である、と言われる。朝鮮半島での朝鮮語における9個の単母音との対応は次のようになる。(。)

  • - ア
  • ㅓ・ㅗ - オ
  • ㅜ・ㅡ - ウ
  • - イ
  • ㅐ・ㅔ - エ
  • - ウェ


このうち、ㅐ・ㅔについては朝鮮半島でも若い世代では区別が薄れており、についても若い世代ではウェに変化することが多いが、その他は在日朝鮮語でのみ区別が消失している。

音節初子音

朝鮮半島の朝鮮語では、音節初の子音において平音激音濃音の区別がされるが、在日韓国・朝鮮人の朝鮮語では日本語と同じく清音濁音のみの区別しかされないと言われる。

  • 平音・激音・濃音は語頭では一律清音もしくは平音のみ濁音(本来の平音は語頭では話者により清音~濁音、語中では完全な濁音、語末では清音となる)となり、語中では平音は話者の違いによって清音もしくは濁音、激音は促音を伴う清音もしくは通常の清音、濃音は促音を伴う清音となる。
"아빠"("abba")→「アッパ」
"조카"(joka)→「チョッカ」または「ジョッカ」、稀に「チョカ」、「ジョカ」など
  • 鼻音に後続する場合には、促音は現れない。
"앉자"(anjja)→「アンチャ」など

また、漢字語に頭音法則[2]は適用されない。

音節末子音

朝鮮半島の朝鮮語では、音節末に未破音ㅂ・ㄷ・ㄱ)・鼻音ㅁ・ㄴ・ㅇ)・流音)の3類7子音が現れるが、在日韓国・朝鮮人の朝鮮語では流音がそのまま、もしくは後ろにuを付けて保存される以外、未破音は日本語音韻の促音に、鼻音は撥音にそれぞれ合流すると言われる。この結果、"조선사람"は「チョソンサラン」または「ジョソンサラン」のように発音される。但し全ての音節末子音にuを付ける話者もいるため、この場合"조선사람"は「チョソンサラム」、「ジョソンサラム」となる。

文法

在日韓国・朝鮮人による朝鮮語の文法は、一部に日本語の影響を受けている。朝鮮語は、一部の助詞の使い方が日本語とは異なる場合があり、例えば朝鮮半島の朝鮮語では「車に乗る」というのを"차를 탄다"(=車乗る)と言う。しかし、在日朝鮮人の朝鮮語では日本語に倣い"차에 탄다"(=車乗る)と言う。また、朝鮮半島の朝鮮語において"하고 있다"、"해 있다"(どちらも「~している」の意で、前者は現在進行形で後者は状態を現す言い回し)で区別されるアスペクトの違いが失われ、どちらも"하고 있다"となる。

  • (例1)「하고 있다」を用いる場合:
ご飯を食べている(=먹고 있다)・見ている(=보고 있다)など、動作が進行していることを表す。
  • (例2)「해 있다」を用いる場合:
座っている(=앉아 있다)など、動作が完了した直後の状態が続いていることを表す。つまり、「座る」という単語は本来ならば現在進行形では使えない。何故ならば「앉고 있다」とした場合、今まさに座ろうとしている瞬間を表すことになり、非常に不自然だからである。しかしながら、日本語にしてみれば、どちらも同じ「~している」という言い方になるため、在日朝鮮語では区別されることが無いケースが多く、このニュアンスの違いを理解できない在日朝鮮人も少なからずいる。

また、朝鮮語の文に日本語の語尾を付加する・またはその逆など、日本語と朝鮮語の混交が進んだ形も用いられると言う。

その他、一部に南部方言の要素があり、標準的な"내가"・"제가"の代わりに"나가"・"저가"という形が使われる場合があると言われる。

語彙

日本語からの借用語彙が多い。

表記法

普段の会話では在日朝鮮語と言われるほど日本語の影響の強い朝鮮語を話す話者であっても、書面化する際には標準朝鮮語の正書法に従った表記法を使う。"조선글"を"조손굴"のように発音する話者も、後者のように表記することは基本的にない。これは、"대화"を"데화"と同じように発音する標準朝鮮語話者であっても、後者の表記を使わないのと同じである。一部では、口語的文章をカタカナを使って記すこともある。

脚注

  1. 1923年大正12年)に尼崎汽船部が阪済航路を大阪済州島間に開設する、など、職場や交通の面から、特に大阪において済州島出身者の集住が見られる。
  2. 頭音法則(頭音規則):一部の漢字語において、文頭に来た言葉については子音を取ったり、言いやすい別の子音に置き換えるという法則である。ちなみにこれは韓国国内の「韓国語」とされるものにのみ存在し、朝鮮民主主義人民共和国には無いものである(朝鮮語の南北間差異)。 その例として、
    • 姓の「李」は「リ」と読むが、韓国では「イ」と読む。
    • 韓国の元大統領である盧武鉉「ノムヒョン」と読むが、北朝鮮では「ロムヒョン」と読む。
    などがある。

関連文献

  • 任栄哲・著 『在日・在米韓国人および韓国人の言語生活の実態』(日本語研究叢書) くろしお出版 1993年 ISBN 4-87424-075-5
  • 真田信治生越直樹任榮哲(イム・ヨンチョル)・編 『在日コリアンの言語相』(和泉選書) 和泉書院(大阪) 2005年1月 ISBN 4-7576-0283-9
  • 真田信治・監修、任栄哲・編 『韓国人による日本社会言語学研究』 おうふう・刊 2006年5月 ISBN 4-273-03432-8

関連項目

在日朝鮮語を使う有名人

外部リンク

  • 在日朝鮮語(趙義成・東京外国語大学専任講師のページ)

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