地蔵盆

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村の辻の地蔵堂(地蔵盆の宵)前に積まれている供え物は、やってきた子供達に配られる。電球ではなく、蝋燭の入った提灯はほの暗い

地蔵盆(じぞうぼん)は、地蔵菩薩縁日で、厳密には毎月24日であるが、一般的には、その中で特にお盆にも近い旧暦7月24日のものをいう。ただし、寺院に祀られている地蔵ではなく、道祖神信仰と結びついた「路傍や街角のお地蔵さん」いわゆる「辻地蔵」が対象となっている。

ユネスコ無形文化遺産や、日本民俗文化財などに該当する。

概説

期間としては、当日の前日の宵縁日(旧暦7月23日)を中心とした3日間を指す。縁日(祭り)はその期間内の特定の日を選んで行われる。

旧暦7月24日以外の地蔵菩薩の縁日の24日は、地蔵会(じぞうえ)、地蔵祭と呼ばれるが、旧暦7月24日については盂蘭盆会お盆)の時期に近く、それにちなんで地蔵盆と呼ばれるようになった。現代では、参加する人々の仕事などに合わせ、多少日程をずらして土日に行うところも増えている。現在では新暦で行われ、新暦7月24日前後の地域と、月遅れで8月24日前後の地域に分かれる(お盆の記事を参照)が、どちらかというと8月23・24日が多い。

地蔵盆は近畿地方を中心とする地域で盛んな行事である(長野県長野市善光寺長崎県対馬市厳原町など、近畿地方から離れた地方でも地蔵盆を行う地域は存在する)。一方、関東地方東北地方では地蔵信仰自体が浸透していないため、地蔵盆も殆ど行われない。ただし東北地方であっても、宮城県気仙沼市など、遠隔地との文化交流が古来からあるような古い港町ではこの限りではない[1]

地蔵祭では、地蔵のある町内の人々がこの日にかけて地蔵の像を洗い清めて新しい前垂れを着せ、化粧をするなどして飾り付けて、地蔵の前に集って灯籠を立てたり供え物をしたりして祀る。地蔵盆の前後には、地蔵の据えられる家や祠の周囲などに、地蔵盆独特の提灯が多く飾られる。京都では子供が生まれると、その子の名前を書いた提灯を奉納する風習がある。おおむね女子は赤、男子は白で、その子が地蔵盆に参加しているあいだは、毎年飾られる。

地蔵菩薩は中近世以降子供の守り神として信仰されるようになった。広く知られた伝説によれば、地蔵菩薩が、親より先に亡くなった子供が賽の河原で苦しんでいるのを救うという。このことから地蔵祭においては特に子供が地蔵の前に詣り、その加護を祈る習わしになっている。ところによっては、仏僧による読経や法話も行われるが、おおむねそれらの多くは子供達に向けたものである。地域によっては、地蔵盆当日の朝に「数珠回し」を行う。これは、町内の子供が、直径2〜3メートルの大きな数珠を囲んで座り、僧侶の読経にあわせて順々に回すというものである。

今日では地蔵盆は子供のための祭とも言え、地蔵に詣った子供達は地蔵の前に集まった席で供養の菓子や手料理などを振る舞われる場合が多い。また地域の子供達が一堂に会するため、子供達に向けたイベントも行われたり、そのまま子供達の遊び場となることもしばしばである。

初日朝に地蔵盆の用意をし、仏僧による読経、子供におやつの配布(日に一度か二度)、夜のイベント(踊りや線香花火など)。翌日、おやつ配布、お供えのお下がり配布、後片付けといった流れが多いようである。しかし、子供が少なくなったことや大人たちの都合がつきにくくなったりすることから、一日で終えてしまう町内も増えつつある。また、地蔵盆における福引は、「ふごおろし」とも呼ばれる形式で行われていた。福引担当の家の向かいの家から渡したロープにつるし紐で手繰り寄せた。その後、その品を紐で1階へ下ろして渡すものである。しかし、最近ではこういった福引はほとんど見られなくなった。

また、町内によっては天道大日如来を祀っており、それらの町内では大日如来の縁日である旧暦7月28日もしくは、それ前後(地蔵盆同様、お勤めの時期に7月もしくは8月の差異あり)に、同様の祭りである大日盆を行う。上述の地蔵盆と同じく日程をずらして土日にすることが多いため、年によっては他の町内に1週間遅れて大日盆を勤めることもある。

脚注

  1. 地蔵盆が当たり前の近畿地方出身者にとって、「地蔵盆は全国区ではない」ということは関東などへ移って驚くことの一つである。例えば京都出身の作家綿矢りさの『憤死』(河出書房新社)の中の「トイレの懺悔室」では「地蔵盆が全国規模の行事じゃないと初めて知ったのは、大学に入って上京し、いろんな地方から出てきた奴らと話す機会ができたからだった。」という驚きから始まっている。

参考文献

  • 林英一 『地蔵盆 受容と展開の様式』(初芝文庫、1997年)
  • 愛荘町民俗調査報告書第一輯 ムラと組と家の地蔵盆』(滋賀県愛知郡愛荘町、2007年)
  • 『映像で見るお地蔵さんと地域社会 民間信仰共同研究会七年の歩みから』(神道国際学会、2008年)

関連項目

外部リンク