基本情報技術者試験

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基本情報技術者試験(きほんじょうほうぎじゅつしゃしけん、Fundamental Information Technology Engineer Examination、略号FE)は、情報処理の促進に関する法律第29条第1項に基づき経済産業大臣が行う国家試験である情報処理技術者試験の一区分。対象者像は「高度 IT 人材となるために必要な基本的知識・技能をもち,実践的な活用能力を身に付けた者」。

情報処理技術者試験制度のスキルレベル2(スキルレベルは1から4が設定されている。)に相当する。2000年度(平成12年度)までの名称が第二種情報処理技術者試験であったことから二種という略称を用いる人もいる。

概要

本試験の出題範囲は、「コンピュータ科学基礎・コンピュータシステム・システムの開発と運用・ネットワーク技術・データベース技術・セキュリティ標準化情報化経営」など多岐にわたる。 また、コンピュータ言語プログラミングに関する問題が出されることから、主にプログラマ向けの能力認定試験として、情報産業界では古くから重要視される。

現在ではシステム開発者側だけでなく、旧初級システムアドミニストレータ試験初級シスアド)で対象にしていた利用者側にもある程度対応した試験となっている。しかしながら、午後のアルゴリズムは選択必須であり、依然としてプログラマからシステムエンジニアへの登竜門とされている。 情報工学に関連するエンジニアの実務においてもベースとなる。 特に大手システム開発会社ではこの試験に合格することが技術者の必要最低限の資格として重要視されることがあり、入社3年程度以内に取得することを推奨されている。その上で、応用情報技術者試験など、上位の試験合格を目指すキャリアパスになっている。

受験者の年齢層は10代半ばから50歳代と幅広い。近年では、60代や70代など高齢者の受験も僅かながら増加している。 受験者のボリュームゾーンは、19-21歳(主に情報系の大学生、専門学校生)と、22-25歳(主にシステム開発会社の新入社員)にある。合格者の平均年齢は24歳~26歳とボリュームゾーンよりやや高い年齢である。 新卒のIT職の志望者の中で取得率は10%に満たないことや、大手民間企業公的機関では合格者しか採用しないケースもある。 公的機関では特に、情報技術の関連職の採用を、基本情報技術者試験の合格を基準に行い、大学卒業程度と位置づけられるのが一般的である。

応募者数に比して実際に受験した受験者数が例年低く(これは応用情報技術者試験も同様)、受験率は毎年60パーセントから70パーセント程度である。言い換えれば、3割程度の応募者は受験していない[1]

1985年試験までは年1回の実施だったが、受験者数が増加したため、1986年以降は年2回の実施に変更された。

試験の難易度

テクノロジの知識を問う範囲は、J検情報活用試験1級(旧・情報処理活用能力検定準2級)や情報システム試験基本スキル、システムデザインスキル、全商情報処理検定1級、全工協会情報技術検定1級、全経情報処理能力検定1級、IT活用能力検定1級などよりも上等であり、また、アルゴリズムプログラミングの知識を問う範囲は、J検情報処理活用能力検定2級および情報システム試験プログラミングスキルやサーティファイ情報処理技術者能力認定試験1級などより上等である。

2006年(平成18年)6月まで実施されていた情報処理活用能力検定(旧J検)では、2級と1級の間に基本情報技術者試験(前身の第二種情報処理技術者試験を含む)があると言われていた。

本試験は名称に「基本」が含まれているため、簡単な資格だと誤解されがちである。しかし、実際には難関国家資格の一つであり、2006年春以前の合格率は15%前後で推移し、2006年秋試験以降の合格率は例年20%台である[2][3]

情報処理技術者試験の各区分のなかで試験制度上、基本情報技術者試験と同じスキルレベル2に設定されている区分として情報セキュリティマネジメント試験があるが、実際の難易度では基本情報技術者試験のほうが格段に高いと言われることが多い。基本情報技術者試験では離散数学アルゴリズム、開発技術などを含めた情報通信技術全般から出題される上に、平成20年度(2008年度)までの旧制度より易化したとはいえ、特に午後のアルゴリズム(擬似言語)は依然として鬼門であるため、かなりの学習量を要する。一方、情報セキュリティマネジメント試験は基本情報技術者試験に比べて範囲が狭く、情報セキュリティマネジメントシステムISMS)に特化した試験であり、アルゴリズムや開発技術に関する内容は一切出題されない[4]。また、基本情報技術者試験が(初級シスアドの範囲を吸収してからは利用者側もある程度想定した試験になったが)一般的に開発者側を想定した試験であるのに対し、情報セキュリティマネジメント試験はあくまで利用者側を想定した試験であるため、基本情報技術者試験より対策しやすいと言われている。

沿革

  • 1969年(昭和44年)第二種情報処理技術者認定試験として実施。
    • 試験的な意味を含めた開催であった。合格率は約8%。
  • 1970年(昭和45年)第二種情報処理技術者試験として実施。
  • 1986年(昭和61年)情報処理技術者試験は年2回実施されることとなり、受験者数が増加した第二種情報処理技術者試験は春期と秋期の年2回実施。以降合格率は15%前後、合格者の平均年齢は24歳前後で推移する。
  • 1994年(平成6年)秋期試験より、午後試験が記述式から選択式(マークシート)に変更、電卓が使用可能、一部免除制度導入、合格証書の寸法がB5からA4に変更、英語名称変更[5]
  • 2000年(平成12年)11月8日 試験を新設する[6]
    • 制度改正により基本情報技術者試験と改称、出題範囲・形式を変更。
      • 第一種情報処理技術者試験にあった情報科学分野やコンピュータシステムなどが出題範囲に含まれた。
  • 2001年(平成13年)4月15日 初の試験を実施する[7]
  • 同年5月22日 初の合格者を決定する[8]
    • 出題範囲の拡大により難易度が上昇した。(合格率は16.2% ※志願者による競争率はおよそ9倍)
    • 受験者数の減少。
  • 2002年(平成14年)秋期試験より、電卓が使用禁止となる。
  • 2009年(平成21年)4月15日 試験の科目を変更する[9]。制度改正後、初の試験を実施する[10]
    • 制度改正により初級システムアドミニストレータ試験初級シスアド)の一部を吸収し、出題範囲・形式を変更。なお、他の多くの区分名が変更されたが本試験については改称されなかった。
    • 制度改正前はソフトウェア開発に重点を置いた出題範囲であったのに対し、制度改正後は利用者側にも対応した広い出題範囲となり、午後試験でマネジメント分野や戦略分野、表計算ソフトといった問題が選択可能になった。
    • 制度改正後初回の受験者平均年齢は25.8歳、合格者平均年齢は26.3歳[11]と上昇、ここ数年の平均合格率は24%前後[12]を推移している。
    • 応募者数は当初は増加したものの、春期試験では平成23年度特別試験から4期連続、秋期試験では平成22年度から6期連続で減少した[13]
  • 2011年(平成23年)10月16日 秋期試験より、表計算の問題でマクロに関する内容が追加されるようになる[14]
    • 平成23年度(2011年度)春期まで他のプログラミング言語より簡単と批判されてきた表計算だったが、これにより、他の言語と同じくらいの難易度に引き上げられた。
  • 2014年(平成26年)4月20日 春期試験より、情報セキュリティ分野からの出題が強化される。
    • 午前試験でセキュリティ分野からの出題問題数が増えた他、午後試験でセキュリティ分野が必須問題になった。

出題範囲

基本情報技術者試験の出題範囲を更に詳細化し、スキルレベル2の知識・技能の幅と深さを体系的に整理、明確化した「シラバス」(情報処理技術者試験における知識・技能の細目)が策定され、公表されている。 シラバスは、試験の合格を目指す受験者にとっての学習指針として、また、企業・学校の教育プロセスにおける指導指針として、有効に活用されることが期待されている。 技術動向などを踏まえて、内容の追加・変更・削除など、適宜見直しが行われている。

テクノロジ系

基礎理論

基礎理論

アルゴリズムプログラミング

コンピュータシステム

コンピュータ構成要素

システム構成要素

  • システムの構成
  • システムの評価指標

ソフトウェア

ハードウェア

  • ハードウェア

技術要素

ヒューマンインタフェース

  • ヒューマンインタフェース技術
  • インタフェース設計

マルチメディア

  • マルチメディア技術
  • マルチメディア応用

データベース

  • データベース方式
  • データベース設計
  • データ操作
  • トランザクション処理
  • データベース応用

ネットワーク

セキュリティ

開発技術

システム開発技術

  • システム要件定義
  • システム方式設計
  • ソフトウェア要件定義
  • ソフトウェア方式設計・ソフトウェア詳細設計
  • ソフトウェアコード作成およびテスト
  • ソフトウェア結合・ソフトウェア適格性確認テスト
  • システム結合・システム適格性確認テスト
  • ソフトウェア導入
  • ソフトウェア受入れ
  • ソフトウェア保守

ソフトウェア開発管理技術

マネジメント

プロジェクトマネジメント

プロジェクトマネジメント

サービスマネジメント

サービスマネジメント

システム監査

ストラテジ系

システム戦略

システム戦略

システム企画

経営戦略

経営戦略マネジメント

技術戦略マネジメント

  • 技術開発戦略の立案
  • 技術開発計画

ビジネスインダストリ

企業法務

企業活動

法務

形式

全般

情報通信技術全般から基本的な知識を問う問題が出題されるが、プログラマ等の開発者側だけでなく、システムアドミニストレータで対象としていた利用者側にも対応した試験となっている。 そのため、従前の試験の出題範囲に加えて、初級システムアドミニストレータ試験初級シスアド)の内容であった問題が出題されるようになった。 例えば、午後試験で表計算ソフト(試験用オリジナルソフト)の問題が選択可能となったことである。

採点方式は、純粋に正解率が60%以上で合格となり、配点が正解率によって変更されることはない。ただし、午後問題の1問ごとの配点は解答例公開時にも合格発表時にも公開されないため、午後問題の正解率が60%前後の場合は合格発表まで合否が完全に確定できない(予備校各社が公開する「予想配点」を用いて凡そ予想することは可能である)。

午前

試験時間150分。四肢択一式(マークシート使用)で80問出題され全問解答。素点形式で採点され60点以上で合格。

テクノロジ系やマネジメント系が中心であったものが、ストラテジ系が20問出題されるようになった。従前でもストラテジ系の問題は出題されてはいたものの、出題数自体は少なかった。

午後

試験時間150分。素点形式で採点され60点以上で合格。

  • 問1:情報セキュリティに関する問題(必須解答)。
  • 問2-問7:ハードウェアソフトウェアデータベースネットワーク、ソフトウェア設計、プロジェクトマネジメント、経営・関連法規などの6問から4問を選択。
  • 問8:擬似言語と言われる簡略化されたコンピュータ言語を用いた応用問題(必須解答)。
  • 問9-問13:C言語COBOLJavaアセンブラ表計算のうち1問を選択する。いずれも(表計算の問題も含め)論理的思考力を要求される。
  • 2014年度(平成26年度)春季試験より、他の試験区分と共に情報セキュリティ分野の出題が強化され、午後試験では情報セキュリティ分野の大問1問が解答必須問題となった。[15]
  • 上記のうち、問2-問7から4問を選択、問9-問13のうち1問を選択、問1,8のみ必須となり、擬似言語問題とコンピュータ言語問題の出題はそれぞれ1問のみとなった。また、問13に表計算の問題が出てきたことによりコンピュータ言語問題を選択しなくてもよくなった。ただし、問8の擬似言語問題は必須で、問13の表計算の問題でも擬似言語を用いたマクロ定義の問題が出題されるため、引き続きアルゴリズムに関しての知識が必要。
    • 複数選択した場合は、若い番号の問題が採点対象となる。たとえば、問9-13の中から問9と問10の両方を解答した場合、問9が採点対象となる。また、マークシートにある言語選択の欄を塗りつぶしていない場合は当該問題を回答しても採点されない。

2011年(平成23年)度秋より、表計算の問題でマクロに関する内容が追加されたため[14]、他の言語と同じぐらいの難易度に引き上げられた。

科目免除

  • 2005年度(平成17年度)から、国または情報処理推進機構が認定した講座の修了者は修了日から1年間、午前の科目が免除される。
〔例〕[1]
  1. IPAに認定された「民間・公的試験」に合格する。
    例1)サーティファイ情報処理技術者能力認定試験2級若しくは2級第一部。
    例2)職業教育・キャリア教育財団 情報検定 情報システム試験 基本スキル。
  2. IPAに認定された「免除対象科目履修講座」を受講・修了する。
  3. 「修了認定に係る試験」を受験・合格する。

参考

従前の試験

午前試験はIRT(項目応答理論)、午後は配点(各大問につき1-2割程度の配点)をある計算式に導出して採点されていた。午前・午後とも最低200点-最高800点の5点刻みで評価され、その両方が600点以上であれば合格となっていた。

午前

試験時間150分。四肢択一式(マークシート使用)で80問出題され全問解答。

情報通信技術全般から基本的な知識を問う問題が出題された。

以前出題された試験問題が流用されることがあるため、過去問題を参考書などで演習すればまったく解けないことはない。ただ、近年重要な問題として挙げられるようになった著作権や、セキュリティに関して、新しい話題から出題されることもあれば、これまでまったくなかった新しい分野からの出題もまれに見られた。また、上級の試験から問題を持ち出してくることもあった。

コンピュータサイエンスに関する内容だけでなく、経営に関する内容も出題された。

午後

試験時間150分。より高度な知識を問う問題、擬似言語と言われる簡略化されたコンピュータ言語を用いた応用問題と、4つのコンピュータ言語から1つを選択して解答する。プログラミングの問題が各2問出題される。

  • 必須問題(全問回答)

以上の分野から5問出題され、多肢選択式(マークシート)で全問回答。

  • 選択問題(各種プログラム言語問題)
    • C言語COBOLJavaCASL IIから一つないし二つの言語に関しての知識を問う。各言語2問ずつ、計8問出題され、うち2問を選択して回答する。選択問題は問6-9・問10-13に分かれており、問6-9の中から1問、問10-13の中から1問をそれぞれ選択する。
      • Javaは2001年(平成13年)秋期から追加された。
      • CASL IIは第二種情報処理技術者試験のCASLを改訂したもの。
      • 第二種情報処理技術者試験にはFORTRANがあった。

合格者の特典

その他

区分 受験者数(人) 合格者数(人) 合格率(%)
第二種情報処理技術者 3,536,675 553,820 15.7
2001年度(平成13年度)から2008年度(平成20年度) 1,257,554 222,038 17.7

統計資料の応募者・受験者・合格者の推移表[13]において、第二種情報処理技術者にかかる数値は本試験に計上されている。

関連項目

脚注

  1. IPA 独立行政法人 情報処理推進機構:情報処理技術者試験:統計情報
  2. 統計情報 - 基本情報技術者試験ドットコム
  3. ただし例外的に、2009年(平成21年)度秋期試験と2016年(平成28年)度春期試験は30%台の高い合格率を誇った。この内、平成21年度秋では、午後のアルゴリズム擬似言語の問題に出題ミスがあり、全員に加点措置が行われたためである。
  4. 試験の形式|情報セキュリティマネジメント試験.com
  5. 第二種情報処理技術者試験の英語名称は、当初“Programmer Examination”であったが、1994年(平成6年)秋期試験より“Class II Information Technology Engineer Examination”に変更された。
  6. 2000年(平成12年)11月8日通商産業省令第329号「情報処理技術者試験規則の一部を改正する省令」
  7. 2001年(平成13年)1月4日『官報』第3027号 p.11「官庁報告 国家試験 平成13年度春期情報処理技術者試験」
  8. 2001年(平成13年)6月7日『官報』号外第116号 p.1「官庁報告 国家試験 平成13年度春期情報処理技術者試験合格者」
  9. 2007年(平成19年)経済産業省令第79号「情報処理技術者試験規則等の一部を改正する省令」
  10. 2009年(平成21年)1月4日『官報』第3027号 p.11「官庁報告 国家試験 平成13年度春期情報処理技術者試験」
  11. 平均年齢 (PDF) (IT人材育成センター国家資格・試験部)
  12. 情報処理技術者試験 推移表 (PDF) (IT人材育成センター国家資格・試験部)
  13. 13.0 13.1 情報処理技術者試験 推移表 (PDF) (IT人材育成センター国家資格・試験部)
  14. 14.0 14.1 情報処理推進機構:情報処理技術者試験:「表計算ソフトの機能・用語」改訂版の公開について
  15. http://www.ipa.go.jp/about/press/20131029.html プレス発表  iパス(ITパスポート試験)をはじめとする情報処理技術者試験の出題構成の見直しについて:IPA 独立行政法人 情報処理推進機構]
  16. 例えば、警視庁では、警察官採用試験の第1次試験の成績の一部に利用される。資格経歴等の評定(警察官)_採用情報_平成29年度警視庁採用サイト
  17. IPA_独立行政法人_情報処理推進機構:情報処理技術者試験:大学活用(入試優遇)
  18. IPA_独立行政法人_情報処理推進機構:情報処理技術者試験:大学活用(単位認定)
  19. 若狭東高等学校_ジュニアマイスター顕彰制度について
  20. 岡山県立笠岡工業高等学校_ジュニアマイスター顕彰に係わる区分表
  21. 高知工業高等学校HP ジュニアマイスター

外部リンク