多言語

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多言語(たげんご、: multilingual)とは、複数の言語が並存すること。また、一個の人間国家社会文書コンピュータウェブサイトソフトウェアなどが、複数個の言語に直面したり対応したりすること。多重言語ともいう。

多言語の例

以下に、多言語の例を列挙する。

  • ある人間が複数の言語を使用可能なとき、それを多言語話者あるいはポリグロットと呼ぶ。
  • 地球規模で展開するインターネットは、多言語の国際組織のような多言語社会である。
    • 多言語社会がある地域に存在し、国家単位をなすとき、基準となる言語がひとつまたは複数存在する。そのような国家を多言語国家と呼ぶ。そのうち、公務に使われることを法令で定めた言語を公用語、そのほか多くの人が使うものを共通語と呼ぶ。
    • インターネットでははじめ英語が多く用いられていたが、近年多言語化がめざましい。検索エンジンなどのサービスは多言語に対応したものが多い。また機械翻訳エンジンも多く提供されている。
  • 多言語対応(多言語化、m17n:multilingualization)
ソフトウェアの「多言語化」を「国際化」と対比して述べる場合、「多言語化」ではソフトウェアが扱う内容に注目し、一つのソフトウェアが複数の文字言語文化的慣習を一度に混在させて扱えるようにすることを指す。一方「国際化」ではソフトウェアの利用者に注目し、利用者がもとめる言語や文化的慣習などの要求に応じて、たくさんの言語の中から切替えて一度には一つだけを使えるようにすることを指す。この場合、多言語化と国際化は補完関係にあり、多言語化されていないが国際化されているソフトウェア(例:国際化された英文ワードプロセッサ)や多言語化されているが国際化されていないソフトウェア(例:操作体系が英語だけで多言語を表示できるウェブブラウザ)もあり得る。ただし、「国際化」と対比しない場合は、多言語を切り替えて利用できるだけの場合も「多言語化」と言う場合がある。

多言語話者

多言語話者(マルチリンガル(multilingual)、ポリグロット(polyglot))とは、二種類以上の言語(異なる種類の言語で同じ言語の方言は含まない場合が多い)能力を持っている人のことである。そのうち、二言語話者をバイリンガル(bilingual)、三言語話者をトライリンガル(トリリンガル、trilingual)、四言語以上の話者をマルチリンガル(multilingual)と呼ぶ。しかし、言語をどの程度まで扱える場合に「多言語話者」と定義されるのか(生活に支障がないレベルで十分なのか、母語話者と丁々発止の議論を遣り合える程度なのか、母語習得期に複数の言語を浴びていたのか)は非常に曖昧である。かつ、何をもって一つの言語と数えるのかの議論(方言連続体も参照)も輻輳している。

マルチリンガルは、状況・話題・聞き手などに応じて言語を使い分けているのが普通である。もっとも、この現象は、複数方言の話者でも行われているので、多「言語」話者にのみ特徴的なこととは言えない。ポリグロットどうしの一連の会話で複数の言語を織り交ぜる現象(コードスイッチング)が観察され、それに関する研究も盛んである。

言語は満8歳(7歳説、5歳説も)まででないと母語としての習得は難しいとされる(臨界期仮説)ため、「外国語の習得には若い方がよい」という主張もあるが、単純に過ぎ、有力な反論も多い。また、幼いうちに外国語を身に付けさせると母語の確立が遅れかねないというジレンマがある上、長じても母語の表現力が貧弱なままとどまったり(☞「セミリンガル」のくだり)、外国語を習得した人材が相次いで国外流出してしまうといった深刻な社会問題に発展する可能性も高い。

自ら外国語を学習して多言語話者となる以外で多言語話者になる要因としては、個人的なものと社会的なものの2つがある。前者の例としては、日本のような圧倒的なモノリンガル社会にやってきた移民や出稼ぎ労働者が当てはまる。後者の事例としては、スイスベルギーなど複数の言語共同体が共存している場合である。しかし、こういった多言語状態を政府は嫌うのが常で、言語政策言語計画の名の下に「標準語」の策定・普及を推し進め、方言・少数(移民)民族の言語を抑圧し排除されるケースが多々見られる。また、ドイツ語圏やアラビア語圏のように同言語の標準語(公共・教育など)と地方方言(日常生活など)に機能的優劣が付けられた社会も存在し、ダイグロシアと呼ばれる。

ちなみに、一言語のみ習得している者はモノリンガルmonolingual)、二言語の環境で育ち、その両言語において年齢に応じたレベルに達していない者はセミリンガルと呼ばれる。近年は、セミリンガルという言葉が否定的だという意見が増え、ダブル・リミテッドという名称が広まりつつある。ダブル・リミテッドは、日本においては帰国子女や日本に住む外国人児童の間に散見されるため、とくに教育関係者の懸案事項となっており、言語学や教育学の専門家による研究が広く行われている[1][2]言語獲得は環境および年齢差・個人差が大きい上に、日常会話能力(BICS)はバイリンガルであっても、抽象思考や学習のための言語能力(CALP)がダブル・リミテッドの状態にあり教科学習に支障をきたす者もいる。何をもってバイリンガル、何をもってダブル・リミテッドと判断するのかは未だ曖昧である。

脚注・参考文献

関連書籍

  • Crystal, David(2003), A Dictionary of Linguistics & Phonetics, 5th edition, Blackwell. p. 51 ISBN 0631226648
  • Columbia University Press(2004), bilingualism in The Columbia Encyclopedia, 6th edition, Columbia University Press.
  • Trask, R. L.(1998), Key Concepts in Language and Linguistics, Routledge. pp. 30-1 ISBN 0415157420
  • JACETバイリンガリズム研究会[編](2003)、『日本のバイリンガル教育』、三修社。ISBN 4384040067
  • 唐須教光(2002)、『なぜ子どもに英語なのか』、日本放送出版協会。ISBN 4140019565
  • 中島和子(1998) 『バイリンガル教育の方法』、アルク(増補改訂版、2001)、ISBN 9784757402829
  • 山本雅代
    • (1991)、『バイリンガル』、大修館書店。ISBN 4469243078
    • (1996)、『バイリンガルはどのようにして言語を習得するのか』、明石書店。ISBN 4750308846
    • (2000)、『日本のバイリンガル教育』、明石書店。ISBN 4750313246
  • 角山富雄、上野直子[編](2003)、『バイリンガルと言語障害』、学苑社。ISBN 4761403047
  • 櫛田健児(2006)、『バイカルチャーと日本人』、中公新書ラクレ。 ISBN 4121502124

関連項目

外部リンク