大門山

提供: miniwiki
2018/10/14/ (日) 10:59時点におけるAdmin (トーク | 投稿記録)による版 (1版 をインポートしました)
(差分) ← 古い版 | 最新版 (差分) | 新しい版 → (差分)
移動先:案内検索


ファイル:Asakawa-daimon.jpg
田上地区にあった旧浅川村役場跡と早春の大門山 、1984年4月
ファイル:Sotokanjo-daimonzan.jpg
金沢外環状道路若松橋詰交差点付近から、右上が大門山

大門山(だいもんざん)は、両白山地北部の石川県金沢市富山県南砺市との県境にある標高1,572 m。別名が「加賀富士[1][2]

概要

石川県側では犀川上流の支流倉谷(くらたに)川の水源地帯に位置する。富山県側では小矢部川の水源地帯に位置し、口三方(くちさんぽう)山と呼び、奈良岳の倉谷三方山と対比させる。小矢部川最上流部、大門山の山腹には、不動滝(不動瀑)がある。国土地理院により三等三角点(点名は「大門山」)が山頂に設置されている[3]日本三百名山に選定されている[1]


金沢市の平野部からは山容が富士山に似て美しく「加賀富士」または「金沢富士」の別名があり、室生犀星五木寛之の作品の中に登場する[4]。 とりわけ金沢市東部の浅野川流域をはじめとする旧浅川村に相当する地域から見上げた姿は秀逸である。

山域周辺の地質は、層厚数百mにおよぶ岩稲累層からなる[1]新第三紀中新世の2000~1700万年前に北陸地方(の恐らく水域)で起こった激しい火山活動によるもので、安山岩質の溶岩および火山砕屑岩からなる火山岩が主体で堆積岩をはさむ。いわゆるグリーンタフの一部とされる。 『皇国地誌』[5]ではこの岩からなる大門山を、「巨岩崔嵬トシテ峻嶮ヲ極ム」と表現している。

大門山の北麓、石川県側に流れる倉谷川西岸には、16世紀末~20世紀初頭まで倉谷鉱山があり、を産出した。

「大門山」をはじめとする呼称

この山は人里から非常に目立つ存在のため、古くから認識されていたはずだが、いつごろから「大門山」と呼ばれるようになったか定かでない。文政4年(1821年)測量の往来道図[6]には既に「大門山」の名が記されている。 また二十万分一輯製図『金澤』陸地測量部明治21年(1888年)輯製)にも「大門山」の名が記されている。

『石川県石川郡誌』[7]によると、大門山は2つの小峰からなり、南側を「岩戸山」、北側を「高舂山」という、とある。一方、天保元年(1830年)頃成立したとされる『加能越三州地理志稿』では、「岩戸山」・「大門山」・「高舂山」は独立した山として記述され、明治初期に成立した『皇国地誌』[8]では、「岩戸山」は大門山の一部のような記述となり、「高舂山」は大門山の北に接する別の山となっている。 今日では、高舂(たかうす)山=多子津山と考え[9]、岩戸山=赤摩木古山と考える[10]ことが多いようである。

また昭和初期の『石川郡誌』によると、周囲の山々の呼称は、現在(地形図の表記)と若干異なっていた。県境上、南に続く赤摩木古(あかまつこ)山は、赤摩不古山(あかまふこやま または あかまつこやま)と呼ばれた。県境上、北に続く赤堂山・月ヶ原山等は、百山(ももやま)と総称され、その内訳として阿咸堂(あかんどう)、尻高、赤目缼(あかめがけ)、地獄、矢代(やしろ)、等と呼ばれていた。 「百山」の呼称は、文政年間の測量図[11]にもある。昭和初期に「百山」の呼称が残っていた一方で、五万分一地形図『西赤尾』陸地測量部(明治42年(1909年)測図)には「百山」の呼称が反映されておらず、これは現在の地形図も変わっていない。そのためか「百山」の呼称は今日では忘れ去られてしまったようである。

山名の由来は「聖なる白山に向かっての尾根の入口にある大きな門」であるとする説と[2]、白山越中禅定道の入口の「大門」とする説がある[4]

登山

現在登山道は「加賀富士」の名がありながらも金沢市側からはなく、南砺市ブナオ峠の車道脇から尾根づたいに頂上に至る。奈良岳方面に向かう主稜線から約300m離れた枝尾根上にあるピークである。ブナオ峠からの登山道は片道約2.7kmで、1時間半程で登ることができる[2]。山頂付近は灌木が繁り、チシマザサの群落がある[1]。山腹はコブシが多い。山頂からの眺望は、残雪期には金沢市街や刀利ダム等を遠望できるが、無雪期は樹木に遮られあまり展望が良くない。ブナオ峠に至る富山県道54号福光上平線は幅員が狭く通行止めになる場合があり、豪雪地帯であるため通行可能な期間が短い。周辺に山小屋キャンプ指定地はない。ブナオ峠にあったキャンプ場は閉鎖された[12]

地理

地理学史

ブナオ峠に至る道路は、加賀平野部と越中五箇山を結ぶ間道で、真宗教団の布教・連絡路、物資の交易ルートを兼ねた。特に江戸期には五箇山で生産された塩硝が、ブナオ峠を越えて金沢の土清水の塩硝製造所へ運ばれた(富山県道54号福光上平線)。

かつての山域の道は現在と若干異なっていた。五万分一地形図『西赤尾』陸地測量部(明治42年(1909年)測図)によると、山頂部や尾根には道がなく、石川県側の倉谷集落から倉谷川沿いを登り、月ヶ原山・多子津山をかすめ、大門山の北側斜面を通りブナオ峠に至る道があった。ただこの道は登山道というよりも、世俗的な交易路と捉えるべきだろう。 この道は、五万分一地形図『下梨』陸地測量部(昭和5年(1930年)修整測図)では消えている。

一方で、『皇国地誌』・『石川郡誌』によると、かつて石川県側から「登路」[13]があったとしている。この「登路」とは、先の明治42年測図地形図のものと一致するか、それとも今日で言うバリエーションルートに近いものかは定かでない。

周辺の山

両白山地の北部に位置し、北東の大獅子山との鞍部にはブナオ峠がある[14] 。ブナオ峠から赤摩木古山と奈良岳へと延びる稜線の南側の区域は白山国立公園の特別地域に指定されているが、この北側の枝尾根上にあるこの山域は国立公園の区域外にある[15]。一帯は越中五箇山刀利自然保養林に指定されている[2]

山容 山名 標高[3][16]
(m)
三角点等級
基準点名[3]
大門山からの
方角と距離(km)
備考
70px 医王山  939.13  一等
「医王山」
16 cardinal points N.png北 16.4 日本三百名山
70px 大獅子山 1,127.07  三等
「真谷」
16 cardinal points NE.png北東 2.9 おおししやま
70px 大門山 1,571.59  三等
「大門山」
30px 0 日本三百名山
70px 赤摩木古山 1,501 30px南南東 1.0 あかまっこやま
展望地
70px 見越山 1,621 30px南西 2.3 みこしやま
70px 奈良岳 1,644.33  三等
「三方山」
30px南西 3.1 金沢市の最高峰
70px 大笠山 1,821.84  一等
「大笠山」
30px南南西 5.1 日本三百名山
70px 人形山 1,726 16 cardinal points E.png東 12.4 日本三百名山
70px 白山 2,702.17  一等
「白山」
30px南 23.5 両白山地の最高峰
日本百名山

源流の河川

ファイル:Lake Katsura.JPG
南側の大笠山登山道から望む境川ダムの桂湖

主な源流の河川は以下で、日本海へ流れる[14]

交通・アクセス

脚注

  1. 1.0 1.1 1.2 1.3 『日本三百名山』 毎日新聞社、1997-03、225。ISBN 4620605247。
  2. 2.0 2.1 2.2 2.3 日本山岳会 『新日本山岳誌』 ナカニシヤ出版、2005-11、1153。ISBN 4-779-50000-1。
  3. 3.0 3.1 3.2 引用エラー: 無効な <ref> タグです。 「kijyun」という名前の引用句に対するテキストが指定されていません
  4. 4.0 4.1 『日本の山1000』 山と溪谷社〈山溪カラー名鑑〉、1992-08、498。ISBN 4635090256。
  5. 「加賀国石川郡村誌第十四巻」『皇国地誌』
  6. 『三洲測量図籍』金沢市立玉川図書館近世史料館蔵。現南砺市の福光からブナヲ峠を経て西赤尾に至る往来道筋を描いたもの。この史料は、既にこの時代、越中側から「大門山」と呼んでいたことを示す上でも重要である。
  7. 『石川県石川郡誌』石川県石川郡自治協会(1927年)
  8. 「加賀国石川郡村誌第十四巻」『皇国地誌』
  9. 石川の山編集委員会編『石川の山』石川県山岳協会(1989年)など
  10. 『角川地名大辞典 17 石川県』
  11. 『三洲測量図籍』金沢市立玉川図書館近世史料館蔵
  12. 林正一 『ヤマケイアルペンガイド21白山と北陸の山』 山と溪谷社、2000、112。ISBN 4-635-01321-9。
  13. 『石川県石川郡誌』石川県石川郡自治協会(1927年)。「登路は倉谷より二里三十一町三十間」
  14. 14.0 14.1 地図閲覧サービス(大門山)”. 国土地理院. . 2012閲覧.
  15. 白山国立公園区域の概要”. 環境省. . 2012閲覧.
  16. 引用エラー: 無効な <ref> タグです。 「kokudo」という名前の引用句に対するテキストが指定されていません

参考文献

  • 「角川日本地名大辞典」編纂委員会編著『角川地名大辞典 17 石川県』角川書店 (1981年)
  • 「角川日本地名大辞典」編纂委員会編著『角川地名大辞典 16 富山県』角川書店 (1979年)

関連項目

外部リンク