大麻取締法

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大麻取締法
日本の法令
法令番号 昭和23年法律第124号
効力 現行法
種類 特別刑法
主な内容 大麻所持等の規制
関連法令 覚せい剤取締法あへん法麻薬及び向精神薬取締法
条文リンク 総務省法令データ提供システム
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大麻取締法(たいまとりしまりほう、昭和23年法律第124号、英語: Cannabis Control Law[1][2])とは、大麻の所持、栽培、譲渡等に関する日本の法律である。

内容

大麻取扱者の免許(5条 - )、大麻取扱者の義務(13条 - )、大麻取扱者に対する監督(18条 - )、罰則(24条 - )などが規定されている。罰則面での特色は、必要的没収(24条の5第1項)や、供用物件の没収の範囲の拡張(同条2項、刑法19条1項2号参照)である。

目的

第二次世界大戦後、1946年(昭和21年)1月22日、連合国軍最高司令官総司令部から日本国政府に対する麻薬統制に関する指令を受け、麻薬取締規則を制定した[3]。日本においては、繊維の産業があったため別個に大麻取締の法案が提起されることになる[4]

他の麻薬関連法と比較して「本法には目的規定がない」と言われるが、昭和23年当時はまだ目的規定の設けられていない法律も多い。(風俗営業等取締法(旧風営法)や興行場法など)また、昭和23年7月10日制定法律第123号の旧麻薬取締法にも目的規定は無かった。

1948年(昭和23年)6月24日、衆議院厚生委員会における法案審議で竹田儀一厚生大臣は本法の目的を次のように説明した。

誠に麻藥の取締いの如何は民族の興亡に影響するといつても過言ではありません。從つて麻藥の害毒を排除しつつ一方医療上学術上必要なものを確保し以て國民医療の完璧を期するためには、國内的にも國際的にも適切且つ強力な施策が講ぜられなければならないことは申すまでもありません。

(略)大麻草に含まれている樹脂等は麻藥と同樣な害毒を持つているので、從來は麻藥として取締って参ったのでありますが、大麻草を裁培している者は大体が農業に從事しているのでありまして、今回提出されています麻藥取締法案の取締りの対象たる医師、歯科医師、藥剤師等とは、職業の分野が甚だしく異なっています関係上、別個な法律を制定いたしまして、これが取締りの完璧を期する所存であり、本法案を提出する理由であります。 (略)先ず大麻の不正取引及び不正使用を防ぐため大麻を取扱う者は、これを免許制とし、この免許を受けた者以外の者は、大麻を取扱うことを禁止しておるのであります。次に大麻の取引を要式行爲とし、又大麻取扱者に記帳義務及び報告義務を課して大麻の移動の責任を明らかにしたのであります。

— 竹田儀一 - “衆議院厚生委員会”. 15. 第2回国会. (1948-06-24). http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/002/0790/00206240790015a.html 

本法は無免許の大麻取扱いを禁止することに主眼が置かれている。大麻中毒患者については、現行の麻薬及び向精神薬取締法が定める。

このような戦後の日本における大麻の状況の説明を補足すると、1968年当時の厚生省麻薬課の説明では、大麻犯罪は主に外国人兵士によるものであることが報告されている[1]

さらなる前後関係については、#法の制定と法改正も参照。

取締り対象

同法第1条において、この法律における「大麻」とは、「大麻草(カンナビス・サティバ・エル)及びその製品であり、樹脂はこれに含まれ、成熟した茎と種子及びその製品が除外されること」が規定されている。七味唐辛子に麻の実が使われるのは、規制されていないためである。

同法2条が、大麻取扱者に関する規定であり、第3条が大麻取扱者以外は、生産、流通、「研究のための使用」を禁じている。

同法第4条第1項第2号が、何人にも「大麻」から製造された医薬品の使用、施用を禁じている。この点は、麻薬及び向精神薬取締法において麻薬に指定されるモルヒネが、覚せい剤取締法において覚せい剤に指定されるメタンフェタミンが、医療用途に限っては認可されている点とは異なる。

同法第4条第1項第4号では、特定の場合以外は、大麻に関する広告を行うことを禁じている。

しかし、他の薬物取締法と違う点は「所持と使用」が合せて取締対象になるのに対して、大麻取締法では「大麻の使用だけ」では処罰することが出来無い。これは自然界にアサが自生しており、知らないうちにアサを吸引している可能性があるためである。

国外犯処罰規定

1991年(平成3年)に大麻取締法の改正が行われ、日本国外にて大麻を「みだり」に輸出入・栽培・譲渡し・譲受け・所持等の行為を行った者についても、日本の法律による処罰対象となった(24条の8)。

日本国外で大麻を所持した日本人はもちろんのこと、所持が合法化されているワシントン州大麻を所持したアメリカ人(連邦法では非合法)、コーヒーショップで大麻を譲り受けたオランダ人なども処罰の対象となる。

法の制定と法改正

1912年(明治45年)、第1回国際あへん会議において、あへん、モルヒネ、コカインの乱用を禁止する決議がなされたが、第一次世界大戦によって批准は伸び1919年となった[5]。この時、インド大麻については、科学的見地から研究がなされることが望ましいとされた[4]

その後、1925年(大正14年)、第二阿片会議条約において、「インド大麻」として、インド大麻製剤の医療・学術目的のみの使用制限、輸出入や不正取引の規制に関する規定が設けられることで、大麻の国際的規制がスタートした[4]

これを受け、日本では、1930年(昭和5年)に「麻薬取締規則(内務省令17号)」が制定され、ここにおいて大麻が麻薬指定された。当時の規定は、大麻の製造(内務大臣への届出)、輸出入・譲渡手続き等に関するものであった。

その後、1943年(昭和18年)制定の薬事法に麻薬取締規則は統合されるが、大麻は引き続き麻薬指定を受け、規制を受けていた。

第二次世界大戦後、大麻の取締りはいわゆるポツダム緊急勅令(昭和20年勅令第542号)に基づくポツダム省令として制定された「麻薬原料植物ノ栽培、麻薬ノ製造、輸入及輸出等禁止ニ関スル件(昭和20年厚生省令第46号)」により開始され、大麻は麻薬と指定され大麻草の栽培等が全面的に禁止された。

その後、同じくポツダム省令として「大麻取締規則(昭和22年厚生・農林省令第1号)」が制定され麻薬から独立して大麻の規制が行われるようになり、許可制で大麻草の栽培が一部認められ、併せて、大麻の輸入・輸出・所持・販売等が規制された。

1948年(昭和23年)、阿片法などを一本化した麻薬取締法が(昭和23年法律123号)が制定されたが、大麻栽培は主に農業従事者、モルヒネ等は主に医療機関関係者であるとの相違も踏まえ、麻薬取締法とは別に、大麻取締法が新たに制定され、大麻取締規則を廃止された。大麻取締法では、大麻の取扱いを学術研究及び繊維・種子の採取だけに限定し、大麻の取扱いを免許制とした。また、無免許での大麻の所持・栽培・輸出入等を禁止し、その罰則を規定した。

大麻取締法は十数回改正されている。1953年(昭和28年)の改正では大麻の定義が「大麻草及びその製品」と改められ、大麻草の種子は規制の対象外とされた。1963年(昭和38年)の改正では罰則の法定刑が引き上げられた。1990年(平成2年)の改正では栽培・輸入・輸出・譲渡し・譲受け・所持等についての営利犯加重処罰規定、および、未遂罪、栽培・輸入・輸出についての予備罪及び資金等提供罪、周旋罪等が新設された。

近年、麻薬等の国際不正取引が増加し深刻な状況となっているため規制を強化すべきとの国際世論が高まり、1984年(昭和59年)の国連総会において麻薬及び向精神薬の不正取引の防止に関する国際連合条約の検討が開始され、1988年(昭和63年)ウィーンにて採択された。

本条約に対応して1991年(平成3年)に大麻取締法を含む麻薬関連法の改正が行われた。この中で資金等提供罪の処罰範囲の拡大、大麻の運搬の用に供した車両等への没収範囲の拡大、国外犯処罰規定の新設等が行われた。

脚注

  1. 1.0 1.1 Masamutsu Nagahama (1968). “A review of drug abuse and counter measures in Japan since World War II”. U.N. Bulletin on Narcotics 20 (3): 19-24. https://www.unodc.org/unodc/en/data-and-analysis/bulletin/bulletin_1968-01-01_3_page004.html. 
  2. 法務省刑事局 『法律用語対訳集-英語編』 商事法務研究会、1995、改訂版、16。ISBN 4785707135。
  3. “麻薬は免許制に”. 読売新聞: p. 2面. (1946年6月23日) 
  4. 4.0 4.1 4.2 松下正明(総編集) 1999, p. 120.
  5. 松下正明(総編集) 1999, p. 109.

参考文献

  • 松下正明(総編集) 『薬物・アルコール関連障害』 編集:牛島定信、小山司、三好功峰、浅井昌弘、倉知正佳、中根允文、中山書店〈臨床精神医学講座8〉、1999-06。ISBN 978-4521492018。

関連項目

外部リンク