巨大地震

提供: miniwiki
2018/8/6/ (月) 07:51時点におけるAdmin (トーク | 投稿記録)による版 (1版 をインポートしました)
(差分) ← 古い版 | 最新版 (差分) | 新しい版 → (差分)
移動先:案内検索

巨大地震(きょだいじしん)は、地震の中でとくに規模が大きなものを指す言葉である。学術用語ではないが、日本地震学会の発表や各種教科書論文でもしばしば使われる表現である[注釈 1]。また地震の大きさを端的に表す言葉であるためか、マスメディアも積極的に使用している。

規模の基準

一般的にはマグニチュード(M)8以上[注釈 2]のものを巨大地震、モーメントマグニチュードでMw9程度以上あるいはMw9クラスのものを超巨大地震と表現することが多いが[1][2][3]、これは厳密に定義づけられているわけではない。M7以上のものを大地震と表現することが定義されていることとは対照的である[4]

とくにマスメディアが使用する場合は、被害の程度によってM7程度でも巨大地震と呼称する場合がある。

巨大地震が発生する場所

M8以上の地震では、一般的に断層長200km以上、かつ断層の食い違いが数メートルに達する[5]。こうした地震が発生しうる場所は地球上でも限定されている[6]

環太平洋などプレート境界周辺で発生する浅い巨大地震は大きく分けて、断層面が約10 - 20°と緩やかに傾斜した低角逆断層の地震と、断層面が約45°の正断層型の地震の2つのタイプに分類される。巨大地震はプレート境界がずれる低角逆断層(東北地方太平洋沖地震スマトラ島沖地震チリ地震宝永地震など)が圧倒的に多く、アウターライズ地震である正断層型(昭和三陸地震など)は少ない。また巨大地震の断層面の長さは短いものでも約100km、長いものは約1000kmに達する[8]

低角逆断層の地震の断層面は海溝軸よりも陸側に位置し、陸側のプレートが海側のプレートに衝上することにより発生し、その断層面の走向は海溝軸あるいは地震帯の走向に平行である。正断層型の地震は海側のプレート内で断層破壊が発生する[8]

昨今の日本においては、東海地震に代表されるようなプレート沈み込み帯における百年前後 - 数百年周期の地震のことを指す場合が多い。しかし上記のように、沈み込み帯以外の場所でもM8前後の地震が発生する場合があり、これらも含めて巨大地震と称する。とはいえ数的にはプレート境界型の地震が大半を占める。

巨大地震の例

超巨大地震

以下に観測結果からMw(モーメントマグニチュード。主にアメリカ地質調査所で使用されている)9程度以上とされる地震、もしくはMw9程度以上と推定される地震の例を挙げる。

長大な震源域をもつプレート境界型巨大地震は、通常は海溝沿いの別々のセグメントで起こっている地震が、時に複数のセグメントが連動して断層破壊が進展する連動型地震を想定すれば説明できるとしている[9][10]。具体的に複数の震源域がほぼ同時に連動して発生したと推定される地震の実例としては、1707年宝永地震、2004年スマトラ沖地震、および2011年東北地方太平洋沖地震が挙げられる[11][12][13]。連動型地震では単独地震に比べて震源域が広大となるため、おのずとマグニチュードも大きくなる。しかしながら海溝型の連動型地震には不明な点が多々あり、今後の調査が必要である[10]

19世紀以前に発生した地震計による記録の存在しない歴史地震の規模については、激震域の長さ即ち大凡の断層長や推定される津波の遡上高などからの推定であり、諸説ある[14]

巨大地震

以下にMw8以上Mw9未満の地震、もしくはMw8以上と推定される地震の例を挙げる。多くは過去から周期的に同程度の規模の地震を繰り返している。単位 Mjは「気象庁マグニチュード」、1884年以前は河角(1951)[30]、宇佐美(2003)[31]による推定値など(M8を超える巨大地震のため特にモーメントマグニチュードとは若干相違が生ずる)。また、ここに挙げられる震度分布などからM8クラスと推定された歴史地震の中にも、例えば貞観地震のようにモーメントマグニチュードではMw9クラスと推定され得る地震もある[2]

その他

潮汐との関係

東京大学の研究チームが1万件以上の地震データから、潮汐力の強い時期に巨大地震の発生確率が上昇するという研究結果を英科学誌ネイチャー ジオサイエンス」(2016年9月12日付電子版)に発表しており、同研究では小さな岩石の破壊が潮汐力によって大規模な破壊へと発展していく可能性が示唆されている[36][37]

脚注

注釈

  1. たとえば気象庁「プレートと地震・火山」防災科学技術研究所「地震の基礎知識」などにこのような記載がある。
  2. M7.9以上とする場合がある。これは、日本周辺において、M7.9であっても巨大地震と呼ぶに相応しい地震が複数発生していることによる(例:関東地震東南海地震)。また、M7.9以上で津波の被害が大きく拡大することも理由のひとつである。
  3. 当時西側諸国において死者は把握されていないが、ハワイで9mの高さの津波を観測。
  4. 地震発生当初はMw9.0と報告されていた。- Seth Stein and Emile Okal: Ultra-long period seismic moment of the great December 26, 2004 Sumatra earthquake and implications for the slip process
  5. 南海地震、東南海地震、東海地震(いずれも巨大地震と見做される)などが単独で発生した場合に比べて明らかに規模が大きいので、超巨大地震の範疇に含むことがある。
  6. Mw9をわずかに下回っているが、地震学では超巨大地震と扱われ、2004年のスマトラ島沖地震や東北地方太平洋沖地震と比較されることが多い。

出典

  1. 小山順二(2013) 小山順二, 都筑基博, 蓬田清, 吉澤和範(2013): 2011年東北沖超巨大地震が明らかにした超巨大地震の多様性, 北海道大学地球物理学研究報告, 76, 129-146.
  2. 2.0 2.1 2.2 神沼克伊 『次の超巨大地震はどこか?』 サイエンス・アイ新書、2011年
  3. 木村政昭 『超巨大地震は連鎖する』 角川学芸出版、2012年
  4. 坪井忠二和達清夫萩原尊禮 「地震予知-現状とその推進計画」 1962年
  5. 宇津徳治 『地震学 第3版』 共立出版2001年、ISBN 4-320-04637-4
  6. 力武常次 『固体地球科学入門』 共立出版、1994年
  7. 7.0 7.1 地震調査研究推進本部の活断層評価では、中央構造線(愛媛県)や糸魚川静岡構造線での地震をM8前後と想定してる。
  8. 8.0 8.1 金森博雄 『地震の物理』 岩波書店、1991年
  9. Lay, T(1982) (PDF) Lay, T., H. Kanamori and L. Ruff, 1982. The asperity model and the nature of large subduction zone earthquakes, Earthq. Predic. Res., 1, 3-71.
  10. 10.0 10.1 鎌滝孝信(2006) (PDF) 鎌滝孝信・澤井祐樹・宍倉正展(2006): 1960年チリ地震震源域でくり返し生じた過去の巨大地震, 歴史地震, 第21号, pp87-91.
  11. 都司嘉宣, 行谷佑一(2007): 連動型巨大地震としての宝永地震(1707), 日本地球惑星科学連合2007年大会, T235, 010. 11-10-26
  12. 河田惠昭(2005) (PDF) 河田惠昭(2005): スマトラ沖地震津波災害, 京都大学防災研究所年報, 第48号A
  13. 有吉慶介(2011) 有吉慶介, 松澤暢, 矢部康男, 加藤尚之, 日野亮太, 長谷川昭, 金田義行(2011): 東北地方太平洋沖地震・スマトラ島沖地震における連動型地震の考察, JAMSTEC Report of Research and Development, Vol.13, P17-33.
  14. 佐藤良輔 『日本の地震断層パラメーター・ハンドブック』 、鹿島出版会、1989年, ISBN 9784306032323
  15. 行谷佑一(2012) (PDF) 行谷佑一,佐竹健治,藤井雄士郎, 山木滋(2012): [講演要旨]西暦869年貞観地震津波と2011年地震津波の波源の比較,歴史地震, No.27, pp69.
  16. 2012年10月14日 NHKニュース, 貞観地震 M8.7前後かそれ以上の規模
  17. 島崎邦彦(2011) (PDF) 島崎邦彦(2011): 超巨大地震,貞観の地震と長期評価
  18. USGS Professional Paper 1707 (PDF) The Orphan Tsunami of 1700—Japanese Clues to a Parent Earthquake in North America
  19. Christine Chesley, Peter C. LaFemina, Christine Puskas, Daisuke Kobayashi.(2012).The 1707 Mw8.7 Hoei earthquake triggered the largest historical eruption of Mt. Fuji, GEOPHYSICAL RESEARCH LETTERS, vol. 39, L24309.
  20. Ishikawa(2012) (PDF) Yuzo Ishikawa(2012): Re-evaluation of Mw of the 1707 Hoei earthquake
  21. 21.0 21.1 Review of Tsunami Hazard and Risk in New Zealand Institute of Geological & Nuclear Sciences Limited
  22. 22.0 22.1 22.2 22.3 Kanamori(1977) (PDF) Kanamori, H., 1977, The energy release of great earthquakes, J. Geophys. Res. 82, 2981-2987.
  23. 北海道大学大学院(2008) (PDF) 根室沖等の地震に関する調査研究
  24. Johnson(1994) Johnson, J.M., Y. Tanioka, L.J. Ruff, K. Sataki, H. Kanamori, and L.R. Sykes, 1994. The 1957 great Aleutian earthquake, Pure Appl. Geophys., 142, 3-28.
  25. Fujii2013 Yushiro Fujii, Kenji Satake(2013): Slip Distribution and Seismic Moment of the 2010 and 1960 Chilean Earthquakes Inferred from Tsunami Waveforms and Coastal Geodetic Data, Pure and Applied Geophysics, Volume170, Issue9-10, pp1493-1509.
  26. 鎌滝孝信(2006) (PDF) 鎌滝孝信・澤井祐樹・宍倉正展(2006): 1960年チリ地震震源域でくり返し生じた過去の巨大地震, 『歴史地震』第21号(2006) 87-91頁
  27. Johnson(1996) Johnson, J.M., K. Satake, S.R. Holdahl, and J. Sauber, The 1964 Prince William Sound earhtuqke: Joint inversion of tsunami and geodetic data, J. Geophys. Res., 101, 523-532, 1996.
  28. Northwestern University (PDF) Seth Stein and Emile Okal: Ultra-long period seismic moment of the great December 26, 2004 Sumatra earthquake and implications for the slip process
  29. [1]M 9.1 - near the east coast of Honshu, Japan
  30. Kawasumi(1951) 有史以來の地震活動より見たる我國各地の地震危險度及び最高震度の期待値,東京大學地震研究所彙報. 第29冊第3号, 1951.10.5, pp.469-482
  31. 宇佐美龍夫 『最新版 日本被害地震総覧』 東京大学出版会、2003年
  32. 松岡裕美, 岡村眞, 岡本直也, 中野大智, 千田昇, 島崎邦彦(2007): 津波堆積物に記録された南海地震の繰り返し間隔 (PDF) ,日本地球惑星科学連合2007年大会予稿集,S141-P011.
  33. 石橋克彦887年仁和地震が東海・南海巨大地震であったことの確からしさ (PDF) 」日本地球惑星科学連合『地球惑星科学関連学会2000年合同大会予稿集』Sl-017、2000年
  34. 34.0 34.1 阿部勝征 「津波地震とは何か」『月刊地球』Vol.25, No.5, p340
  35. 中村衛(2014) (PDF) 中村衛(2014): 1771年八重山津波の断層モデルの再検討, 日本地球惑星科学連合2014年大会講演要旨,SSS34-P27.
  36. 巨大地震、大潮の時期に発生確率上昇か 東大研究(AFPBB News 2016年9月13日)
  37. 月の引力、大地震と関係か 東大チーム(日本経済新聞 2016年9月13日)

関連項目

外部リンク