性的少数者

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性的少数者(せいてきしょうすうしゃ)とは、何らかの意味で「」(「性別」も参照)のあり方が多数派と異なる人のこと。英語のSexual Minority(セクシュアル〈セクシャル〉・マイノリティ)の日本語訳である。略してセクマイの他に性的少数派性的マイノリティジェンダー・マイノリティとも言う。一般的に同性愛者、両性愛者、トランスジェンダー性同一性障害の当事者含む)などが含まれる。 最近の英語圏では、総称として、GSM(「ジェンダーと性的少数」)[1]、GSRM(「ジェンダー、セクシュアリティ、そしてロマンチックマイノリティ」)、およびGSD(「ジェンダーとセクシュアリティの多様性」)[2]が提案されている。

概要

この言葉は、1960年代にLaws Ullerstam (sv) の著書に影響を受けて、少数民族 (ethnic minority) の類語として生まれたとされている[3]

同性愛両性愛トランスジェンダーは、現象としてはかなり異なったものであるが、幾つかの理由から総じて論じる必要もあることから、的少数者という概念が用いられる。理由としては次のようなものがある。

  • 人間の性にまつわる活動を、単純に2種類に分類できると想定した諸制度において、不都合を生じるという点では、一致している。
  • これらの概念に関して知識の無い人物からは、しばしば混同されがちであり、混同した上で蔑視する者もいる。

しかしながら、身体障害精神障害などといった障碍をもつ人々も、トランスジェンダー同様、全人口に対する割合からすれば「少数」であるが、障碍を持つ人々を「少数者」と称することは海外は勿論、日本国内に於いてもほとんどみられない。したがって「少数者」という表現には社会的排除や見えない差別ニュアンスが含まれることがある。実際、LGBTの問題を扱ったジョグジャカルタ原則の前文において、異性に性的指向を持つ者や特に性自認が身体的性別と一致している者が圧倒的多数であるにも拘わらず、その前文では、性的指向の定義に関して敢えて、「異性や同性、両性(二つ以上の性)に対する」と表現している。また性自認の定義に関して、「出生時の身体的性別に対応することもあればしないこともある」と表現している。

これは真にいわゆるLGBTを「少数者」として社会的に排除することなく、他の人間と同様に尊厳や権利を保障され、社会的に受容される正当性と必要性によるものである。ちなみに今日海外において、LGBTをMinority(少数者)と称することはほとんどなく、特に国際連合等の公文書においては全く用いられない

LGBT

性的マイノリティとよく似た言葉で、しばしば混同される概念・言葉として、LGBT がある。これは、レズビアン(Lesbian・女性の同性愛者)、ゲイ(Gay・男性の同性愛者)、バイセクシュアル(Bisexual・両性愛者)、トランスジェンダー(Transgender・性別移行〈性同一性障害〉を含む)の頭文字から作られた頭字語である。性的少数者と LGBT の違いとして、その言葉のなりたちがあげられる。性的少数者が客観的に性におけるマイノリティを定義しているのに対し、LGBT は1988年頃にアメリカの活動家が使い始めた言葉であって[4]ゲイのコミュニティ、トランスジェンダーのコミュニティ等に属する人々が、自らを呼ぶ言葉としてこの名称を選んだということである。

LGBT は、インターセクシュアル(Intersexual・半陰陽)を加えて LGBTI と言ったり、クィア(Queer)またはクエスチョニング(Questioning)を加えて LGBTQ と言ったりもする。

LGB / TT / I

LGBT は、性的指向と、ジェンダー・アイデンティティ(性自認)という、全く異なるもので形成されている。

  • LGB は、レズビアン(女性同性愛者) / ゲイ(男性同性愛者) / バイセクシュアル(両性愛者)の性的指向によって決まる、三つとされる。
  • TT は、トランスジェンダー / トランスセクシュアル(性転換症)のジェンダー・アイデンティティ(性自認)によって決まるものである。
  • I は、医学的な診断で認定される性分化疾患(インターセックス・半陰陽)のことである。ただし、LGBTにインターセックスを加えることについては当事者からの異論が多く、必ずしも適切とは言えない。

その中でも特に、ゲイ・コミュニティの権利主張の声が大きいため、安直に「LGBT=ゲイ・コミュニティ」を意味してしまう場合がある。以下に説明するレインボー・フラッグが典型であるが、これは本来「ゲイ・コミュニティの多様性」の象徴であった。しかし、LGBT の象徴として使用されることが多く、性的マイノリティのなかで、性的指向の極、すなわち LGB が多数派を形成し、少数者の中の更に少数者として、TT や I の極が位置付けられる現実がある。これは、同性愛者の人口比がきわめて大きく、統計によって異なるが、おおよそ、人口の5%程度が先天的同性愛指向を持つと考えられるのに対し、トランスジェンダーは、人口比ではるかに少数であるという事実からも言える。

象徴としての「虹(レインボー)」

性的少数者の象徴として、現在、合意されたフラッグやシンボルは存在していない。「虹(レインボー)」を LGBT の象徴・代名詞として使用しようとする意見もあるが、「虹(レインボー)」は以下に述べるような特徴を持つため、様々な意味が内含され、性的多様性とは別の場面でも様々に使用されているため、これを LGBT の象徴とすることは未だ合意されていない。例えば、オリンピック五輪旗も「虹(レインボー)」の五色を使ってデザインされており、この場合は人種民族の多様性・平等性を示している。それ以外にも、様々な政治的スローガンの象徴として「虹(レインボー)」は使用される。

ゲイ・コミュニティは、「虹(レインボー)」を自分たちのプライド表現であるとして、これを採用している。「虹(レインボー)」の色はセクシュアリティの多様性を象徴するものと解釈されている。

  • 虹には様々な色が含まれ、共存している。
  • 虹を構成する色は連続的であり、明確な境界を引くことはできない。
  • しかし、「虹の七色」というように人間は便宜的に境界線を引いて区別している。
  • 時代・地域によっては「虹は五色」であり、境界線の引き方は文化に依存する。
  • 境界線を重視しすぎると科学的には正しくないことがある。

レインボー・フラッグ

ファイル:Gay flag.svg
レインボーフラッグ

レインボー・フラッグ(をモチーフとした旗)は、しばしば性的少数者ないし LGBT の象徴と見なされるが、元々はゲイ・コミュニティの象徴であった。別名「ゲイ・プライド・フラッグ」(ゲイの尊厳の旗)とも呼ばれる。同性愛者団体の活動などでは虹色の旗(レインボーフラッグ)が用いられ、日本の東京新宿二丁目2000年から行われている「東京レインボー祭り」の名称もこれに由来する。レインボー・フラッグは、1978年にゲイ・コミュニティの象徴となる旗のデザインを依頼されたギルバート・ベイカーが考案した。

現在のレインボーフラッグにおいては赤、橙、黄、緑、青、紫の6色で虹を表している。ただし、ベイカーによるオリジナルの旗はピンク、赤、橙、黄、緑、青、藍、紫の8色であった。製造上うまく発色しないことからまずピンクが削除された。次に、1979年サンフランシスコゲイ・パレードにおいて、虹色の横断幕を左右に分割できるようにと、藍が削除された。

(サムウェア・)オーヴァー・ザ・レインボー

(Somewhere) Over the Rainbow (虹の彼方に)は、性的少数者のテーマソング的曲。E・H・ハーブルグ作詞、ハロルド・アーレン作曲。アメリカミュージカル映画「オズの魔法使い」(MGM1939年)の中で、主人公のドロシー(ジュディ・ガーランド)が、カンザス州の自宅の庭で、虹の彼方(オーヴァー・ザ・レインボー)を夢見て歌う。なお、この場面はモノクロである。

後年、ジュディの娘であるライザ・ミネリがゲイの作曲家ピーター・アレンと結婚するなど、性的少数者が身近にいたことから、彼らに対して理解の深かったジュディは彼らのアイコンとなり、1969年6月22日に亡くなった彼女を追悼するためにニューヨークのパブ・「ストーンウォール・イン(Stonewall Inn)」に集まった同性愛者たちが警察と衝突した事件が、有名な「ストーンウォールの反乱」(同年6月27日)である。また、両性愛者の歌手エルトン・ジョンは、ジュディの死を悼んでグッバイ・イエロー・ブリック・ロードを作曲したが、これは映画の中でオズへ続く「黄色いレンガの道」を指している。

性的嗜好の少数者

性的マイノリティと呼ぶときには、 LGBT といった性的指向における少数者の範疇とは別のカテゴリに入る、性的に非典型的な傾向を持つ人々も含まれる。それは例えばBDSMなどの性的嗜好と呼ばれものなどにおける少数者を指す。ここにも、LGBT との概念的な違いが現れる。 英語の「セクシュアル・マイノリティ(sexual minority)」は、性的指向や性同一性に関する非典型者を意味するのみではなく、文字通り「性における少数者」を意味するのだと考えれば、LGBT とは自ずから異なった意味になる。社会的少数者と同様、人たる権利(人権)において何らかの意味で不利な立場に立つ者として、性的マイノリティは意味が広い言葉だとも言える(参照)。

文化の問題

性的少数者の概念を支えているのは LGBT の存在であり、その中でも同性愛トランスジェンダーが中心的な役割を持つ。しかし、同性愛については、ストーンウォールの反乱においてゲイの権利運動を活発化させたアメリカヨーロッパにおける概念把握が、グローバルな世界の諸文化では必ずしも妥当しないと言う事実を考慮に入れなければ、無意味である。欧米における同性愛概念は、世界の様々な社会や文化において、そのままの形では適用できない[5]

また、アルフレッド・キンゼイキンゼイ報告)とシェア・ハイト(ハイト・リポート)の調査結果は、現実には多数の人が男女の両性に性的魅惑を感じており、両性愛者はマイノリティではなく、数の上で最も多いマジョリティであることを示している。にも拘らず、両性愛の人が自分が両性愛であるとカムアウト(カミングアウト)することは稀である。その理由は、同性愛の部分で社会からの圧力を感じるためである[6]。両性愛者であることを公言することは則ち、欧米では同性愛者のなかに数えられるという現状が存在する。しかし、ヴァネッサ・ベアードが記すように、性的少数者に対する抑圧・権利侵害などは、むしろ西欧社会が促したものだという主張もある。

LGBT の中で、もう一つの重要な項であるトランスジェンダーは、それ自体が空の星のように限りないもので、欧米の文化内部で見ても数え切れないヴァリエーションが存在し、「第三の性」を歴史的・文化的に認めて来た社会の存在なども考慮すると、「性の多様性」は無限に発散するとも言って過言ではない。トランスジェンダーのレンジには異性装を含むが[7]、日本においても、男色同性愛)が何らの問題もなかったように、女装の伝統文化が存在する。

文化的に、トランスジェンダーに「第三の性」を認める社会も存在する。インターセクシュアルは、数え方の方法にもよるが、男女判断の難しい外性器内性器の混乱を持つ幼児が2000人に一人の割合で存在するという統計からは[8]、完全に男女分化していない嬰児の数は遙かに多いのであり、これを外科的に修正しようとして結果的にアメリカは数多くの失敗を犯している(デイヴィッド・ライマーの実験例も存在する)。更に「トランスジェンダーとは何なのか」の基準自体が、依然として曖昧なままである。

欧米が提供し主張する「性的マイノリティ」の概念・主張は、グローバルな広がりにおける地理的・文化的な多様性の中では、一般性を持たないことが確認され、また歴史的にアメリカや西ヨーロッパ自体の歴史を振り返っても、一般性を持たないことが明らかである。「性の多様性」は星の数ほど存在するが、それぞれの社会・文化には、セクシュアリティジェンダーの問題に対する固有の思想・伝統が存在するというべきである。

脚注

  1. http://www.derby.ac.uk/campus/support/gender-and-sexual-minority-students/ "Gender and Sexual Minority Students (LGBTIQA)". University of Derby. Retrieved 12 March 2015.
  2. http://www.pinknews.co.uk/2013/02/25/organisation-proposes-replacing-the-limiting-term-lgbt-with-more-inclusive-gsd/ Organisation proposes replacing the 'limiting' term LGBT with 'more inclusive' GSD, February 25, 2013
  3. (1967) The Erotic Minorities: A Swedish View. Retrieved on 12 March 2015. 
  4. Research, policy and practice: Annual meeting
  5. 『性的マイノリティの基礎知識』 p 14-p 20
  6. ibid. p 36
  7. ibid. p 131
  8. ibid. p 136 according to ISNA

参考文献

  • ヴァネッサ・ベアード 『性的マイノリティの基礎知識』 作品社 2005年 ISBN 4-86182-012-X C0036

関連項目

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外部リンク

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