悪性腫瘍

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悪性腫瘍(あくせいしゅよう、: malignant tumor)は、遺伝子変異によって自律的で制御されない増殖を行うようになった細胞集団(腫瘍)のなかで周囲の組織に浸潤し、または転移を起こす腫瘍である。悪性腫瘍のほとんどは無治療のままだと全身に転移して患者を死に至らしめる[1][2]とされる。

一般にガンがん: cancer)、悪性新生物(あくせいしんせいぶつ、: malignant neoplasm)とも呼ばれる。

「がん」という語は「悪性腫瘍」と同義として用いられることが多く、本稿もそれに倣い「悪性腫瘍」と「がん」とを明確に区別する必要が無い箇所は、同一語として用いている。

語義

「悪性腫瘍(malignant tumor)」は、一般に「がん(: cancer: Krebs)」として知られているが、専門用語では平仮名の「がん」と漢字の「癌」は同意ではない。

病理学的には漢字で「癌」というと悪性腫瘍のなかでも特に上皮由来の「癌腫(上皮腫、carcinoma)」のことを指す。平仮名の「がん」は、「癌」や「肉腫」(sarcoma)、白血病などの血液悪性腫瘍も含めた広義的な意味で悪性腫瘍を表す言葉としてつかわれているからである。したがって癌ばかりでなく肉腫や血液悪性腫瘍も対象にする国立がん研究センターや各県の「がんセンター」は平仮名で表記する[3]

「癌」を表す「Cancer」は、かに座 (Cancer) と同じ単語であり、乳癌腫瘍の脚のような広がりを見せた[4]ところから、医学の父と呼ばれるヒポクラテスが「」の意味として古代ギリシア語で「καρκίνος (Carcinos)」と名づけ、これをアウルス・コルネリウス・ケルススが「Cancer」とラテン語訳したものである。

漢字の「癌」は病垂と「」の異体字である「」との会意形声文字で、本来は「乳がん」の意味である。触診すると岩のようにこりこりしているからで、江戸期日本においては「岩」と書かれた文書もある。有吉佐和子の小説「華岡青洲の妻」には、乳がんを表す「岩(がん)」ということばが頻出する。

「悪性腫瘍」は「悪性新生物」とも呼ばれることがあるが、Malignant neoplasmの訳語として作られた言葉で、Malignant「悪性の」、Neo「新しく」、Plasm「形成されたもの」を意味する。

なお、「癌」という言葉は、上記の用法をもとに比喩的に用いられることがあり、社会の機構や組織について「○○は△△のがんだ」「△△のガン細胞」などということがある[5]

概念

「悪性腫瘍」とは、腫瘍の中でも、特に浸潤性を有し、増殖・転移するなど悪性を示すもののことである。

ヒトの身体は約六十兆個の細胞からなっている。これらの細胞は、正常な状態では細胞数をほぼ一定に保つため、分裂・増殖しすぎないような制御機構が働いている。 それに対して腫瘍は、生体の細胞の遺伝子に異常がおきて、正常なコントロールを受け付けなくなり自律的に増殖するようになったものである。この腫瘍が正常組織との間に明確なしきりを作らず浸潤的に増殖していく場合、あるいは転移を起こす場合(多くは浸潤と転移の双方をおこす)悪性腫瘍と呼ばれている[1][2]

がんの代謝

通常の細胞では、酸素が十分に供給されている時は、ATP合成のエネルギー効率が高いが合成速度の遅いミトコンドリアでの酸化的リン酸化でエネルギー生産を行い、酸素が十分に供給されない時は、エネルギー効率が悪いが速度の速い解糖系によって、エネルギーを得ている。一方、がん細胞は、酸素が十分に供給されている環境下でも、エネルギー効率の悪い解糖系を活性化していることが知られている。この現象は、ワールブルク効果(ウォーバーグ効果とも)と呼ばれている。この現象は以前から知られていたが、代謝物を一斉に測定・解析を行なうメタボロミクスによって、非がん組織と比較してがん組織で、解糖系の代謝中間体のプロファイルが明らかになり、解糖系の活性化が明確に示された[6]。なお、通常の細胞の代謝に関して、解糖系によるATP合成速度は電子伝達系によるATP 合成速度の約100 倍の速度を有している[7]

癌組織の多くがブドウ糖代謝が活発なことを利用してポジトロン断層法ががん診断に利用されている(詳細は「ポジトロン断層法」を参照のこと)。

がん理解の歴史

概略

がんという病気を理解しようとする人たちは古代からおり、悪戦苦闘が繰り広げられてきた[8]

(上述のごとく)Cancerという言葉の歴史は古いもので、古代ギリシア語のKarkinos カルキノス(=カニ)に由来している[8]。あちこちに爪を伸ばし食い込んでゆく様子を、その言葉で表現したのである[8]。がん研究、腫瘍学を指す「Oncology」という言葉も、古代ギリシア語のOncos オンコス(=塊 かたまり)を語源としている。

古代ローマのガレノス(2〜3世紀ごろ)は、がんは四体液のひとつの黒胆汁が過剰になると生じる、と考えた[8]。(ガレノスというのは1500年ころまでは、医学の領域で「権威」とされた人物である[8])。ガレノスの後継者のなかには、情欲にふけることや、禁欲や、憂鬱が原因だとする者もいた[8]。また同後継者には、ある種のがんが特定の家系に集中することに着目して、がんというのは遺伝的な病苦だ、と説明する者もいた[8]

18世紀後半をすぎるころになると、がんの一因として環境中のタバコ煙突掃除夫の皮膚につく煙突の鉱坑粉じんアニリン染料が含有する化学物質 等)もあるのでは、とする説が、多くの人によって提唱された[8]

19世紀なかごろに、フィラデルフィアの名外科医のサミュエル・グロスは「(がんについて)確実にわかっていることは、我々はがんについて何も知らない、ということだけである」と書いた[8]。そして、そのような「何も知らない」という状況は、19世紀末の時点でも、ほとんど変わっていなかった[8]

その後1世紀ほどを経た現在、がんについてある程度のことは分かったと言える状態になった。だが、その理解は一気になされたわけではなく、理解が進むたびに研究者の間で新たな疑問が登場し、科学的な知識が徐々に増えてきた、という状態なのである[8]。がん研究は研究者たちにとって、多くの困難と挫折に満ちたものであった[8]

20世紀初頭には、「感染症は特定の微生物によって引き起こされる」という説を支持する例が実験によって多数確認されため、他の病気も容易に解明されるだろうと考えたり、がんも解明されるだろうと予想する人は多かった[8]。だが、そのような予想は安易すぎたのである。

1955年、オットー・ワールブルクは、体細胞が長期間低酸素状態に晒されると呼吸障害を引き起こし、通常酸素濃度環境下に戻しても大半の細胞が変性や壊死を起こし、ごく一部の細胞が酸素呼吸に代わるエネルギー生成経路を昂進させて生存する細胞が癌細胞となる説を発表した。酸素呼吸よりも発酵によるエネルギー産生に依存するものは下等動物や胎生期の未熟な細胞が一般的であり、体細胞が酸素呼吸によらず発酵に依存することで細胞が退化し癌細胞が発生するとしている[9]

ウイルス説を巡る歴史

「がんは感染症ではない」とも考えられていた[8]。というのは白血病など、患者から家族や医療関係者に伝染することがないためである[8]。だが、動物(の個体)からとった腫瘍を他の動物(の個体)に移植すると癌が誘発されることがわかった19世紀末以降は、がんにも感染性の病原体があるのかも知れないと考える人も出てきて、彼らは20世紀初頭までに、原生動物バクテリアスピロヘータかびなどを調べた。それらの研究はうまくゆかず、がんの原因に感染症があると考える諸説は信用を失いそうになった。だが、ペイトン・ラウスが腫瘍から細胞とバクテリアを取り除いた抽出液をつくることを思いつき、それを調べれば細胞の他に作用している因子が見つかるかも知れないと考え、ニワトリの肉腫をろ過した抽出液を健康なニワトリに注射し、その鶏にも肉腫が発生するのを実験によって確認し、その腫瘍は、微小な寄生生物、おそらくウイルスに刺激されて生じたものかも知れない、とした[8]。当時はウイルスの正体は分かっておらず、「…でないもの」という否定表現でしか記述できなかった[8]。科学者はがんが感染するという実験的事実から、未知の病原体が存在するであろうことにも気付いたのである[8]。その後ウサギでも同様の実験結果が得られたが、腫瘍を伝染させることに成功したのは主にニワトリ(やウサギ)の場合に限られていたので、やがて、がんの一因にウイルスがあるとする説は評判が悪くなってしまい、これを支持する科学者は評判を落としてしまいかねないような状況になった[8]異端の説だと見なされ、疑似科学者扱いされかねない空気が科学界に蔓延したのである。

ジャクソン研究所English版というのは、1929年に設立された組織で、今日では基礎医学研究用の規格化マウスを供給する組織として米国最大のものだが、その研究所での がん発生研究のプログラムというのは、「問題は遺伝子であって、ウイルスではない」という前提のもとに行われていた[8]。だが、同研究所のジョン・ビットナーEnglish版が、マウスのある種のがんは、母乳中の発がん因子が授乳を通じて子に移される仕組みであるという、ウイルスが関与しているという証拠を偶然に発見した[8]。だが、当時の科学界は上述のようにウイルス説を異端視していたのでビットナーは躊躇して、それを「ウイルス」とは呼ばず、あえて「ミルク因子」と呼んだ[8]

ルドウィク・グロスEnglish版も、ウイルスが癌の原因になることがあることを、マウスの白血病がウイルスによってうつることを示す実験を行うことで確かめ、それを発表・報告したのだが、がん研究者の大半はその報告をまともに受け取らず、データ捏造をしているのでは、と考える者すらいた[8]。今流に言えば、ワシントンにある研究公正局に出頭を求められかねないような扱いをされたのである[8]

アメリカ国立癌研究所が設立された時期、公衆衛生局局長の諮問委員会は、がんの原因としてウイルスは無視できると結論づけた[8](結論づけてしまうような有様だった)。

「《ミルク因子》というのは、ウイルスだ」と解釈することを科学的なこととして認め、ウイルス説を科学的にまじめに検討すべきだ、という認識ができてきたのはようやく1940年代末のことだった[8]。状況を変えた人物はジャコブ・ファースJacob Furth、1896-1979)[注 1]であった[8]。ファースはすでに高名な科学者であったが、その彼がグロスの実験を、それに用いるマウスの種類まで正確になぞることで、実験に再現性があること、そして事実であることを証明した。それによって基礎医学者たちがようやく、悪性腫瘍にウイルスが関与することがあるということを理解するようになったのである[8]。かくして、長らく異端者のように扱われてきたペイトン・ラウスは、1966年に85歳でノーベル生理学・医学賞を受賞した[8]

悪性腫瘍に関連する医学的分類

癌腫と肉腫の比較
癌腫 肉腫
由来 上皮性 非上皮性
発育速度 速い より速い
年齢 高齢者 若年者
転移行性 リンパ行性 血行性
構造 胞巣構造 混合

悪性腫瘍(Malignant tumor)の用語は病理学において以下のように分類される。


疫学

世界保健機関 (WHO) によれば、2005年の世界の5800万人の死亡のうち、悪性腫瘍による死亡は13%(760万人)を占める。死亡原因となった悪性腫瘍のうち、最多のものは肺がん(130万人)で、胃がん(100万人)、肝がん大腸がん乳がんなどが続く。悪性腫瘍による死亡は増加し続け、2030年には1140万人が悪性腫瘍で死亡すると予測されている。

日本の原因疾患別死亡者数の割合と順位では1951年から1980年まで30年間1位だった脳血管疾患に変わり、1981年から2015年まで35年連続で1位であり[10][11][12][13][14][15][16]、2015年度は死亡者数129万0428人のうち、ガンによる死者数は37万0131人であり[15][16]、死亡者総数に対する割合は28.7%である。

発生機序

ファイル:Body defence mechanism ja.png
発がん抑制のための生体防御機構

悪性腫瘍が生じるしくみについては様々な説明がある。比較的多い説明というのは、遺伝子におきた何らかの変化が関わって生じている、とする説明である。では、その遺伝子の何らかの変化がどのように生じているのか、ということに関しては、実に様々な要素・条件が指摘されていて、研究者ごとにその指摘の内容や列挙のしかたは異なる。数百年前に比べれば、かなり多くのことが分かってきてはいるものの、現在でも悪性腫瘍発生のしくみの全てがすっきりと解明されているとも言えず、研究者を越えて同一の考え方が共有されているとも言い難い。

発生機序について、どの説明でもほぼ共通して言及されている内容というのは、何らかの遺伝子の変化と細胞の増殖の関係である。その説明というのは例えば以下のようなものである。

身体を構成している数十兆の細胞は、分裂増殖と、「プログラムされた細胞死」(アポトーシス)を繰り返している。正常な状態では、細胞の成長と分裂は、身体が新しい細胞を必要とするときのみ引き起こされるよう制御されている。すなわち細胞が老化・欠損して死滅する時に新しい細胞が生じて置き換わる。ところが特定の遺伝子(p53など、通常複数の遺伝子)に変異(=書き変わること)が生じると、このプロセスの秩序を乱してしまうようになる。すなわち、身体が必要としていない場合でも細胞分裂を起こして増殖し、逆に死滅すべき細胞が死滅しなくなる。

ただし、数十兆個の細胞で構成されている人体全体では、実は、毎日数千個単位で遺伝子の変異は生じており、それでも健康な人の場合は一般に、体内に生じた遺伝子が変異した細胞を、なんらかのしくみによって統制することに成功しており(免疫やいわゆる自然治癒力)、遺伝子が変異した悪性のがん細胞が 体内にある程度の個数存在するからといって、必ずしも人体レベルで悪性腫瘍になるというわけでもない、ということも近年では明らかにされている。

一方で「全ての遺伝子の突然変異ががんに関係しているわけではなく、特定の遺伝子(下述)の変異だけが関与している」と述べたり主張したりする研究者もいるが、他方で、「発癌には様々なプロセスが関わっている」「がんに関与する因子ならびにがんに至るプロセスは単一ではなく、複数の遺伝子変異なども含めて様々な機構の不具合が関与する」とする研究者もいるのである(多段階発癌説)。臨床の現場で「悪性腫瘍」と判断される段階に至るまでには、個々の細胞の遺伝子の変化以外にも、人体のマクロレベルで働いている機構(例えば、がん化した細胞を制御する免疫機構、広く自然治癒力とも呼ばれているしくみなど)が不具合に陥ってしまうことも含めて、さまざまな内的・外的な要因が複雑に作用している、とも指摘されているのである。

近年では大規模統計、疫学的な調査によって、人々の生活環境に存在する化学物質などの外的な要因や、その人の生活習慣など、様々な条件・要因が悪性腫瘍発生の要因として働いている、と分析されるようになっている(後述)。また、今日では、最近研究が進んだエピジェネティック研究も反映して、遺伝子のエピジェネティック変化が要因となることもある、と指摘されることもある。

このように悪性腫瘍の発生機序については、諸見解があるものの、いずれにせよ、そうして生じた過剰な細胞は組織の塊を形成し、臨床の場でも認識できるようになり、医師等によって「腫瘍」あるいは「新生物」と呼ばれるようになる。そして、腫瘍は「良性(非がん性)」と「悪性(がん性)」に分類されることになる。良性腫瘍とは、まれに命を脅かすことがあるが(特にに出来た場合)、身体の他の部分に浸潤転移はせず、肥大化も見られないものをそう呼んでいる。一方、悪性腫瘍は浸潤転移し、生命を脅かすものをそう呼んでいるのである。

WHOによると、禁煙健康的な食生活・適度な運動により、悪性腫瘍による死亡のうち、40%は予防可能であるとされる。特に喫煙は予防可能な死亡の最大の原因とされ、肺がんの80-90%が喫煙に起因する。受動喫煙も肺がんの原因である。

後述環境と食事予防も参照

がん発生に関与する遺伝子群

現在、がん抑制遺伝子といわれる遺伝子群の変異による機能不全がもっともがん発生に関与しているといわれている。たとえば、p53がん抑制遺伝子は、ヒトの腫瘍に異常が最も多くみられる種類の遺伝子である。p53はLi-Fraumeni症候群 (Li-Fraumeni syndrome) の原因遺伝子として知られており、また、がんの多くの部分を占める自発性がんと、割合としては小さい遺伝性がんの両方に異常が見つかる点でがん研究における重要性が高い。p53遺伝子に変異が起こると、適切にアポトーシス(細胞死)や細胞分裂停止(G1/S細胞周期チェックポイント)を起こす機能が阻害され、細胞は異常な増殖が可能となり、腫瘍細胞となりえる。p53遺伝子破壊マウスは正常に生まれてくるにもかかわらず、成長にともなって高頻度にがんを発生する。p53の異常はほかの遺伝子上の変異も誘導すると考えられる。p53のほかにも多くのがん抑制遺伝子が見つかっている。

一方、変異によってその遺伝子産物が活性化し、細胞の異常な増殖が可能となって、腫瘍細胞の生成につながるような遺伝子も見つかっており、これらをがん遺伝子と称する。これは、がん抑制遺伝子産物が不活性化して細胞ががん化するのとは対照的である。がん研究はがん遺伝子の研究からがん抑制遺伝子の研究に重心が移ってきた歴史があり、現在においてはがん抑制遺伝子の変異が主要な研究対象となっている。

分化度

ヒト(の身体)を構成する60兆とも言われる細胞は、1個の受精卵から発生を開始し、当初は形態的機能的な違いが見られなかった細胞は各種幹細胞を経て組織固有の形態および機能をもった細胞へと変化してゆく。この形態的機能的な細胞の変化を分化という。細胞の発生学的特徴の一つとして、未分化細胞ほど細胞周期が短く盛んに分裂増殖を繰り返す傾向がある。通常、分化の方向は一方向であり、正常組織では分化の方向に逆行する細胞の幼若化(=脱分化)は、損傷した組織の再生などの場合を除き、発生しない。

しかし、がん細胞は特徴の一つに幼若化/脱分化するという性質があるため、その結果分化度の高い(=高分化な)がん細胞や、ときには非がん組織から、低分化あるいは未分化ながん細胞が生じる。細胞検体の検査を行ったとき、細胞分化度が高いものほど臓器の構造・機能的性質を残しており、比較的悪性度が低いと言える(ただしインシュリノーマ等の内分泌腺癌など、例外はある)。また、通常は分化度の低いものほど転移後の増殖も早く、治療予後も不良である。

化学療法は、特定の細胞周期に依存して作用するものが多いため、細胞周期が亢進している分化度が低いがんほど化学療法に対して感受性が高いという傾向がある。なお、腫瘍細胞への作用原理・特性などは化学療法 (悪性腫瘍)の項に詳しく記した。

接触阻害の機能喪失と無限増殖能

細胞生物学における接触阻害とは、細胞がお互いに接触するまで増殖した場合に起こる細胞の増殖が停止する細胞の性質のことである[19]。癌細胞では、通常、この接触阻害の性質を失っており、隣の細胞に接触した場合でも増殖を停止できない状況に至っている。癌細胞は、接触時に増殖を停止したり成長方向を変更することはないためお互いの細胞の上に積み上がって成長を続けることとなる[20]。癌細胞は、この接触阻害の性質を失っており、かつ、無限に増殖できる能力を獲得している[19]。癌細胞の特徴として、接触阻害の消失、増殖因子要求性の低下、転移能の前提である足場非依存性増殖能の獲得、不死化、転移能の獲得、脱分化などの発現が掲げられ、発癌はこのような過度の増殖亢進の結果である[21]

がんとアポトーシス

イニシエーション(en:Tumor initiation)とプロモーションによって細胞増殖が起き過形成となるとアポトーシスの機構が働き細胞の増殖が抑えられる。しかしアポトーシスが進行して細胞数が減ると逆に体内でアポトーシスを抑制して細胞増殖を促進するようになる。例えば放射線で誘発されるリンパ腫の実験ではアポトーシスを起こしやすい動物系統がリンパ腫を発生させやすい。アポトーシスが起こり細胞が減少するとアポトーシスを抑制して細胞増殖を促進させるようになりこれが癌化への引き金となる。ウイルス感染(エプスタインバーウイルス(EBV)、パピローマウイルス(HPV)、ヒトT細胞白血病ウイルス、B型及びC型肝炎ウイルスなど)、化学物質による発がんも放射線誘発発がんと同様にアポトーシスの亢進に引き続くアポトーシスの抑制(遺伝子bcl-2の活性化など)が癌化に際して重要な要因となっている。がん抑制遺伝子p53はDNA損傷の修復を助けるが損傷を修復できない場合にはアポトーシスを誘発させて細胞ごと消去する。p53に異常があるとアポトーシスが起こりにくくなり発がんにつながることになる[22]

発生要因

「がんの発生機序」の項で述べたように、要因については様々な説がある。悪性腫瘍(がん)は、細胞のDNAの特定部位に幾重もの変異が積み重なって発生する、と説明されることは多い。突然変異が生じるメカニズムは多様であり、全てが知られているわけではない。遺伝子の変異は、通常の細胞分裂に伴ってもしばしば生じていることも知られており、また偶発的に癌遺伝子の変異が起こることもありうる。それ以外に、発癌の確率(すなわち遺伝子の変異の確率)を高めるウイルス化学物質放射線環境放射線人工放射線X線撮影やCTスキャン等による医療被曝[23])… 等々等々、多様な環境因子、様々な要因が明らかになってきている。

しかし、DNA修復機構や細胞免疫など生体が持つ修復能力も同時に関与するので、水疱瘡が、水痘・帯状疱疹ウイルス (Varicella-zoster virus) の感染で起こるといったような1対1の因果関係は、癌においては示しにくいことが多い。

なお、発癌機構については発癌性の項に詳しく記した。

生活習慣(肉食、塩分、喫煙、飲酒、高血糖など)

ファイル:Cancer smoking lung cancer correlation from NIH.png
肺がんの発生率は喫煙と高い相関がある。
ファイル:Cancer and diet from NIH.PNG
各国民の肉の消費量と大腸癌の発生率には高い相関がある。

喫煙と数多くの部位のがんとの間に強い相関があることが、数十年にわたる調査での一貫した結果によって明らかになっている。数百の疫学調査により、たばことがんとの関係が確認されている。アメリカ合衆国における肺がん死の比率とたばこ消費量の増加パターンは鏡写しのようであり、喫煙が増加すると肺がん死比率も劇的に増加し、近年喫煙傾向が減少に転じると、男性の肺がん死比率も減少している。日本政府が日本たばこ産業の株の半数以上を保有しているため、喫煙規制や禁煙に関する動きが進みにくかったという指摘が渡邊昌によってなされており[24]、がんの死亡率の1位が肺がんとなっている。

米国国立がん研究所の公開資料によると、「食事の違いはがんの危険を決定づける役割を持っている。タバコ、紫外線、そしてアルコールは顕著な関係が識別できるのに対して、食事の種類とがんに罹る危険性との関係を明らかにすることは難しい。脂肪とカロリーの摂取を制限することは、ある種のがんの危険率を減少させる可能性があると明らかとなっている。(脂肪に富んだ)大量の肉と大量のカロリーを摂取する人々は、特に大腸がんにおいて、がんの危険が増大することが図より見て取れる。」と指摘している[25]

いわゆる「食生活の欧米化[26]」は、乳房前立腺大腸のがんとの関連が強いと考えられ[27]、実際に部位別の死亡率は増えている[28][29][11][12][13][14][15][16]。つまり、近年になって日本人に大腸癌乳癌が増えてきた原因のひとつには、食生活の欧米化による動物性脂肪の摂取の増加と食物繊維の摂取不足がある、と指摘されているのである。大腸での便の停滞時間が長くなって発癌物質が大腸粘膜と長時間接するため大腸癌が多くなったと考えられているのである[30]

1998年の久山町の調査では、糖尿病は悪性腫瘍死の発生のリスクを有意に増大させ、高血糖の程度を示すヘモグロビンA1cの高値の者ほど胃がんの発生率が高かった。この一町村の調査報告の中では糖尿病及び高血糖は悪性腫瘍の重要な危険因子である可能性を指摘している[31]。糖尿病と診断されたことのある人はない人に比べ20-30%ほど、後にがんになりやすくなる傾向があり、男性では肝がん腎臓がん膵がん結腸がん胃がん、女性では胃がん肝がん卵巣がんでこの傾向が強かった[32]。C-ペプチドは、インスリン生成の際、インスリンの前駆体であるプロインスリンから切り放された部分を指すが、男性では、C-ペプチド値が高いと大腸癌リスクが高くなる。C-ペプチドは男性の結腸癌と関連がある[33]

ストレス:ストレスを長期に渡って受け続けると、血流の低下、免疫力の低下につながり、がんになる確率が上がる。

WHOと国際がん研究機関 (IARC) による、「生活習慣とがんの関連」についての報告がある[34]

生活習慣とがんの関連[34][35]
(WHO/IARC)
関連の強さ リスクを下げるもの(部位) リスクを上げるもの(部位)
確実 身体活動(結腸) たばこ(口腔、咽頭、喉頭、食道、胃、肺、膵臓、肝臓、腎臓、尿路、膀胱、子宮頸部、骨髄性白血病)
他人のたばこの煙(肺)
過体重と肥満(食道<腺がん>、結腸、直腸、乳房<閉経後>、子宮体部、腎臓)
飲酒(口腔、咽頭、喉頭、食道、肝臓、乳房)、
アフラトキシン(肝臓)、
中国式塩蔵魚zh:鹹魚)(鼻咽頭)
可能性大 野菜果物(口腔、食道、胃、結腸、直腸)
身体活動(乳房)
貯蔵肉(結腸、直腸)
塩蔵品および食塩(胃)
熱い飲食物(口腔、咽頭、食道)
可能性あり データ不十分 食物繊維大豆ω-3脂肪酸
カロテノイドビタミンB2ビタミンB6
葉酸ビタミンB12ビタミンCビタミンD
ビタミンEカルシウム亜鉛セレン
非栄養性植物機能成分
(例:アリウム化合物、フラボノイドイソフラボンリグナン
動物性脂肪 複素環式アミン 多環芳香族炭化水素 ニトロソ化合物

発がん性を有する化学物質や放射線への暴露

化学物質への暴露が発がんを引き起こすことがあり、国際がん研究機関(IARC)はヒトに対する発癌性が認められる化学物質(Group1)として、石綿ベンゼン六価クロムヒ素カドミウムベンジジン1,2-ジクロロプロパンなど、放射線としてγ線X線など、を掲げている[36](詳細は「IARC発がん性リスク一覧」を参照のこと)。

病因微生物

一部の悪性腫瘍(がん)については、ウイルス細菌による感染が、その発生の重要な原因であることが判明している。現在、因果関係が疑われているものまで含めると以下の通り。

なお、癌に関与するウイルスは腫瘍ウイルスの項に詳しく記した。

これらの病原微生物によってがんが発生する機構はさまざまである。ヒトパピローマウイルスやEBウイルス、ヒトTリンパ球好性ウイルスなどの場合、ウイルスの持つウイルスがん遺伝子の働きによって、細胞の増殖が亢進したり、p53遺伝子RB遺伝子の機能が抑制されることで細胞ががん化に向かう。肝炎ウイルスやヘリコバクター・ピロリでは、これらの微生物感染によって肝炎や胃炎などの炎症が頻発した結果、がんの発生リスクが増大すると考えられている。またレトロウイルスの遺伝子が正常な宿主細胞の遺伝子に組み込まれる過程で、宿主の持つがん抑制遺伝子が欠損することがあることも知られている。ただしこれらの病原微生物による感染も多段階発癌の1ステップであり、それ単独のみでは癌が発生するには至らないと考えられている。

2005年に、スウェーデンマルメ大学で行われた研究は、ヒトパピローマウイルス(HPV)に感染した人間との、予防手段を用いないオーラルセックス口腔癌のリスクを高めると示唆した。この研究によると、癌患者の36%がHPVに感染していたのに対し、健康な対照群では1%しか感染していなかった[37]

ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』誌で発表された最近の別の研究は、オーラルセックスと咽喉癌には相関関係があることを示唆している。HPVは頸部癌の大半に関係しているので、この相関関係はHPVの感染によるものと考えられている。この研究は、生涯に1-5人のパートナーとオーラルセックスを行った者は全く行わなかった者に比べおよそ2倍、6人以上のパートナーと行った者は3.5倍の咽喉癌のリスクがあると結論付けている[38]

遺伝的原因

大部分のがんは偶発的であり、特定遺伝子の遺伝的な欠損や変異によるものではない。しかし遺伝的要素を持ちあわせる、いくつかのがん症候群が存在する。例えば、

遺伝的素因と環境因子の双方により発癌リスクが高くなるものとして、アルコール脱水素酵素の低活性とアルコール多飲がある。これらが揃うと頭頸部癌咽頭癌食道癌など)の罹患率が上昇する。日本を含むアジアではアルコール脱水素酵素 (ADH1B) の活性が低い人が多い。

予防

子宮頸癌は発癌リスクを軽減できるHPVワクチンが日本でも認可された。胃癌ヘリコバクター・ピロリを除菌することにより、発癌リスクを軽減できることが報告されている。B型肝炎エンテカビルによりHBVウイルスを減少させることで、C型肝炎インターフェロン療法によりHCVを駆除することにより、発癌リスクを軽減できることがわかっている。

がん予防10か条(世界がん研究基金)

2007年11月1日、世界がん研究基金アメリカがん研究協会によって7000以上の研究を根拠に「食べもの、栄養、運動とがん予防[39]」が報告されている。これは1997年に公表され、日本では「がん予防15か条」などと呼ばれていた4500以上の研究を元にした報告の大きな更新である。

  1. 肥満 ゴール:BMIは21-23の範囲に。推薦:標準体重の維持。
  2. 運動 推薦:毎日少なくとも30分の運動。
  3. 体重を増やす飲食物 推薦:高エネルギーの食べものや砂糖入り飲料やフルーツジュース、ファーストフードの摂取を制限する。飲料として水や茶や無糖コーヒーが推奨される。
  4. 植物性食品 ゴール:毎日少なくとも600gの野菜果物と、少なくとも25グラムの食物繊維を摂取するための精白されていない穀物である全粒穀物を食べる。推奨:毎日400g以上の野菜や果物と、全粒穀物と豆を食べる。精白された穀物などを制限する。
  5. 動物性食品 赤肉(牛・豚・羊)を制限し、加工肉(ハム、ベーコン、サラミ、燻製肉、熟成肉、塩蔵肉)は避ける。赤肉より、鶏肉や魚が推奨される。ゴール:赤肉は週300g以下に。推奨:赤肉は週500g以下に。乳製品は議論があるため推奨されていない。
  6. アルコール 男性は1日2杯、女性は1日1杯まで。
  7. 保存、調理 ゴール:塩分摂取量を1日に5g以下に。推奨:塩辛い食べものを避ける。塩分摂取量を1日に6g以下に。カビのある穀物や豆を避ける。
  8. サプリメント ゴール:サプリメントなしで栄養が満たせる。推奨:がん予防のためにサプリメントにたよらない。
  9. 母乳哺育 6か月、母乳哺育をする。これは母親を主に乳がんから、子供を肥満や病気から守る。
  10. がん治療後 がん治療を行ったなら、栄養、体重、運動について専門家の指導を受ける。

喫煙は肺、口腔、膀胱がんの主因であり、タバコの煙は最も明確に多くの部位のがんの原因であると強調。また、タバコとアルコールは相乗作用で発癌物質となる。

がん対策の目標(健康日本21-日本厚生労働省)

2000年、厚生労働省の健康日本21[40]によってがん対策の目標が提唱されている。

  1. 喫煙が及ぼす健康影響についての知識の普及、分煙、節煙。
  2. 食塩摂取量を1日10g未満に減らす。
  3. 野菜の平均摂取量を1日350g以上に増やす。
  4. 果物類を摂取している人の割合を増やす。
  5. 食事中の脂肪の比率を25%以下にする。
  6. 純アルコールで1日に約60g飲酒する人の割合を減少する。「節度ある適度な飲酒」は、約20gという知識の普及。
  7. がん検診。胃がん、乳がん、大腸がんの検診受診者の5割以上の増加。

がんを防ぐための12か条(日本国立がんセンター)

1978年、日本の国立がんセンター(現・独立行政法人国立がん研究センター)は「がんを防ぐための12ヵ条[41]」を提唱している。

  1. バランスのとれた栄養をとる(好き嫌いや偏食をつつしむ)
  2. 毎日、変化のある食生活を(同じ食品ばかり食べない)
  3. 食べすぎをさけ、脂肪はひかえめに
  4. はほどほどに(強い酒や飲酒中のタバコは極力控える)
  5. たばこは吸わないように(受動喫煙は危険)
  6. 食べものから適量のビタミン食物繊維を摂る(自然の食品の中からしっかりとる)
  7. 辛いものは少なめに、あまり熱いものはさましてから
  8. 焦げた部分はさける
  9. かびの生えたものに注意(輸入ピーナッツとうもろこしに要注意)
  10. 日光に当たりすぎない
  11. 適度に運動をする(ストレスに注意)
  12. 体を清潔に

日本人のためのがん予防法(国立がん研究センター)

国立がん研究センターは、日本人のためのがん予防法(2013年4月18日改訂版)を次のように示している[42]

日本人のためのがん予防法
喫煙 たばこは吸わない。他人のたばこの煙をできるだけ避ける。
飲酒 飲むなら、節度のある飲酒をする。
食事 食事は偏らずバランスよくとる。

塩蔵食品食塩の摂取は最小限にする。
野菜果物不足にならない。
* 飲食物を熱い状態でとらない。

身体活動 日常生活を活動的に。
体形 適正な範囲に。
感染 肝炎ウイルス感染検査と適切な措置を。

がん検診

参照: がん検診

その他

アセチルサリチル酸(アスピリン)の少量長期服用で発癌のリスクを減少させることができるとの報告もある[43]

分類

「がん」は単一の細胞を起源とする。したがって、がんは発生母地となった細胞の種類(組織学的分類)と細胞の身体的部位(解剖学的分類)とで分類できる。

組織学的分類

組織型および各腫瘍組織型の記事を参照。

なお、病期分類に関しては、腫瘍学の項か、各癌の記事に詳しく記した。

成人のがん

成人の「がん」は普通、上皮組織に形成され、遺伝的あるいは内因的特性を持つ人々が、外的要因に曝された影響による長期間にわたる生物学的プロセスの結果として生じるとおおかたの場合は考えられている。肉腫は上皮由来ではないが、悪性腫瘍として癌と同様に検査・診断・加療される。

次に例を示す:(「がん」・「癌」については、明確に癌腫の場合は「〜癌」、疾患名の場合は「〜がん」と表記している)

幼児期のがん

「がん」は幼い子供にも発生し、場合によっては新生児にも発生する。異常な遺伝形質プロセスのために細胞の複製幼若化にたいして抑制が利かないので、制御されない増殖が早期より亢進し、がん進行も速い。

また、肉腫が多いことが特徴として挙げられる。そのため、外科治療による治癒が難しいとされている。だが、抗がん剤が効きやすいという特徴も持つといわれている。そのため、現在では7割が治療に成功するとされている。

幼児期のがんの発生ピーク年齢は生後一年以内にある。神経芽細胞腫は最も普通に見られる新生児の悪性腫瘍であり、白血病(leukemia)と中枢神経がんがその次に続く。女子新生児と男子新生児とは概して同じ発生率である。しかし、白人の新生児は黒人の新生児に比べてほとんどの種類のがんにおいて大幅に発生率が高い。

新生児の神経芽細胞腫は生存率が非常に良く、ウィルムス腫瘍網膜芽細胞腫も非常に良いが、他のものはそれほど良くない。

幼児期がんを次に示す:(概ね発生頻度順、「がん」・「癌」は明確に癌腫の場合は「〜癌」、疾患名の場合は「〜がん」とした)

診断

「がん」の診断には2つの状況がある。ひとつは臨床診断(特に病理検査)ともうひとつは集団検診(がん検診; 術後検診を含む)である。がんを根治する上で重要な点は「早期発見」と「全摘出手術の可能性検証」が挙げられる。言い換えると、集団検診と臨床診断とが効果的に機能して初めて、がん治療が成功に導かれる。また全摘出手術が困難な状況において、がんの種類によって異なる有効な治療法を選択する目的でも、臨床診断は重要である。一方、全摘出手術が成功した場合においても、再発がん、二次性がんの発生の懸念があるため、その局面においても術後定期検診は重要である。

細胞診断・生検組織診断

「がん」の組織は顕微鏡下での観察、すなわち検鏡によって、形態から鑑別される。判定像では多くの分裂中の細胞が観察され、細胞核のサイズや形状はばらばらであり、(分化した)細胞の特徴が消失している。これらは細胞診でも生検組織診でも確認できる特徴である。組織診では更に、正常な組織構造が失われていることや、周囲の組織(が一緒に採取されていれば、そこ)と腫瘍との境界が不明瞭であることが観察される。

生検組織診は、過形成異形成、上皮内癌などと浸潤癌との鑑別に有用である。

進行度

「がん」の進行度を表すものとして「TNM分類」や「ステージ分類」がある。

T(tumor、腫瘍)、N(nodes、所属リンパ節)、M(metastasis、遠隔転移)の3つの観点から進行度を分類したもの。T1~4、N0~3、M0~1の組み合わせで表現する。
  • ステージ分類
TNM分類を元に、がんの進行度と広がりの程度を合わせて表すことができるようにと新たに作成された。臨床に沿った分類であることから、邦訳では「臨床進行期分類」という。
ステージ0(上皮内癌)〜ステージIVの五段階で分類される。
  • ステージ0 がん腫瘍が上皮内にとどまっている。リンパ節への転移はない。
  • ステージI がん腫瘍が広がっているが、筋肉層でとどまっている。リンパ節への転移はない。
  • ステージII がん腫瘍が筋肉層を超えて浸潤しているがリンパ節への転移はない。または、腫瘍は広がっていないが弱若リンパ節への転移が見られる。
  • ステージIII がん腫瘍の浸潤が大きくなり、リンパ節に転移している。
  • ステージIV がん腫瘍がはじめにできた原発巣を超えて、他の臓器に転移している。
TMN分類と同様に、臓器別に細かく分類されているため、上記の分類から更に詳細に分類される場合がある。
たとえば胃がんの場合は、TNM分類との対比で以下のように定義されている[45]
胃がんの進行度分類(TNM分類)と病期
NO
リンパ節転移がない
N1
胃の領域リンパ節(※)のうち、
1~2個に転移している
N2
胃の領域リンパ節のうち、
3~6個に転移している
N3
胃の領域リンパ節のうち、
7個以上に転移している
M1
胃の領域リンパ節以外の
リンパ節に転移している
T1a (M)
胃の粘膜に限局している
IA IB IIA IIB IV
T1b (SM)
胃の粘膜下層に達している
IA
T2 (MP)
胃の筋層に達している
IB IIA IIB IIIA
T3 (SS)
胃の筋層を越え、
漿膜下層に達している
IIA IIB IIIA IIIB
T4a (SE)
がんが漿膜を超え、
胃の表面に出ている
IIB IIIA IIIB IIIC
T4b (SI)
がんが胃の表面に出たうえに、
他臓器にもがんが続いている
IIB IIIB IIIC IIIC

※胃の近くにあって転移しやすいリンパ節のことで、日本臨床外科学会の「胃治療ガイドライン」では13個のリンパ節を「領域リンパ節」 としている。

治療

昭和の時代においては、「がん」といえば、死刑宣告と同義であった。しかしながら、日本は1984年に対がん10ヵ年総合戦略、1994年にがん克服新10か年戦略を策定し、多額の研究資金を投入してきた。また、日本だけでなく欧米諸国でも死因の上位である「がん」の研究には多額の人材及び資金を投じてきた。その結果、2010年代までに、「がん」の治療成績は急激に上がった。実際、多くのがんでは初期(1期)であれば9割以上の5年生存率(事実上の完治)となっている。ただし、膵癌のように今でも治療が困難ながんも存在する。また、末期(4期)がんの治療は現在でも困難を伴う。

「がん」治療の代表的なものを次に挙げる。

ガン細胞は血管新生を誘引し大量の血管を生成するが、この結果できた血管は細い上に層構造の表皮部分が完全には形成されない脆い血管である。そのため、この血管新生を阻害する治療法や、逆にガンに伸びた血管の表皮を正常な状態にして抗がん剤をガン細胞に届きやすくする治療が研究されている。

医学の発達でがん治療成績も上がってきたが、がんは基本的に治りにくい病気である。医学の世界では、がんは完治と呼ばず、寛解(かんかい=とりあえず病変が見えなくなった状態)と呼ぶ。

2014年1月、鳥取大学医学部は、「自身がクローニングしたRNA遺伝子の機能解析に従事している際、この遺伝子に関連して発現変動する単一のマイクロRNAを悪性度の高い未分化癌に導入すると、容易に悪性度を喪失させることができ、正常幹細胞へ形質転換できるという画期的な治療法を発見した」と発表した。大学では「動物実験段階までである」としているが、「研究グループ代表によると、あらゆる癌に対応が可能で、現在実用化に向けて研究中であるという。[48]

なお、がんの治療の詳細については、腫瘍学の項に詳しく記した。

※日本におけるがんの在宅医療が適切なので、英語版の翻訳は割愛した。

プレシジョン・メディシン(Precision Medicine)

プレシジョン・メディシンは日本語では「精密医療」と訳されるが、患者の個人レベルで最適な治療方法を分析・選択し、それを施す治療。最先端の技術を用い、細胞遺伝子レベルで分析し、適切な薬のみを投与し治療を行う。アメリカ合衆国ではすでに一般的な方法として選択されている[49]

がん治療後の生活の質の向上

がん治療後の最大の関心事は再発の有無であり、又は、がんが残っている場合にはその推移である。このため、治療後も主治医による定期的な検診を受けて状況を正しく把握しつつ生活を再建していくことが肝要である。

がん治療は手術による切除などを伴うことが多く、治療後の生活は、例えば治療によってがんそのものは完治した場合であっても、大きく影響を受けることが多い。がんができた場所によって治療により影響を受ける機能は千差万別であり、対処法もそれぞれに異なる。一般に、切除などによって失われる体の機能をできる限り小さくし、失われた機能を補う手段を用いて、治療後の生活の質(QOL, Quality Of Life)を従来よりも向上させる努力が進められている。

失われた機能を補う手段として以下のものがある。術後は局所的な失われた機能そのものだけでなく、関連して周囲の障害や不自由さが生じることも多いので、それぞれにおいて必要なリハビリを行うことも重要である。

ストーマ

直腸がんで肛門に近いところにがんができた場合や肛門にがんができた場合、人工肛門(消化器ストーマ)が作られる。また、膀胱がんで膀胱と尿道をとる必要がある場合、人工膀胱を用い、尿の排泄口である尿路出口(尿路ストーマ)が作られる。手術後、ストーマによる排泄をスムーズに行えるようにするケア(ストーマケア[50])の方法が十分に習得できてから退院する。ストーマがあっても入浴はでき、体力が回復すれば仕事や学業に復帰することも可能である。

気管孔

気管孔は鼻または口から肺へ空気を導入して呼吸することができなくなる場合に、気管を外部へつなげる穴を開けて(気道切開)呼吸を確保するものである。首のつけねの前の位置に丸い穴をあける。気管孔は治療の過程で呼吸を確保するために一時的に設ける場合もあり、この場合は通常の呼吸が可能になると共に閉じられる。 他方、咽頭、喉頭、またはその近くにがんがあり、治療により咽頭を全部切除しなければならない場合、そのままでは食事も呼吸もできなくなるので、口に通じる食道を気管と完全に分けて形成し、気管の出口を気管孔につなげる。この場合を永久気管孔という[51]

永久気管孔を設けた場合、首に穴があいたままになる。術後の日常生活が受ける主な影響として次のものがある。

  • 入浴時などに気管孔に水が入らないように注意する。水泳、潜水は、できない。
  • 声帯がないので声がでなくなる。筆談やジェスチャーで会話する他、電気発声法(人工喉頭)、食道発声法などを習得することにより、声を取り戻すことも可能である。
  • 食事は、においをかぐことができなくなるなどの影響を受けるが、何でも食べられる。

再建術

エピテーゼ

体の表面につける人工物をエピテーゼという。手術によって体の外見に関わる変化を生じてしまった場合、機能的な不自由さのみならず、精神的なダメージを被ってしまう場合もあるが、エピテーゼを用いることで改善を図れる場合がある。日本では2006年9月現在、エピテーゼは医療行為として認められておらず、保険外となる。

人工乳房

乳がんの治療では、抗癌剤、放射線治療の併用により乳房温存できる場合が増えている。治療法とそれによる様々な影響、治療後のリスクなどについて、十分に医師と患者の双方が納得して治療を行うことが重要である。切除手術を行った場合、人工乳房が各種開発されているので用いることができる。

顔面エピテーゼ

頭頸部がんでは治療によって顔面の一部の機能が損なわれたり、一部が失われたりする場合がある。手術に放射線治療、化学療法を併用することにより、失われる機能を最小限にする努力が進められており、切除範囲は縮小する傾向である。また、再建術も多く行われている。術後に予想される変化とリスクを医師と患者が話し合い、双方が納得して治療を進めることが重要である。喪失した顔面の各部に応じてエピテーゼを制作できる。医療用の接着剤またはインプラントにより装着する。近年は極めて自然な仕上がりのエピテーゼを用いることが可能になってきている。詳細は顔面エピテーゼの項目参照。

耳のエピテーゼ
耳下腺がんなどの治療では、がんの進行の度合いによって治療により聴力をはじめどの機能までを残せるか、十分な検討が必用である。耳の切除が必要となった場合、外耳の一部が残せれば耳エピテーゼを用いても強度を保て、眼鏡の使用にも耐える。
鼻のエピテーゼ
鼻は呼吸によって湿気にさらされる部分であり、外見のみでなく機能的部分も要求され、開発が進められている。
目およびその周囲のエピテーゼ
上顎がんなどが深く進行して目を含めて切除する必要がある時、残った眼窩の上に用いるエピテーゼを制作し装着できる。
顎義歯

義肢(義手・義足)

骨肉腫が四肢に発生した場合、かつては切断することが必須とされたが、最近では切断せずに腫瘍を切除することも可能になった。切断した場合に用いる義肢の機能も大幅に改善されている。

補遺

がんの治療によって失われた臓器の機能を補う手段が得られない場合もある。このような場合には、生活の仕方で対応するか、又は、医療的に補充する。

胃がんによって胃を全摘出した場合など、胃に代わるものは用意できないため、食道から直接小腸へと食べ物が入るようになる。少しずつ時間をかけ、何回にも分けて食べることにより、対応できる。

甲状腺がんの場合、少しでも甲状腺が残せた場合甲状腺ホルモンは分泌されるが、甲状腺を全摘出した場合には分泌されなくなる。この場合、術後は甲状腺ホルモンを生涯にわたって処方してもらう。

がんと統合失調症

統合失調症の患者はがんによる死亡率が低いと言われている。統合失調症治療に使われる向精神薬が抗腫瘍効果を持つためであるとされている[52]

がんの一覧

脚注

出典

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  2. 2.0 2.1 Geoffrey M.Cooper『クーパー細胞生物学』pp.593-595
  3. 日本成人白血病治療共同研究グループ・わかりやすい白血病の話2017/07/20閲覧
  4. ジョン・ブリッグズ『フラクタルな世界』松下 貢 監訳、深川洋一訳、丸善株式会社、1995年,102頁、さらに、この引用元は、米のNational Cancer Instituteである。
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  7. 南都伸介監修『閉塞性動脈硬化症(PAD)診療の実践』南江堂、2009年。p4。[1]
  8. 8.00 8.01 8.02 8.03 8.04 8.05 8.06 8.07 8.08 8.09 8.10 8.11 8.12 8.13 8.14 8.15 8.16 8.17 8.18 8.19 8.20 8.21 8.22 8.23 8.24 8.25 8.26 8.27 8.28 『消された科学史』みすず書房、pp.79-122
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  11. 11.0 11.1 厚生労働省>人口動態統計>平成23年度>第6表 死亡数・死亡率(人口10万対),死因簡単分類別
  12. 12.0 12.1 厚生労働省>人口動態統計>平成23年度>第7表 死因順位(1〜5位)別死亡数・死亡率(人口10万対),性・年齢(5歳階級)別
  13. 13.0 13.1 厚生労働省>人口動態統計>平成25年度>第6表 死亡数・死亡率(人口10万対),死因簡単分類別
  14. 14.0 14.1 厚生労働省>人口動態統計>平成25年度>第7表 死因順位(1〜5位)別死亡数・死亡率(人口10万対),性・年齢(5歳階級)別
  15. 15.0 15.1 15.2 厚生労働省>人口動態統計>平成27年度>第6表 死亡数・死亡率(人口10万対),死因簡単分類別
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参考文献

関連項目

外部リンク

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