成層圏

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テンプレート:地球大気の鉛直構造 成層圏(せいそうけん、stratosphere)とは、地球大気の鉛直構造において対流圏中間圏の間に位置する層である[1]。対流圏と成層圏との境目は対流圏界面(高度は極地で約8km、緯度が低くなるに従って高くなり赤道付近で約17km)、成層圏と中間圏との境目は成層圏界面(高度約50km)と呼ばれる[1]

成層圏の特徴

対流圏や中間圏では高度とともに温度が低くなるのに対して、成層圏では逆に、高度とともに温度が上昇する[1]。成層圏下部、対流圏界面付近では気温が約-56℃前後であるのに対して、中間圏との境の成層圏界面付近では-15℃から0℃になることがある。ただし、上空へ行くほど高温といっても成層圏の温度上昇率は一定ではない。まず、対流圏界面の高さを10kmとすると、ここから上に20kmくらいまでの温度は対流圏界面とほぼ等温状態が保たれる。そこから約15kmくらいまでは温度がわずかに上昇する層があり、さらにそこから成層圏界面までは温度が急激に上昇する。

成層圏で高度とともに温度が上昇するのは、成層圏の中に存在するオゾン層が太陽からの紫外線を吸収するからである。しかしオゾン濃度が一番高いのは高度約20~25km付近だが、実際に成層圏内で温度が一番高いのは高度約50km付近である。この理由は、オゾン濃度がどうであれ上部のオゾン層ほど濃度の高い紫外線を吸収することもでき、また、上層ほど空気密度が低いことから温度の上昇率も大きいためである。この理由から成層圏では実際のオゾン濃度が一番高い付近よりも上に温度が最大の場所がある。

成層圏という名称からは、この層は対流圏のような擾乱のある層ではなく安定した成層であるかのような印象を受ける。たしかに対流圏ほど気象は活発ではないが、完全な成層でもない。成層圏の発見はおよそ100年以上前にもさかのぼる。1902年にフランス気象学者ティスラン・ド・ボール(1855年~1913年)が気球観測によって対流圏とは構造がやや異なった層があることを発見し、翌年に発表した。その発表内容は、成層圏は対流圏とは異なり成層圏下部は温度が低く、上部は温度が高いというものであった。したがって、下部に重い気体が、上部に軽い気体があるため、上下の混合は起こらないと推定したことから、当時はこの層は成層であると考えられてきた。これが現在のstratosphere 成層圏という名前の由来である。語源となったラテン語の stratusは、英語で 'a spreading out'(広がり)の意である。その後、高層気象観測の技術も発達し成層圏の本格的な研究により、実際は成層圏でも上下の混合が起こっており、成層圏内でも風が吹いていることが分かった。

成層圏内での風の分布には興味深い特徴があり、まず成層圏下部では対流圏上部の偏西風の影響を受け、おおむね西風が吹いている。成層圏上中部では次のような現象が見られる。付近は夏に白夜という現象が起きる。したがって、季節が夏の半球では太陽があたる時間が低中緯度よりも高緯度の方が長くなる。そのため極付近ではオゾン層によって大気がどんどん暖められ、結果として高圧状態になる。逆に低緯度では相対的に低圧である。このため、高緯度側の高圧部から低緯度側の低圧部に向けて気圧傾度力が生じる。気圧傾度力は低緯度から高緯度に向かうコリオリの力と釣りあい、これを満たすように夏半球が東風になる。したがって、成層圏上中部では特別な場合を除いて、夏季は常に東風、すなわち偏東風が吹いている。これを成層圏偏東風と呼ぶ。また冬には逆の現象が起き、極付近では夏とは逆に一日中太陽があたらない状態なので低緯度付近と比べて低温、すなわち低圧となる。よって、低緯度から高緯度に向けて気流が生じ、コリオリの力を受けて偏西風となる。これを成層圏偏西風という。この現象は季節によって変化する風、すなわち季節風と捉えることができる。この現象はいわば「成層圏のモンスーン」である。この循環に加えて、夏の極上空では熱圏へ向かう上昇気流、冬の極上空では熱圏からの下降気流が起こっており、これらをまとめてブリューワー・ドブソン循環と呼んでいる。成層圏偏西風、成層圏偏東風どちらも最大風速は約50m/sである。

このように成層圏は名前のように成層ではなく大気擾乱がある。ただし、上で述べたことは通常の季節変化を示したものであり、冬季に成層圏突然昇温という現象が起こった際には、成層圏偏西風が東風になることがある。

脚注

関連項目

テンプレート:地球の大気