朝鮮民主主義人民共和国の首相

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朝鮮民主主義人民共和国の首相(ちょうせんみんしゅしゅぎじんみんきょうわこくのしゅしょう)は、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)における行政府の首長である。

1948年9月9日の建国以降、1972年12月27日朝鮮民主主義人民共和国社会主義憲法の制定と1998年9月5日の同憲法改正に伴う国家機構の再編によって、北朝鮮の行政府ならびに首相の呼称・権限は改められている。

首相(1948年 - 1972年)

1948年9月8日朝鮮民主主義人民共和国憲法(1948年憲法)制定により、同国の国家主権の最高執行機関として内閣が設置された。そして、内閣の首長として首相の職が設けられ、朝鮮民主主義人民共和国政府の主席として位置づけられた。翌日の建国に伴い、金日成が初代首相に就任した。

選出

1948年憲法第37条第1項によれば、最高人民会議が内閣を組織することになっている。そのため、内閣の構成員である首相は最高人民会議によって選出されることになる。

職権

  • 朝鮮民主主義人民共和国政府の主席として、内閣会議を招集し、指導する。
  • 内閣決定に署名し、公布する。
  • 最高人民会議の休会中、最高人民会議常任委員会委員の任命を提議する。

内閣の職権・任務

参考として、1948年憲法における内閣の職権・任務を掲げる。首相は内閣の首長としてこれらを統括・指導することになる。

  1. 憲法および法令に依拠して内閣決定および指示を公布する。
  2. 省および直属機関の事業を統括し、指導する。
  3. 対外関係における全般的指導および外国との条約締結。
  4. 対外貿易の管理。
  5. 地方主権機関(各級人民委員会)の指導。
  6. 貨幣および信用制度の組織。
  7. 国家予算の編成、国家予算および地方予算に入る租税および輸入の編成。
  8. 国家産業・商業機関・農村経営機関および国家運送・逓信機関の指導。
  9. 社会秩序の維持、国家の利益保護および公民の権利保障に関する対策の樹立。
  10. 土地・資源・山林および河海の利用に関する基本原則の樹立。
  11. 教育・文化・科学・芸術および保険に関する指導。
  12. 人民の経済および文化生活の水準を向上させるための政治的、経済的、社会的対策の樹立。
  13. 朝鮮人民軍編制に関する指導、朝鮮人民軍高級将官の任免。
  14. 副相(副大臣)、主要産業機関の責任者および大学総長の任免。
  15. 各省の省令・規則または道人民委員会の決定・指示が、憲法・法令・政令または内閣の決定・指示に抵触する場合、これを廃止することができる。

内閣は最高人民会議に国政上の責任を負い、最高人民会議休会中は最高人民会議常任委員会に責任を負う。

歴代内閣首相

氏名 就任 退任 政党
1 金日成 1948年9月9日 1972年12月28日 朝鮮労働党

政務院総理(1972年 - 1998年)

1972年12月27日、朝鮮民主主義人民共和国社会主義憲法(1972年憲法)が制定され、従来の内閣は政務院に改組された。

同憲法では、政務院は最高主権機関の行政的執行機関すなわち最高人民会議に附属する行政執行機関として位置づけられ、国家元首として絶大な権限を有する朝鮮民主主義人民共和国主席(国家主席)および国家主権の最高指導機関である中央人民委員会の指導の下に事業を行うとされた。これにより、政務院の権限は大幅に低下することになった[1]

政務院の首長として政務院総理の職が設置され、翌日、国家主席に前内閣首相の金日成が、政務院総理に前内閣第一副首相の金一が選出された。

任免

国家主席の提議により、最高人民会議が政務院総理を選出・解任する。

職権

  • 政務院副総理、委員長(大臣級)、部長(大臣)、その他の政務院構成員の任免を中央人民委員会(1992年憲法では最高人民会議および最高人民会議休会中は中央人民委員会)に提議する。
  • 政務院全員会議[2]および政務院常務会議[3]を主宰する(政務院会議の招集・指導権は国家主席にも認められている)。

政務院の職権・任務

1972年憲法および1992年憲法における政務院の職権・任務は以下の通り。政務院総理は国家主席(国家元首、中央人民委員会の首班)の指導の下、これらを統括する。

  1. 各委員会・各部・政務院直属機関・地方行政委員会事業を指導する。
  2. 政務院直属機関を改廃する。
  3. 国家の人民経済発展計画を作成し、その実行対策を立てる。
  4. 国家予算を編成し、その執行対策を立てる。
  5. 工業、農業、建設、運輸、逓信、商業、貿易、国土管理、都市経営、教育、科学、文化、保健、環境保護、観光その他各部門の事業を組織・執行する[4]
  6. 貨幣および銀行制度を強固にするために対策を立てる。
  7. 外国と条約を締結し、対外事業を行う。
  8. 人民武力建設に対する事業を行う。 ※1992年憲法では削除。
  9. 社会秩序の維持、国家の利益の保護、公民の権利の保障のための対策を立てる[5]
  10. 政務院決定・指示に反する国家管理機関(行政機関)の決定・指示を廃止する。
  11. 政務院決定を採択し、指示を出す。

政務院は最高人民会議、国家主席、中央人民委員会に対して国政上の責任を負う。

歴代政務院総理

氏名 就任 退任 政党
1 金一 1972年12月28日 1976年4月29日 朝鮮労働党
2 朴成哲 1976年4月29日 1977年12月15日 朝鮮労働党
3 李鐘玉 1977年12月15日 1984年1月27日 朝鮮労働党
4 姜成山 1984年1月27日 1986年12月29日 朝鮮労働党
5 李根模 1986年12月29日 1988年12月12日 朝鮮労働党
6 延亨黙 1988年12月12日 1992年12月11日 朝鮮労働党
7 姜成山 1992年12月11日 1998年9月5日 朝鮮労働党
* 洪成南(代理) 1997年2月21日 1998年9月5日 朝鮮労働党

内閣総理(1998年 - 現在)

1998年9月5日の朝鮮民主主義人民共和国社会主義憲法改正(1998年憲法)により国家機構は大幅に再編された。国家主席と中央人民委員会は廃止され、政務院は内閣に改組された。

1998年憲法では、内閣は最高主権機関の行政的執行機関であり全般的な国家管理機関と位置づけられ、1972年憲法および1992年憲法における政務院よりも権限がやや強化された[6]。そして、内閣の首長として内閣総理の職が設置され、朝鮮民主主義人民共和国政府の代表として位置づけられた。

任免

最高人民会議によって選出・解任される。

職権

  • 朝鮮民主主義人民共和国政府の代表として、内閣事業を組織し、指導する。
  • 内閣副総理、委員長(大臣級)、相(大臣)、その他の内閣の構成員の任命を最高人民会議に提議する。また、最高人民会議休会中、副総理、委員長、相、その他の内閣の構成員の任免を最高人民会議常任委員会に提議する。
  • 内閣全員会議[7]および内閣常務会議[8]の主宰。

内閣の職権・任務

1998年憲法および現行憲法(2009年制定、2010年一部修正)による内閣の職権・任務は以下の通り。総理は内閣の首長としてこれらを統括・指導する。

  1. 国家の政策を執行するための対策を立てる。
  2. 憲法および部門法に基づき、国家管理と関連する規定を制定または修正、補充する。
  3. 内閣の委員会、省、内閣直属機関、地方人民委員会の活動を指導する。
  4. 内閣直属機関、重要行政経済機関、企業所を新設または廃止し、国家管理機構を改善するための対策を立てる。
  5. 国家の人民経済発展計画を作成し、その実行対策を立てる。
  6. 国家予算を編成し、その執行対策を立てる。
  7. 工業、農業、建設、運輸、逓信、商業、貿易、国土管理、都市経営、教育、科学、文化、保健、体育、労働行政、環境保護、観光、その他の諸部門の事業を組織執行する。
  8. 貨幣および銀行制度を強固にするための対策を立てる。
  9. 国家管理秩序を確立するための検閲、統制事業を行う。
  10. 社会秩序の維持、国家および社会協同団体の所有と利益の保護、公民の権利保障のための対策を立てる。
  11. 外国と条約を結び、対外活動を行う。
  12. 内閣の決定、指示に違反する行政経済機関の決定、指示を廃止する。
  13. 内閣決定および指示を出す。

内閣は最高人民会議に国政上の責任を負い、最高人民会議休会中は最高人民会議常任委員会に責任を負う。

歴代内閣総理

氏名 就任 退任 政党
1 洪成南 1998年9月5日 2003年9月3日 朝鮮労働党
2 朴奉珠 2003年9月3日 2007年4月11日 朝鮮労働党
3 金英逸 2007年4月11日 2010年6月7日 朝鮮労働党
4 崔永林 2010年6月7日 2013年4月1日 朝鮮労働党
5 朴奉珠 2013年4月1日 (現職) 朝鮮労働党

脚注

  1. 平井(2011年)、118 - 128ページ。
  2. 国家管理事業において生ずる重要な問題を討議・決定する。
  3. 政務院全員会議で委任した問題を討議・決定する。
  4. 1972年憲法では「工業、農業、対内外商業、建設、運輸、逓信、国土管理、都市経営、科学、教育、文化、保健等の事業を組織・執行する」とされていた。
  5. 1992年憲法では「社会秩序の維持、国家および協同団体の所有と利益の保護、公民の権利の保障のための対策を立てる」とされた。
  6. 平井(2011年)、162 - 166ページ。
  7. 行政経済事業で提起される新たな重要問題を討議・決定する。
  8. 内閣全員会議が委任した問題を討議・決定する。

参考文献

  • 重村智計『北朝鮮データブック』(講談社〈講談社現代新書〉、1997年)
  • 重村智計『最新・北朝鮮データブック』(講談社〈講談社現代新書〉、2002年)
  • 礒﨑敦仁・澤田克己『LIVE講義 北朝鮮入門』(東洋経済新報社、2010年)
  • 平井久志『北朝鮮の指導体制と後継 ― 金正日から金正恩へ』(岩波書店〈岩波現代文庫〉、2011年)

関連事項

外部リンク

  • 北朝鮮WEB六法 ― 朝鮮民主主義人民共和国社会主義憲法の全文(日本語訳)が掲載されている。