荒らし

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テンプレート:修正 荒らし(あらし、Troll)とは、物事の順列を無作為に乱すことで、奪うことを指す語。またそのような行為に及ぶ物。特にチャット電子掲示板ブログウィキなどの、不特定多数の人間が参加する形態のコンピュータネットワーク上のリソースに対して、不合理なメッセージの送信や妨害行為を継続的に行っている物を表す。

概要

荒らしとは「ネットワークの場にふさわしくない投稿を繰り返し続ける者、こと」であり、多くは「非生産的な要因による悪意」によってなされ、場の議論・コミュニティの破壊を試み、機能不全に陥れることを直接の目的としている。

周囲に注意を喚起されても無視し続け、さらに悪質な荒らし行為に走り出したり、「自分は間違っていない」と開き直り、反論もする。参加者の言及を受けて、一旦反省の色を見せても、間を置かずにそのことに対して反発して、再度荒らし行為に及ぶこともある。

掲示板の利用者間のコミュニティの間では荒らし行為による書き込みは全て「放置」し、「一切返信しない」手段も推奨されている。

荒らしを発生させやすい土壌を放置しているような掲示板やホームページなどの個人サイトの運営者は、自ら荒らしを招いているとして批判されることもあるが、荒らしは運営者にも執拗に絡んでいき、運営者は自らが関わっていない冤罪を被っていることも多い。

なお、荒らしに対する明確な定義は必ずしも存在しない[1]ため、はじめに書き込みをした本人に「荒らし」の意図はなくとも、書き込みの内容[2]によっては周りの人間に荒らしレッテルを貼られている内に、その内本人が本格的に荒らし行為を開始し、結果的に荒らしに仕立て上げてしまうこともあり得る。さらに、自分は荒らしではなく不適切な(問題のある内容)スレッドに鉄槌を下している、とあくまでも善意からやっているという態度に出る者[3]すらいる。これに関連して、当初は(自分基準で)好ましくないスレッドを潰していたが、潰し切ると今度は関連した内容の話題の通常スレッドを潰そうと試み、これも潰し切るとさらに今度は有益なスレッドに対してですら牙を剥き、完全な荒らしに豹変する、取り返しのつかない事態へ発展する場合も存在する。2ちゃんねるなどでは管理人(スレッド主や投稿者)の意図にそぐわない書き込みが荒らしとされることが多い。

書き込んだ際、アクセス元のプロバイダや市町村を特定できるリモートホストIPアドレスを表示させるサイトや、管理人がよく巡回しているサイトは荒らしに遭いにくいということもある。

確立されたルールやそれに基づく徹底した不適切な話題の投稿の削除、管理人が荒らしによる詭弁には耳を傾けない方針をとるなど、その場から荒らしを排除する風潮が成立していれば、居場所のなくなった荒らしは、根負けして自然に出ていくか、発言を抑えるようになると考えられる。逆に参加者が詭弁を見抜けずに耳を傾けてしまうと、管理人の立場の人物が荒らしによって順当な管理作業を悪化させられ、場の議論が荒らしによって妨害された状態のまま、放置されてしまう場合もある。

英語ではvandal(vandalism)という。他に、釣り用語のトローリングに引っかけて、「煽り」(参加者の感情を逆撫でするような発言)や「釣り」(参加者の反応を誘うような発言)など暴言詭弁を吐いて議論を別方向にずらすことをTrollと呼ぶ。なお、ウィキペディアにおける荒らしは vandalism(ヴァンダリズム) といい、多くの言語でこれに準じる語を用いている。

荒らしによる犯罪性

悪質性が高いものと判断された場合は、犯罪電子計算機損壊など業務妨害罪脅迫罪名誉毀損罪など)として刑事事件に発展する場合もある[4]が、犯罪予告を除けば、荒らしで刑事告訴されることは極めて稀だ。

これは荒らし行為がクラッキングなどのような、明確な文章で定義できる行為とされにくく、単なる迷惑な発言で終わってしまうことが多いためだ。かつて掲示板荒らしの権化と呼ばれた「アリス・リデル」[5]は自著の中で、「最も迷惑かつ最も犯罪となりにくい行為」と呼んでいる。

荒らしが犯罪となりにくい理由は次の通りだ。

判別しにくい
表面上荒らしとしか思えない投稿などであっても、そのコミュニティの履歴をよく調べない限り、第三者(客観的)には「荒らし」か「普通の投稿」なのか分かりにくい。
アクセス元のリモートホストやIPアドレスを特定できたとしても、せいぜいプロバイダと地域(市・町・村単位)しか特定できず、住所・氏名などの個人情報が特定できない。
該当する法律がない
荒らしはID・パスワードを盗む不正アクセスなどに該当せず、長期間に渡る明らかな迷惑行為や、犯罪予告などの脅迫めいた発言、違法な画像の貼り付けなどを除けば、荒らし自体を禁止する法律は存在せず、立法しにくい。
損害が発生していない
荒らしプログラムなどを使った荒らしであったとしても、使用者がそれを明かさない限り、判別は不可能だ。また、コミュニティが利用者の投稿を使用法とする以上、単なる投稿でしかない荒らしは何の損害も与えないことになってしまう(長期間に及ぶ嫌がらせなどを除く。但し商業活動を行っているウェブサイトの場合は業務妨害などになる可能性はある)。

表面上を考えれば、何らかの法律に触れそうなものだが、荒らしそのものに対処できる法律が存在せず、荒らし行為に付随した迷惑行為によって裁かれた判例しかない。また、仮に「荒らしを禁止する法律」を制定すると、「荒らしではない通常の発言」も巻き込んで該当させてしまう可能性を含むため、単純にはいかない。また、ネット上には荒らしのターゲットになってしまっている掲示板、もしくはターゲットにすることのできる掲示板も多数点在しているため、実際その全てを管理することも難しい。

発祥から今日へ

荒らし行為はその多くが、荒らし書き込みがしやすいことから、電子掲示板やブログなどに対してのものだ。

掲示板"荒らし"やチャット"荒らし"などのように、Web上のコミュニケーションスペースにおいて、不快な参加者や書き込みに対して最初に"荒らし"と名づけたサイトは1・2チャットというチャット・電子掲示板であり、1998年平成10年)頃だ。"荒らし"と名づけたヒントは、たまたま入居していたビル内の「ビル荒らしに注意」と書かれた掲示物が印象に残っていたためだ。

荒らしが起こる時期は、インターネット電子掲示板の登場時期と重なる。パソコン通信の時代にも散見はされたが、当時は通信料金が無制限の従量制のみで、定額の常時接続が提供されていなかったため、参加者自らが多額の費用を支出して荒らし行為を行うのは何のメリットもないとも考えられ、少なかった。

近年は通信料の定額制の実現および普及とともに、一般的利用者による荒らし行為の増加を見ている。World Wide Webが普及する以前、ネットニュースにおいても、一部のニュースグループ(日本語のグループを含む)でコメントスパムが見られることもあった。

インターネットにおいては、1995年平成7年)にはすでに掲示板への悪戯で意地悪な書き込みが存在していた。しかし、当時はまだ個人がCGI実行の可能なWebスペースを持てる機会が少なく、掲示板は専ら企業ベースでの情報交換や、ISPなどがサービスとして運営するケースがほとんどで、匿名状態で閲覧投稿ができる形式ではなかったことから、本格的な荒らしの被害は発生していなかった。

匿名での閲覧投稿が可能な、個人ベースもしくは小規模団体の運営する掲示板サービスがメジャー化してきたのは1996年平成8年)に入ってからのことで、荒らしによる被害が具現化してきた時期も一致する。当時の荒らしはNetscape Navigatorのhelpファイルをコピーペーストするなど、大量の文章を投稿するものが一般的であった。これは当時の通信環境が貧弱なものであり、また閲覧する環境においても、1MB程度のテキストを読み込んだだけでウェブブラウザがフリーズしてしまう脆弱性を悪用したものと思われる。

本格的な荒らし被害が叫ばれるようになったのは1997年平成9年)の初頭、当時のメジャー地下系webサイト、あやしいわーるど掲示板において、「ゲスッ」と名乗る荒らし集団が発生して以降のことだ。

彼らは自らを「インターネット愚連隊」と称することで、目をつけた掲示板を様々な手法を用いて荒らし回り、次々と閉鎖に追い込んだ。同年冬頃に内部分裂で解散するまで、千数百の掲示板を破壊したと言われている。その中には、新聞沙汰にまで発展し国内初のサイバーテロ事件と呼ばれる「農水省オウムソング事件」なども含まれる。彼らの残した負の遺産は多大であり、「ゲスッ」消滅後も彼らの残した荒らし手法やプログラムなどを悪用するスクリプトキディや、さらに高性能な荒らしプログラムを開発・配布する者の登場などにより、掲示板管理者は対策を立てることになった。

しかしながら「ゲスッ」消滅以降、集団で掲示板を攻撃するようなグループは今日に至るまでほとんど発生せず、また掲示板などのサイトなど自体が荒らしに対抗する様々な措置を講じてきたため、今日において荒らしの被害は深刻な問題ではなくなってきている。しかし、その量は決して減っておらず、ネットワークの発達とともに逆に増加の一途を辿っている。ネットワークゲームの普及などもこれに拍車をかけている部分もある。

現在の荒らしとは、荒らし行為自体を趣味にしているようなグループによる犯行ではなく、そのネットワークの場の内容・主旨や参加している人々に反感を持った者が、一時的な感情に流されて行う迷惑行為がほとんどだ。

その多くは匿名で書き込まれているものだが、匿名化することにより人の痛みを理解し共感性を司る内側前頭前皮質が麻痺してしまい、自分の行為の善悪を客観的に判断することを放棄し、自分の意にそぐわない相手を感情の赴くままに攻撃することとなるからだ、と考えられている[6]。また、荒らし行為者の性質によっては執拗かつ大規模な荒らしを行うこともある。

また、組織的な荒らし行為が根絶されたと言うわけでもなく、現在も気に入らないウェブサイトを潰そうとしているネットウォーカーの集団は依然として活動しており、場合によってはエスカレートして攻撃目標の個人情報を不正に取得・公開する集団まで現れることも時折ある。

種類

  • 場の目的にあわないメッセージの送出。例えば
  • 意味不明な文字列(適当にキーボードを叩いて入力したようなもの)や、意味のない文章の連続投稿。ただし「くぁwせdrftgyふじこlp」はインターネットスラングとして使われるので、荒らしと見なされることが少ない。
    • スレッドフロート型掲示板において)意味もなくスレッドを上げ続ける、age(上げ)荒らし。
    • またはスレッドを人の目に付きにくくしながら、そのまま使用不能に陥れようとする、sage(下げ)荒らし。
    • 新しく立ったスレッドに行われる、一番乗りまたは、特定の番号取得だけを目的とした無意味な投稿。スラッシュドットでは「First post」、Yahoo!掲示板では「キリ番ゲット」、「2ちゃんねる」などでは「2ゲット」と呼ばれる行為。(2ちゃんねるでは、スレッドを立てた利用者の連続投稿を妨害する場合を除いて、荒らしと見なされないことが多い)
    • 「書けるかなー?」、「テスト」など、テスト行為の不適切な書き込み。
    • 無意味、または見た人を不快にさせるアスキーアートや定型文などのコピー・アンド・ペーストの貼り付け。
    • これらの行為を、レス数やデータ量上限が決められているスレッドで繰り返しスレッドを潰す、埋め荒らし
  • 荒らし行為を排除するため自主的に活動した際に結果として自分が荒らしになる行為。
    • 活動理念が場にふさわしいものであれば、理念そのものに不当性はないが、経過によっては管理者よりも発言権が増し、電子自警団的に自分勝手な持論を書き込み、他のユーザーの書き込みを削除するため、自由な投稿ができず結果として場を荒らしてしまう。
    • 上記の行為に反応して行われる、過剰な叩き(非難・指弾)行為、及びそれに便乗する行為。
  • 自作自演行為。主に第三者のふりをして自分を擁護する発言をし、自らの行為を正当化しようとする場合に行われる。
  • そのコミュニティの中核を成している人物のハンドルやそのサイトの管理人を騙り、意図的に他の参加者を錯乱させようとする、成りすまし行為
  • ある特定の者や人物に執拗にまとわりつき、嫌がらせなどを繰り返す粘着行為。
  • 荒らしプログラム(PerlDUKEドールリカなど)を使用した長時間に及ぶ迷惑投稿、またはDoS攻撃を行い、サーバをダウンさせ、ネットワークを使用不能に陥れようとする行為。
  • 無修正ポルノ画像児童ポルノ画像など、わいせつな画像を投稿する行為。管理者が掲載を放置しているとスポンサーサイト、サーバーユーザー側のほうで強制的に閉鎖させられる場合がある。さらに自宅サーバーで運用されている場合は管理者が刑事告発される可能性もあり得るが、これらは荒らしを逸脱した完全な犯罪だ。
  • 管理人自らが掲示板内で参加者に対し、暴言を行うサイトも存在する。
    • 児童ポルノ監視委員会における掲示板(現在は掲示板自体は閉鎖)が、この形態だった。
  • 意図的に、かつ過度に繰り返されるマルチポスト行為。
  • 常識に反した書き込みを行う行為。
    • 特定の事柄に過度に拘り、荒らしに走る行為。
    • 煽りや釣り行為などの誹謗中傷
    • 場の空気を無視した書き込みを繰り返し行う行為。
    • ウィキペディアの記事上において悪戯、嫌がらせなどで適当に要出典などのテンプレートを乱用する行為(Wikipedia:タグ爆撃を参照)。

対処法

一般的な荒らしに対しては、「警察に通報する」「こんなことをして何が楽しい?」などと反応するのは逆効果だ。また、対策を取った後で「荒らしさん、もう終わりか?」と煽るのも良くない。掲示板の管理者はログを保全したうえで、無言で荒らしを消去し、特定のリモートホストやプロキシサーバを経由した書き込み、「NGワード」を含む投稿を一切禁止することが求められる。そして一時的に掲示板を停止し、荒らしが去るのを待つ。再開時にURLを変更するのも効果がある。スクリプトキディが繰り返し荒らしているのであれば、よりセキュリティの高い掲示板システムを使用することでも被害を防げる[7]

  • 荒らしは他人の反応を楽しみにしているもの、あるいは逆恨みによるもの、特定の団体・対象への信仰心または嫌悪などがほとんどのため、相手にするとかえって喜ぶか逆上、余計エスカレートする。そのため、全く相手にせず、ひたすら無視するのが最善だ。
    • 無視し続けてもなお旺盛な活動を継続する荒らしもいるが、そのような場合でも、いずれにせよ相手にしてもしなくても、無視してもしなくても荒らし行為を続けるので、その場では相手にせず、別の管理的な対処が必要だ。
  • 比較的軽微なものについては、「その手の話題はメールへどうぞ」と軽く水を差すのも一手(各参加者のメールアドレスが分かる場合)。
  • 運営者・管理者などに、荒らしメッセージの排除(削除、スレッドなどの停止、書き込み規制など)を依頼する。
    • ただ、荒らし行為の直後に排除行為を行うと、面白がって同じ行動を繰り返すので、緊急性がなければ冷却期間をおいてから対処した方がよい。
  • より悪質な荒らしに対しては、掲示板チャットプログラム、及び関係機関を利用することで、これ以上荒らし行為を行えなくする為の措置を講じる。例えば
    • 運営者にプロキシプロバイダリモートホスト)、NGワードのアクセス規制などを行い、荒らしからの投稿を遮断するよう依頼する。
      1. 荒らしのプロバイダに通報し、早急に然るべき措置(警告文送付・契約解除など)を取ってもらうよう依頼する。
      2. 明らかに犯罪性が高い荒らしについては、ログを保存した上で警察に通報、告訴もしくは告発手続きを取る。
    • また荒らしを荒らしで潰す団体も現れており、管理人の詳細な情報が重要だ。
  • また、意図的な荒らしとは異なるが、前項のコミュニケーション能力に問題がある者の書き込みについても、本人が無自覚であるがゆえに「あなたの書き込みは不愉快だ」などと注意したり叩いたりすると、「理不尽なことを言われた」と感じ取って逆上し、結果的に場が荒れるため、注意が必要だ。結局のところは、本人が飽きるか「相手にされていない」と感じて立ち去るまで無視する他に手立てはなく、それまでの間は本人の好きなようにさせるしかない。

脚注

  1. その理由としてはアンチの側からの言及の中には「事実であるはずもない、誹謗中傷に当たる事柄(明確に荒らし行為の中に区分されるもの)」が存在していることが挙げられ、具体的に彼らを荒らしと呼べる具体的な分別は存在しないといえるからだ。
  2. その書き込みの多くは特定の個人や企業などを指定した誹謗中傷といった個人攻撃のような事柄といえる。
  3. スレッドの議論の場を潰しているという点では結局彼らも荒らしには変わりない。
  4. お笑い芸人であるスマイリーキクチの公式ブログのコメント欄を荒らした者が脅迫罪及び名誉棄損罪で摘発されている(スマイリーキクチ中傷被害事件)。
  5. アリス・リデル 掲示板荒らしの悪行まとめ @ ウィキ(有志によるまとめ) 閲覧日: 2017年2月24日
  6. 朝日放送ビーバップ!ハイヒール』2014年10月30日放送より。
  7. ばるぼら(2005)「インターネットブームの光と影」153頁 これは、アンダーグラウンドでない一般的なサイトの掲示板が荒らされた場合の対策方法について述べられたものだ。

参考文献

関連項目