警戒区域

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警戒区域(けいかいくいき)とは、災害によって身体などが被る危険を防ぐために、災害を鎮めるための作業員など許可を得た者以外の出入を禁止したり、制限したりしている区域である。

水害、風災(台風竜巻など)、土砂災害火災火山災害、核災害放射能漏れ、原発爆発など)など全ての災害が含まれ、天災人災かを問わない。

概要

戦後日本では、災害対策基本法第63条に基づいて、災害による退去を命じられる区域をいう。同法第60条の避難の指示避難勧告)とは異なり、罰則付きで区域内への立ち入りが制限・禁止され、許可なく区域内にとどまる者には退去が強制されるため、同法第63条の適用の是非を巡っては慎重の上にも慎重な姿勢がとられる。事実上の避難命令に該当する。なお、人が居住する地域に警戒区域が設定されたのは雲仙普賢岳平成新山の噴火活動によるものが初めてで、全島避難により大きなニュースとなった1986年伊豆大島三原山噴火でも法令上は避難の勧告にとどまったとされている。

2005年以降は、従来からの災害に加えて、重要影響事態テロリズムが惹き起こす災害が対象に含まれるようになり、仮に国土の一部が戦闘地域になれば、国民保護のため警戒区域になることが定められた。重要影響事態が突発的に発生した場合は、さしあたって屋内退避を行い、しかる後に警戒区域外に退避することとなる。

なお、無断で警戒区域に侵入した場合は、下記の懲役罰金が科される場合がある。

根拠法

  • 災害対策基本法(原則市町村長が設定 違反者は10万円以下の罰金又は拘留)
  • 原子力災害対策特別措置法(原則市町村長が設定 違反者は10万円以下の罰金又は拘留)
  • 武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律(原則市町村長が設定 違反者は30万円以下の罰金又は拘留)
  • 水防法(水防団長・水防団員、消防機関に属するものが設定 違反者は6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金)
  • 消防法の火災警戒区域(危険物の漏洩により火災発生の恐れがある場合消防長又は消防署長が設定 違反者は30万円以下の罰金又は拘留)
  • 消防法の消防警戒区域(火災が発生した場合消防吏員又は消防団員が設定 違反者は30万円以下の罰金又は拘留)

以下のものは立ち入りを制限しない

適用例

暴力団対策法における警戒区域

2006年暴力団道仁会の会長人事に反発した一部組織が誠道会を結成したことで始まる抗争により、一般人ら14人が死亡するなどの暴力事件が一部地域で多発、地域住民から対策を求める世論が広がった。

これらの事態を受け第1次野田内閣暴力団対策法改正法案を国会に上程、2012年7月26日自由民主党などの賛成により制定され、同年10月30日に施行。同改正法により都道府県公安委員会は「特定危険指定暴力団」もしくは「特定抗争指定暴力団」を適用期間を限定して指定することができるようになったが、その際当該暴力団等の縄張りや抗争発生地域に対し「警戒区域」を指定することになった。なお、各特定指定に際し名あて人の意見聴取や官報による公示等従来のルールが準用されるが、国家公安委員会の確認及び審査専門委員の意見聴取手続(6条手続)は準用されず省略実施となる。

指定団体構成員による、警戒区域内の人の生活や企業等の業務遂行に対し、「みかじめ」要求などの暴力的要求行為、暴力団に対する損害賠償請求者を威嚇するなどの妨害行為は、改正暴力団対策法の直罰規定により、従来行われてきた中止命令等の行政処分による警告なしで3年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金又はその併科となる。

また、警戒区域内において指定暴力団等が当該指定を受けている旨を告知する標章をはがす行為は、指定団体の構成員であるか否かを問わず「何人も」100万円以下の罰金となる。

また、警戒区域内において指定団体の構成員が、暴力的要求行為を行う目的で、面会を要求する行為、電話をかける行為、電子メールを送信する行為、居宅や事業所前のうろつき行為、5人以上の多数集合行為つきまとい行為は禁止される。公安委員会または管区警察署長は、禁止行為の違反者に中止命令などを発令でき、発令後も反復して禁止行為に違反する「おそれ」がある場合は公安委員会または管区警察署長は防止に必要な命令を発令できる。いずれかの命令に違反した者は、3年以下の懲役若しくは250万円以下の罰金又はその併科となる。

第2次安倍内閣樹立翌日である2012年12月27日福岡県公安委員会および山口県公安委員会は、北九州市工藤會を特定危険暴力団に指定(期間1年間)、福岡県は18市町、山口県は下関市を含む3市を警戒区域に設定した。また同日、福岡県、佐賀県長崎県熊本県の各県公安委員会は、久留米市道仁会大牟田市九州誠道会(浪川睦会)を特定抗争指定暴力団に指定し、福岡県は25市町、佐賀県は離島を除く全域、長崎県は7市町、熊本県は16市町を警戒区域に指定した(期間3ヶ月)。なお下関市では2000年に工藤會系暴力団関係者が安倍晋三内閣官房副長官宅などに火炎瓶を投げ込む事件が発生している。

特定危険暴力団と特定抗争指定暴力団および警戒区域の指定は、指定期間到達後も延長更新され続け、2013年6月に九州誠道会が解散を宣言、道仁会も抗争終結を表明した。しかし公安委員会は指定延長更新を継続。その措置の正当性を担保させるかのように2013年6月30日になって福岡県警は暴力団対策法の直罰規定を初適用し工藤会系組員をみかじめ料要求などの疑いで「再逮捕」した。

2014年5月、両団体の会長が今後抗争を起こさないとの宣誓書を福岡県警本部に提出したことを受け、2014年6月12日、4県の公安委員会は指定を更新しないことを決定、2014年6月26日指定は解除された。

指定解除時点で抗争による粗暴事件は沈静化していたが、暴力的要求行為による被害は続いている。国会の各議院は改正法案制定時に「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議」を決議し離脱表明者に対する援護措置や社会的孤立防止を求めていたが、県公安委員会が援護措置や社会的孤立防止のための具体的な施策を作らなかったこと、県警や暴力追放運動推進センターの離脱者救護能力が低いこと、警戒区域指定の副次的効果として離脱者に対する社会的排除が増大したこと、経済的不平等の拡大や貧困の拡大により離脱環境が悪化したこと、それらの問題に対して国権主義的矯正政策を採用する自公連立政権が適切な措置を講じなかったことなど、様々な事情により社会復帰は限定的である。[1]

脚注

  1. 参議院 (2012-06-20). “参議院会議録情報第180回国会内閣委員会第12号”. http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/180/0058/18006200058012c.html . 2016閲覧.. "○江口克彦君 …暴力団から離脱した者が社会に適応し復帰できるような措置をとらないとその者が社会復帰できないと。先日もテレビでやっておりましたけれども、生活が困窮するなどした結果、再犯をしてしまう、再び罪を犯すというようなことになりかねないということであります」「○国務大臣(松原仁君)…最近は経済情勢が厳しいこともあり、平成二十三年中の警察や暴追センターへの相談を通じての暴力団離脱者は六百八十八名を数えたものの、社会復帰対策協議会を通じての就業人員は僅か三名にとどまっているものと承知をしております。この復帰の推進状況は、平成二十一年には三十四人ということだったんですが、二十二年に七名、二十三年は三名となっているわけであります。」" 

関連項目

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