赤頭巾ちゃん気をつけて

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赤頭巾ちゃん気をつけて』(あかずきんちゃんきをつけて)は、日本の小説家・庄司薫の小説。学生運動を背景に日比谷高校の生徒、薫の生活を軽妙な文体で描いた作品で、ベストセラーとなり映画化もされた。

中央公論1969年5月号に掲載された。同年7月、第61回芥川賞受賞。8月10日、中央公論社より刊行された。『白鳥の歌なんか聞えない』『さよなら快傑黒頭巾』『ぼくの大好きな青髭』に続く四部作[1]の第一作にあたる[2]

あらすじ

語り手は都立日比谷高校三年生の庄司薫くんである。薫くんは学校群制度が導入される前の最後の日比谷高校生にあたる。1969年2月9日の日曜日一日のできごとを、薫くんの饒舌な語りでつづる。1968年暮れ、東大紛争により東大入試が中止になり、受験するつもりだった薫くんは悩み、願書提出期限を翌日に控えて、大学へ行くのをやめる決心をしている。兄や姉はすでに独立し、父は昨日からゴルフへ行っていて不在、家には母しかいない。小学校までの幼馴染のガールフレンド由美は、中学校から女子大付属に行っている。「舌かんで死んじゃいたい」が口癖である。昨日は十年飼っていた犬のドンが死に、薫くんは足の親指の爪をはがした。

大学紛争について、米帝について、サルトルや『椿姫』、酒井和歌子水前寺清子、世界史関係の固有名詞がふんだんに登場する文章で思弁を続ける。知り合いのおばさんなどは、薫くんがやはり京大一橋大学を受けるのかといったことを訊いてくる。電車に乗って有楽町駅で降りて銀座をぶらぶらしていると小さい女の子に遭遇して、少しおしゃべりし、旭屋書店で女の子はグリム童話の本を買う。薫くんはタクシーで帰宅して医者に寄ったあとで由美の家へ行き、大学へ行くのをやめると告げ、二人で手をつなぐ。

映画

1970年8月4日公開。製作、配給は東宝カラーシネマスコープ。劇中歌はいずれも、作詞・岩谷時子 作曲・いずみたくの、「恋の季節」(唄・ピンキーとキラーズ)、「赤頭巾ちゃん気をつけて」(唄・佐良直美)。併映は東京映画制作・岩下志麻主演『その人は女教師』(監督:出目昌伸)。

スタッフ

キャスト


脚注

  1. 「青竜、朱雀、白虎、玄武」の4色を揃えたタイトル。大相撲の吊り天井の四隅の房は東西南北の方位を表し、東に「青竜」、南に「朱雀」、西に「白虎」、北に「玄武」と象徴的な聖獣を四神として配している。「青春、朱夏、白秋、玄冬」とともに古代中国に端を発した「五行説」に基づくものである。
  2. この作品がタイトルからしてJ・D・サリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』の影響にあることは明白である。比較した論文は多いが、例えば渡辺利雄『アメリカ文学に触発された日本の小説』(研究社2014年pp.205-229がある。