退職

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退職(たいしょく)とは、就業していた労働者が、その職を退き労働契約を終了させること。

日本における退職

労働基準法では解雇も含む概念となっている。一般的には退社や離職という表現をとる場合もある。結婚に伴い退職する場合は「寿退職」「寿退社」と表現する場合もある(この場合、退職するのはほとんど女性である)。

退職事由の分類

労働者個人の都合によるもの(いわゆる自己都合退職)、事業者からの勧奨によるもの(いわゆる退職勧奨)、事業者側からの解除によるもの(解雇の結果としての退職)、就業規則に基づく定年退職、労働契約期間満了に伴う退職、等に分類することができる。

退職勧奨と、会社の都合による解雇は、会社都合退職と呼ばれることがある。

自己都合退職

労働者個人の事情により、労働者が自発的に労働契約を解除して行うものである。その方法は、口頭によるものと、退職願(退職届)を提出するものとがある。いずれの方法でも有効である。この意思表示は撤回することができない(民法第540条)。

なお、民法上は、解除を申し出た日の2週間後に解除されることになっているが(民法第627条)、就業規則や個別契約の特約があればそちらの規定が優先される。申し出た日に使用者側が合意すれば、「労働契約の合意解除」になり即日もしくは14日より以前もしくは以降の解除も可能である。

懲戒退職

使用者が明示した労働条件が事実と異なる場合において、労働者が会社を懲戒するために労働者側から労働契約を即時に解除すること(労働基準法第15条第2項)。

定年退職

就業規則で決められている「定年退職」は、退職年月日を労働者自らが設定するものではないが、就業規則で定年制を定めている事業所においては、就業規則の内容も労働契約に含まれるため、労使双方で、定められた定年日に退職することをあらかじめ合意したことになる。

解雇

労働者を個別に解雇する普通解雇、重大な法令・就業規則違反のあった労働者に対する懲戒解雇、事業所の経営上の都合による人員整理、事業縮小に伴う整理解雇などがある。

通常、使用者が労働者を解雇しようとする場合

  1. 少なくとも30日前の予告
  2. 30日分以上の平均賃金の支払

のいずれか(併用可)をしなければいけないが、天災事変その他やむをえない事情により事業の継続が不可能な為の解雇、または労働者の責に基づく解雇の場合は、所轄労働基準監督署長の認定を受ければ解雇予告及び予告に代わる手当(解雇予告手当)の支払義務がなくなる(労働基準法第20条)。(必ずしも所轄労働基準監督署長の認定を受けなくても、認定が受けられるだけの状況があれば民事的には解雇は有効であるとするのが最近の裁判の傾向である)。

ただし、解雇とは労働契約の会社からの一方的破棄であり、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は解雇権の濫用(不当解雇)として無効である(労働契約法16条)。

雇用保険上の退職の扱い

雇用保険被保険者の場合、所定の要件を満たせば離職後に求職者給付の基本手当を受けることが可能であるが、離職理由によっては待期期間後に給付制限期間が発生する。事業所の都合による退職(倒産、解雇)や、正当な理由のある自己都合退職の場合には待期(7日間)の翌日から支給の対象となるが、定年退職や正当な理由のない自己都合退職の場合は給付制限(原則3ヶ月)の翌日から支給の対象となる。

退職金

退職における特別手当として退職金を定める事業者が存在する。

退職金の支給は必ずしも法令上の義務ではなく、就業規則(給与規程を含む)において退職金の規定を定めなくても違法ではないが、就業規則に規定がない場合であっても、退職金支給が慣例化している事業所にあっては、支払い義務が生ずることがある(裁判上の判断)。

なお、一般労働者にまでひろく退職金制度がいきわたっているのは、日本ぐらいである。 しかし、こういった現状は、年金制度、医療制度等の脆弱さを退職金で補っているという側面もあるので、必ずしも喜ばしいことではないという認識が必要である。

退職に絡む企業犯罪

退職時には多額の金銭が動くことから、企業によっては税務知識等に疎い従業員に対して詐欺行為等を行うことがあるので注意が必要である。

住民税に関する詐欺行為

住民税退職時の取り扱いは3つあるが、企業は従業員に対して未払いの住民税を企業が一括で支払う(一括徴収)か自分で支払う(普通徴収)かを選択させる場合がある。従業員が企業による一括支払いを選択した場合、次のような詐欺行為の被害にあうことがある。

  • 本来支払うべき金額を上回る過大な額を従業員から精算・徴収する。
  • 1月から5月は2年前の所得に対する住民税を支払うが、この時期に退職する際に前年の所得に対する住民税と称して過大な金額を精算・徴収する。前年の所得に対する住民税は6月まで決定しないので金額は決めようがない。
  • 6月から12月に退職する際、住民税を一括徴収にて従業員との間で精算するが、市区町村へは一括徴収ではなく普通徴収として処理を行う。

事後対策

市区町村役場にて住民税の納税証明を普通徴収分と特別徴収分に分けて取得することで、実際に企業が何月にいくら支払ったか後日確認可能である。

米国における退職

退職事由の分類

米国では退職事由を4つに分類することが多い[1]

  1. 会社都合による解雇(Termination Without Cause)[1]
    会社都合による解雇には企業買収による権限の縮小や処遇の低下など会社側の事情で自発的退職を余儀なくされた場合(Good Reasonと呼ばれる場合)を含む[1]
  2. 自己都合退職(Voluntary Resignation)[1]
  3. 懲戒解雇(Termination for Cause)[1]
  4. 障害または死亡(Disability・Death)[1]

セベランス・ペイ

米国では解雇に伴って支払われる割増退職金(解雇手当)をセベランス・ペイ(Severance Pay)という[1]

会社都合による解雇や雇用者の障害・死亡の場合にはセベランス・ペイの対象となることがある[1]。自己都合退職や懲戒解雇の場合にはセベランス・ペイの対象とならない[1]

なお、セベランス・ペイはゴールデンパラシュート(Golden Parachute)ともいうが[1]、後者は特に企業買収の際の語として用いられることもある(ゴールデンパラシュートを参照)。

出典

  1. 1.0 1.1 1.2 1.3 1.4 1.5 1.6 1.7 1.8 1.9 ウイリス・タワーズワトソン 『M&Aシナジーを実現するPMI』 東洋経済新報社、2016年、52-53。

関連項目

外部リンク