鉄道建設・運輸施設整備支援機構

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独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構
Yokohama Island Tower.jpg
機構本社が入居する横浜アイランドタワー
(横浜市中区)
正式名称 独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構
英語名称 Japan Railway Construction, Transport and Technology Agency
略称 鉄道・運輸機構、JRTT
組織形態 独立行政法人(中期目標管理法人)
本社所在地 日本の旗 日本
〒231-8315
神奈川県横浜市中区本町六丁目50番地1
北緯35度27分0.576秒
東経139度38分6.522秒
資本金 1153億7115万9986円(2016年12月9日現在)
人数 職員1,581名(2017年4月1日現在)
理事長 北村隆志
目的 交通ネットワークの整備
活動内容 鉄道施設の建設、貸付け等、船舶の建造、共有等、地域公共交通への出資等、JR経営自立支援、新幹線整備資金融資
設立年月日 2003年10月1日
前身 日本鉄道建設公団(日本国有鉄道→国鉄清算事業団)
運輸施設整備事業団(国内旅客船公団→特定船舶整備公団→船舶整備公団、新幹線施設保有機構→鉄道整備基金、造船業基盤整備事業協会)
所管 国土交通省
プロジェクト 整備新幹線事業、都市鉄道利便増進事業等
ウェブサイト http://www.jrtt.go.jp/
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独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構(てつどうけんせつ・うんゆしせつせいびしえんきこう、英称:Japan Railway Construction, Transport and Technology Agency、略称:JRTT鉄道・運輸機構)は、国土交通省所管の中期目標管理法人たる独立行政法人である。日本鉄道建設公団(鉄道公団)と運輸施設整備事業団(運輸事業団)の業務を承継し、2003年10月1日設立。本社・横浜市。

概要

機構の目的

鉄道建設等に関する業務及び鉄道事業者海上運送事業者等による運輸施設の整備を促進するための助成その他の支援に関する業務を総合的かつ効率的に行うことにより、輸送に対する国民の需要の高度化、多様化等に的確に対応した大量輸送機関を基幹とする輸送体系の確立並びにこれによる地域の振興並びに大都市の機能の維持及び増進を図り、もって国民経済の健全な発展と国民生活の向上に寄与することを目的とする(独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構法第3条)。

経緯

2003年10月1日に統合され、鉄道建設・運輸施設整備支援機構となった。広域公共交通に関する事業を行ってきた2つの特殊法人を統合した機関である。統合後に廃止された業務は、造船施設構造転換業務、運輸関係基礎的研究、高度船舶技術業務など、追加された業務は、都市鉄道利便増進事業、地域公共交通への出資業務、JRへの経営自立支援業務など。統合時に、船舶建造債務保証業務は、廃止されているが、ごく一部の金融機関において、取扱店である表示が今もなお残っている場合がある。

運輸施設整備事業団
政府の特殊法人改革の一環として、まず1966年12月に発足した船舶整備公団(設立時は、国内旅客船公団)と1991年10月に発足した鉄道整備基金(旧新幹線鉄道保有機構)が1997年10月に統合されて運輸施設整備事業団となり、造船業基盤整備事業協会2001年3月に統合された。
日本鉄道建設公団
1964年3月に発足した日本鉄道建設公団に、1987年4月に発足した日本国有鉄道清算事業団(旧日本国有鉄道の継承法人)が1998年10月に統合された。

横浜本社のほか、東京大阪に支社、北海道青森福岡などに新線建設のための事務所(建設局、工事局、工事事務所)がある。また、整備新幹線等の工事区間に現地拠点(鉄道建設所等)が点在するほか、神戸に船舶共有建造関係の神戸連絡所が置かれている。

事業

機構の主な事業は、以下の5つに大別される。

  1. 鉄道建設:整備新幹線や都市鉄道を中心とする鉄道の建設、大改良、維持管理、貸付及び譲渡
  2. 鉄道助成:譲渡新幹線の譲渡代金の管理、各鉄道事業者が実施する鉄道整備事業への助成
  3. 共有船舶建造:船舶の整備推進のための船舶建造共有(建造、機構持分の貸付及び譲渡)、電気推進船「スーパーエコシップ」などの船舶の技術支援
  4. 地域公共交通:持続的な地域公共交通の再編、整備への支援
  5. 国鉄清算:旧国鉄から承継した用地等資産の売却、年金費用等の支払などの旧国鉄関係業務

附帯的な業務として、海外への技術協力支援や地方公共団体などからの受託業務を行っている。

発足時、東日本旅客鉄道(JR東日本)を除くJR各社の株主となっていたが[1]2004年3月に西日本旅客鉄道(JR西日本)の株式が全て売却され、2006年4月には東海旅客鉄道(JR東海)、2016年10月には九州旅客鉄道(JR九州)の全株式の売却が完了した(こちらも参照)。この売却後においては、北海道旅客鉄道(JR北海道)、四国旅客鉄道(JR四国)及び日本貨物鉄道(JR貨物)の株主である。機構は、100パーセント親会社であるが、決算上において連結子会社には含めていない。

鉄道事業法第59条の規定により、本機構が鉄道事業者に鉄道施設を貸し付ける行為には同法が適用されない(第三種鉄道事業者ではない)。本機構から鉄道施設を借り受けて運行する鉄道事業者は第一種鉄道事業者となる。

本機構が海運事業者に船舶を共有させ、使用させる行為には、海上運送法内航海運業法の適用を受けない(事業者とはならない)。本機構との共有船を使用して運航する場合には、海運事業者は船舶管理人となる。

組織

本社
地方機関

役員

  • 理事長(1)
  • 副理事長(1)
  • 理事(8)(うち理事長代理(1))
  • 監事(3)
  • 組織
    • 統括役
    • 審議役
    • 監査部(内部監査)
    • 総務部(総務・広報・人事管理等)
    • 国際・企画部(中期計画等・海外への技術協力・地域公共交通に係る支援・鉄道施設に係る総合支援)
    • 経理資金部(財務・出納・IR・調達)
    • 事業監理部(鉄道施設の建設に係る事業費・事業計画・工事請負契約)
    • 施設管理部(鉄道施設の貸付管理・譲渡債権管理)
    • 鉄道助成部(鉄道施設への補助金交付・新幹線譲渡代金の管理・融資)
    • 技術企画部(鉄道施設の建設に係る技術企画・安全衛生・路線調査・運輸計画・積算基準)
    • 設計部(鉄道土木に係る設計基準)
    • 用地部(鉄道用地に係る土地取得・用地補償)
    • 電気部(鉄道電気に係る技術企画・設計基準)
    • 設備部(軌道・機械・建築に係る技術企画・設計基準)
    • 新幹線部(整備新幹線事業、青函トンネル改修事業)
    • 工務部(都市利便増進事業・民営鉄道線事業・受託事業)
    • 建設部(中央新幹線受託事業)
    • 共有船舶企画管理部(共有船舶に係る企画・共有船舶の管理・貸付)
    • 共有船舶建造支援部(共有船舶に係る技術企画・建造支援)
    • 国鉄清算事業管理部(特例業務に係る管理)
    • 国鉄清算事業用地部(旧国鉄用地の管理・売却)
    • 経営自立支援推進・財務部(特例勘定に係る財務会計・出納・調達管理・二島貨物会社への経営支援)
    • 共済業務室(旧国鉄職員への年金給付)
    • 地方機関 : 2支社 2建設局 1工事事務所 1工事局(鉄道施設の建設・計画路線調査・貸付維持管理)

沿革

2002年12月18日に独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構法(平成14年法律第180号、以下「法律」と表記)が公布され、機構の設立が決定した。

2003年10月1日、法律が施行されて独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構が発足した。これに伴い、日本鉄道建設公団および運輸施設整備事業団がそれぞれ解散した。

前身の日本鉄道建設公団が進めていた鉄道建設工事は機構鉄道建設本部が引き継ぎ、横浜高速鉄道みなとみらい線九州新幹線新八代 - 鹿児島中央)などを完成させた。2005年には北海道新幹線、2006年には北陸新幹線富山 - 金沢間)の建設工事が始まるなど機構発足後の新規の建設にも着手している。また、既存の事業以外にも、自治体などから、調査業務や建設業務を受託し、リニア中央新幹線工事などで、これまでの技術力やノウハウ、政府系機関としての公正性が生かされている。

機構の前身である運輸施設整備事業団が関わって建造が進められてきた高速船であるテクノスーパーライナーの1号船「SUPER LINER OGASAWARA」は、2004年11月13日岡山県玉野市三井造船玉野事業所で進水した。小笠原航路に就航予定とされていたが、燃料費の高騰で国や東京都が支援を断念したため、運行予定であった小笠原海運は船を引き受けなかった。その後、東日本大震災の支援船として一時利用される機会もあったが、保有してリースするために設立されたテクノ・シーウェイズは破産処理が行われ[2]、船自体も解体処分されることになった[3]

2006年1月27日、機構が研究を進めてきた電気推進船「スーパーエコシップ」 (SES) の第1船として、JR西日本の宮島連絡船(現在はJR西日本宮島フェリーによる運航)に投入される「みやじま丸」が竣工した。SESは、エンジンで発電機を回してその電力でモーターを回して推進する船で、窒素酸化物 (NOx)や二酸化炭素の排出を減らすと共に燃費を改善することができる。さらに従来型の船では巨大なエンジンを船の後部のほぼ決まった位置に搭載しなければならず設計上の制約が大きかったものが、自由なレイアウトを採用できるようになり船室スペースの増加や積載効率の改善にも寄与するといった特徴がある。「みやじま丸」を皮切りに貨物船などにも続々と採用されている。

国鉄清算事業本部が進めてきた資産処分については、2004年3月12日にはJR西日本、2006年4月10日にはJR東海の全株式の売却がそれぞれ完了し、両社は完全民営会社となった[4]。2016年10月25日には、JR九州の全株式の一括売却が完了し、機構が株主となっているのは、JR北海道・JR四国・JR貨物の3社である。なお、国鉄が東京都と共同で出資者となっていた帝都高速度交通営団については、国鉄民営化の際に国鉄清算事業団に引き継がれたあと、政府に引き継がれた。

2008年4月1日には、2012年度までの第2中期計画が始まった。整備新幹線の残りの区間の建設推進と共に、相模鉄道のJR東日本・東京急行電鉄(東急)への乗り入れを行う神奈川東部方面線京成成田空港線などの建設が計画に挙げられていた。

現在建設中の北海道新幹線新函館北斗・札幌間、北陸新幹線金沢・敦賀間、九州新幹線(西九州)武雄温泉・長崎間については、完成の事業年度は変更していないものの、それぞれ5年、3年、可能な限り、短縮を目指すこととされた。

2015年8月26日に新たな業務として、地域公共交通への出資・融資業務が追加された。2017年度より第1弾として宇都宮LRT事業の工事が開始される予定であり、このほか東京都中央区・江東区間のBRT事業などがこのスキームの利用を検討している。

2016年11月に新たな業務として中央新幹線の整備加速のための融資業務が追加された。2016・2017年度に中央新幹線の建設主体である東海旅客鉄道に対して計3兆円の融資が実行された。

年表

その他

職員団体

職員団体として、鉄道運輸機構労働組合がある。本組合は、各省庁からの管理職ポストへの出向(天下り)に対しては、反対の方針を示している。

政治家との問題

一部の報道によると、2004年から2005年の間に同機構に対し、魚住汎英参議院議員(当時)がかかわり合いのある熊本県内の内航海運会社の使用料延滞金1億円を減免を行うように働きかけたが、制度上認められないとの理由から減免を拒否されたことに関し、同機構理事長や国土交通省局長らを呼びつけて謝罪させ、北側一雄国土交通省大臣(当時)などに対し責任を問うぞとも電話をした。魚住汎英はこれに対し「内容は記憶していない」としている[7]

海事勘定の繰越欠損金

海事勘定においては、繰越欠損金が、2012年度末には、504億円に達していた。主な内訳は、貸倒引当金相当額180億円、未収金の処理等に伴い計上した損失324億円であった。2013年度に繰越欠損金削減計画を策定したほか、2016年度末で317億円にまで削減している。

特例業務勘定の利益剰余金

2010年4月27日、政府の事業仕分けにおいて本機構の事業が取り上げられた。旧国鉄職員の年金支給や国鉄資産の売却などを行う国鉄清算業務において、2008年度決算で1兆3500億円に及ぶ利益剰余金が積み上がっていることについて、国土交通省側は国庫返納に難色を示したものの、国庫返納の判定を受けた。また、鉄道技術開発費補助金について、国から本機構を経由して鉄道事業者などに交付する仕組みになっているところを、国が直接実施すべきとの判定を受けた[8]

2011年2月8日、政府は「日本国有鉄道清算事業団の債務等の処理に関する法律等の一部を改正する法律案」を閣議決定した[9]。この法案が成立した場合、本機構の特例業務勘定の利益剰余金等を活用して鉄道施策を推進するため、JR北海道及びJR四国の経営の安定化、JR北海道、JR四国及びJR九州並びにJR貨物の設備投資への支援、整備新幹線の着実な整備、並行在来線への支援等に関する所要の措置を講じることとした。

  1. JR北海道(2200億円)及びJR四国(1400億円)の経営安定基金の積み増し(無利子貸付方式)
    機構は、JR北海道及びJR四国の経営の安定を図るため、これらの会社が引き受けるべきものとして特別債券を発行するとともに、その引受けに要する資金に充てるため、これらの会社に対し、無利子貸付けを行うことができる。
  2. JR北海道(600億円)、JR四国(400億円)、JR九州(500億円)及びJR貨物(700億円、この他青函トンネル用機関車など190億円)の設備投資に対する支援
    機構は、JR北海道、JR四国、JR九州及びJR貨物の設備投資に必要な資金に充てるため、無利子貸付け又は助成金の交付を行うことができる。
  3. 整備新幹線の着実な整備(1500億円)
    機構は、平成23事業年度において、北陸新幹線高崎・長野間の建設のための過去の借入れに係る債務の償還・利子の支払に必要な金額を、特例業務勘定から建設勘定に繰り入れることができる。
  4. 並行在来線の支援(1000億円)
    機構は、並行在来線を支援するため、いわゆる貨物調整金の交付に必要な金額を、特例業務勘定から建設勘定に繰り入れることができる。

2011年6月8日、この法律案は参議院本会議で全会一致で可決・成立し、上記の施策が実行に移された[10][11]

脚注

  1. JR東日本は、鉄道公団時代の2002年6月に完全民営化。
  2. 小笠原航路の高速船計画を推進していたテクノ・シーウェイズが破産”. Response. . 2014閲覧.
  3. 「テクノスーパーライナー」 三井造船、買い手なく解体へ”. SankeiBiz (2012年2月24日). 2012年3月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。. 2014閲覧.
  4. 交通新聞2010年10月1日
  5. 読売新聞2010年12月25日13S版13面
  6. 東海旅客鉄道株式会社に対する「中央新幹線の建設に係る貸付金」の貸付契約について - 鉄道・運輸機構
  7. “地元業者延滞金 自民 魚住汎議員、減免迫る 独立法人や国交省に度々” (日本語). 讀賣新聞. (2007年3月20日) 
  8. 鉄道・運輸機構は「剰余金1.4兆円返納を」”. 日経BP社 ケンプラッツ (2010年4月30日). . 2010閲覧.
  9. 日本国有鉄道清算事業団の債務等の処理に関する法律等の一部を改正する法律案について平成23年2月8日 国土交通省報道発表資料
  10. 改正旧国鉄債務処理法が成立日本経済新聞2011年6月8日
  11. 独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構の特例業務勘定における利益剰余金等の取扱いについて”. 鉄道建設・運輸施設整備支援機構 (2010年12月21日). . 2017閲覧.

参考文献

関連項目

外部リンク