電話機

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AT&T製トーンダイヤル式電話機
ファイル:Telefon.jpg
オリベッティ製回転ダイヤル式黒電話(1940年代)

電話機(でんわき、: telephone set)とは、電話をするために、電話番号の指定や、通話者が会話をするための装置である。口語では単に電話とも。広義には携帯電話も含まれるが、本項では、狭義の固定電話回線の端末について解説する。

電話機は、声を電気信号に変換するマイクロフォン(マイク)と、声を再生するスピーカー、振鈴装置、番号を入力する装置から構成される。

初期の電話機は技術的には多様だった。1890年代には、ロウソク型と呼ばれる電話機が登場した。後に黒電話が普及した。ナンバーディスプレイなども備え、生産統計において標準電話機と呼ばれる基本的な機能を持った電話機や、コードレス電話ファクシミリなどを備えた多機能電話機が販売されている。

語源

英語 「telephone」の語源となった、ギリシャ語τῆλε (tēle) は「遠い」を意味し、φωνή (phōnē) は「声」を意味する。

電話機の基本的機能と形態

ファイル:Enea Bossi Sr - USA, 1930s.JPG
1930年代までの電話機。受話器のみを手に持って耳に当てている

利用者の声を電気信号に変換するマイクロフォンと、相手の声を再生するスピーカー、電話がかかってきたことを知らせる振鈴装置、電話をかける際に電話番号を入力する装置(キーパッドやダイヤル)などで構成される。マイクロフォンとスピーカーは受話器として一体化していることが多く、本体とは、(コードレス電話、及び、電話機の子機を除き、)らせん状のコード(カールコード)で接続されている。固定電話は導線によって電話網と接続されており、携帯電話は無線によって電話網と通信でき、持ち運び可能である。コードレス電話は電話網と有線で繋がった親機部分と無線でその親機と通信できる子機に分かれている。

半導体素子が安価に大量供給される以前の電話機は、機械式リレー受動素子のみで構成されていた。受話器(じゅわき)を取る/置く操作によりフックスイッチが上げ下げされることで電話回線の極性を変化させ電話交換機が回線接続・回線切断を判別したことから、今でも回線接続をオフフック、回線断の状態をオンフックと言う。

かつての電話機は送話器(そうわき)が電話機本体に直付けされており、本体とコードで結ばれた受話器のみを手に持って耳に当て、本体の送話器に向かって声を出していた。1930年代から送話器と受話器が一体化した形になった送受話器(そうじゅわき)が主流になり、片手で、しかも本体に正対しなくとも通話できるようになった。しかし現在でも日常会話では送受話器を「受話器」ということがある(例:「ベルが鳴ったら受話器を取って話す」など)。送受話器はハンドセットといい、頭部に装着する送受話器はヘッドセットという。

電話交換機からの給電のみで動作する基本的な機能として次があげられる。

  • 通信先の電話番号を入力し、電話交換機に伝える。
  • 電話交換機からの呼び出しを検知し、着信音で伝える。
  • 送話器で音声電気信号化し増幅して電話交換機へ送り出し、電話交換機から伝えられた信号を受話器で音声に戻す。
  • 終話を電話交換機に伝える。

マイクロフォン電気信号に変換し、それを公衆交換電話網経由で相手の電話機まで送り、そちらのスピーカーで電気信号を音に戻す。電話の通信路は全二重であり、相手の音声を聞きながら自分も同時に話すことができる。

しばしば、電話機の記号は電話番号を表示するために使われる(電話マーク)。Unicodeには、(U+2121)、(U+260E)、(U+260F)、(U+2706) がある。

ダイヤル自動化以前の電話機

初期の電話機は技術的には多様だった。液体抵抗型送話機を使うもの、永久磁石の周りの電磁石(コイル)を振動板で振動させて電磁誘導によって信号を発生するもの(ムービング・コイル型)などがあった。電磁誘導の起電力を利用する方式は電源がなくとも通話可能という利点があり、20世紀後半になっても少数ながら軍用などに利用され続けた。しかし、主流となったのはエジソンのカーボンマイクで他の方式よりも音声が大きく、誘導コイルを必要とするが、それがインピーダンス整合用変圧器として機能し、信号線とのインピーダンスを整合させることができる。このエジソンの特許によってベルは20世紀に入るまで市場を独占することができたが、そのころには電話機自体よりも電話網の方が重要になってきた。

初期の電話機も電源を必要とし、その場で発電するか電池を使用した。当時は加入者宅を巡回して電池交換が必要かどうかをチェックする職業もあった。20世紀には「共電式」がよく使われるようになった。これは、電話交換機側から信号線を通して給電する方式である。

初期の電話機の加入者線は1本の導線であり、電信と同様に個々に接地することで回路を形成する。また最初期の電話機は、送話器と受話器が共用になっていてひとつしかなく、口と耳に交互にあてて使うようになっていた。送話器と受話器が別々の方が当然便利だが、そのような装置は高くついた。

当初電話交換の利点はあまり利用されなかった。初期の加入者は以前からの電信の利用者で、2台の電話機をリースし、例えば商店と自宅などに設置して使っていた。複数地点間の通信を必要とする場合は何台も電話機をリースし、各地点間にそれぞれ別個に回線をひく必要があった。

通話開始の合図は非常に原始的な方法から始まった。ユーザーは送話器に向かって口笛を吹くことで交換手(交換を経ない場合は相手)に電話をかけることを知らせた。電話交換が主流になると電話がかかってきたことを知らせるベルが電話機に装備されるようになり、当初は通常の電話線とは別の線をひいて、その信号でベルを鳴らした。その後電話線1本でベルも鳴らすようにするため、ベルとコンデンサを直列に繋いでベルを鳴らすための交流信号のみを通すようにし、直流信号がブロックされていることで「オンフック」状態だとわかるようにした。

共電式や定期的な電池交換が不可能な田舎では、マグネトーなどの発電機を手回しクランクで回して発電し、相手側(交換手)のベルを鳴らした。

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アメリカのロウソク型電話機(1915年ごろ)

1890年代には、3つの部分で構成されるもっと小型の電話機が登場した。送話器はスタンド上にあり、この形状をロウソク (candlestick) 型と呼んだ。使っていない状態では受話器をフックにかけておき、このフックがスイッチの役割を果たしている。それまでの電話機は音声とベルそれぞれにスイッチがあり、別々に操作する必要があった。新しい方式では利用者が電話のフックを外したままにする事態が発生しにくくなった。発電機、ベル、誘導コイル、電池などは電話機本体とは別の箱 (ringer box) に収められ、電話機と接続されるようになっていた[1]。共電式の場合は電池交換が不要で手回しで発電する必要もないため、その箱は机の下などの見えない場所に設置された。

単線には漏話や交流電源のハム音が雑音として載ってしまうという欠点があり、ツイストペアケーブルが使われるようになっていった。また、長距離の回線には4線式が使われた。20世紀初めごろ、長距離電話は一般の電話からはかけられず、専用の高音質の電話ボックスを予約して利用するのが一般的だった。

ガワーベル電話機

電話機に取り付けられたダニエル電池より直流電力を送り、電話交換手を呼び出すのもの。

ガワーが発明した炭素棒送話器とベルが発明した永久磁石受話器とを組み合わせていた。二人の名が合成されてこの名がある。

磁石式電話機

電話機に取り付けられた磁石式の発電機を、クランクハンドルを用いて手で回すことにより、交換機の表示機を動作させ(表示機の蓋を落とす)、交換手を呼び出すしくみの電話機。交換機に繋がず、直接相手方電話機に繋ぐと、発電機は相手方電話機のベルを鳴らしてくれる。

送話用の電池を内蔵するタイプは定期的な電池交換が必要であるが、商用電源が得られる場所では直流化して使用することもできる。

乾電池もしくは外部直流を電源にして平行ケーブルのみで通話できるため、業務用の専用線・私設線でニーズがあり、現在でも製造が続けられている(ただし、内部回路は電子化されている)。軍隊の野戦電話に用いられることもある。

共電式電話機

電話機の受話器を外す事で、交換機のランプを点灯させ電話交換手を呼び出す仕組みの電話機。通話終了も受話器を下ろす事で自動的に交換手に通知される。

電話機側に電池や発電機が不要で、保守が簡略化された。しかし、48Vの電圧を回線に常時加えるため、電線絶縁材料が悪かった時代には、障害が多かった。

現在では着信専用電話機として、あるいは旅館などで構内電話交換機を持つ場合に用いられていることもある。

黒電話機

ファイル:Kurodenwa.JPG
600型端末設備。通称、黒電話。

ロウソク型よりも普及したのが、本体に手回しクランクなどの部品があり、送話器と受話器のついた取っ手状のもの(いわゆる受話器)が本体と線で繋がっている形状のものである。これに交換手を通さずに通話先を指定できるダイヤルを装備したのがベルの Model 102 であり、いわゆる黒電話の原型となった。

日本電信電話公社時代から、一般家庭にレンタルされたパルスダイヤル式電話機。600形電話機、601形電話機の通称として広く認知されている。ただし、同様の形態の電話機は600形電話機の出現以前からある。

日本における電話機

標準電話機

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コンパクトタイプの標準電話機の一例。本体は送受話器と一体になっている。写真下部の置き台はコードと電気的につながっていない

生産統計において標準電話機とは、基本的な機能のみを装備したものである。メーカーによってはベーシックテレホンということもあるが、送受話器と数字ボタンのみが装備された物もある。これらにはシンプル電話等の呼び方もある。

  • 基本的な機能
    • オンフックダイヤル
    • スピーカー受話
    • リダイヤル
    • 短縮ダイヤル・ワンタッチダイヤル
    • 呼び出し音の音量変更
    • 受話音量調整
    • 通話保留機能・保留メロディ
    • 状態表示灯点滅による呼び出し・状態表示
    • パルス(ダイヤル回線)/トーン(プッシュ回線)の切り替え(トーンへの一時的な切り替えも含む)
    • 発着信電話番号表示(ナンバーディスプレイ

標準電話機にはコンパクトなタイプのものもあり、送受話器と本体が一体となっていることもある。

多機能電話機

生産統計において多機能電話機とは、標準電話機よりも多機能なものを指す。

以下の機能は、別の品目となっている。

装飾電話機

装飾電話機ファッション電話機とは、機能よりも装飾性を重視した電話機である。電話敷設の初期から付加使用料を支払うことで利用できた。

端末設備自由化以降は、ダイヤルボタンが受話器側にあるものなど、デザインも多彩となった。

福祉電話機

福祉電話機(NTTでは「シルバーホン」と呼称)とは、耳が聞こえにくい・手が不自由などの場合でも支障なく使用できるように工夫された電話機である。

  • 着信音の周波数・音量変更(より低い音など聞き取り易いものへ)
  • フラッシュベル(光の点滅による着信通知)
  • 受話音量調節(「シルバーホンめいりょう」に装備 公衆電話にも組み込み)
  • 骨伝導受話器(「シルバーホンひびき」に装備)
  • 呼気スイッチ(「シルバーホンふれあい」に装備)
  • 頻繁にかける相手へのワンタッチダイヤルボタン(3か所まで)、“ナースコール”形の握りボタンを用いたワンタッチ非常通報(「シルバーホンあんしん」に装備)

日本における端末設備(電話機)自由化の歴史

  • 1953年(昭和28年) 8月 - 専用線構内交換機船舶に設置するものなどの端末設備を利用者が設置することができるようになった。
  • 1957年(昭和32年) 5月 - 日本電信電話公社からレンタルされた1台目の端末設備(電話機)の他に、切替式の付属電話として加入者が別の電話機を公衆交換電話網に設置することができるようになった。
  • 1958年(昭和33年) 7月 - 地域団体加入電話が法制度化され、自営端末設備の設置が規定された。
  • 1969年(昭和44年)10月 - 集団電話が法制度化。
  • 1972年(昭和47年)11月 - データ通信等の非通話端末設備は自営による設置が原則となった。
  • 1985年(昭和60年) 4月 - 電気通信端末機器審査協会技術基準適合認定を受けたものかこれと同等とみなされた電話端末機器であれば公衆交換電話網にモジュラージャックで接続できることとなった。それにより、留守番電話・コードレス電話・ファクシミリなどの普及が促進された[2]

電話機開発メーカ(日本)

※業務向けはビジネスフォンコードレス電話は当該記事を参照。

生産中止

日本における電話機設置場所の歴史

事務所では事務連絡に使用するため事務所に設置されていた。また、商店の店先に設置され、近所の電話のない家庭への呼出電話としても利用されていた。

家庭への普及の初期には、電話回線を契約していない世帯への呼出電話としての利用も引き続き多く、玄関先に設置されているのが一般的であった(1970年代頃までの住所録の電話番号欄に「nnnn-nn-nnnn(X方呼出)」の記述があったりするのはこの名残)。多くの家庭に普及した後には、居間に設置されるようになった。また、親子電話(着信をスイッチで切り替えて秘話機能を持つ「切替式」と、1本の回線に2台が電気的にぶら下がっており秘話機能のない「ブランチ(分身)式」がある。更にはPBXを用いた内線電話システム「ホームテレホン」も1970年代半ばに登場した)などで個室にも設置されるようになった。

現状

2009年末現在、全世界で60億台弱の携帯電話および固定電話が使われている。内訳は固定電話が12億6000万台、携帯電話が46億台である[3]

特許

  • US 174,465 -- Telegraphy (Bell's first telephone patent) -- Alexander Graham Bell
  • US 186,787 -- Electric Telegraphy (permanent magnet receiver) -- Alexander Graham Bell
  • US 474,230 -- Speaking Telegraph (graphite transmitter) -- Thomas Edison
  • US 203,016 -- Speaking Telephone (carbon button transmitter) -- Thomas Edison
  • US 222,390 -- Carbon Telephone (carbon granules transmitter) -- Thomas Edison
  • US 485,311 -- Telephone (solid back carbon transmitter) -- Anthony C. White (Bell engineer) This design was used until 1925 and installed phones were used until the 1940s.
  • US 3,449,750 -- Duplex Radio Communication and Signalling Appartus -- G. H. Sweigert
  • US 3,663,762 -- Cellular Mobile Communication System -- Amos Edward Joel (Bell Labs)
  • US 3,906,166 -- Radio Telephone System (DynaTAC cell phone) -- Martin Cooper et al. (Motorola)

脚注・出典

  1. Ringer Boxes”. Telephonymuseum.com. . 2010閲覧.
  2. 端末機器の歴史 東日本電信電話
  3. Next-Generation Networks Set to Transform Communications, International Telecommunications Union website, 4 September 2007. Retrieved 5 July 2009.

参考文献

関連項目

外部リンク