アスコルビン酸

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アスコルビン酸(アスコルビンさん、: ascorbic acid

 ビタミンCのこと。抗壊血病効果をもつ酸(anti-scorbutic acid)にその名の由来がある。AsAと略記される。分子式C6H8O6、分子量176.13、融点190~192℃、還元力はC-2位および3位のエンジオール基-C(OH)=C(OH)-に由来する。白色またはわずかに黄色味を帯びた結晶で酸味があり、光によって徐々に着色する。乾燥状態では安定であるが、水溶液ではかなり不安定である。

 アスコルビン酸は抗壊血病性ビタミンとよばれていた。壊血病は13世紀の十字軍時代にすでに記載され、1535年にはカルチエがカナダのセント・ローレンス川の探検中に、彼の部下たちの「何人かは力がなくなり、立つことができなくなり、他のものは体中の皮膚が内出血し紫の斑点(はんてん)でまだらになった。彼らの口は悪臭を放ち、歯肉は腐り、歯はほとんど抜け落ちた」と記載されている。壊血病の予防法は、1753年にスコットランドの医師リンドJames Lind(1716―1794)によって「検証はできていないが、青菜か新鮮な野菜、熟した果物が壊血病の最上の治療薬となるので、これらが同病に対するもっとも有効な予防薬であることは明らかである」と提示された。有効物質の抽出は、1927年セント・ジェルジーがウシの副腎(ふくじん)皮質から取り出した結晶(ヘキスロン酸)で、これがビタミンCそのものであり、抗壊血病性であるところからアスコルビン酸と命名された。このビタミンはヒトその他の霊長類やモルモットの食餌(しょくじ)には欠かせないが、ほかの動物はこれを体内で合成できる。現在では純度の高い結晶が工業的に大量生産され、天然品からの抽出は行われていない。

 結合組織の主要なタンパク質であるコラーゲンタンパクの三重螺旋(らせん)構造は4-ヒドロキシプロリンによって構成されている。このアミノ酸はプロリンからプロリン水酸化酵素の触媒でつくられる。この酵素が活性化するときにアスコルビン酸が特異的な抗酸化剤として働く。生体内でアスコルビン酸のない条件下で合成されたコラーゲンのプロリンはヒドロキシル化されにくく、このようなコラーゲン繊維が壊血病でみられる皮膚の変化や血管のもろさの一因となる。アスコルビン酸は、鉄イオンの運搬体であるフェリチンから鉄イオンを遊離し、組織が鉄イオンを利用するのを助ける。そして、その欠乏によって組織内の遊離鉄イオンが減少するので、骨髄細胞のヘモグロビン合成が低下して貧血をおこすと考えられる。アスコルビン酸欠乏症では貧血のほか、骨の発育障害や創傷治癒の遅れなどもみられるが、これらはコラーゲンとコンドロイチン硫酸の合成障害によるものである。アスコルビン酸は腸から容易に吸収され、代謝活動の盛んな臓器に多く含まれる。血液中の濃度が1~1.5ミリグラム%(mg/dl)以上になると尿中に排泄(はいせつ)される。1日10ミリグラムが最低必要量で、イギリスでは20ミリグラム、アメリカでは70ミリグラムを摂取基準としている。なお、動物の場合は大量に与えても毒性は低い。

 キュウリやカボチャなどの野菜にはアスコルビン酸を酸化するアスコルビン酸オキシダーゼがあるので、食品を短時間煮沸するとこの酵素が不活性となり、食品中のアスコルビン酸の保存がよくなる。





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