アルゴン

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アルゴン: argon)は原子番号 18 の元素で、元素記号Ar である。原子量は 39.95。周期表において第18族元素(希ガス)かつ第3周期元素に属す。

概要

アルゴンは地球大気中に窒素酸素に次いで3番目に多く含まれている気体で、その容量パーセント濃度は0.93%である。地球上のアルゴンのほとんどは質量数が40のもの(アルゴン40)であり、これは地殻中のカリウム40の崩壊により生成した。一方、宇宙においてはアルゴン36が最も多量に存在し、超新星爆発による元素合成により生成された。

「アルゴン」という名はギリシャ語で「怠惰な」「不活発な」を意味する「αργον」(アルゴス)という単語に由来する[1]。事実、アルゴンは化学反応をほとんど起こさない元素である。最外殻電子数が8でありオクテット則を満たしているので、アルゴンは安定でほかの元素と結合しにくい。三重点は83.8058 Kであり、これは1990年国際温度目盛 (ITS-90) の定義定点に採用された。産業用途としては主に反応性の低さを利用した不活性ガスとして製鋼や溶接シリコン製造に用いられる[2]

特徴

ファイル:Argon ice 3.jpg
凍結させたアルゴン

希ガスの一つ。常温、常圧で無色、無臭の気体。希ガスのため不活性である。比重は、1.65(−233 ℃: 固体)、1.39(−186 ℃: 液体)、空気に対する比重は、1.38。固体での安定構造は、面心立方構造 (FCC)。

空気中(地表)に 0.93% 含まれているのでアルゴンは空気から液体酸素液体窒素を分離精製する際に、酸素から分留して得ることができる。

希ガスの中では最も空気中での存在比が大きく、乾燥空気を構成する物質では第2位の酸素の 20.93% についで第3位の 0.93% である。空気中のアルゴンの存在比が希ガス中最も大きいのは、自然界すなわち岩石中に存在していたカリウム40の一部 (11%) が電子捕獲によってアルゴン40となったためである。このため地球および火星など岩石惑星大気中ではアルゴン40の同位体比が圧倒的に大きいのに対し、太陽大気中ではアルゴン36の同位体が大部分を占める[3]。第4位は二酸化炭素だが、2008年現在得られる資料では 0.038% であり3位との差は大きい。

用途

アルゴンの2004年度日本国内生産量は219,461,000 m3 (約40万トン)、工業消費量は38,348,000 m3である。近年の需要に対応して、2005年日本工業規格 (JIS K 1105) が改正され、純度が高められた。

歴史

1892年にレイリー卿ジョン・ウィリアム・ストラット)が大気分析の過程で未知の気体に気づき、1894年にウィリアム・ラムゼーと共にその正体がアルゴンであることを突き止めた[4]。しかし、その100年も前に、ヘンリー・キャヴェンディッシュが存在に気がついていたと言われている。なお、1904年にレイリー卿は「気体の密度に関する研究、およびこの研究により成されたアルゴンの発見」によりノーベル物理学賞を、ウィリアム・ラムゼーは「空気中の希ガス元素の発見と周期律におけるその位置の決定」によりノーベル化学賞を、それぞれ授与された。

アルゴンという名称はギリシャ語で「不活発、不活性」という意味の「αργόν」に由来する。「働く」という意味の「εργον」に「αν」をつけた「αν εργον」(働かない)が語源とする説もある。また、ギリシャ語で「怠け者」という意味の「αργος」が語源とする説もある。

化合物

アルゴンは単原子でオクテット則を満たしていることから、他の原子と結合した化合物は長い間知られていなかった。2000年フィンランドの研究者により初のアルゴン化合物、アルゴンフッ素水素化物 (HArF) の合成が発表された。これは、アルゴンとフッ化水素ヨウ化セシウムを混合して 7.5 K紫外線照射することにより合成された[5]

同位体

出典

  1. http://www.rsc.org/chemistryworld/podcast/interactive_periodic_table_transcripts/argon.asp
  2. アルゴンAr 大陽日酸
  3. 小嶋稔 『地球物理概論』 東京大学出版会、1990年
  4. 桜井弘 『元素111の新知識』 講談社1998年、109頁。ISBN 4-06-257192-7 
  5. Khriachtchev, L.; Pettersson, M.; Runeberg, N.; Lundell, J.; Räsänen, M. Nature, 2000, 406, 874-876. DOI: 10.1038/35022551

関連項目


外部リンク