クロスオーバーSUV

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クロスオーバーSUVとは、自動車カテゴリのひとつである。略称はCUV(Crossover Utility Vehicle)またはXUV。本記事ではCUVを用いる。

概要

狭義にはSUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークルと呼ばれる自動車のうち、トラッククロスカントリー車にも採用されるフレーム構造ではなく、セダンクーペと同様にモノコック(ユニボディ)構造である車を指す。一方で時代の流れと共に範囲が拡大し続け、近年は車高や全高の高いセダンコンパクトカーもCUVに含まれるようになってきており、古くからの「SUV」のイメージにこだわると理解が難しくなるケースも増えている。


自動車のカテゴリとしては新しい部類で、趣味性・実用性・ファッション性を並立したジャンルとして1990年代に確立されて以降爆発的にヒットし、今日ではSUVタイプの主流となってきている。そのバリエーションは高級車から軽自動車ミニバン(3列シート)、オープンカーまで多岐にわたり、世界中の自動車メーカーから多種多様なクロスオーバーSUVが販売されている。

異なる車種を掛け合わせる「クロスオーバー・ビークル (Crossover Vehicle) 」という考え方自体は米国で形作られた。1959年に登場した姉妹車のGM・エルカミーノとフォード・ランチェロとGMC・キャバレロが、フルサイズセダンのボディをラダーフレームの上に乗せたクロスオーバーとして登場し、これが「ハイブリッド・ビークル」と呼ばれ、「クロスオーバー」という概念の先駆けとなっている。1960年代になるとライトトラックの耐久性とステーションワゴンの実用性を兼ねたシボレー・ブレイザーが登場した[1]。また同時期の北米ではSUVという言葉も、ピックアップトラックの荷台に空間を作ることで誕生している。このように「クロスオーバー」と「SUV」の概念の発祥地となっている北米だが、北米最初のモノコック構造のSUVは1980年発売のAMC・イーグルである。そして1984年発売ジープ・XJチェロキーのヒットが、SUVをオフロード愛好家以外にも身近にした[2]。なお2010年代以降の米国では小型・二輪駆動のCUVは乗用車に含まれるカテゴリー名であり、税・保険区分上トラックに分類されるクロカン系SUVとは異なり、区別されている。

日本では、1972年にステーションワゴンの車高を上げ四輪駆動化させたスバル・レオーネ エステートバン4WDが始祖とされ、1982年にトヨタ・ターセルの車台に当時としては異例の高さの全高1500mmのセミトールワゴンボディを載せ、四輪駆動化したトヨタ・スプリンターカリブ[3]、1988年にカジュアルさと街乗り性能を重視して開発された「ライトクロカン」のスズキ・エスクード[4]、1994年にクロカンのデザインと走破性を持ちながら横置きエンジン・FF車のモノコック構造を採用したトヨタ・RAV4[5][6]や1998年に北米で発売されたレクサス・RX(日本名トヨタ・ハリアー[7]などがCUVの先駆けとされている。

定義

クロスオーバーSUVと呼ばれる車種は、

  1. 最初からモノコック構造のSUVとして設計されているもの
  2. 元々はステーションワゴンコンパクトカーとして設計された車両をSUV風に仕立てた物

の2種類がある。2.は厳密にはSUVと呼ぶかは微妙なところで、車種によっては「○○クロスオーバー」とのみ称されるか、「(ベース車両)のSUVグレード」のような紹介をされることもある[8]。また日本自動車販売協会連合会の統計上でも、例えばトヨタ アクアクロスオーバーはアクアスバルXVインプレッサの台数に含んで集計されている。ただし当記事では2.も便宜上CUVとして扱う。

CUVの動向

1995年にスバル・レガシィアウトバック日産・パスファインダー(2代目)、1996年にトヨタ・RAV4、1997年にホンダ・CR-V、1998年にスバル・フォレスターなど、日本車メーカーが主に国内市場の流行に合わせて開発したモノコック構造のクロカンを、北米にも続々と投入した[9]。こうしたムーブメントに米国自動車ジャーナリズム界も「クロスオーバーSUV」という呼称を用いることが増え、やがていちジャンルとして確立された。RAV4とCR-Vはその後もヒットを飛ばし続け、2017年には世界で最も売れたSUVの1位と2位を占めている[10]

1998年、ハリアーを日本市場で高級車として成功させたトヨタは、同車種をレクサスRXとして米国に投入した。RXは大きな反響を呼び、北米でもCUVは大衆車のみならず高級車カテゴリにもなりうることを示した。

一方でCUV人気の成長と同時にSUVの安全性に対する批判が起こるようになり、さらに2003年末から起こったガソリン価格の高騰がSUVブームを失速させたとされている。しかしその内実は従来の燃費の悪いラダーフレーム構造のクロカン系SUVが失速していただけであり、オンロード重視のCUVはクロカン系SUVの市場を食って成長するありさまであった[11][12]。2006年にはCUVがSUVの北米販売台数の過半数に到達。専門家の中には、燃費だけを求めた一時的な流行であるとする論調もあったが[13]、結局その数字が元に戻ることはなかった。

同時期の欧州におけるCUVは他の地域に比べると人気の伸び幅は小さかったが着実に売上台数を伸ばした。特にキャシュカイはアメリカ人の好みに合わせたRAV4やCR-Vとは異なり、ルノーとの提携も活かして欧州人好みにしたことで、日本車の中では欧州市場で最も成功した一台となった[14]。2010年に日産はさらにコンパクトで廉価なジュークを投入、これを欧州でも北米でもヒットさせて現代のコンパクトCUV人気を決定的にした。

2010年代以降はエンジンやハイブリッドの技術の進歩、経済の回復、アメリカの油田発見などでマイナス要因が減ったため、さらにCUVの快進撃は加速。欧州では2016年にほとんどの国で売上の増加を示した上、コンパクトカー市場を上回ってSUVがベストセラーカテゴリとなった[15]

またポルシェランボルギーニといったスポーツカーのメーカーがCUVに参入したり、ホンダ・ヴェゼルトヨタ・C-HR三菱・エクリプスクロスなどのように2ドアのスタイルや走りを意識したクーペSUVと呼ばれるジャンルも登場していたりと、採算が取れず撤退が相次ぐクーペの購入層の受け皿にもなってきており、趣味性・実用性において死角のないジャンルになりつつある。

脚注

  1. A Look Back: A History of Crossovers
  2. http://amesha-world.com/testride/detail.php?id=2146 乗用車フィーリングと4WDの動力性能に利便性 AMC イーグル ワゴン (AMC EAGLE WAGON) すなわちワゴンボディを載せたジープ
  3. ≪トヨタ スプリンターカリブ≫時代を先取りしたクロスオーバーSUV!
  4. 国産クロスオーバーSUV隆盛前夜 スズキ・エスクードの功績
  5. 元祖「都会派SUV」初代トヨタ RAV4のMT車は今や激レア
  6. 新モデルの投入が続き、今もっとも注目のジャンル 国産車がリードしてきた「SUV」の歴史と最新トレンド
  7. ハリアー 開発責任者に聞く 2017.06.08 13:30 GAZOO.com
  8. 新型フィットをクロスオーバー・スタイルにする純正アクセサリー cliccar 2017/07/02
  9. Why Crossovers Conquered the American Highway The crossover is a mutt that combines elements of cars, SUVs, and minivans. And this new type of vehicle just may become the most popular vehicle in America. 2014年6月10日
  10. world best selling SUV.Nissan X-trail is not the leader 2018年2月16日  Focus2move
  11. Ⅳ-3. 米国ピックアップトラック産業にみる保護主義政策の功罪 みずほ銀行産業調査部
  12. なぜGMは破綻したのか? ─ リーダーシップ論の視点から ─ 菖蒲 誠
  13. CUVがSUV総売上の過半数に Response 2006年5月8日
  14. 日産デュアリスが欧州でトップ・クラスのシェアって知ってた? 大人気の理由、なぜ? AUTOCAR JAPAN
  15. SUVは初めてヨーロッパでベストセラーセグメントを引き継ぐ

関連項目

de:Sport Utility Vehicle#Softroader