シンボル

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ファイル:Ceremonial South Pole.jpg
国のシンボルとして国旗が掲げられる。
南極点南極条約加盟国の旗)

シンボル (symbol) は、記号 (sign) を分類した1つの種類である。その厳密な定義は1つではないが、記号のうちその対象との関係が非本来的[1]・隠然的であるものがシンボルとされる。「象徴記号」と訳されることもある。"symbol"の語源は古代ギリシャ語の"symbolon"(σύμβολον) に由来し、syn-が「一緒に」、boleが「投げる」や「飛ばす」を意味し、合わせて、「一緒にする」や、二つに割ったものをつき合わせて同一の物と確認する「割符」や「合言葉」を意味する。

定義

イコン/インデックス/シンボル

記号論(semiotics)の祖チャールズ・サンダース・パースによれば、シンボルは記号(この文脈ではsemiosis)のうち「約定性」により対象を表すものとして定義される。

シンボル以外の記号にはイコン (icon) とインデックス (index) がある。イコンは「類似性」により対象を表す、つまり、対象そのものを象った記号である。インデックスは「因果性」により対象を表す、つまり、対象と時間的または空間的に結びついた物を使った記号である。

それらに対しシンボルは、書き手と読み手(あるいは話し手と聞き手)の間の約束事による記号である。純粋なシンボルは、記号自体にはイコンやインデックスのような対象を表す要素はない。ただし実際のシンボルには、イコンやインデックスの性質を併せて持つものも多い。

典型的なシンボルとして言語がある。紋章なども、基本的にはシンボルである。

「日本」のシンボルの例
日本語表記 英語の音声 国旗 ISO 3166-1 ナショナルカラー
日本 Japan 日の丸 392
純粋なシンボルでない国旗の例
+ イコン + インデックス
キプロス国旗 カンボジア国旗

シグナル/シンボル

記号を、特定的・実践的なシグナル (signal) と、普遍的・観念的なシンボルとに分けることもある。

団体等のシンボル

会社団体個人作品などを象徴するためにシンボルが使われる。

家紋紋章ロゴマークのように特にシンボルとなる記号又は図柄のことをシンボルマークと呼ぶ。例えば、が、武士のシンボルとされるように、あるものから、別のあるものへと思い起こされるもの。また、企業を表すためにニューヨーク証券取引所で採用される、3文字の記号からなるティッカーシンボルのように、そのための特徴的な図案、意匠のようなものをシンボルとして用いることも多い。地方公共団体企業学校大学スポーツ国際見本市、国際会議などでは、シンボルとしてのマスコットキャラクターが採用されたり、学生を選ぶコンテストが行なわれたりすることも多い(ミスキャンパスミスターキャンパス)。

コンピュータ科学関連分野における「シンボル」

この節では、コンピュータ科学や関連分野における専門用語としての「シンボル」を解説する。これは人文学分野におけるシンボル(象徴)とは意味が異なるため注意を要する。

シンボルテーブル

参照: シンボルテーブル

ここでは「シンボル」とは、データに含まれるひとかたまりの記号や、プログラミングで用いられる「名前」のことであり、その名前から実体のデータを得るデータ構造をシンボルテーブルと言う。例えばコンパイラソースコードからオブジェクトコードを生成する際、関数であればその「実体」を構成する一連の機械語命令列(「コード片」などとも言う)だけでなく、その関数の関数名からそれを指す「シンボル」を、シンボルテーブルに追加する。ビルドプロセスでは、コンパイルの次のリンクの段階で、リンカが複数のモジュールからそれぞれのシンボルテーブルを参照し、実行ファイルやライブラリのリンクを解決する。近年のコンパイラが複雑な方法を用いてシンボルを生成することに関しては名前修飾を参照されたい。

唯一性のある名前として

Lispや、その影響を受けたSmalltalkRubyなどにあるSymbolは、interning(en:String interning)された文字列である(外部資料[2]を参照)。また特にLispでは、その処理系における伝統的な手法の一つである shallow access の実装においても重要である。

人工知能分野

人工知能分野では、1990年にStevan HarnadがThe Symbol Grounding Problemで提起したsymbol grounding(記号接地あるいは記号着地などと訳されることもある)問題などといった話題に代表される「シンボル」がある。ここでの「シンボル」とは、コンピュータによる情報処理システムが扱っている符号化された情報といったような意味で、究極的にはチューリングマシンがそのテープに読み書きする「記号」のことであり[3]、それを自律ロボットのような人工知能システムがいかに「意味」に結びつけ(接地し)物事を理解させるのか、といったことが論点である。

  1. 広辞苑』第5版 (1998)「シンボル」(3)
  2. http://d.hatena.ne.jp/sumim/20051029/p1
  3. 従って、記号学における議論の多くに関係するような側面は、前提の時点で捨象されている。

関連項目