プレートテクトニクス

提供: miniwiki
移動先:案内検索


ファイル:Plates tect2 ja.svg
現在の主要なプレート15個(過去のプレートも含めた詳細なプレートはen:List of tectonic platesを参照の事)

プレートテクトニクス: plate tectonics)は、プレート理論ともいい、1960年代後半以降に発展した地球科学学説地球の表面が、右図に示したような何枚かの固い岩盤(「プレート」と呼ぶ)で構成されており、このプレートが、海溝に沈み込む事による重みが移動する主な力になり、対流するマントルに乗って互いに動いていると説明される。

プレートとは

ファイル:Earth layers model.png
地球の内部構造 薄い地殻の下に上部マントル下部マントルがあり、中心部の白っぽい部分は。プレートは地殻と上部マントルの最上部が一体となった岩板

地球は、半径約6,500キロメートルであるが、その内部構造を物質的に分類すると、外から順に下記のようになる。

  1. 深さ約10 - 30キロメートルまで : 地殻
  2. 深さ約670キロメートルまで : 上部マントル - 最上層、低速度層(アセノスフェア、岩流圏)、遷移層
  3. 深さ約2,900キロメートルまで : 下部マントル - メソスフェア(固い岩石の層)
  4. 深さ約5,100キロメートルまで : 外核(外部コア)
  5. 中心 : 内核(内部コア)

地殻とマントル岩石で構成されており、金属質である。マントルを構成する岩石は、地震波に対しては固体として振舞うが、長い時間単位で見れば流動性を有する。その流動性は、深さによって著しく変化し、上部マントルの最上部(深さ約100キロメートルまで)は固くてほとんど流れず、約100 - 400キロメートルまでの間は比較的流動性がある。地殻と上部マントル上端の固い部分を合わせてリソスフェア(岩石圏)と呼び、その下の流動性のある部分をアセノスフェア(岩流圏)と呼んで分類する。この厚さ約100キロメートルの固いリソスフェアが地表を覆っているわけであるが、リソスフェアはいくつかの「プレート」という巨大な板に分かれている。

地球表面が2種類のプレート群からなっていることは、地球表面の高度や深度の分布の割合にもあらわれている。地球表面は、大陸大陸棚からなる高度1,500メートル - 深度500メートルの部分と、深度2,000 - 6,000メートルの海洋底と呼ばれる部分が多く、その中間である深度500 - 2,000メートルの海底は割合が少なくなっている。

プレートは大きく見ると十数枚に分けることができ、それぞれ固有の方向へ年に数センチメートルの速さで動かされることになる。

プレートの動き

ファイル:Tectonic plate boundaries.png
プレートの境界 (Illustration by Jose F. Vigil. USGS)

プレートは、その下にあるアセノスフェアの動きに乗って、おのおの固有な運動を行っている。アセノスフェアを含むマントルは、定常的に対流しており、一定の場所で上昇・移動・沈降している。プレートは、その動きに乗って移動しているが、プレート境界部では、造山運動火山断層地震等の種々の地殻変動が発生している。プレートテクトニクスは、これらの現象に明確な説明を与えた。

大局的なプレートの運動は、すべて簡単な球面上の幾何学によって表される。また、局地的なプレート運動は平面上の幾何学でも十分に説明しうる。3つのプレートが集合する点(トリプルジャンクション)は、それらを形成するプレート境界の種類(発散型・収束型・トランスフォーム型)によって16種類に分類されるが、いずれも初等幾何学で、その安定性や移動速度・方向を完全に記述することができる。

一般に、プレートの運動は、隣接する2プレート間での相対運動でしか表されない。しかし、隣接するプレートの相対運動を次々と求めることで、地球上の任意の2プレート間の相対運動を記述することができる。近年では、準星の観測を応用した超長基線電波干渉法 (VLBI) と呼ばれる方法やグローバル・ポジショニング・システム (GPS) によって、プレートの絶対運動も理解され始めている。

発散型境界(広がる境界)

マントルの上昇部に相当し、上の冒頭図では太平洋東部や大西洋中央を南北に走る境界線に相当する。この境界部は、毎年数cmずつ東西に拡大している。開いた割れ目には、地下から玄武岩質マグマが供給され、新しく地殻が作られている。この部分は、海洋底からかなり盛り上がっており、(中央)海嶺と呼ばれている。また、その付近にはチムニーと呼ばれる熱水の噴出口も多数見つかっている。

発散型境界は、(中央)海嶺が有名だが、陸上にも存在する。アフリカ大地溝帯アイスランドなどが知られている。双方とも、大規模な正断層が発達している。

収束型境界(せばまる境界)

上図の日本周辺やインド北部に相当。

沈み込み
東北日本の東の海中では、約1億年前に太平洋東部で生まれた太平洋プレート比重の大きい海洋プレート)が、東北日本を載せた北アメリカプレート(比重の小さい大陸プレート)に衝突している。重い太平洋プレートは、軽い北アメリカプレートにぶつかって、斜め下40 - 50°の角度で沈み込んでいる。プレートが衝突して沈み込む部分は海溝となり、衝突した岩盤が互いに動くことで、地震が発生する。地下深く沈んだ太平洋プレートから分離された水が、周辺の岩石の融点を下げるため、マグマが発生し、多くの火山を生成する。太平洋プレートに衝突され押された北アメリカプレートは、圧縮応力を受けてひび割れ、たくさんの断層が発生し、北上山地などが生まれた。
また、海嶺で作られて以来、長い時間をかけて海の底を移動してきたプレートには、チャート石灰岩砂岩泥岩といった多くの堆積物が載っているため、プレートが沈み込む際に陸側のプレートに張り付く現象が起こることがある。これを付加と言い、そうしてできたものを付加体と呼ぶ。日本列島もこのようにしてできた部分が多い。
衝突型
現在でも活発で大規模な大陸衝突が起きているのはヒマラヤだけである。元来、南極大陸と一緒だったインドプレートが分離・北上して、約4,500万年前にユーラシアプレートと衝突し、そのままゆっくり北上を続けている。大陸プレート同士の衝突のため、日本近海のような一方的な沈み込みは生起せず、インドプレートがユーラシアプレートの下に部分的にもぐりこみながら押し上げている。その結果、8,000メートル級の高山が並ぶヒマラヤ山脈や、広大なチベット高原が発達した。
規模は小さいながらも、衝突運動が現在でも進行している地域としては、ニュージーランド南島)や台湾が挙げられる。これらは、世界で最も速く成長している山地であり、台湾の隆起速度は、海岸線でも年間5ミリメートルを超える。
日本においては、日高山脈丹沢山地が衝突型造山帯である。特に、丹沢山地は伊豆半島の衝突によってできたものであり、この衝突過程は現在も進行中である。ただし、日高山脈は活動を終えている。
過去の大規模な大陸衝突の跡は多く見つかっている。有名なものは、ヨーロッパアルプスアパラチア山脈ウラル山脈など。大陸衝突の過程には、未知の部分が非常に多く残っている。その理由は、沈み込み型境界では、深部で発生する地震の位置から地下のプレート形状を推定できるのに対して、大陸衝突帯では、深部で地震が発生しないからである。

トランスフォーム型境界(ずれる境界)

すれ違う境界同士の間では、明瞭な横ずれ断層トランスフォーム断層)が形成される。アメリカ西部のサンアンドレアス断層や、トルコ北アナトリア断層などが有名で、非常に活発に活動している。サンアンドレアス断層は大陸上にあるが、一連の海嶺の列(大西洋中央海嶺東太平洋海嶺など)の間で、個々の海嶺と海嶺をつなぐものが多数を占める。理論上は、2プレート間の相対運動軸を通る大円直交し、海嶺とも直交する。

プレートテクトニクス理論の発達

ファイル:Gondwana fossil map ger.png
ゴンドワナ大陸と古生物の化石の分布の関係 Cynognathus(橙)とLystrosaurus(茶)は三畳紀に分布した陸棲の単弓類Cynognathus は体長3mに達した。Mesosaurus(青)は淡水性の爬虫類。Glossopteris(緑)はシダ類であり、南半球すべてで化石が見つかっていることから、南半球の大陸が一続きであったことを示唆する。以上の互いに補強しあう証拠から現在の大陸が図中のように結合してゴンドワナ大陸を形成していたという仮定には妥当性がある。

1912年に、ドイツアルフレート・ヴェーゲナーが提唱した大陸移動説は、かつて地球上にはパンゲア大陸と呼ばれる一つの超大陸のみが存在し、これが中生代末より分離・移動し、現在のような大陸の分布になったとするものである。その証拠として、大西洋をはさんだ北アメリカ大陸南アメリカ大陸ヨーロッパアフリカ大陸の海岸線が相似である上、両岸で発掘された古生物化石も一致することなどから、元は一つの大陸であったとする仮説であった。

当時の人には、大陸が動くこと自体が考えられないことであり、さらにヴェーゲナーの大陸移動説では、大陸が移動する原動力を地球の自転による遠心力潮汐力に求め、その結果、赤道方向と西方へ動くものとしており、この説明には無理があり、ヴェーゲナーが生存している間は注目される説ではなかった。

それまでの通説は、古生代までアフリカ大陸と南アメリカ大陸との間には狭い陸地が存在するとした陸橋説であったが、これはアイソスタシー理論によって否定された。また、移動の原動力についての問題を解決したのが、地球内部の熱対流に求めた、1928年アーサー・ホームズによって発表されたマントル対流説である。その後、古地磁気学分野での研究が進展し、海洋底の磁気異常の様相が明らかになったことから、1960年代ロバート・ディーツ海洋底拡大説を唱え、それら全てをまとめたツゾー・ウィルソンによって、1968年にプレートテクトニクスとして完成した。

プレートテクトニクスの証拠

ファイル:Oceanic.Stripe.Magnetic.Anomalies.Scheme.gif
中央海嶺と周囲の磁化された岩石の分布 溶岩はキュリー点を下回ると同時に磁化され、磁区の方向がそろう(熱残留磁気)。一方、地球の磁場が何度か逆転したことは、火山研究から生まれた古地磁気学により実証されている。中央海嶺周辺の岩石を調べると、海嶺と並行して磁化の方向が現在と同じ部分(着色部)、逆の部分(白)が左右に同じパターンをなして並んでいる。以上の証拠から、海洋底が中央海嶺を中心に拡大したことが推論できる。

1950年代に入ってから、地球物理学の分野で、各大陸の岩石に残る古地磁気を比較することで、磁北移動の軌跡を導き出し、その考察の結果を受けて、海洋底拡大説を基に、大陸移動説のプレートの概念を導入して体系化されていった。

海嶺は、プレートが生産され両側に広がっている場所であるが、海嶺周辺の地磁気を調査したところ、数万年毎に発生する地磁気の逆転現象が、海嶺の左右で全く対称に記録されており、海嶺を中心として地殻が新しく生産されている証拠とされた[1]F. ヴァインEnglish版D. マシューズEnglish版のテープレコーダーモデル)。一方の海溝では、日本海溝第一鹿島海山が沈み込んでいる様子なども観察されている。また、これら地球科学的な現象のみならず、陸上古生物の分布状況なども、「大陸が動いて離合集散した」状況証拠とされている。

現在では人工衛星による精密な測地観測により、大陸が実際に移動している状況が直接的に観測されており、大陸移動説が正しいことは確立している。

参考文献

脚注

  1. 「太陽系探検ガイド エクストリームな50の場所」p18 デイヴィッド・ベイカー、トッド・ラトクリフ著 渡部潤一監訳 後藤真理子訳 朝倉書店 2012年10月10日初版第1刷

関連項目

外部リンク