財政再建団体

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財政再建団体(ざいせいさいけんだんたい)とは、赤字額が標準財政規模の5%(都道府県)または20%(市区町村)を超えた破綻状態にあり、地方財政再建促進特別措置法(再建法・廃止)に基づき財政再建計画を策定し総務大臣の同意を得た地方自治体のこと。正式には準用財政再建団体という。財政再建団体となることはしばしば企業の倒産に例えられるが、破産民事再生法適用の場合と異なり、地方債の完済が前提となっている。

なお再建法の要件を満たした自治体が、再建法を準用しないで自主的に再建する「自主再建」という方法を採ることもある。この場合、地方債の発行制限があるなど、国の各種支援措置は受けられないことになる。

2009年4月1日自治体財政健全化法が完全施行されたことにより、かつての財政再建団体に相当する団体は財政再生団体と呼ばれている。

概要

朝鮮戦争終結による反動不況によって1954年度には約8割の自治体が赤字に陥り、その赤字を「財政再建債」という特例の赤字地方債によって自主再建が困難となった自治体を救済する仕組みが作られた。

ただ、再建の前提として、住民サービスの低下・租税等住民負担の増加などが前提になっている上、財政への指導を通じて自治体そのものが実質的に国の管理下に置かれるため、やむを得ない措置とはいえ自治体として主体的な自治能力の発揮と責任を果たすことが不可能になる。

根拠法

地方財政再建促進特別措置法(昭和三十年十二月二十九日法律第百九十五号、「再建法」と略す)では、昭和29年度の赤字団体であって、その財政再建計画を定め自治庁長官(現在の総務大臣に相当)の承認を受けた団体を「財政再建団体」と定義している。一方、昭和30年度以降の赤字団体については、再建法22条第2項の規定により同法を「準用」して財政再建を行うことから「準用財政再建団体」と呼ばれているのである。

再建の仕組み

まず当該自治体から総務大臣への申請を受ける。総務大臣による「準用財政再建団体」指定後は、国の指導・監督のもと「財政再建計画」を策定する。これには、地方議会の議決と総務大臣の同意が必要。同計画にもとづき、予算が編成され、歳入・歳出の両面にわたって厳しいチェックを受ける。

再建過程では、赤字は起債(借金)で埋め、当該負債に対しては利子補給を行うなど、国から財政優遇措置を受けることができる。再建計画では、おおむね7年度以内に歳入歳出の均衡が実質的に回復するよう、計画される。

自治体には倒産後の会社整理に相当する概念はなく、地方債についても債務不履行は想定されていない。金融機関等は、財政状況の悪い自治体の地方債でも国の後ろ盾があるとの前提に立って低金利で引き受けている。このため市場原理によるチェック機能が働いておらず、会社更生法民事再生法のように貸し手責任を問う破綻法制を自治体に対しても整備すべきだとの意見もある。しかしながら、2007年の「地方財政健全化法」においても「債務免除」の考えは盛り込まれず、その是非は検討継続事項となっている。

再建団体になるということの意味

一般的影響

赤字再建団体は自治体の自らの力で赤字を解消できず、国の管理下のもとで財政再建を進めていくことになる。(準用)再建になると、地方自治体として主体的に「地方自治」を行うことができなくなる。準用再建になることは、「地方自治権を取り上げられること」、その申請をすることは地方自治権の「返上」を意味する。

予算主義に基づいて行われる地方自治において、予算の制約は決定的である。予算の調製・緊急時の予算対応さえ国に相談せざるを得ず、施策の展開にあたっての自主性・主体性はほとんどなく、財政再建のために一義的に歳入確保・歳出削減が求められる。単に、行政内部での改革に止まらず、市民サービスの低下や各種使用料・手数料の引き上げなど、住民サービスにも大きな影響が及ぶ。たとえ話として、よく言われているのは「鉛筆一本買うのにも国にお伺いを立てる必要がある」ということである。

具体的影響

歳入
実際には、地方自治体が独自に歳入面で増収を図ることはなかなか難しい。それは、地方交付税国庫支出金などのなかば決まっている歳入や、地方税などの税率が法律で決められているものなど、自治体の裁量で増収を図ることが一般には困難な項目が、歳入の多くを占めているからである。
ただ、歳入増加の決定打、抜本策ではないとはいえ、住民にも一定の負担を願うという趣旨からも、使用料・手数料の改定(値上げ)などに踏み切らざるを得ない。具体的には、使用料・手数料(保育料、住民票交付手数料、公共施設使用料など)、国民健康保険料(税)などが、国基準または、類似自治体で最も高い額を徴収している自治体と同一又はそれを上回る水準とすることが考えられる。この場合、市民負担増加につながる。
歳出
結局は歳出を切り詰めざるを得ない。ただ、法律で地方自治体の一定の負担割合が決まっている費用もあり、そうした費用については削減は困難である。どうしても、法律に基づかない各種団体への補助や投資的経費(公共事業)等の削減に踏み込まざるを得ない。特に、地方自治体独自で実施している事業の廃止や各種団体へ交付する補助金は削減せざるを得ない。これらは環境、福祉、教育などに見られるが、近隣・同規模・類似の自治体との比較で最も低い水準への切り下げが予想される。
投資的経費では、将来に向けた都市基盤整備や学校施設、道路などの住民生活に欠くことのできない投資や更新、補修が計画的に実施できなくなったり、整備時期が当初予定より大幅に遅延するなどにより、最終的には行政サービスが著しく低下することが予想できる。将来の住民にとっても不安材料といえよう。

このほかに、次の影響がある。

  1. 債権者への支払い条件の悪化や住民に対する各種給付の抑制
  2. 特別職・職員給与手当の減額、支払遅延
  3. 外郭団体特別会計の整理・合理化、見直し

その他住民・自治体双方に非常に厳しい内容となる。

適用例

昭和期

1955年度(昭和30年度)以降の財政再建団体数は、884団体であり、そのうち都道府県は20団体、市町村864団体である。

近年の事例

平成になってから財政再建団体となった地方自治体例としては、福岡県赤池町(現在の福智町)、北海道夕張市が知られている。

  • 福岡県赤池町(現在の福智町) - 1992年度に財政再建団体となり、2001年度に再建が完了。
  • 北海道夕張市 - 2006年夏、ヤミ起債による財政危機が表面化し、財政赤字が巨額に上ることから自主再建は困難であるとして、財政再建準用団体の申請を行い、2007年3月6日認定された。同年4月1日から、福岡県赤池町以来の財政再建団体となった。

赤池町と夕張市はともに旧産炭地域である。なお、夕張市周辺の同じ旧産炭地の自治体である歌志内市上砂川町などにおいても、夕張市同様のヤミ起債が明らかになり、厳しい財政状況にあることが次々に明らかになったが、2006年9月22日に産炭地活性化基金の取り崩しについて所管官庁である経済産業省の承認を得て、当面の危機は脱した。

財政再建団体になる可能性が示唆された例

  • 鳥取県日野町 - 2005年9月、当時の町長が町議会で「2007年度には財政再建団体になるしかない」と財政破綻を宣言した。町側は、過去の起債の償還に加え鳥取県西部地震の復旧費が財政を圧迫したのが原因であるとしたが[1]片山善博鳥取県知事(当時)から「無為無策の計画倒産」との批判[2]を受けて破綻宣言を撤回した。なお、平成の大合併においては協議がまとまらず、破談している。
  • 埼玉県江南町 - 平成の大合併において、熊谷市などとの合併について協議していたものの、住民投票で反対票多数で破綻した。そのため、このまま単独町政を取る場合の財務についてシミュレーションしたところ、数年後に財政再建団体になる可能性が高いことが判明し、合併推進派の議員があわてて再び合併協議を再開させるべく活動し[3][4]、2005年10月に江南町を除いた状態で合併が成立していた熊谷市に遅れて合流するという形で2007年2月に合併した。
  • 岡山県 - 岡山県の石井正弘知事は2008年5月29日の定例会見で、県財政が現状のまま推移すれば2011年度に破綻とみなされ、財政再生団体に転落する可能性があると明らかにした[5]
  • 京都府京都市 - 2008年7月28日、門川大作市長は同市の都市経営戦略会議で、2011年度の実質赤字比率が推計で27%に達する見通しを発表し[6]、決算でも2008年度と2009年度が赤字となった。
  • 宮城県 - 平成21年度当初予算をベースとして、平成25年度までの5年間にわたり、現在の経済情勢や地方財政制度を前提に、県の一般会計の収支状況を機械的に算出した結果、平成23年度に財政再生団体へ転落する見込みとの試算が公表されている。この試算結果を受け、宮城県では平成22年度から平成25年度までを期間とする新たな財政再建プログラムを策定・実施することにより、財政再生団体転落を回避することを表明している。

財政再建団体に関連する作品

脚注

関連項目

外部リンク