おいちょかぶ

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ファイル:Kabufuda set.jpg
株札のセット。右上の札は予備札

おいちょかぶとは、花札もしくは株札を用いて行われるゲームの一つである。単に「かぶ」、「」と呼ばれることもある。基本的にはトランプゲームのバカラブラックジャックに似ている。

使用する道具

花札または株札(トランプでの代用も可能である)
  • トランプや花札で行う場合、11以上のカード(トランプではJ・Q・K、花札では柳・桐)を省く場合と省かない場合がある。
チップ
  • 碁石や点棒、マッチ棒にそれぞれ点数を決めて使用する。
座布団
  • 株札や花札を競技に用いるときは、座布団を使用する。親と子が座布団を挟んで向かい合って勝負する。

数字と呼称

おいちょかぶでは、0~9の数字をそれぞれ下記のように呼称する。なお、呼称には地域によって差異が存在する。

  • 0 - ブタ(またはドボン)
  • 1 - ピン(またはチンケ、イッカチ、インケツ、ツン)
  • 2 - ニゾウ(またはニタコ)
  • 3 - サンタ(またはサンタコ)
  • 4 - ヨツヤ(またはシスケ、シホウ、シケ、ヨンタ、シス、シスン、シニ)
  • 5 - ゴケ
  • 6 - ロッポウ(またはロッポ)
  • 7 - シチケン(またはナキ)
  • 8 - オイチョ(またはヤイチョ、ハッポウ、チョウベ)
  • 9 - カブ

おいちょかぶという名称の語源はここから来ており、8と9(オイチョ+カブ)を組み合わせたものである。また、数字の呼称の語源は日本語に由来するが、8のオイチョはポルトガル語の8(pt:oito)に由来する。9のカブの語源は不明であるが、江戸時代には「かう」とも呼ばれており、こちらのほうが古い呼称である。

競技のスタイル

ブラックジャックのように、親(胴元)と子(張子)で争う博戯。配られた2枚または3枚の札の合計値の一の位が、カブ(9)に近ければ近いほど勝ちとして、賭けていた点数を勝った方が負けた方からもらえる[1]。点数のやり取りは親対子で行われ、親は何人もの子を相手に戦わなくてはならず、子のみが張り点を決めることも出来る。

胴前の決定

実際の競技に入る前に、「胴前」を協議して決める必要がある。胴前とは子が張る(賭ける)点数の最高限度のことで、例えば胴前が50点と決まれば、一回の勝負で子が賭ける点数は50点以下でなければならない。

ここで注意が必要なのは、胴前とは「子全員の賭け点の合計」の最高限度であり、「子一人一人の賭け点」の最高限度ではない点である。例えば胴前が50点のとき、Aが25点、Bが15点、Cが10点とそれぞれ賭ければ、この時点で合計が50点のため、Dは賭けに参加出来ない。

競技の流れ

  1. 親決め)山札をめくり、一番若い数が出たものを親とする。親と子は向かい合うようにして場に座る。
  2. 子の一人が代表して札を切り、親が配る。
  3. 場札の配布)親は場に右から左に数を見せた札を4枚配り、自分用に伏せた札を一枚置いておく。
  4. 賭け)子は場の札から、任意の札を好きな枚数だけ選択し、胴前に従って点数を張る。
  5. 決め札の配布)親は場札に、右から左に「決め札」を配る。
    • 子が点数を賭けている場札には、いったん子に決め札を見せてから裏にして配る。
    • 子は決め札と場札の合計数を見て、もう1枚決め札を引くかどうか決めることができる。ただし、決め札と場札の合計の一の位が
      • 3以下の場合:もう1枚引かなくてはならない(「サンタに止めなし」)
      • 7以上の場合:もう1枚を引いてはならない(「シチケン引きなし」「ナキナキ勝負」)
    • 2枚目の決め札は数を見せて(表にして)配られる。
    • 場札+2枚の決め札の合計に不満がある場合でも、4枚目を引くことはできない。
    • 子が点数を賭けていない場札は全て表にして、そこにも1枚は決め札を配る。このとき、2枚目を配るかどうかの選択は、次に決め札を配られる場札に点数を賭けている子が行う。
  6. 親の決め札)決め札の配布を場の札4枚全てに行ったあと、親は最初に配られた親用の場札を表にして決め札を1枚加える。子と同様、さらにもう1枚加える事もできる。
  7. 場札と決め札の合計結果の1の位の値によって勝敗を決める。
  8. 親が勝った場合は、子の賭けた点数は親のものになる。子が勝った場合は、子は賭けた点数と同額を得る。親と子の値が等しい場合には引き分けとなるのが普通だが、親が勝つルールもある。

特殊役

数の組み合わせによって役が発生する。

クッピン(親のみ)
  • 9と1の2枚の組み合わせとなった場合、無条件で勝ちとなる。順序は問わないが[2]、3枚目を引いた場合は無効。(9→1の順序でないと成立しないルールもある[3])。
シッピン(親のみ)
  • 4と1の2枚の組み合わせとなった場合、無条件で勝ちとなる。順序は問わないが[2]、3枚目を引いた場合は無効。(4→1の順序でないと成立しないルールもある[3])。
アラシ(親、子とも[4]
  • 3枚の数字がすべて同じ場合、無条件で勝ちとなる。子の場合は親のクッピン・シッピンにも勝つ。
  • 親・子ともにアラシとなった場合は札の合計数の一の位の数が大きい方の勝ちとなる。つまり3が3枚そろった場合が最強の組み合わせとなり、アラシカブと呼ばれる。
  • ゾロとも呼ばれる。

ローカルルール

ローカル役

一部地域、一部のゲームのみ採用される役。

ニイチ
  • 2と1の組み合わせ。三枚目を引くと無効。2と1の札が有利になる分、賭ける札を選べる事ができる子が有利の為、採用される事は少ない。
シドウ
  • 4と10の組み合わせ。
シロ
  • 4と6の組み合わせ。
ゾロ
  • 同じ札が2枚の場合。1なら1ゾロと呼ばれ、9なら9ゾロとなる。親子共に出来た場合は9が最強で10が最弱になる。この役を採用すると荒れやすくなるため、2が2枚(ツルと呼ばれる)と5が二枚(ゴゴと呼ばれる)のみ採用する場合があるが、ニイチ等と同様、子が有利になりやすくなる為、採用されることは稀。
ゾロつぶし
  • 7と3の組み合わせ。この役自体は弱いが、ゾロに問答無用で勝つことができる。
分け札
  • 4と9の組み合わせ。この役自体は弱いが、一部の役には勝つように設定することがある。
トイチ
  • 1と10の組み合わせ。10→1の順序でないと成立しないルールもある。別名トッピン。ローカル役の中でも採用率は低い。
ノボリ・クダリ
  • ノボリは3枚の札が連続的な昇順の数である場合。クダリは3枚の札が連続的な降順の数である場合。9、10、1のように10を跨いだものは無効。親・子ともにノボリとなった場合は札の合計数の一の位の数が大きい方の勝ちとなる。つまり2、3、4(クダリの場合は4、3、2)が最強になる。ローカル役の中では比較的採用率は高い。
風神・雷神
  • 風神は3、7、10。雷神は4、7、9の組み合わせ。順序は問わない。ハンゲームで採用されていた。
一二三・七五三
  • 文字どおり一二三は123の組み合わせ。七五三は753の組み合わせ。順序は問わない。Apple Storeて配信されている「モバイルおいちょかぶ」で採用されている。
38光
  • 花札を使用時限定。3と8の光札の組み合わせ。どの役にも勝る。
ドシッピン
  • 1、10、10の組み合わせ。順序は問わない。龍が如くのミニゲームのおいちょかぶで採用されている。

通常のローカルルール

ピンばさみ(子のみ)
  • 1枚目の決め札が、場札と二枚目の決め札の1に挟まれたとき、ピンばさみを宣言し、1枚目の決め札の数字×賭け点を親から無条件でもらえる(親の無条件負け)。

大阪(関西)のローカルルール

大阪を中心とした関西地方では、独自のローカルルールが採用される場合があるので注意が必要である。

比較的メジャーなもの

  • 2枚目での合計数に関わらず3枚目の要求が出来る。よって、4や9のアラシも存在する。
  • 子のシッピンが存在する。親のシッピンはない(ゴケになる)。
    • 強さの順は「アラシ(3倍点)>親のクッピン(2倍点)>子のシッピン(2倍点)>普通役」で、子は場札の1か4に賭けるのがセオリーとされる。
  • 親と子が同時にアラシのとき、以下のいずれかを採用(上から順にメジャー)。
  1. 親の勝ち。
  2.  (個々の札の月が)「3>2>1>10>9>8>7>6>5>4」の順に強い。
  3. 「4=9>3=8>2=7>1=6>5=10」の順に強く、イコールの場合は親の勝ち。
    • 3.の順は2枚目時点での強さを元にしている。4や9なら2枚目で8となるので、よく3枚目を引いた、ということであろう。
  4. 引き分け(元返し。「帰れ」ともいう)
  5. 子の勝ち。この場合は子のアラシ成立時点で宣言すれば即座に配当されることが多い。また、親が子のアラシから(0の目を出しても)逃げることが出来ない。
  6. 数字の大きい順に強い。
  • 4と6の2枚ブタの際は、3枚目の札を引く選択をする際に、勝負を降りる事が出来る(3枚目の札を引いた場合は適用されない)これを「シロクの逃げ」と呼ぶ。

マイナーなもの

  • 親のクッピンは親の無条件勝ち。
  • 3枚ブタは、子が出せば親との勝負は無条件で引き分け、親が出せば勝負自体が無効となる。2枚の場合は「シロクの逃げ」が適用された場合を除きただのブタ。
    • 0は勝負する気なしとみなされる、の意か。「『インケツ』に負ける」という状況を無くすためのルールと思われる。
  • 親が自分の配られた札に不満があるときに、無条件で全員の札を配りなおす事が出来る。「ミンソ」と呼ばれる。
    • 子の持ち札を開ける前に宣言しなくてはならない。
    • 関西のみならず中国・四国地方にかけて存在する。
    • このルールは子にとってかなり不利なルールなので、現在はほぼ消滅している。戦前生まれの人が勝負する時にごく稀に見かけられるので、時代と共になくなりつつあるルールといえる。
    • 4枚の場札がすべて同数(または3枚以上同数)の場合に配りなおすルールもある。このばあい、親は子から「真剣にやれよ」となじられるのが定法である。

ブラックジャックとの違い

  1. ブラックジャックは参加者の数だけ場に配るが、おいちょかぶは場に4枚が原則である。
  2. ブラックジャックは自分に配られた札に対しての駆け引きであるが、おいちょかぶは場の4枚のどれで勝負してもよい。
  3. ブラックジャックは札の合計数が21に近い方が勝ちだが、おいちょかぶは合計数の一の位だけで勝負する(例えば、9と19は等価である)。したがって、おいちょかぶにはブラックジャックのようなバストがない。
  4. ブラックジャックはバストするまで何枚でもカードを引けるが、おいちょかぶは2枚(場を含め合計3枚)までである。

バカラとの違い

  1. バカラは仮想的に設定されたバンカーとプレイヤーが行っている勝負の結果を予想して賭ける(ベッティング)のに対し、おいちょかぶは親と子が札を引くことで直接勝負(ゲーミング)する。

格言

  • 思案ロッポウ:2枚目の時点でロッポウの時、もう一枚要求するか、このまま勝負するか迷う事から名づけられた格言。(関西地方)
  • ゴケ勝負:2枚目の時点でゴケの時、セオリーならもう1枚引くところだが、あえてここでストップして勝負すればたまに勝つ場合もあるので有効な作戦であるという格言。2枚勝負なので、親の2枚目でロッポウやナキのような微妙な数だった場合親は警戒する。親が勝負できずに3枚目を引くと裏目に出てゴケより弱くなり自滅負けすることがある。上記の格言と合わせて「思案ロッポウ、ゴケ勝負」とも言われる。(関西地方)

脚注

  1. なおブラックジャックと違い、目的の数を超えた(10以上)場合はただの繰上りで、極論を言えば最初の2枚がブタで3枚目でカブになった場合(山越しカブ・山越えのカブ)も普通のカブと変わらない
  2. 2.0 2.1 淡路まもる 編『花札の遊び方』文進堂、昭和56年8版、P155。
  3. 3.0 3.1 渡部小童 編『花札を初めてやる人の本』株式会社土屋書店、2010年、P165。
  4. 淡路まもる 編『花札の遊び方』P155ではあらし取りは「子の特典」とされ、子専用の役になっている。

参考文献

  • 淡路まもる 編『花札の遊び方』文進堂、昭和56年8版。
  • 渡部小童 編『花札を初めてやる人の本』株式会社土屋書店、2010年、(ISBN 978-4-8069-1129-6)

関連項目

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