エッジワース・カイパーベルト

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ファイル:Kuiper oort-en.svg
エッジワース・カイパーベルト(上)と仮説上のオールトの雲(下)の想像図

エッジワース・カイパーベルトEdgeworth-Kuiper beltEKB)、または単にカイパーベルトKuiper belt)は、太陽系海王星軌道(太陽から約30 AU)より外側の黄道面付近にある、天体が密集した、穴の空いた円盤状の領域である。外側の境界はあいまいだが、連続的にオールトの雲につながっていると考えられる。

便宜上、狭義では48 - 50 AUまで、広義では数百 AUまでと定義される。48 - 50 AUより外側を散乱円盤という。太陽系外縁天体のうち、エッジワース・カイパーベルトに位置する物をエッジワース・カイパーベルト天体 (Edgeworth-Kuiper belt Object, EKBO) ともいい、短周期彗星と、おそらくはオールトの雲の起源だと考えられている。

範囲と区分

ファイル:Outersolarsystem objectpositions labels comp.png
発見されたカイパーベルト天体の位置(緑色)。分布にむらがあるのは背後に天の川が存在し天体の発見が困難な方角があるためで、実在する構造とは考えられていない。目盛りは天文単位を表す。

エッジワース・カイパーベルトは、正確には、単なる太陽との距離ではなく、軌道要素の軌道長半径近日点距離で定義される。 エッジワース・カイパーベルトは、古典的エッジワース・カイパーベルトと散乱円盤 (Scattered Disk) に分けられる。加えて参考として、E-SD (Extended Scattered Disk) についても述べる。なお、内側の境界である海王星軌道を別として、以下の区分は大まかなものであり、違う数値がとられることもある。

古典的エッジワース・カイパーベルト(狭義のエッジワース・カイパーベルト)
軌道長半径が海王星(約30 AU)より大きく、公転周期が海王星の約2倍となる大きさ(約48 - 50 AU)以下。海王星の重力の影響を強く受ける。この部分だけをエッジワース・カイパーベルトと呼ぶことがある。
共鳴エッジワース・カイパーベルト
古典的エッジワース・カイパーベルトの中でも、特に公転周期が海王星と整数比の関係になる領域。
散乱円盤(散乱エッジワース・カイパーベルト)
軌道長半径が約48 - 400 AU、近日点距離が約40 AU以下。近日点では海王星の重力の影響を受ける。エッジワース・カイパーベルトには含めないことがある。
Extended-Scattered Disk(参考)
軌道長半径が約48 - 500 AU、近日点距離が約40 - 80 AU。海王星の重力の影響をほとんど受けない。通常、エッジワース・カイパーベルトには含めない。

定義上、黄道面からの距離は問題にしないが、大半の天体の軌道傾斜角は10°以下で、30°を超えるものはほとんどない。エッジワース・カイパーベルトは、(中央に穴の空いた)平らなディスク型だといえる。

エッジワース・カイパーベルト天体

エッジワース・カイパーベルトにある天体をエッジワース・カイパーベルト天体 (EKBO)、またはカイパーベルト天体 (KBO)、エッジワース・カイパー天体 (EKO) などという。主にからなる小天体で、便宜上、小惑星として扱われる。なお、日本学術会議による2007年4月9日対外報告(第一報告)では、「エッジワース・カイパーベルト天体」および「カイパーベルト天体」を「TNO(太陽系外縁天体)」の別名としている。

EKBOを古典的EKBOと共鳴EKBOに分けることがある。共鳴EKBOは海王星との公転周期の比率によって、更に冥王星族などいくつかの族に分かれる。また、準惑星エリスのように散乱円盤に位置し、遠日点が遠く離心率が大きい天体は、散乱円盤天体 (SDO) または散乱カイパーベルト天体 (SKBO) として区別することがある。なお、近日点でも76 AUまでしか近づかない小惑星 (90377) セドナは Extended-Scattered Disk天体 (E-SDO)、もしくは内オールトの雲の天体と考えられており、広い意味でもEKBOに含めない。

EKBOが海王星の重力により太陽系内部に散乱されると、ケンタウルス族短周期彗星になり、外側に散乱させられると散乱円盤天体になる。散乱円盤天体が遠日点付近で何らかの原因で軌道を乱されると、近日点距離が伸び、E-SDO やオールトの雲の天体になると推測されている。軌道を乱す要因としては、EKB のすぐ外側を公転しているかもしれない惑星X近傍恒星、散乱円盤領域に進入してきた放浪惑星などが考えられている。

歴史

ファイル:GerardKuiper.jpg
エッジワース・カイパーベルトの提唱者の一人であるジェラルド・カイパー

エッジワース・カイパーベルトは、1943年1949年アイルランドの天文学者ケネス・エッジワースが短周期彗星の起源として提唱した。その後、1950年に全ての彗星の起源としてオールトの雲が提唱されると、1951年アメリカの天文学者ジェラルド・カイパーが、オールトの雲の起源として提唱した。

一時期は、全ての彗星の起源がオールトの雲だと思われていた。しかし1980年ジュリオ・フェルナンデスは、ほとんどの短周期彗星の軌道傾斜角が0に近いことから、短周期彗星の起源は球状のオールトの雲ではなく円盤状のエッジワース・カイパーベルトだと主張した。1988年には、マーティン・ダンカントマス・クィンスコット・トレメインが、シミュレーションにより、オールトの雲からランダムな方向でやってくる彗星が、実際の短周期彗星に見られる平らな分布になることはありえないことを示した。このようにして、エッジワース・カイパーベルトの存在は広く信じられるようになった。

1980年代から1990年代にかけて、いくつかのチームが、仮説上のエッジワース・カイパーベルトを確認しようと捜索をおこなった。そして1992年8月30日UTハワイ大学ジェーン・ルーデイビッド・ジューイットが、太陽から遠く離れた小惑星[[(15760) 1992 QB1|テンプレート:Mp]]を発見した。しばらくして軌道が確定すると、EKBOであることが判明した。テンプレート:Mpは、(冥王星カロン以外で)最初のEKBOであり、冥王星より遠い最初の小惑星である。なお、後に小惑星番号 (15760) が与えられたが正式な命名はされておらず、仮符号そのままか省略して「QB1」と呼ばれている。古典的EKBOの代表的なサブグループであるキュビワノ族の名前はここから取られた。

その後、翌1993年には5個、その後は毎年10個以上のEKBOが発見され、実際に多くの天体が存在することが明らかになった。1997年には、最初の散乱円盤天体である(15874) 1996 TL66も発見され、エッジワース・カイパーベルトが遠方まで広がっていることが明らかになった(現在ではエッジワース・カイパーベルトに含めないこともある)。

2006年時点で、1,000を超えるEKBOが発見されている。さらに、冥王星カロンもEKBOに分類されるようになった。

探査

2006年1月19日に打ち上げられたアメリカ航空宇宙局 (NASA) の探査機ニュー・ホライズンズは、2015年7月14日に冥王星とカロンをフライバイし、近接観測を行った。また、ニュー・ホライズンズは2019年に別のエッジワース・カイパーベルト天体、2014 MU69に接近し、観測を行う予定である。


関連項目

テンプレート:冥王星型天体