セルシウス度

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セルシウス度(または単に「度」、セ氏度、摂氏度)
degré Celsius
degree Celsius
記号
国際単位系 (SI)
種類 固有の名称と記号で表される一貫性のある SI 組立単位
温度
定義 セルシウスの定義 = 水の三重点熱力学温度の273.16分の1(ケルビンと同一)    セルシウス温度の定義 = ケルビン(K)で表した熱力学温度の値から273.15を減じたもの
由来 凝固点を0度、沸点を100度とする温度(実際の凝固点は0.002 519度、沸点は99.9743度である。)
語源 アンデルス・セルシウス
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セルシウス度(セルシウスど、英語: degree Celsius、記号: °C)は、温度単位である。その単位の大きさはケルビンと同一である。国際単位系 (SI) では、次のように定義されている[1]

以前に用いられた温度目盛の定義に由来して,熱力学温度(記号 T)を表すのに,参照温度 T0 = 273.15 K(氷点)からの差を用いて表す方法が,今も広く使われている.この差はセルシウス温度(記号 t)と呼ばれ,次の量方程式により定義される.

t = TT0

セルシウス温度の単位はセルシウスであり,記号は °C で,定義によりケルビンの大きさに等しい.温度の差または間隔はケルビンまたはセルシウス度のどちらによっても表すことができ(第 13 回 CGPM,1967-1968年,決議 3),その数値は同じになる.ただし,セルシウス度で表したセルシウス温度の数値はケルビンで表した熱力学温度の数値に対して次の関係を持つ.

t/°C = T/K − 273.15

すなわち、「セルシウス」(degree Celsius)は単位の名称であり、ケルビンの大きさに等しい温度間隔を表す。一方、「セルシウス温度」(Celsius temperature)は量の名称であり、(ケルビンで計った値と273.15だけ異なる)温度の高さを表す。しかし、一般にはこの違いが意識されず、混同されることが多い。

定義

冒頭にもある通り、熱力学温度 T と対応するセルシウス温度 t は、氷点 T0 = 273.15 K を参照温度として、参照温度からの温度差

t = TT0

として定義される[1]。また、セルシウス温度の単位であるセルシウス度は、熱力学温度の単位であるケルビンと等しく定義される[1]

なお、日本の計量法での定義は次のようになっている[2]

計量単位令にあるとおり、単に「度」と表記した場合は、セルシウス度を意味する。

その単位記号は、「℃」 と定められている[3]

元々の定義は凝固点を0度、沸点を100度とするものであった。

用法

計量法体系では、「15セルシウス度」[4]、「15度」の表記、又は単位記号の「℃」を付して「15 ℃」(読みは、じゅうご ど)の表記が義務づけられており、「セ氏15度」や「摂氏15度」と表記することは計量法上は許されない[注釈 1][5][6]

ただし、俗用(計量法の規制が働かない場合など、計量法#取引・証明に該当しないもの)では、例えば「セ氏15度」や漢字による「摂氏15度」の表記もみられる。英語では“fifteen degrees Celsius”と読み、“15 deg C”と略記することがある。アメリカ合衆国では、“fifteen degrees centigrade”と読まれることがある。

セルシウス度は、国際単位系(SI)における取り扱いが、他の単位と異なる点がある。

その定義は、温度のSI基本単位の一つである、熱力学温度ケルビンの項でなされている。

一方で、セルシウス度は、「固有の名称と記号で表される一貫性のある SI 組立単位」であるとされ、つぎのように掲げられている[7]

表3 固有の名称と記号で表される一貫性のある SI 組立単位(抜粋)
組立量 名称 記号 他の SI 単位による表し方 SI 基本単位による表し方
セルシウス温度 セルシウス度(注e) °C K
(注e) セルシウスはケルビンの特別な名称で,セルシウス温度を表すために使用される.セルシウス度とケルビンの単位の大きさは同一である.したがって,温度差や温度間隔を表す数値はどちらの単位で表しても同じである.

「単位の名称」では次のようになっている[8]

単位の名称のつづりには全て小文字を用いる.ただし,セルシウス度(°C)だけは例外であり,その名称のつづりは degree Celsius である(単位 degree は小文字の d からはじまり,その修飾詞である Celsius は人名に由来するので大文字の C からはじまる)

「量の値の書式」では次のようになっている[9]

数値は常に単位の前に置き,数値と単位を分割するために空白(space)を用いる.この原則は,セルシウス度(degree Celsius)についても適用され,セルシウス温度 t の値を表現するときには,その単位記号である °C の前に空白を挿入する.
  • 例:t = 30.2 °C
  • 不適例:t = 30.2°C
  • 不適例:t = 30.2° C

歴史

セルシウス度はスウェーデンの天文学者でウプサラ天文台の創始者であるアンデルス・セルシウス1742年に考案したものに基づいている。ただし、彼は現在のセルシウス温度の目盛付けとは逆の目盛り付けを行った。すなわち、1気圧下における凝固点氷点)を100度とし沸点を0度として、その間を100等分する目盛りを考案した。そして氷点以下の温度を、101度、102度、103度・・・とした。自然環境下の気温は現今の温度目盛りでマイナス90度程度~プラス70度程度であるので、セルシウスの考案した目盛りでは、温度が負数で表現されることはないという利点がある。

しかしその後、セルシウスの死の直後の1744年に、凝固点氷点)を0度、沸点を100度とする現在の方式に改められた[10]。この改善については、誰か一人の功績によるものではなく、セルシウス、セルシウスの後任のsv:Mårten Strömer、計器制作者のsv:Daniel Ekströmの3人の貢献によるものである[11]。 なお、セルシウス度に最初期に注目し、実際に温度計をsv:Daniel Ekströmに製作させたカール・フォン・リンネの功績によるものではない[12]

水の氷点沸点との間を100分割したことから、この体系のもともとの名称は“centigrade”(「百分度」の意)であった。しかし1948年の第9回国際度量衡総会において、名称が正式にセルシウスへと変更になった。これには、考案者である「セルシウス」の認知のためとSI接頭辞であるセンチ(centi)との衝突からくる混乱(centigradeがgradeという単位の100分の1と勘違いされる)を避けるという目的があった。ただし、現在においても“centigrade”でも通じる。

日本や中国では、摂氏度(せっしど)、日本ではセ氏度(セしど)と呼ばれることがある。摂氏の語源は、セルシウスの中国音訳「摂爾修斯」(繁体字攝爾修斯簡体字摄尔修斯ピン音:Shè'ěrxiūsī)から「」+人名に付ける接尾辞「」で、「摂氏」「温度」になった。

その後の物理的な計測方法の進歩と熱力学温度の採用により、セルシウス温度の現在の定義は「ケルビン(K)で表した熱力学温度の値から273.15を減じたもの」となっている。つまり水の三重点を0.01 ℃とし、水の三重点と絶対零度の温度差の273.16分の1を1 ℃としている。「273.16分の1」という数字は、セルシウス温度における1度の温度差をそのまま熱力学温度で1ケルビンの温度差として使用するためのものである。すなわち、セルシウス度とケルビンの目盛の幅(単位の大きさ)は等しい。

なお、現在の国際温度目盛(ITS-90)では、融点沸点は厳密には 0℃、100 ℃ ではなく、それぞれ 0.002 519 ℃ 、99.9743 ℃ である(水#物理的性質を参照)。

セルシウス度(およびセルシウス温度)は世界的に使用されるようになっている。イギリスアイルランドの放送メディアにおいても、センチグレードを用いず、セルシウスと呼ぶようになっている。ただし、アメリカ合衆国では日常生活の全般を通じて、いぜん単独でカ氏度(およびカ氏温度)を用いるか、若しくは「カ氏度」と「センチグレード」を併記しているのが実態である。

単位の換算

  • セルシウス温度からカ氏温度への換算
[math]\theta/^\circ\text{F}=\frac{9}{5}t/^\circ\text{C}+32[/math]
  • カ氏温度からセルシウス温度への換算
[math]t/^\circ\text{C}=\frac{5}{9}(\theta/{}^\circ\text{F}-32)[/math]
  • −40°Cと−40°Fは等しく、上の式は次のようにも表せる。
[math]t/^\circ\text{C}=\frac{5}{9}(\theta/^\circ\text{F}+40)-40[/math]

テンプレート:Temperature テンプレート:温度の単位の比較

符号位置

記号 Unicode JIS X 0213 文字参照 名称
U+2103 1-1-78 ℃
℃
セ氏度記号

Unicodeのセルシウス度の記号は、既存の文字コードとの互換性のために用意されている互換文字である。Unicode標準では、セルシウス度の記号はテンプレート:Unichar)とテンプレート:Unichar(大文字のC)を組み合わせて使用し、検索の際はこれと一文字の「℃」を同一視することを推奨している[13]

注釈

  1. 計量法第3条と別表第1、第8条は、「法定計量単位」を明確に定めており、温度の法定計量単位は、「ケルビン セルシウス度又は度」及び「カ氏度」(計量単位令別表第7)である。この規定のゆえに、「セ氏度」、「摂氏度」、「華氏度」の表記は計量法の違反となる。通産省のブックレットは、「計量法では 用語の使用を明確には規定していませんが、・・・」(新計量法とSI化の進め方、通商産業省、SI単位等普及推進委員会、1999年3月発行、、p.31 Q21とA21)と記述し、計量法上の「物象の状態の量」の用語の使用を規定してはいないことを表明している。このことは、「計量単位」については、その使用を明確に規定しており、規定外の計量単位(の名称)を使用することは、法に違反となることを示すものである。なお、計量法は「取引又は証明に用いる」計量単位について規制しており、これらの用途以外における「非計量単位」の使用は計量法の規制外である。

引用

  1. 1.0 1.1 1.2 『国際単位系(SI)』2.1.1.5 熱力学温度の単位(ケルビン)、pp.24-25
  2. 計量単位令 別表第一 項番5、温度の欄
  3. 計量単位規則 別表第2 温度・「セルシウス度又は度」の欄
  4. 計量単位規則、別表第一 項番二、比重、定義の欄、「四セルシウス度の温度の下において」の語が見える。
  5. 計量単位令 別表第一 項番5、温度の欄の表現のとおり
  6. 1958年にアルコール専売法の第2条第2項中の「摂氏十五度」を「温度十五度」に改める法律改正がなされている。[1]第9条
  7. 『国際単位系(SI)』表3 固有の名称と記号で表される一貫性のある SI 組立単位、p.29
  8. 『国際単位系(SI)』 5.2 単位の名称、p.43
  9. 『国際単位系(SI)』 5.3.3 量の値の書式、p.45
  10. Anders Celsius 1701-1744 ウプサラ天文台による解説、第6段落目
  11. History of the Celsius temperature scale ウプサラ天文台による解説、第5段落の後半部分、Pehr Wargentin(Secretary of the Academy of Sciences、Royal Swedish Academy of Sciences)の1749年の論文による
  12. History of the Celsius temperature scale ウプサラ天文台による解説、第5段落の後半部分、「Linné is not mentioned at all.」
  13. (August 2015) The Unicode Standard, Version 8.0. Mountain View, CA, USA: The Unicode Consortium. ISBN 978-1-936213-10-8. Retrieved on 6 September 2015. 

関連項目

外部リンク