テントウムシ

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テントウムシ(天道虫・紅娘・瓢虫)は、コウチュウ目テントウムシ科(テントウムシか、学名: Coccinellidae)に分類される昆虫の総称。鮮やかな体色の小型の甲虫である。和名の由来は太陽に向かって飛んで行くことから、太陽神天道からとられた。

概要

成虫の体長は数mm - 1cm程度の小型の昆虫である。成虫は半球形の体型で、触角は短い。体は黒・赤・橙・黄・褐色など鮮やかな色で彩られ、体の模様も種類間で変異に富んでいる。日本では赤や黄の地色に黒い水玉模様、あるいは黄に白の水玉模様のものが多く、その多くはそれらの斑点の数で命名されている。

幼虫・成虫とも強い物理刺激を受けると偽死(死んだふり)をし、さらに関節部から体液(黄色の液体)を分泌する。この液体には強い異臭と苦味があり、外敵を撃退する。体色の鮮やかさは異臭とまずさを警告する警戒色といえる。このためなどはテントウムシをあまり捕食しないが、それでも寄生バチ寄生バエ菌類などの天敵が存在する。ニジュウヤホシテントウの幼虫はカマキリに捕食されることもある。

食性は種類によって大きく異なり、アブラムシカイガラムシなどを食べる肉食性の種類、うどんこ病菌などを食べる菌食性の種類、ナス科植物などを食べる草食性の種類の3つに分けることができる。このため農作物にとっては益虫害虫に大きく分かれることとなる。肉食性の種は近年では農作物の無農薬化を行う際、農薬代わりに使用される生物農薬の一つとして活用されている。

生活環

甲虫の仲間なので、 - 幼虫 - - 成虫という完全変態をおこなう。

成虫は交尾のあとに、食物の近くに数十個ほど固めて産卵を行う。孵化した幼虫はがなく、腹部が後方へ伸びる。さらに体には突起やとげをもち、成虫とは似つかない体型をしている。

甲虫類の中には幼虫と成虫で食性がちがうものもいるが、テントウムシ類は幼虫も成虫も同じ食物をとることが多い。なお、肉食性の種類の場合、餌が尽きると他の幼虫や蛹を共食いすることもある。

充分に成長した終齢幼虫は植物の裏などで蛹になる。蛹は楕円形で、翅こそ短いものの成虫の形に近い。腹部の先で壁面にくっつき、落下しないようになっている。蛹から羽化したばかりの成虫の翅は黄色だが、翅が固まるにつれ、特徴的な模様が現れる。

成虫はからまでよく見られる。トホシテントウなどは幼虫で越冬するが、多くのテントウムシは成虫で越冬する。越冬の際は石や倒木などの物かげで、数匹 - 数十匹の集団を作る。

人間との関わり

ナミテントウやナナホシテントウなど捕食性の種は、農作物に被害を与えるアブラムシを餌にしている。このため彼らは、生物農薬として利用されているが、そのフィールドの捕食対象を食べ尽くすと飛翔して移動してしまうため、定着性に問題があった。農業の世界では、飛べないテントウムシの出現が望まれていたが、名古屋大学が飛べないテントウムシを人工的に作り出すことに成功した。遺伝子組み換えではなく、RNA干渉という手法でを小さくしているため、このテントウムシの幼虫は、通常に翅が形成され、戸外に放しても遺伝子汚染の心配がない利点がある[1][2][3]

柑橘類の害虫ワタフキカイガラムシ(Icerya purchasi)を捕食するベダリアテントウは、生物農薬、益虫としてテントウムシが利用される場合の代表例として、図鑑等でも紹介される。

また、成田市千葉県立成田西陵高等学校では、掃除機の吸い込み口に網を付けた装置でテントウムシを集め、接着剤で背中の羽を接着して飛べなくする方法で生物農薬に使う研究がされ、2013年11月の全国農業協同組合中央会主催の「全国高校生みんなDE笑顔プロジェクト」で優勝を成し遂げた。接着剤は簡単に取れ、近在に生息する個体を使うことから生態への影響が少ない点が挙げられ、タヒチ政府からの引き合いもあるとともに、特許の出願が計画されている。[4]

なお、テントウムシやその体液が大量付着されたブドウで作り出したワインの味が変わるので(「テントウムシ汚染」と呼ばれる)、テントウムシの大発生はワインの商品価値に悪影響を及ぼしている[5][6]

脚注

参考文献

関連項目

外部リンク