バストロンボーン

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バス・トロンボーン: bass trombone)は、トロンボーンの一種。日本では、Bassをバスと発音することが多いが、英語圏ではベースと発音するのが一般的である。

構造

現代のバス・トロンボーンの基本的な構造はテナー・トロンボーンと同じで、標準的な調性は変ロ調(B♭)である。普通のトロンボーンとは異なり、更に低い音を出すために比較的太い管と大きなベルを持つ。マウスピースも比較的大きなものが使われることが多いが、太管のテナー・トロンボーン、テナーバス・トロンボーンのものを使用することも可能である。

現代のバス・トロンボーンは、たいてい1個または2個のヴァルヴを持ち、そのため遠いポジションまで腕を伸ばさなくても低い音が得られ、音が鳴りやすくなる(特に低音)特徴がある。なお、2個のバルブを主管に沿って直列に並べる形態のものをインライン、2個めのヴァルヴが主管にではなく1個めのヴァルヴから伸びた迂回管に付いたものをオフセットと通称する。したがって、インラインの場合、2個のロータリーを独立して使用することが可能であるが、オフセットの場合は1個目のロータリー (F菅)使用時でなければ2個目のロータリーは機能しないことになる。追加の迂回管の調性はFとG、またはG♭、E♭、Dなどであることが多い。2つの管を両方迂回させることでさらに異なる調が得られる。ヴァルヴが1個の場合、迂回管の調性はFを基本とし、迂回管を引き抜いて伸ばすことでEに変更できるものが多い。

奏法

基本的にテナー・トロンボーンと同じである。スライド式の楽器に追加のヴァルヴが2個ある場合、それらのレバーの1つはテナーバス・トロンボーンと同じ左手親指の位置に、もう1つはその隣りか、または中指の位置にあることが多いが、楽器によって異なる。

楽譜

低音部記号が一般的である。また、オーケストラや吹奏楽でBass Tromboneではなく3rd Trombone、もしくは4th Tromboneと書かれたパート譜(英語表記の場合)を演奏する場合があるが、これにはいくつかの理由が考えられる。作曲家が求める音色や様式などの理由から元々テナー・トロンボーンが想定されていた場合や、バス・トロンボーンを備えていない楽団でも演奏できるよう音域などに配慮して楽譜が書かれている場合、単に慣習による場合などである。

種類

変ロ調(B♭管)でテナー・トロンボーンよりやや大きめのベルと太い管をもつ楽器として、ある程度の均一化がされている。ドイツ式の楽器や古い楽器には特徴的な点がみられる。19世紀頃までは、バルブを持たず非常に小さなベルを持つバス・トロンボーン(F管)が用いられていた。

現在「バス・トロンボーン」と呼ばれている楽器の類縁の楽器としては、ヘ調(F管)のバス・トロンボーン、1オクターブ低いコントラバス・トロンボーンがある。本来「バス・トロンボーン」とはF管の楽器のことであったが、現代では変ロ調のバス・トロンボーンが主流になったため、F管にB♭迂回管を備えたものを指してコントラバス・トロンボーンと呼ぶこともある。この場合、後述のB♭管コントラバス・トロンボーンと紛らわしく、混乱の恐れがある。

ファイル:Trombone Quart Bass Posaune.jpg
バルブ式のF管バス・トロンボーン

F管バス・トロンボーン

長いスライドを操作するためのハンドルを備える。操作性に劣ることや、歌劇場のオーケストラ・ピットで長いスライドが邪魔になったこと等が理由で衰退したと言われる。また音色が良くなかったからだという説もあるが、これに対しては反論もある。

現代ではめったに使われないが、ルネサンスバロックから近代まで、この楽器を想定して書かれたものも多く、例えばバルトークの『管弦楽のための協奏曲』には、この楽器のスライドを活かした典型的なポルタメントが出てくる。また、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンの『ミサ・ソレムニス』の第2曲「グローリア」には迂回管のないB♭管テナー・トロンボーンでは演奏不可能なD音の全音符が488小節目に存在する。ヴァルヴ・トロンボーンが盛んに使われた19世紀にはヴァルヴ式のF管バス・トロンボーン(画像参照)も存在した(※前述のバルトーク作品はこの楽器を想定していたという説もある)。また、イギリスではG管バス・トロンボーンが20世紀に入っても使われていた。例えばホルストの『組曲『惑星』』はこの楽器を想定して書かれている。また、改訂版ではいずれも削られているが、マーラー交響曲第5番の第1楽章と交響曲第6番の終楽章のそれぞれ初版では、ヴァルヴを用いないと演奏不可能なトリルが3番・4番トロンボーンのパートに書かれてあった。

こういった楽器が使用された時代の作品を、現代のスライド式B♭管バス・トロンボーンで演奏する際には、時として楽器の機能が異なることによる困難がつきまとう。

コントラバス・トロンボーン

ここではテナー・トロンボーンより1オクターブ低い変ロ調の楽器のこと。現代ではあまり使われない。スライド式のものは2重のスライドを持ち、普通の操作でスライドをテナー・トロンボーンの2倍伸ばしたのと同じ効果が得られるが、そのスライドはたいへん重く、速いパッセージを演奏する事は非常に困難であったらしい。バルブ機構を持つものもあり、普通は前方に伸びている部分が下方に折れ曲がった形をしていることが多い。これはチンバッソという類縁楽器に非常によく似た形をしている。

ワーグナーの楽劇『ニーベルングの指環』では通常のトロンボーン3本に加えて上記バス・トロンボーンとコントラバス・トロンボーンがそれぞれ1本ずつ指定されており、第1夜『ワルキューレ』の第3場『魔の炎の音楽』などの音楽に強烈な重厚感を与えている。また、プッチーニの歌劇『トゥーランドット』はトロンボーン3、コントラバス・トロンボーン1という編成で、通常の3管編成で使用されるチューバの代わりにコントラバス・トロンボーンが指定されているが、イタリアオペラの慣例に従うとこれはチンバッソを使用するのが妥当である。同様に、レスピーギの交響詩『ローマの松』は同様にチューバが編成になく、総譜にはトロンボーン4と指定されているが、4番トロンボーンは音域の低さ(下一点ほ(E)音まで使用される)から考えてBB♭コントラバス・トロンボーンではないかと考えられる。ただし、『カタコンブ付近の松』の後半や『アッピア街道の松』は大抵の場合チューバの方が演奏効果が高い上、現代のB♭バス・トロンボーンだと演奏が困難なので、こちらはしばしばチンバッソではなくチューバで代用される。

なお、現在「コントラバス・トロンボーン」として市販されているものは、ほとんどが前項の「F管バス・トロンボーン」である。2重スライドのBB♭コントラバス・トロンボーンはドイツのミラフォンによって製造、市販されている。

著名なバス・トロンボーン奏者

日本人については、日本のトロンボーン奏者の一覧を参照

外部リンク

  • Douglas Yeo Trombone Web Site(英語 / 一部分のみ日本語)
    Discographyに公式参考音源があり、この楽器の音を聴くことができる。


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