健康

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OECD各国における成人の健康自己申告。
「How is your health in general?」にgoodまたはbetterと回答した割合(%)[1]

健康 (けんこう、: salus: Gesundheit: health)とは、心身がすこやかな状態であること[2]

概念

健康の概念は、1948年の設立における世界保健機関憲章の前文にある、以下の定義が有名である。

身体的・精神的・社会的に完全に良好な状態であり、たんに病気あるいは虚弱でないことではない。

1951年(昭和26年)官報掲載の日本語訳は、完全な肉体的、精神的及び社会的福祉の状態であり、単に疾病又は病弱の存在しないことではない。原文はHealth is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity. [3]

この定義は、健康に関連する権利が不可分かつ相互依存であることを示している[4][5][6]

世界保健機関は1999年の総会で健康の定義として以下の定義を提案[7]しているが、審議には至っていない[8]強調は1948年との変更箇所(原文に強調はない)。

健康とは身体的・精神的・霊的・社会的に完全に良好な動的状態であり、たんに病気あるいは虚弱でないことではない。

原文はHealth is a dynamic state of complete physical, mental, spiritual and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity.[9]

社会的な健康の概念は、健康の社会的決定要因により説明される。すなわち、裕福で、富の分布が公平な社会にすむ人たちは、健康である[10]。また、どのような社会においても、社会的地位が低いと、平均寿命は短く、疾病が蔓延している[11]

健康観

健康観(けんこうかん、: health view)とは、健康に関する価値観価値基準の事である。医学・福祉に従事する者は、健康を医科学的側面と価値観的側面の両立を成しえてこそ維持されるものであり、その点で健康観的な研究、あるいは知識を身につける。

健康観は、個々人が持つものであるが、それはその人の社会的属性・人的属性により異なり、変化するものである。社会的属性とは、会社学校地域文化などであり、人的属性とは性別、年齢、身体状態などである。

健康観の研究は、多分野によるアプローチが行われている。健康観の研究は、医科学的な分野ではない。文化学的、学際的要因と関連がある。そのため、これに研究従事する人々の属する分野は様々である。

健康の前提条件

健康づくりのためのオタワ憲章では、健康を達成するための前提条件(Prerequisites for Health)が明示された[12]

  1. 平和
  2. 住居
  3. 教育
  4. 食糧
  5. 収入
  6. 安定した環境
  7. 持続可能な資源
  8. 社会的公正公平

これらの健康の前提条件は、1998年に健康の社会的決定要因として整理されている[11]

健康権

世界保健機関は1948年の憲章にて、「達成可能な最上級の健康水準を楽しむことは、人種、信条、政治理念、経済的社会的状況に関わらず、全人類の基本的権利の1つである」と宣言している[13]。1966年の国連総会で採択された経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(A規約)では、健康権(Right to health)は「達成できる最高水準の身体的精神的健康」であると説明されており、政府の義務は、健康の前提条件の整備と医療の提供の両方からなると理解される[14]

以下は、A規約で健康権を説明するとされる第12条である。

第12条

  1. この規約の締約国は、すべての者が到達可能な最高水準の身体及び精神の健康を享受する権利を有することを認める。
  2. この規約の締約国が1の権利の完全な実現を達成するためにとる措置には、次のことに必要な措置を含む。
    1. 死産率及び幼児の死亡率を低下させるための並びに児童の健全な発育のための対策
    2. 環境衛生及び産業衛生のあらゆる状態の改善
    3. 伝染病風土病職業病その他の疾病の予防、治療及び抑圧
    4. 病気の場合にすべての者に医療及び看護を確保するような条件の創出
—  経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約

1980年に日弁連は、健康権について「憲法の基本的人権に由来し、すべての国民に等しく全面的に保障され、なにびともこれを侵害することができないものであり、本来、国・地方公共団体、さらには医師・医療機関等に対し積極的にその保障を主張することのできる権利である」としている[15]

1980年代から、国際連合などいくつかの団体は、健康と人権との関係から、その国際的責任は、別々ではなく、1つのものであると認識するようになってきている[16]。1994年の国際人口開発会議 (ICPD) と世界女性会議 (WCW) の協議文書は、国際合意文書上で健康と人権の具体的なつながりを認め、また健康と人権についての政府は二重の責任を負うということを示した[17]

出典 脚注

  1. OECD 2013, Chapt.1.9.
  2. 広辞苑 第五版
  3. 世界保健機関憲章(世界保健機関)
  4. Health Hum Rights. 1994 Fall;1(1):24-56. The right to health in international human rights law.
  5. Health Hum Rights. 1999;4(1):6-25. The right to health fifty years on: still skeptical?
  6. Toebes B. The Right to Health as a Human Right in International Law (1999) Antwerpen
  7. WHO憲章における「健康」の定義の改正案について(厚生労働省報道発表資料)
  8. WHO憲章における「健康」の定義の改正案のその後について (第52回WHO総会の結果)(厚生労働省報道発表資料)
  9. 「健康」の再定義(世界保健機関)
  10. なにが健康を決定しているのか? (カナダ公衆衛生機関)
  11. 11.0 11.1 健康の社会的決定要因: ソリッドファクツ(世界保健機関)
  12. 健康づくりのためのオタワ憲章PDF形式 (世界保健機関)
  13. 世界保健機関憲章(世界保健機関)
  14. 経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(A規約)外務省
  15. 人権擁護大会宣言・決議集 Subject:1980-11-08「健康権」の確立に関する宣言 (日本弁護士連合会)
  16. Health and human rights. Health Hum Rights. 1994 Fall;1(1):6-23. PMID 10395709
  17. 国際人口開発会議報告書の第IV章から第VII章、第4回世界女性会議の第IV(C)章の‘Women and health’と第IV(I)章‘Human rights of women’

参考文献

関連項目

外部リンク