時刻

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時刻 (じこく)とは、時間の流れにおけるある一点、連続する時間の中のある瞬間[1]、または時間の区分のこと。ある時点や時間の区分や現在を、他の時点や時間の区分と区別する表現である。この記事は主に、日常生活で用いる時刻を扱う。

時法

時刻の表現を時法(じほう)という。一般的に日を特定せずに1日のうちの時点や、時間の区分を表現する。1日を単位とした時間区分の表現を日付、1日のうちで時点や時間の区分の表現を時刻、とそれぞれ区別する。広義は暦法紀年法を含む。

区分の方法

原初の区分

時刻表現として物理的に覚知可能な最小単位は、日の出日の入によるで、より小さな分割は人為的で分割方法により様々な時法がある。極圏白夜など日の出も日の入りもない時期や悪天候の際は、太陽の運行を判別できず、日や時刻の特定が困難である。

不等分方法

1日はと三つに分けるほかに、明方・早朝・朝・昼前・昼後・夕・夕方・晩・夜中・深夜・未明など詳細に区分する表現もある。世界各地で類似表現がみられ、挨拶もその区分により使い分けられる場合が多い。当日を基準にして一昨日・昨日・昨晩・昨夜早朝・明日未明・明日・明後日・明々後日(しあさって)・弥の明後日(やのあさって)など、日を単位とする時間の区分表現もある。ほかに1日の区分で「朝一番」や「夕飯時・宵の口」などの慣用句や、1年の区分で「桃の咲く頃・下り鰹の捕れる時期」など季節時節を用い、複数年を「一昨年の晩秋」などとする表現もある。夜中・深夜・未明など一般生活上の感覚と、報道気象など生活に関連する業務における定義は差異があり、違和感もみられる。

等分方法

ファイル:LCD Clock Grey.jpg
コロンによる区切り

「1日は24時間」>「1時間は60分」>「1分は60秒」と規定する。時と分は六十進法の等分であるが、日は12倍数による12等分か24等分を使用する。裏返すと、分針が1回転したら時針が1まで進む → 分針が12回転したら時針が1回転する → 時針が2回転したら1日になる、という仕組みになる。

「時計は十二進法」というのは誤りで、十二進法であれば1日は24時間(=12の2倍)ではなく144時間(=12の2)であらねばならない。具体的に、12から12まで一周する動作を、分針が12回やるだけではなく、時針も12回やるのが十二進法である。この場合、「1日は12(時針の一周を指す単位)」>「1(時針の一周を指す単位)は12時間」という時針の一周を指す単位が設定されることになる。更に、数字も(10)10をA、(12)10を10、(24)10を20、(30)10を26、(60)10を50というようにを十二ごとに繰り上げ、例えば「10時30分」を「A26分」と表記するのが十二進法に相応しい方法である。しかし、これらの方法が全く採られていない。

午前と午後をそれぞれ0時から12時までとする12時制のほか、午前と午後を分けずに一日を0時から24時までとする24時制がある。

表記の方法

多くはで時刻を表現し、コロン(:)で時分秒を区切る。日付と時刻の表記に関する国際標準規格のISO 8601は、基本形式においてはコロンを用いず(例:20180904T161447Z)、拡張形式の場合にコロンを用いる(例:2018-09-04T16:14:47Z)と規定している。

a.m. (ante meridiem)、p.m. (post meridiem) を用いる場合、午前0時 (00:00 / 24:00) は 12:00 a.m. 、午後0時 (12:00、正午) は 12:00 p.m. である。日本で散見するam、pmの前置は日本語表現の影響である。テンプレート:Fact-spanを用いる。

地域や国により時刻表や放送番組中などの日常生活で12時制を多用[3]するが、交通機関などで午前と午後の錯誤を回避する際は24時制を用いる[4]

日本

日本は交通機関や経済活動を中心に、コンピュータや家電製品のタイマーなど24時制が広く使われる。時計はデジタル表示を12時制と24時制に切り替えられるものが多く、アナログ表示の24時制は世界時計など少ない。

公共交通機関は24時制が多く、鉄道時刻表は午後12時0分(午前0時0分)の到着を「24:00」、午前0時0分の出発を「0:00」と書き分け、駅の時刻表で午前0時を24時とする事例もみられる。

テレビ放送は12時制を採用している。深夜0時以降は、NHKは通常の12時制で暦通りに表現する。から放送上は12時制だが、24時(=翌午前0時)以降の時刻をまでとして使う場合が多い。午前4時ないし午前5時までは当日の放送ではなく前日の放送の続きとして扱う。このためNHKと民放で以下の齟齬を生じ、暦上の日曜午前0時は

  • NHK:日曜午前0時 「土曜深夜」の補足を付ける事もある[5]
  • 民放:日曜午前0時 - テレビ朝日[6]、日本テレビ[7]、土曜24時 - TBS[8]、フジテレビ[9]、土曜深夜0時 - テレビ東京[10]としている。

時間と時刻

時刻と似た概念に「時間」がある。これはある時刻から異なる時刻までの間隔である。時刻は間隔尺度で、時間は比率尺度または比例尺度である。日本では時刻の意味で時間という言葉が使われることも多い[11][12][13]

鉄道の時刻表は主として発車時刻をまとめて記載したもので、「時刻表」とすることがほとんどだが、九州旅行案内社が発行する「綜合時間表 九州版」[14]など「時間表」もある。「JTB時刻表」も、1925年4月の創刊時は「汽車時間表」だった。

歴史

西洋

西洋では、古代には日の出と日の入りの間をそれぞれ12等分する不定時法が用いられており、季節によって長さが異なっていた。後に一日を24等分する定時法に改められた。バビロニア人やエジプト人は日の出、アラブ人やユダヤ人は日の入を一日の始まりとしていた。定時法が採用され、さらに時計が発達してからは、夜半(太陽の南中の対極)を一日の始まりとし、南中を12時、その以前を午前、以後を午後としてそれぞれを12等分(0 - 12時)する現在の時法となった。より精密な機械式時計の発達とともに、13世紀にさらに細かな分割である分と秒が作られた。

ただし、19世紀頃までは洋上の帆船などで正午を一日の始まりにしていた事もある。これは、緯度経度の違いによって時差が生じるため、その海域の時刻の基準は正中を観察する他に方法が無かったためである。

中国

中国では、古代には一日を100等分して1つの分割を「」としていたが、代に、一日を12等分して、夜半から十二支を順に振って子の刻・丑の刻……とする時辰が生まれた。それぞれの分割は「刻」といい、100分割の刻と区別するために「辰刻」(しんこく)ともいう。その際、それまでの「時」の半分である西洋の「時」は「小時」と呼ばれるようになった。この名称は現在でも使われており、「小時(xiaoshì)」は時間という意味である。

古代の「刻」は、現在でも一応中国でquarterの音訳で15分の意味で使われている。ただし現代の実生活で使う事は少なく、通常は四十五分や十五分などで言い表している。

日本

時刻制度のはじまり

日本書紀には660年中大兄皇子が漏刻(水時計)をつくり、671年にはこの漏刻を新しい天文台に置いて太鼓と鐘で時を知らせたとの記録があり、これが日本における時刻制度の始まりとされている[15]。また漏刻が設置された日(現在の太陽暦で6月10日)は、1920年に「時の記念日」に制定されている[16]

区分法の別とその変遷

日本では、中国の一日を12等分する時法や、100等分する時法が導入された。当初は一日を12等分する定時法で、室町時代ごろから日の出と日の入または夜明けと日暮れの間をそれぞれ6等分する不定時法が用いられるようになった。天文暦法で使う時法は一貫して定時法だった。江戸時代には、その不定法に表示を合わせた和時計も作られた。

日の出と日の入は地軸が傾いている地球では毎日少しずつ変化し、また、地軸が4.1万年の周期で約21.5度から24.5度の間で変化(ミランコビッチ・サイクル)しているため、不定時法による時刻も仙台藩(現・宮城県等)と薩摩藩(現・鹿児島県等)のように離れた土地でも異なり、また、同じ太陽暦の月日の同じ土地であっても室町時代と明治時代では微妙に異なることになる。地軸が23.4度である現在の日本において札幌東京との日の出時刻を比べると、夏至では札幌 (3:55) が東京 (4:25) より早く、冬至では札幌 (7:02) が東京 (6:47) より遅い[17]

9で表す12等分法
参照: 十二時辰
時鐘 辰刻 現在の時法
(前後約1時間)
暁9つ 子の刻 0時ごろ
暁8つ 丑の刻 2時ごろ
暁7つ 寅の刻 4時ごろ
明6つ 卯の刻 6時ごろ
朝5つ 辰の刻 8時ごろ
朝4つ 巳の刻 10時ごろ
昼9つ 午の刻 12時ごろ
昼8つ 未の刻 14時ごろ
昼7つ 申の刻 16時ごろ
暮6つ 酉の刻 18時ごろ
夜5つ 戌の刻 20時ごろ
夜4つ 亥の刻 22時ごろ

室町時代後半から、時刻を時鐘の数で呼ぶようになった。時鐘は、昼に9つ打ち、一刻ごとに1つずつ減らして4つの次は深夜の9つに戻り、また一刻ごとに1つずつ減らして4つの次が昼の9つとなる。

中国の陰陽の考え方では9を特別な数として扱い、もっとも縁起の良い数と考えられていた。このことから、昼を9、以降一刻ごとに9を2倍(9 × 2 = 18)、3倍(9 × 3 = 27)、4倍(9 × 4 = 36)…と増やしている。ただし、この数だけ鐘を鳴らそうとすると最大で54回も鳴らすことになるため、十の桁を省略した。

昼と夜で同じ数があるので、これらを区別して右の表のように呼んだ。しかし、江戸時代以前の人々の生活は夜明けから日暮れまでが中心だったことから、昼間の時刻という前提で日常会話では「昼」や「朝」は省略されていることが多かった。ただし、六つだけは明け方なのか夕暮れなのかわからないため「明六つ」、「暮六つ」と言い分けた。

刻の分割法

夜間の分割については6等分のほか、5等分の更点法もある。日暮れを一更とし、二更、三更として夜明け前は五更となり、一つの更はさらに一点から五点まで5等分され、夜明けは五更五点となる。一刻の真ん中を「正刻(しょうこく)」と呼び、または一刻を3等分して上刻・中刻・下刻とする分割もあった。

太陽暦の導入と24時制

1873年明治6年)1月1日、太陽暦の導入と同時に西洋式の時法が導入された。軍隊内部では、午前・午後の間違いを防ぐために24時制が使用されていた。1942年昭和17年)10月11日鉄道省日本国有鉄道を経てJRグループ)が12時制から24時制へ移行、一般人の間にも24時制が普及し現在に至る。

文化に見る時刻表現

太陽が南中するころが午の刻だったことから、南中時刻を「午の正刻」と呼んだ。これが現代でも昼の12時ちょうどを表す「正午」の語源となっている。「午前」「午後」はその前後の時間ということである。

午後2時から3時ごろに仕事の手を休めてとる休憩時に軽食をとる習慣が江戸時代から始まった。この時間がおおよそ昼八つ、つまり「八つ時(やつどき)」であり、午後3時ごろに食べる間食を指す「おやつ」という言葉が生まれた。現代では「おやつ」は間食全般のことを指し、時刻には左右されない言葉になっている。

落語の演題である「時そば」では、「今何時(なんどき)だい?」の問いに「九つで」の応答を期待していたところ、「四つで」と答えられ、代金のごまかしに失敗するという落ちである。これは、「九つ」と「四つ」が隣接していることが承知されていないと、多少の唐突感がある。

「暮れ六つ」・「酉の刻」は古神道(こしんとう)に代表される民間信仰などの、宗教的な意味合いを持つ時刻の表現として、逢魔時(おうまがとき)といった。大禍時(おおまがとき)・逢う魔が時(おうまがとき)・逢う魔時(おうまどき)ともいい、黄昏時(たそがれどき)のことである。黄昏時は黄が太陽を表し、昏が暗いを意味する言葉である。「たそがれどき」は「誰彼時」とも表記し、「誰そ、彼」、つまり「そこにいる彼は誰だろう。良く分からない」といった薄暗い夕暮れの事象をそのまま言葉にしたものであり、本来の夕暮れを表す漢字の「黄昏」にこの「たそがれ」を読みとして合わせた。

丑三つ時(うしみつどき)も神域常世(とこよ)へ誘う端境であると考えられ、古くは平安時代呪術としての「丑の刻参り」が行われ、「草木も眠る丑三つ刻」といえば講談や落語の怪談として使われる常套文句でもある。

十進時法

一部で提唱されている、一日を10の累乗個で分割する方法。十進化時間を参照。

コンピュータの時法

コンピュータの内部時計は、日とは無関係のだけを用いた時法が用いる。dateコマンドなどによる表示は、内部時刻をユーザーの地域の地方時に換算したものである。

多くのOSのインストーラが、インストール手続きの大抵は最後のほうで、地域の指定を入力させるのは、そういったコマンドが参照するためのタイムゾーンの設定(多くはファイル)を、そのマシンを運用する地域のものにするためである(実際には、これにはもっとややこしい事情が絡む。MS-DOSにそのようなシステムや慣習が無かったため、デファクトスタンダードであったPC/AT互換機ではRTCを地方時に設定するのがデファクトスタンダードであった。そのため、起動時やインストール直後などにRTCを参照して「秒だけを用いた時法」を初期化する際に、タイムゾーンの設定を元に世界時を逆算してから初期化しなければならないためである。そのようにして設定された「日とは無関係の秒」からさらに換算されて、前述のようにユーザ向けに表示するための時刻が算出されている)。

Unix系のシステム多くでは、内部時刻を1970年1月1日0時0分0秒(GMT)を起点(元期Epochすなわち0)とし、それから経過した秒数で表す(UNIX時間)。以前、多くはこれを32ビット符号付整数として扱っていた。他に1970年1月1日0時0分0秒からの経過時間を64ビットのミリ秒で表したり(Java)、1904年1月1日からの経過秒数を倍精度浮動小数点数で表す(REALbasic)例もある。NTPでは1900年1月1日0時0分0秒 (UTC)を起点とし、そこから経過した秒数を32ビット符号なしで表す。

しかし実は、厳密には「経過した秒数」を管理しているわけではない。本当に「経過した秒数」で管理しているならば、閏秒によって、2017年現在で30秒近い挿入された秒を算入したものでなければならないが、ほとんどのUnix系システムではそのような運用はされておらず、「(世界時による[18])現在の日付と時刻」を元に「閏秒の存在を無視して」求めた秒数、が、本当のここで扱っている、システムの時刻とされる値、である(そのため、閏秒が挿入されている1秒間におけるシステム時刻の扱いには注意が必要で、例えば時間が1秒巻き戻ったように見えるシステムなどがあり得る)。

これら秒数のカウンタは上限が決まっているため、いつかは桁あふれ(オーバーフロー)を起こし、それ以降の時刻に対しては正しい演算が行えなくなる。上述したUNIXの方式では2038年1月19日にあふれる2038年問題、NTPでは同様に2036年2月7日に発生する2036年問題が指摘されている。

参考文献・注

  1. 大辞泉
  2. 現在は物理的に定められるが、かつては時刻も時間も地球の運動に基づき定めた。
  3. 傍証参考例:アメリカン航空時刻表デルタ航空時刻表ポートランド市バス時刻表ホノルルバス時刻表Lufthansa Airlines world map、(番組表は12時式)ABCテレビ番組表CBSテレビ番組表NBCテレビ番組表FOXテレビ番組表yahoo TV listing
  4. ユナイテッド航空時刻表大韓航空時刻表エアフランス時刻表
  5. NHK番組表
  6. テレビ朝日番組表
  7. 日本テレビ番組表
  8. TBS番組表土曜深夜0時もあり
  9. フジテレビ番組表
  10. テレビ東京番組表番組情報:テレビ東京
  11. 「日本国語大辞典-第六版」小学館、2001年6月
  12. 「国語辞典-第六版」岩波書店、2000年11月
  13. 「大辞林-第三版」三省堂、2006年10月
  14. 綜合時間表 九州版九州旅行案内社
  15. 2-4 日本の時間・周波数標準制度の変遷」、『通信総合研究所季報』第49巻、情報通信研究機構、2003年、 25-32頁。
  16. 時の記念日の由来は?”. 日本時計協会. . 2018閲覧.
  17. 日出没にまつわるはなし海上保安庁海洋情報部)
  18. 地方時からタイムゾーンを元に換算してもよいが、サマータイム等のことを考えればそのような段階を入れるのはシステムを不必要に複雑にするだけである。

関連項目

外部リンク


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