朝鮮民族

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朝鮮民族
(8,270万人)
居住地域

大韓民国の旗 韓国 50,400,000 (2014年)[1]
朝鮮民主主義人民共和国の旗 朝鮮民主主義人民共和国 25,479,089(2014年)[2] 出典 : 大韓民国外交通商部
[2] [3] [4] (英語)

中華人民共和国の旗 中国 2,362,160[3]
アメリカ合衆国の旗 アメリカ 2,120,703[4]
日本の旗 日本 913,740[3]
独立国家共同体の旗 独立国家共同体 (含ロシア) 533,976[3]
カナダの旗 カナダ 256,628[3]
オーストラリアの旗 オーストラリア 215,558[3]
フィリピンの旗 フィリピン 86,800[3]
ベトナムの旗 ベトナム 53,800[3]
ブラジルの旗 ブラジル 50,523[3]
イギリスの旗 イギリス 41,995[3]
ニュージーランドの旗 ニュージーランド 32,972[3]
インドネシアの旗 インドネシア 30,700[3]
ドイツの旗 ドイツ 29,800[3]
タイ王国の旗 タイ王国 25,000[3]
アルゼンチンの旗 アルゼンチン 21,592[3]
マレーシアの旗 マレーシア 14,934[3]
フランスの旗 フランス 13,981[3]
シンガポールの旗 シンガポール 12,656[3]
メキシコの旗 メキシコ 12,070[3]
グアテマラの旗 グアテマラ 9,944[3]
インドの旗 インド 7,367[3]
イタリアの旗 イタリア 5,502[3]
スペインの旗 スペイン 3,606[3]
南アフリカ共和国の旗 南アフリカ 3,480[3]
台湾の旗 台湾 3,166[3]
モンゴル国の旗 モンゴル国 2,500[5]
言語
朝鮮語話者: 8,250 万人 中国語, 英語, 日本語, ロシア語
宗教
キリスト教大乗仏教天道教。儒教と民間信仰を背景とする。

朝鮮民族(ちょうせんみんぞく)は、朝鮮語をそのアイデンティティー母語とする民族であり、主に朝鮮半島地域に居住し、人種的にはモンゴロイドに属する。しかし、蒙古斑が朝鮮民族には無く日本人やモンゴル人とは異なる。1948年に朝鮮半島南部に建国された大韓民国では、韓民族(かんみんぞく)、倍達民族(ベダルみんぞく)と呼ばれる。

現代の朝鮮民族による朝鮮半島の統治は軍事境界線(ぐんじきょうかいせん、朝鮮語: 군사분계선、英語: Military Demarcation Line〈略称:MDL〉)を境に分断されている。北側は北朝鮮で、南側は韓国である。どちらも国際連合に加盟し、半島唯一の主権国家であると主張している。実際は内戦の休戦中という建前のもとに、冷戦時代から続くアメリカとロシアの覇権争いの極東地域の緩衝のために分断されている半島である。軍事境界線は常に監視されており、不適切と判断される越境に対して取締りを行っている。

文化的には、中国からの影響を強く受けながら、近年になり改良を加えられたチマチョゴリなどの服飾文化、キムチ朝鮮式焼肉などの食文化(朝鮮料理)やパンソリタルチュムなどに独特の特徴が見られる。多くがハングルを使用する。

歴史

先史時代の朝鮮半島は櫛目文土器ウラル語族に関連)を有する遼河文明[6][7]に属していた。このウラル系民族が、朝鮮民族の基層にある可能性が高い。古代の朝鮮半島は現代と比べ人口も少なく諸種族が点在しており、半島北部には沃沮(よくそ)、(わい)、扶余(ふよ)などの濊貊(わいはく)系、挹婁扶余、には半島北部を中心に定住していた。

その中の夫余から発展した高句麗が南下しながら半島に勢力を拡大し、これに連動するように半島中部で北部の馬韓諸国を統合した百済、半島東南部では辰韓諸国を統合した新羅が成立し、3国が鼎立するに至った[8]。三韓時代を代表する百済、新羅高句麗の各国はそれぞれ種族の偏りはあれど国である。その後、半島東南部を根拠地とする三韓系の国家である新羅が、百済高句麗などの扶余、濊貊系国家を打ち破って半島中南部を占拠し、半島北部と満州をつなぐ扶余系国家はなくなった。統一新羅の時代に新羅は旧百済や高句麗の一部の領域を支配し、これを治めていたが、住民の旧国家への帰属意識は依然と残り、新羅が滅び後三国時代に入る。高句麗系住民が建国した渤海と対立したが、渤海の滅亡以後、新しく建国された高麗が帰順してきた一部の流民を受け入れた。こういったながれの中で、現在の民族意識の確立は13世紀頃とみられる。三国時代(新羅・高句麗・百済を指す)から民族集団としての歴史は受け継がれたとされるが、モンゴルに支配された13世紀に入り『三国史記』の編纂や民族の啓発や統合が活発となり、13世紀後半に、現在の民族としての自己独自性の熟成と遺伝子的な一致がほぼ完成されたとみられる。

朝鮮民族の成立に影響した域外民族に漢族と満州族がある。朝鮮半島では古来、中国からの渡来人により征服(箕氏朝鮮)・植民され、「陳勝などの蜂起、天下の叛秦、の民が数万口で、朝鮮に逃避し渡来した。(魏志東夷伝)」「辰韓馬韓の東において、その耆老の伝世では、古くの亡人がを避ける時、馬韓がその東界の地を彼らに割いたと自言していた。(同前)」とある。また衛氏朝鮮の滅亡後、漢四郡がおかれ、漢によって半島北部が直接支配に入ることで漢人の流入があり、後に土着化する。また、高麗時代初期に異民族が23万8000人余りも帰化した[9]。あるいは契丹が滅亡した後に、高麗に渡来した契丹人は100万に達するという記録もある[10]。したがって、祖先が中国から渡来した帰化人が数多くいる。

南部においては、前方後円墳等の倭人の居住痕が今も残されている。

東北部には、女真人など、ツングース民族の流入・渡来が相次いだ。

遺伝子的系譜

Y染色体・mtDNA

現在の朝鮮民族が持つY染色体ハプログループの大まかな分類では、割合の多い順に、O2-M122(東アジア全域に多い)、O1b2-M176系統(琉球を含む日本列島及び朝鮮半島に多い)、C2-M217(北アジアに多い)、である。

最も多い O2-M122 系統は朝鮮民族で約41%の割合で確認されており、中国人など東アジアで多く見られる。

次に多い O1b2-M176 系統は約31%の割合でそれに続く。サブクレード(細分岐)まで分類すると朝鮮民族と、日本人(琉球民族を含む)には特徴的な違いがあり、朝鮮民族では約22%:約9%の割合で確認さるものが、日本国内では約8%:約24%の割合で確認されており比率がほぼ逆転する。

三番目に多い C2-M217 系統は約14%の割合で確認されている。この系統は中央アジア及び北アジアのカザフ人モンゴル人ブリヤート人エヴェンキ人ニヴフ人コリャーク人や北アメリカのナ・デネ語族などに多く、漢民族や京(ベトナム)民族など、東アジアでは広域にわたって約10%の割合で確認されている。日本列島では北海道・日高のアイヌ民族と九州の住民がそれに準じ、日本全国では3%~6%ほどである。なお、C2-M217保有の朝鮮民族男性のほとんど(84/89 = 94.4%)が東アジアに多いC-Z1338に属し、北アジアおよび北アメリカに多いC-L1373に属すものはC2-M217保有者の5.6%(5/89)に止まる。[11]

その他に、少数ながらも朝鮮民族男性はフィン人リトアニア人ヤクート人など、極北ユーラシアに多いN-M231(約4%)、台湾の先住民である高砂族やその他の東南アジア島嶼部に多いO1a-M119(約3%)、東アジア広域にわたり低頻度で見つかっているO1b-P31(xM95, M176)(約2%)、アメリカ大陸の先住民やインド、ヨーロッパなどに多いP-M45(約2%)、そして日本人固有のD1b (D-M64.1)系統(日本列島起源、日本では約35%存在)の保持が2%ほどの割合で確認されている。このD1b (D-M64.1) は、中国の正史三国志」「後漢書」に登場する狗邪韓国や新羅時代に活躍した日本人の一部がそのまま帰化したものとみられる。その他の少数ハプログループについては、東アジア乃至北アジアが起源と考えられており、朝鮮民族以外の民族でも同じ頻度以上で確認されているので、とりわけ朝鮮民族を特徴づけるものと言い難い。

その他の遺伝子

カトリック医学大学キム・ドンウック教授と慶応大学岡本真一郎教授がHLA(ヒト白血球型抗原)を分析した結果、日本人と比較すると遺伝的な同質性が低いという結果が出ている[12]大阪医科大学名誉教授松本秀雄は著書『日本人は何処から来たか―血液型遺伝子から解く』で、「朝鮮民族は強く漢民族などの影響(混血)を受けており、これは中国と朝鮮との間の、相互移民や侵入などによって、北方少数民族や漢民族との混血の機会が多く、これが民族の形成に影響した」と述べている[13]。HLA遺伝子による調査で朝鮮民族は満州族や中国東北部の漢民族と近い[14]HLAハプロタイプは、満州や日本の日本海沿岸に特徴的なB44-DR13、B7-DR1がよく見られる[15][16][17][18]

居住地域

南北対立

朝鮮民族の居住が最も多く集中する地域は朝鮮半島、すなわち韓国および北朝鮮である。一つの民族が2つ以上の国家に跨って分布することは、世界的にはありふれているが、両国の国民はともに朝鮮民族・韓民族による国民国家という自意識を共有しており、並立する2国家の国民が互いを別民族と認識することはほとんどない。もっとも、北朝鮮、特に韓国にも民族成立前・後に渡来した少数民族は存在しており、厳密に言えば単一民族国家ではなく多民族国家である。沙也可のように文禄・慶長の役の際に帰化した日本人もいたとされる。

両国における朝鮮民族の人口は、韓国・北朝鮮は国内に少数民族をほとんど抱えていないので、それぞれの総人口にほぼ一致し、韓国に5,000万人、北朝鮮に2,300万人ほどである。

在外移民

韓国・北朝鮮の国外では、中国・北朝鮮国境に近い中国東北地区の吉林省周辺に朝鮮族がおよそ200万人ほど居住し、中国55少数民族の一つと見なされている。

かつては北朝鮮・中国吉林省と境を接するロシア沿海州にも居住していたが、第二次世界大戦中に中央アジアに集団追放され、そのまま中央アジアに住み続けている者もいる。そのうちウズベキスタンに住む朝鮮系の人口は110万人ほどで、同国の人口の5%近くを占める。ロシア語では朝鮮民族のことを英語のコリアンと同じように、「高麗」に由来する「コレイツィ(корейцы, korejtsy')」という呼称を用い、中央アジアの朝鮮民族は「コリョサラム」(「高麗人」の意)と自称する。

世界各地にも、朝鮮系の人々がいる。日本には併合前の難民や、併合後及び戦時中の本土への出稼ぎ、戦後の本土在留、正規の入管手続きを経ない入国者・移民である在日韓国・朝鮮人、アメリカ合衆国にはコリアンアメリカン、カナダにはコリアンカナディアンと呼ばれるそれぞれ数十万から百数十万の朝鮮系の人々が居住しており、一定の民族意識を保って暮らしている。こうした在外の朝鮮系の人々が集住して暮らす町は「コリア・タウン」と呼ばれ、世界各地に点在する。

韓国人は、海外移住や海外留学を希望する者が多く、ソウル大学校が行った調査では、2005年の調査では「機会があれば外国に移住する」と回答した者が全体の46.1%、「子どもを早期留学させようと考えている」と回答した者は全体の69.8%となっている。2015年にはこの割合は減っているが、それでも「外国に移住」は30.3%、「早期留学」も50.9%となっている[19]。中央日報が大学生800人に対して行った調査では、回答者の70.4%が「韓国を離れて移住したいと考えたことがある」と答えた[20]

文化

宗教

習俗・習慣の面では、李氏朝鮮時代に民衆に浸透した儒教の影響が、しばしば指摘され、アニミズムを背景としたシャーマニズム的な信仰と儒教との混合形態による先祖崇拝が根付いている。なお、先祖崇拝は東アジア地域共通の特徴なので、その起源がどこにあるかを求めるのは難しい。

これに加えて、仏教信仰がある。仏教は高麗時代に国教とされるなどかつては隆盛を誇っていたが、李氏朝鮮が儒教を国教と定めて仏教を弾圧したので、現在では少数派になっている。

近代には西洋からもたらされたキリスト教が急速に広まった。特に北部ではキリスト教が深く浸透した。また、こうした新しい外来宗教に刺激される形で朝鮮民族独自の宗教である天道教が興った。第二次世界大戦後は、特に韓国においてキリスト教が強い影響力をもつに至っている。韓国社会におけるキリスト教の浸透はかなり深く、戦後、布教が停止状態にある北朝鮮においても根強く信仰が残っていると見られている。

郷土意識

近現代のディアスポラ植民地支配、南北分断などの経緯に加え、徴兵制度が存在する事から民族への帰属意識は高いが、一方で地方の郷土意識も根強く残っている(韓国の地域対立)。特に慶尚道と全羅道との対立は、朴正煕以降、長く慶尚道がエリートのリクルートや資源の配分において優遇されたことが背景となっており[21]、それ以前にどの程度の対立・差別が存在していたのかはつまびらかではない。西北差別については、南北分断によって実態がわかりにくくなっている。

脚注

  1. [1]
  2. CIA Factbook - North Korea
  3. 3.00 3.01 3.02 3.03 3.04 3.05 3.06 3.07 3.08 3.09 3.10 3.11 3.12 3.13 3.14 3.15 3.16 3.17 3.18 3.19 3.20 3.21 3.22 3.23 재외동포 다수거주 국가, Overseas Korean Foundation, (2007), オリジナルの2007年9月3日時点によるアーカイブ。, https://web.archive.org/web/20070903215257/http://www.korean.net/morgue/status_4.jsp?tCode=status&dCode=0105 . 2008閲覧. 
  4. S0201. Selected Population Profile in the United States, United States Census Bureau, http://factfinder.census.gov/servlet/IPTable?_bm=y&-geo_id=01000US&-qr_name=ACS_2006_EST_G00_S0201&-qr_name=ACS_2006_EST_G00_S0201PR&-qr_name=ACS_2006_EST_G00_S0201T&-qr_name=ACS_2006_EST_G00_S0201TPR&-ds_name=ACS_2006_EST_G00_&-reg=ACS_2006_EST_G00_S0201:042;ACS_2006_EST_G00_S0201PR:042;ACS_2006_EST_G00_S0201T:042;ACS_2006_EST_G00_S0201TPR:042&-_lang=en&-redoLog=false&-format= . 2007閲覧. 
  5. Mongolia-South Korea relations
  6. 中国北方新石器文化研究の新展開【詳細報告】「東北アジアにおける先史文化の交流」 王 巍(中国社会科学院考古研究所・副所長)
  7. Yinqiu Cui, Hongjie Li, Chao Ning, Ye Zhang, Lu Chen, Xin Zhao, Erika Hagelberg and Hui Zhou (2013)"Y Chromosome analysis of prehistoric human populations in the West Liao River Valley, Northeast China. "
  8. 「朝鮮民族」伊藤亜人『日本大百科全書』(小学館)
  9. 初等教科書、高麗の時「23万帰化」言及もしない京郷新聞』2007年8月21日
  10. “권두논단 국민의식 선진화가 시급하다”. 時代精神. (2015年9月). オリジナル2017年8月21日時点によるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20170821215548/http://www.sdjs.co.kr/read.php?quarterId=SD201505&num=838 
  11. So Yeun Kwon, Hwan Young Lee, Eun Young Lee, Woo Ick Yang, and Kyoung-Jin Shin, "Confirmation of Y haplogroup tree topologies with newly suggested Y-SNPs for the C2, O2b and O3a subhaplogroups." Forensic Science International: Genetics 19 (2015) 42–46. http://dx.doi.org/10.1016/j.fsigen.2015.06.003
  12. 李成柱「血液分析により民族の移動経路を判明する東亜日報、2001年1月3日。
  13. 松本秀雄「日本人は何処から来たか―血液型遺伝子から解く」NHKブックス、1992。ISBN 978-4140016527
  14. 「世界の48集団のHLA-A,-B,-DRB1対立遺伝子頻度に基づく類縁図(対応分析)」および解説(スライド03)。徳永勝士(東京大学医学系研究科人類遺伝学分野) (2010年5月24日). “ヒトゲノム全域の多様性 解析の現状と展望”. 人類の移動誌. . 2015閲覧.
  15. 徳永勝士 (1995)「HLA遺伝子群からみた日本人のなりたち」『モンゴロイドの地球(3)日本人のなりたち』東京大学出版会, 第4章, 遺伝子からみた日本人, p193-210
  16. 徳永勝士 (1996) 「HLA の人類遺伝学」『日本臨床免疫学会会誌』=『Japanese journal of clinical immunology』19(6), 541-543
  17. 徳永勝士 (2003)「HLA と人類の移動」『Science of humanity Bensei』(42), 4-9, 東京:勉誠出版
  18. 徳永勝士 (2008)「HLA遺伝子:弥生人には別ルートをたどってやってきた四つのグループがあった!」『日本人のルーツがわかる本』逆転の日本史編集部, 東京:宝島社, p264-p280
  19. キム・ヨンジュ (2015年8月15日). “光復70年:海外移住・早期留学希望、10年前より大幅減”. 朝鮮日報. http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2015/08/13/2015081301914.html . 2015-8-15閲覧. 
  20. “<魅力コリアレポ>(5)若者の目線-大学生…ハングル・技術力など自慢の種多いが、問題は…”. 中央日報. (2015年9月23日). http://japanese.joins.com/article/110/206110.html . 2015-9-23閲覧. 
  21. 和田春樹・石坂浩一編『岩波小事典 現代韓国・朝鮮』岩波書店、2002年、p.154(磯崎典世執筆項)。

関連項目