核テロリズム

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核テロリズム(かくテロリズム、: Nuclear terrorism)は、を利用したテロリズムである。

概要

国際原子力機関 (IAEA) は、核に関連するテロリズムとして以下の4つのケースを想定している[1]

  1. 核兵器の盗難
  2. 核物質の盗難による核兵器の製造
  3. 放射性物質の盗難による「汚い爆弾」の製造
  4. 原子力施設(原発核燃料再処理工場など)や放射性物質の輸送船などに対する妨害破壊行為

核テロの概念自体は冷戦時代から存在したものだが、冷戦終結後、旧ソ連諸国からの核物質流出の懸念を受けて、また2001年アメリカ同時多発テロ事件以降、その発生が危惧されているテロリズムである[1]。実際の被害を及ぼすものに限らず、仮に放射線量が大したことがないレベルであっても、その心理的効果を狙ってテロが行われる可能性が考えられている[2]

対策

2012年3月現在、核テロリズムと思われる行為が実行されたことはないとされる。

しかし、テロ組織による核兵器(米軍の開発した特殊核爆破資材に相当するもの)は、2001年10月にアルカーイダが旧ソ連製スーツケース型核爆弾を保有していると報じられている。1997年には旧ソ連時代の小型核 (ADM: Atomic Demolition Munitions) がソ連崩壊後に100発所在不明となっており、これらがテロ組織に渡っている可能性も否定できない[3]

2002年5月8日、米国籍でアルカーイダのメンバーとされるアブドラ・アル・ムジャヒルダーティーボムによるテロを計画していたとして逮捕された[4]

2002年8月、アメリカはこれら兵器の原料となる物質がテロリストや"ならずもの国家"の手に落ちる危険性を減らすため、16ヶ国24箇所のソ連原子炉濃縮ウランの追跡計画を始めた。最初の作業はセルビアで行われたProject Vincaで、核兵器2個分に相当する大量の濃縮ウランをベオグラード近郊の研究炉から取り除くものであった[5]

2005年4月、国際連合総会において核によるテロリズムの行為の防止に関する国際条約(核テロ防止条約)が採択されている[6]

2005年8月9日、アーヤトッラーアリー・ハーメネイーは、核兵器の生産、備蓄および使用を禁止するファトワーを発した。ファトワーの全文はウィーン国際原子力機関 (IAEA) の会議で公式声明として発表された[7]

日本における原発テロ対策

9.11アメリカ同時多発テロ事件の後、日本においてもテロへの備えから、原子力発電所を含む重要施設に武装警官隊を24時間監視のために配備した[8][9]

2002年3月、厚生労働省は、原子力関連テロや原子力事故を想定した「緊急時における食品放射能測定マニュアル」を作成し[10]、5月に各地方公共団体に送付した[11]。厚生労働省は、福島第一原子力発電所事故を受け、2011年3月17日、各地方公共団体に対し、このマニュアルを参照して食品を検査するよう指示した[12]

2006年には原子力委員会に「原子力防護専門部会」が新設され、原子力事故を保安の視点だけでなく、事前防護の視点に対応した。原子力防護専門部会は日本における核セキュリティー確保(核の安全確保対策)についてまとめ、レポートを原子力委員会に提出している[13]

2011年8月、原子力事故に関連する「放射線量モニタリング部門(現文部科学省)」、「原子力安全委員会内閣府)」、「原子力安全・保安院経済産業省)」を統合し[14]環境省の外局に「原子力安全庁」を2012年4月を目処に新設する方針を固めた[15]。原子力委員会や原子力安全保安院などは、原子力安全庁発足前の3月で解散の予定。原子力委員会配下の原子力防護専門部会が担当する「核セキュリティー」については、原子力安全庁が引き継ぐかは不明。

日本の原発テロ対策には不備もあるといわれる[16]。日本の原発では、例えば「数人のゴロツキが昼間に、正面から突っ込んできた場合」というレベルの訓練しか行われていないのが実情である[16]

日本でも海上保安庁警察の訓練は行われているが、IAEAが懸念する原発作業員の出自の調査・採用(セキュリティ・クリアランス)は不徹底なので、テロリストが人手不足の原発作業員に紛れ込んでも分からない[17]

2012年6月には、愛媛県四国電力伊方原子力発電所陸上自衛隊愛媛県警察本部と合同で原発テロを想定した訓練を行なった。

その他

福島第一原子力発電所事故以来、大規模攻撃をしなくても、主電源・補助電源の停電、冷却水路の閉塞により、炉心溶融(メルトダウン)を起こせることが表面化して[18]IAEAや各国原発施設が原発施設侵入を懸念し、フランスアメリカ合衆国では環境団体がフェンスを乗り越え侵入している[17]

核テロリズムを扱った作品

映画

ドラマ・小説

アニメ

脚注

  1. 1.0 1.1 Vol.56 核セキュリティ・サミット~核テロ対策の強化に向けて”. わかる!国際情勢. 外務省 (2010年4月1日). . 2015閲覧.
  2. 核テロについて”. 災害医療. 国立病院機構災害医療センター. . 2015閲覧.
  3. 国際情勢の環境変化とテロリズムの変貌東京海上日動リスクコンサルティング危機管理グループ 主席研究員 茂木寿によるレポート(P.9「核兵器」節参照)
  4. 朝日新聞2002年6月10日
  5. Project Vinca”. アメリカ合衆国国務省. 2009年1月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。. 2013閲覧.
  6. 日本国外務省 (2007年2月). “「核によるテロリズムの行為の防止に関する国際条約」について”. . 2017閲覧.
  7. World War 4 Report
  8. “県内原発テロ厳戒、県警が24時間監視”. 福井新聞. (2001年9月22日). http://www.fukuishimbun.co.jp/localnews/10years_ago/30554.html 
  9. 国際テロ情勢と警察の対応 2002年 警察白書
  10. 緊急時における食品放射能測定マニュアル (PDF)”. 厚生労働省 (2002年3月). . 2012閲覧.
  11. 事務連絡 平成14年5月9日 医薬局食品保健部監視安全課 緊急時における食品の放射能測定マニュアルの送付について (PDF)”. 厚生労働省 (2002年5月9日). . 2012閲覧.
  12. 食安発0317第3号 平成23年3月17日 厚生労働省医薬食品局食品安全部長 放射能汚染された食品の取り扱いについて (PDF)”. 厚生労働省 (2011年3月17日). . 2012閲覧.
  13. 核セキュリティの確保に対する基本的考え方について(案) 第35回 原子力委員会資料 第1-2 2011年9月13日
  14. “原子力安全庁、環境省外局に 15日にも閣議決定へ”. 朝日新聞. (2011年8月11日). http://www.asahi.com/politics/update/0811/TKY201108110413.html 
  15. “政府、「原子力安全庁」の準備室発足”. 日本テレビ NNN. (2011年8月27日). http://www.news24.jp/articles/2011/08/27/04189381.html 
  16. 16.0 16.1 伊藤祐靖 「再稼働原発がテロに制圧される日」『文芸春秋』2012年7月号、文藝春秋、2012年
  17. 17.0 17.1 2013年10月7日22時NHK総合放送NHKスペシャル原発テロ」
  18. NHKスペシャル 原発テロ~日本が直面する新たなリスク~ - NHK名作選(動画・静止画) NHKアーカイブス

関連項目

外部リンク