被告人

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テンプレート:日本の刑事手続

被告人(ひこくにん)とは、犯罪の嫌疑を受けて公訴を提起(起訴)された者をいう。

被告人は、日本を含む英米法刑事訴訟においては、原告である検察官と並び、その相手方たる当事者として位置付けられている。

なお、被告とは民事裁判において訴えを提起された者のことを指し、「被告人」と「被告」は異なる用語である。

概要

被告人は、捜査機関によって犯罪の嫌疑を受け、検察官によって公訴提起をされた者であり、刑事裁判の審判対象となっている者である。犯罪の嫌疑を受け捜査の対象になっていながら未だ公訴の提起を受けていない者を「被疑者」という。

現在の日本の刑事訴訟法においては、検察官と被告人は対等の当事者である。もっとも、当事者ではあるものの、原則として挙証責任を負うことはない。これに関連し、捜査段階における黙秘権公判における自己負罪拒否特権が重要な憲法(同第38条)上の権利として与えられている。また、対等とはいえ、現実の法的な攻撃防御能力には大きな差があるため、弁護人を選任することが認められ、必要的弁護事件においては弁護人が必ず選任される。

なお、被告人は勾留されている場合があるが、必ずしも身体的拘束を受けているとは限らず、勾留されていない場合もある。勾留された被告人をはじめ、被逮捕者、被勾留者等を総称して未決拘禁者(みけつこうきんしゃ)と呼ぶ。また、勾留されずに起訴された場合、「在宅起訴」と呼ばれる。

推定無罪

被告人は、犯罪の嫌疑を受けている者であるが、法的には未だ無罪の推定が働いている存在である。

しかし今日ではその存在は皆無に近く、犯罪者撲滅のために、取り調べや職務質問の際などに、いかなる犯罪であっても推定有罪であることを前提にして相手を問い詰める行為が発生する場合もある(中にはこの際に誘導尋問を伴うこともある)。これは冤罪を発生させるリスクもあり、かつ自白を強要させることにもなるため、人権上も問題のあるものとなっている。

被告人の権利自由

被告人は、無罪の推定が働いているため、原則としては自由な存在である。しかし、刑事裁判の当事者であることから、一定の範囲で権利・自由に制限が課せられることがある。しかしあくまでも名ばかりであり、刑事裁判では有罪の推定に切り替わる。

罪証隠滅や逃亡のおそれのある者については、裁判官の命令又は裁判所の決定により、勾留がなされる。未決拘禁者の場合、逃亡及び罪証隠滅の防止の目的から拘束され身体・行動の自由に大幅な制限が加えられている。外部の者との信書の発受や面会に制限が加えられることもある。また、他罪で逮捕・勾留されている場合の接見指定など捜査のために制限される場合もある。

逮捕・勾留されず在宅起訴を受けた被告人や、逮捕・勾留されたが保釈された被告人は、身体を拘束されていないことから自宅においては自由に活動できるなど、未決拘禁者に比べ権利・自由への制限は小さい。しかし、裁判に出頭しなければならず、逃亡及び罪証隠滅が許されないのは当然である。また、旅行の自由等も制限される。 また起訴までの期間が勾留者に比べて長く、警察や検察の証拠捏造や隠ぺいの期間を十分にとらせることになり有罪に一役買う場面もある。

歴史

マスコミによる用法

マスコミ用語では「被告」と呼ばれるが、これは元来、民事裁判においてのみ用いられる用語である。

  • 昭和40年代(1960年代後半~70年代前半)では、起訴された刑事被告人に対してNHKを含めたほぼ全部のマスコミが苗字の呼び捨て(「氏」などは当然付けない。)であったが、人権意識の高まりで、昭和50年代(1970年代後半~80年代前半)には苗字呼び捨てを避ける苦肉の策として「被告」が用いられ始め、現在に至っている。当然、法曹関係者からは法律用語の誤用であるとたびたび批判されている。
  • 字数の節約ともテレビ・ラジオ等の音声メディアにおいて「非国民」と聴こえてしまうため、とも言われる。
  • マスコミが刑事裁判の被告人と民事裁判の被告を同じ「被告」で表記する結果、民事裁判で訴えられた者が「被告」と呼ばれ、「犯罪者と一緒にするな」という誤解がたびたび起こっている。

関連項目