鉱山

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ファイル:Sasaune kodo07s3200.jpg
銅鉱採掘現場の遺構(笹畝坑道

鉱山(こうざん)とは、資源として有用な鉱物を採掘・選鉱製錬し、主として工業用の原料として供給する事業所の事を指す。

鉱業法による鉱物

現在、日本において鉱業法によって採掘する事ができる鉱物は以下の通り。

鉱、鉱、鉱、鉱、そう鉛(ビスマス)鉱、すず()鉱、アンチモニー(アンチモン)鉱、水銀鉱、亜鉛鉱、鉱、硫化鉄鉱、クローム(クロム)鉱、マンガン鉱、タングステン鉱、モリブデン鉱、ひ(ヒ素)鉱、ニッケル鉱、コバルト鉱、ウラン鉱、トリウム鉱、りん(リン)鉱、黒鉛石炭亜炭石油アスファルト、可燃性天然ガス硫黄、石こう(石膏)、重晶石明ばん石ほたる石石綿石灰石ドロマイトけい石長石ろう石滑石、耐火粘土砂鉱

また、これらを処理する際に副生成された廃石(ズリ)やスラグカラミも再度処理して鉱物を生産することが認められている(佐渡金山における廃石からの金の回収、野沢鉱山における廃石からの石綿回収など)。

この定義における鉱物は法律的なものであり、鉱物学的なものとは異なっている(例えばは鉱物学的には鉱物の一種ではあるが、鉱業法における対象鉱物には含まれていない。逆に可燃性天然ガスは普通は鉱物学の鉱物の範疇には入らない)。狭義にはこれらを単独もしくは並存で採掘・加工している事業所が鉱山である。このうち、石炭、石油、可燃性天然ガスなどはそれぞれ炭鉱油田ガス田と称している。

鉱山の事業

鉱山は資源の規模・経済的事情・地理的要件・環境条件によって規模や事業は大幅に異なっている。しかし、基本的にはこの3つの事業とこれらを補佐する事業から成っている。

採鉱

鉱床から鉱石を採掘する事を指す。鉱床の規模や地理的、地学的な条件から採掘法は選別されるが、一般的に鉱床が大規模で比較的地表の近くに存在する場合は露天掘りが採用され、逆に深度にあり、鉱床が小規模である場合は坑道掘りが採用される。

選鉱

採鉱して得た鉱石を主として物理的に選別し、有用な鉱石とそうでない鉱石(尾鉱、ズリとも呼ばれる)を選別する事を指す。方法としては、人員の目を利用して選別する手選鉱という原始的なものから、鉱石の比重差を利用する比重選鉱、鉱石の磁性を利用する磁力選鉱、鉱石の親水性を利用する浮遊選鉱などがある。予め手選を行なった後、浮遊選鉱を行なうなど、複数の方法を取り入れる場合もある。ここで選別された有用な鉱石は精鉱と呼ばれ、次の製錬に回される(非金属鉱物はこの時点で製品として出荷される事が多い)。尾鉱は鉱山周辺に廃棄されることが多い。ズリ山ぼた山)と呼ばれるものはこうして築かれる。また、浮遊選鉱は鉱石を微細に粉砕して選鉱するため、尾鉱は水分を多量に含むスライムという泥状の物となる。これは有害な成分も多く含まれるため、鉱滓ダムに堆積して脱水させる。

製錬

精鉱を主に化学的に処理し、有用な元素を取り出す事を製錬という。非鉄金属が主な対象となっており、非金属元素は省略されることが多い。なお、鉄の(乾式)製錬の事を特に製鉄と呼ぶ。

製錬方法としては、火力を用いて溶融揮発させて元素を抽出させる乾式製錬水銀アンチモンなど)と、薬品の水溶液を用い、精鉱から元素を抽出して分解させる湿式製錬など)がある。こうして抽出された元素は溶融された後、成形冷却されて地金となる。ただし、こうした工程を経ても地金は未だに不純物を多く含むことから、電気分解して純度を99%以上にする事が多い。これを電解製錬と呼ぶ。

こうした金属製錬に並行して、硫化分の多い鉱石を採掘する鉱山では硫酸の製造が行なわれることもある。製錬工程から出る煤煙は有害であり鉱害の要因になるため、電気集塵機等によって塵を回収することになるが、この塵も重要な資源であり、製錬工程に組み込んでビスマス三酸化ヒ素カドミウムなどを生産することもあった。また、銅山においては硫酸銅を含む排水が問題になった事があり、廃水処理も兼ねて沈殿銅の採集が行なわれる事もある。

こうした3つの事業を全て行っている鉱山は大規模なケースが多く、中規模の鉱山は採鉱選鉱を、小規模な鉱山は採鉱のみを行っているケースが多い。ただし、経営者の判断により、大規模な鉱山でも製錬は行われず、その事業のみ都市部に設置された製錬所に集約されたりすることもある(例:菱刈鉱山)。また、逆に水銀のように、独特の製錬設備を必要とする場合には規模が小さくても、鉱山内に製錬所まで設けている事が多い(例:大和水銀鉱山丹生鉱山)。石灰石陶石など非金属の鉱石の場合は、明確な選鉱・製錬が行われず、非金属を原料とする工場が近場に存在することも多い。

こうした鉱山における3つの事業はいずれも単独で行われることは難しい。このため、鉱山においてはこれらに付随する形で機械工場車両整備工場化学工場発電所変電所ポンプ場廃水処理場貨物鉄道などが設置される。こうした付随事業が整備されていることにより、鉱山の主要事業は円滑に進めることができる。

大規模な鉱山においては、これら周辺事業が大規模化し、やがて鉱山とは独立化することもある。例えば、茨城県日立市日立鉱山の機械整備部門は、後に日立製作所として独立することとなった。小松製作所も同様であり、古河機械金属ラサ工業土木機器部門のように独立とまではいかなくとも、会社を支える重要な事業になることもある。

鉱山機械は大量の電気を必要とするため、一般の電力会社からの給電では間に合わないこともある。このため、水力発電所火力発電所など独自に小規模な発電所を建設して自家用に供給することもある。余剰となった電力の一部は電力会社売電されたり、周辺地区に供給されることもあった。

閉山

ファイル:Akenobe-kozan,Mikobata-senkōsho 明延鉱業神子畑選鉱所 016.jpg
戦国時代に神子畑鉱山として栄え明治政府が銀鉱脈を発見。閉山後の1919年(大正8年)に、北西約6キロに位置する養父市の明延鉱山の選鉱場として存続するも現在は廃止された明延工業神子畑選鉱所廃墟。かつては東洋一の規模と謳われた。建物の横のインクラインは、選鉱場の最上部に運搬するためのもので、鉱石は山の斜面を降下する形で処理された。現在は解体されて基礎のみが残る。

採掘できる鉱物が枯渇すれば閉山(もしくは休山)に至る。単純に鉱物を採り尽くした場合もあるが、まだ鉱脈が残っていて、その確認もできているが、「深度が深すぎる」「地熱の影響が大きい」などの何らかの理由により、現在の採掘技術では不可能であるために閉山に至ることもある(豊羽鉱山河津鉱山(温泉が湧出)など)。

1960-70年代には、高度経済成長に伴う人件費の上昇や鉱物の輸入自由化により、競争力を失った鉱山の多くが閉山もしくは休山に至った。石油などからの回収硫黄の増加による硫黄鉱山の閉山、水俣病をきっかけとした水銀使用の大幅減少による水銀鉱山の閉山など、世界的な環境問題が閉山理由となったケースもある。

廃坑は、監視・管理コストがかるが、地熱温度が利用できる可能性がある、未開発の地熱資源でもある[1]

廃坑の管理事例

排水

坑道では地下水が湧き出るため、様々な排水器具が用いられた[4]。前近代では金桶・釣瓶を用いた排水が行われており、江戸時代初期に佐渡金銀山ではスポイトの原理を応用した寸法樋(すぽんとい)やアルキメデス・ポンプを応用した水上輪(すいしょうりん)などの排水器具が導入された[5]。江戸後期にはオランダ水突輪も導入されている[6]。ただし、これらの排水器具は故障した場合に坑道内での修理が困難であったため、旧来の釣瓶による排水も併用されていた[7]

輸送手段

鉱石の運搬においては古くは牛馬が使われていたが、近代に入ってからは鉄道軌道トラック索道などが用いられることとなった。中小の鉱山では森林軌道などを用いて運搬していたが、大規模な鉱山においては専用線や独自の私鉄を設置して鉱石・地金・化学薬品(硫酸など)を運搬することもあった。特に私鉄の場合においては、周辺住民や鉱山労働者を対象に限定的な旅客輸送を行うこともあり、鉱山の閉山後も存続していることもある。北海道のイトムカ鉱山のように、既存の森林軌道を鉱山の輸送手段として利用するケースも多い。

特殊なケースとして、黒部峡谷に位置する富山県小黒部鉱山のように登山道を用いた人力による運搬、伊豆半島沿岸部に存在する静岡県縄地鉱山のようにほぼ直接貨物船による運搬も存在した。また、秋田県では鉱滓ダムの設置が難しい平野部の鉱山と、能代市に設置された鉱滓の処分場との間にパイプラインが建設されていた。

日本一の規模の私道として有名な宇部興産専用道路は、鉄道に代わって石灰石や人員の運搬を目的として石灰石鉱山とセメント工場をつないだものである。

また、貨車への積み込みに用いられるホッパーの規模は生産量の目安ともなり、その鉱山を代表する施設として取り上げられることもある。

鉱害

近年においては鉱害などの環境問題に対応するために、上記の事業以外に廃水処理場、煤煙脱硫施設等を設ける事が法律で義務付けられている。特に前者はほとんどの鉱山で必須であり、採掘・選鉱・製錬などの工程で発生した排水には重金属などが含まれている事から、そのまま河川に放流することはできない。このため、沈殿池などを設置し、石灰などの薬品で浄化し、重金属や有害物質を除去して河川に排水する。このうち、坑道から湧出する廃水は自然由来のため、鉱山が閉山した後も事業者が処理を続ける事が義務付けられている。

脚注

関連項目

外部リンク