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'''論理実証主義'''(ろんりじっしょうしゅぎ、{{lang-en-short|Logical positivism}})とは、[[20世紀]]前半の[[哲学史]]の中で、特に[[科学哲学]]、[[言語哲学]]において重要な役割を果たした[[思想]]ないし運動。'''論理経験主義'''({{lang-en-short|Logical Empiricism}})、'''科学経験主義'''とも言う。
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'''論理実証主義'''(ろんりじっしょうしゅぎ、{{lang-en-short|Logical positivism}}
  
== 概要 ==
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特に [[L.ウィトゲンシュタイン]]の影響のもとに,[[ウィーン学団]]が展開した哲学の思想とその運動。認識の根拠は経験による検証であり,命題の意味とはその検証の方法にほかならない。したがって検証不可能な形而上学の命題は無意味であると主張。自然に関するすべての認識は,一つの言語で表現され,したがって科学の統一は可能である。哲学者の任務は言語学的であり,哲学は言語の批判,すなわち言語の分析と分類を行い,理論ではなく活動であるとした。
経験主義―数学的構成物と[[論理]]・[[言語学]]的な構成物とを融合させた[[知識]]を伴う種類の[[合理主義]]には実験に基づいた証拠が必要だとする考えと、[[認識論]]の成果を結合したものである。論理実証主義は[[分析哲学]]の一種だと考えられるかもしれない<ref name>''See, e.g.,''  : [http://plato.stanford.edu/entries/vienna-circle "Vienna Circle"] in Stanford Encyclopedia of Philosophy.</ref>。
 
  
論理実証主義は、一般的な意味では、20世紀初期にウィーンのCafé Centralに集まり、最初[[ウィーン学団]]として知られた集団の討論から始まった。第一次世界大戦後、初期の集団の一人の[[ハンス・ハーン]]が[[モーリッツ・シュリック]]のウィーン来訪を手助けした。シュリックの[[ウィーン学団]]は、[[ハンス・ライヘンバッハ]]の[[ベルリン学派]]とともに[[1920年代]]から[[1930年代]]にかけて新しい思想を盛んに喧伝した。[[オットー・ノイラート]]の唱道こそがこの派を自覚せしめるとともにより広く知らしめた。ノイラート、ハーン、[[ルドルフ・カルナップ]]が書いた[[1929年]]のパンフレットには当時の[[ウィーン学団]]の教義が要約されている。そこに要約された教義では[[形而上学]]、特に[[存在論]]と偽のアプリオリな命題に対する攻撃が述べられている。あらゆる知識は、唯一の科学的な[[標準言語]]によって明文化可能であるという考えである。また、合理的再構成の計画の中でも、通常の[[言語]]の概念がそれに相当する標準言語のより精密な概念に置き換えられる。
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1938年ナチスの迫害で学団のメンバーは大部分がアメリカなどへ亡命し,運動は国際的となったが,主義そのものは論理経験論へと解消した。
 
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しかし1930年代初期のナチス台頭と政治的騒乱の影が彼らにも忍び寄ることとなり、最終的にはハンスの病没とシュリックの暗殺、さらに[[アンシュルス|ドイツのオーストリア併合]]によって[[ウィーン学団]]は散り散りとなってしまった。論理実証主義の著名な支持者は大多数が[[イギリス]]や[[アメリカ合衆国]]へ移住し、アメリカの哲学に少なからぬ影響を与えた。[[1950年代]]までには、論理実証主義は科学哲学の主導的な学派となった。その時期に、カルナップは論理実証主義の初期の教義に代えて自身の「言語の論理的統語論」を提唱した。この強調点の変化と、ライヘンバッハらの幾分の意見の相違によって、結果的に1930年代からアメリカに亡命して人々の間で共有された教義の名称を「論理経験主義」とするべきだという合意が形成された。
 
 
 
== 歴史 ==
 
*[[1879年]]、[[ゴットロープ・フレーゲ]]『[[概念記法]]』出版。
 
*[[1910年]]-[[1913年]]『[[プリンキピア・マテマティカ]](数学原理)』出版。
 
*[[1921年]]、『[[論理哲学論考]]』出版。
 
*[[1923年]]、[[モーリッツ・シュリック]]「マッハ協会」設立。
 
*[[1929年]]、[[ウィーン学団]]発足、小冊子『科学的世界把握-ウィーン学団』発行。
 
*[[1935年]]-[[1939年]]、「科学の統一のための国際大会」開催。
 
*[[1938年]]、ウィーン学団解散。
 
 
 
== 解説 ==
 
1920年代後半の[[ウィーン]]で[[エルンスト・マッハ]]の[[経験主義]]哲学の薫陶を受けた[[モーリッツ・シュリック]]を中心に結成した[[ウィーン学団]]が提唱した。
 
 
 
[[経験論]]の手法を現代に適合させ、[[形而上学]]を否定し、諸科学の統一を目的に、[[オットー・ノイラート]]、[[ルドルフ・カルナップ]]などのメンバーで活動したウィーンを中心とした運動である。その特徴は、哲学を[[数学]]、[[論理学]]を基礎とした確固たる方法論を基盤に実験や[[言語]]分析に科学的な厳正さを求める点にあり、その後の[[認識論]]及び[[科学論]]に重大な影響を与えた<ref>{{Harvtxt|中山|2008|p=26}}</ref>。
 
 
 
この思想ないし運動には、[[イギリス]]の[[アルフレッド・ノース・ホワイトヘッド]]及び[[バートランド・ラッセル]]の『プリンキピア・マテマティカ(数学原理)』と[[オーストリア]]生まれの[[ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタイン]]の『論理哲学論考』の影響が大きい。論理哲学論考にあるように、形而上学は問題化できないもの(神、世界の限界、自由)を問題化していると規定する。なお、本書は、論理実証主義の聖書のような扱いを受けていた。その本の最後に掲げられた命題“Wovon man nicht sprechen kann, darüber muss man schweigen. : Whereof one cannot speak, thereof one must be silent.”「語りえぬものについては沈黙しなければならない」の言葉はあまりに有名である。
 
 
 
[[ナチス]]の台頭で学団のメンバーがアメリカに亡命した影響でその主張は英米で発展した。カルナップの[[アメリカ合衆国|アメリカ]]での弟子[[ウィラード・ヴァン・オーマン・クワイン]]は「経験主義の二つのドグマ」において、論理実証主義が念頭に置いていた分析命題と総合命題のはっきりとした区別を否定し、[[還元主義]]を攻撃し、[[ホーリズム]]を唱えた。
 
 
 
=== ドイツの論理実証主義(論理経験主義) ===
 
ドイツにおける実証主義はドイツで著名であった[[ヘーゲル学派]]や[[新ヘーゲル学派]]に対する応答として発展したと考えられている<ref name="Suppe, Frederick 1999">Suppe, Frederick, The Positivist Model of Scientific Theories, in: ''Scientific Inquiry,'' Robert Klee editor, New York, USA: Oxford University Press, 1999, pp. 16-24.</ref>。[[フランシス・ハーバート・ブラッドリー]]のようなヘーゲル主義の継承者は現実性を経験的な基盤を持たない形而上学的な[[実体]]を仮定することで説明しようとした<ref name="Suppe, Frederick 1999"/>。論理実証主義者はそれに対して、形而上学的実体を説明に用いることを止めるように求めた。
 
 
 
もう一つの、論理実証主義を鼓舞したあまり知られていない方の要因は、新しい科学の発展によって起こってきた新しい哲学的問題を解決したいという催促であった。[[モーリッツ・シュリック]]の影響下で[[ウィーン学団]]は、そして[[ハンス・ライヘンバッハ]]の影響下でベルリン学派は科学者、数学者、科学者から転向した哲学者よりなっていて、科学哲学における新しい問題を解決するという共同の目的を共有していた。
 
 
 
== 基本的な教義 ==
 
論理実証主義者たちは多くの問題に対して様々な観点を持っていたものの、彼らは皆科学に関心を持ち、[[神学]]や[[形而上学]]に対しては懐疑的であった。初期には、大多数の論理実証主義者が、全ての知識は経験的事実に基づいた単純な「プロトコル命題」からの論理的推論によるものであると主張していた。多くの論理実証主義者は[[唯物論]]、形而上学的[[自然主義]]、[[経験論]]の形式を支持していた<ref>{{Cite book|last=Ladyman|first=James|year=2002|title=Understanding Philosophy of Science|publisher=Routledge|location=New York|page=147|isbn=978-0415221566}}</ref>。
 
 
 
論理実証主義は、[[意味の検証可能性]]の基準、つまり[[検証主義]]に集約される。その初期の強い定式化の一つでは、これは、命題は確証的にその真偽を決定する有限回の手続きが存在する場合にのみ「認識論的に意味がある」という教義である<ref>For a classic survey of other versions of verificationism, see Hempel, Carl. "Problems and Changes in the Empiricist Criterion of Meaning". ''Revue Internationale de Philosophie'' 41 (1950), pp. 41-63.</ref>。[[カール・ヘンペル]]は次のように定式化した。
 
<blockquote>
 
「ある命題が経験的意味をもつための必要十分条件は、その命題が分析的ではなく、かつ観察命題の無矛盾な有限集合から論理的に導出されることである。」<ref name=noe89>{{Harvtxt|野家|1998|p=98}}</ref>
 
</blockquote>
 
この意見の初期の結果として、多くの論理実証主義者にとって{{Citation needed|date=October 2010}}、形而上学的、神学的、[[倫理]]的言明はこの基準に合格せず、そのため認識論的に有意味でないことになる<ref>For the classic expression of this view, see Carnap, op. cit. Moritz Schlick, a major logical positivist, did not consider ethical (or aesthetic) sentences to be [[cognitive meaningfulness|cognitively meaningless]]. See Schlick, Moritz. "The Future Of Philosophy". The Linguistic Turn. Ed. Richard Rorty. Chicago: University of Chicago Press, 1992. pp. 43-53.</ref>。彼らは認識論的な有意味性と別種の、多様な有意味性(例えば、感情的な、表現的な、比喩的ななど)とを区別した。そして多くの著述家は、哲学史上の非認識論的言明は何らかの別の種類の有意味性を持つことを認めた。認識論的有意味性の実証的な特徴づけは著述家によって異なる。それは真理値を持つという特性、可能な情勢に一致すること、条件を提示すること、あるいは科学的言明が理解可能であるのと同じ意味で理解可能であることというように記述される<ref>Examples of these different views can be found in Scheffler's ''Anatomy of Inquiry'', Ayer's ''Language, Truth, and Logic'', Schlick's "Positivism and Realism" (rpt. in Sarkar (1996) and Ayer (1959)), and Carnap's ''Philosophy and Logical Syntax''.</ref>。
 
 
 
論理実証主義のもう一つの特徴的な形質は、「[[統一科学]]」への傾倒である。つまり、全ての科学的陳述がなされ得る共通言語、あるいはノイラートの言い回しでは「普遍的俗語」の発展である<ref>For a thorough consideration of what the thesis of the unity of science amounts to, see Frost-Arnold, Gregory, "The Large-Scale Structure of Logical Empiricism: Unity of Science and the Rejection of Metaphysics" at [http://philsci-archive.pitt.edu/archive/00002005/01/PSA2004Short.rtf]</ref>。そういった言語を提起することの妥当さ、あるいはそういった言語を提起することの断片の妥当さは、しばしば[[特殊科学]]の言葉をもう一つの、より根源的だと推定される科学の言葉に様々に還元、もしくはより根源的だと推定される科学の言葉で様々に説明することに基づいて断言される。そういった還元はいくつかの論理的・基本的概念の集合論的操作からなることもある<ref>{{Cite book|last=Carnap|first=Rudolf|year=1928|title=Der Logische Aufbau der Welt|publisher=Meiner Verlag|location=Leipzig|page=147|isbn=978-0415221566}}</ref>。そういった還元は申し立てによると分析的かもしくは「アプリオリ」に演繹的な関係からなることもある<ref>{{Cite journal|first=Rudolf|last=Carnap|title=Testability and meaning|journal=Philosophy of Science|volume=3|issue=4|year=1936|month=|publisher=|pages=419-471}}</ref>。30年の間に出版されたものの多くはこの概念を明瞭にしようとしていた。
 
 
 
== 影響 ==
 
論理実証主義は[[西洋世界]]のほとんど全体にすみからすみまで広まった。[[ヨーロッパ大陸]]の隅から隅まで広まった。イギリスへは[[アルフレッド・エイヤー]]の影響を通じて広まった。また、後に、[[第二次世界大戦]]の時期やそれ以降にヨーロッパから亡命してアメリカに移住したウィーン学団のメンバーによってアメリカの大学にもたらされた。論理実証主義は初期の分析哲学の発展に不可欠であった。この言葉は、引き続いて20世紀前半の内に「[[分析哲学]]」とほとんど互換性のある言葉となった。論理実証主義は、第二次世界大戦期から[[冷戦期]]にかけて[[言語哲学]]に大きな影響力を持ち、最も有力な[[科学哲学]]だったと言われる。
 
 
 
== 批判 ==
 
論理実証主義に対する初期の批判は、その根本的な教義がそれ自体矛盾なく定式化できない、というものであった。
 
 
 
[[意味の検証可能性]]の基準は、検証可能でないように見える。このことは、「意味の検証可能性テーゼ」の論理的無矛盾性にとって、深刻な問題を表していた。観察言語(観察命題の集合)が理論言語(科学的命題の集合)から独立して指定できなければ(観察言語の中立性)、検証の手続きは循環を犯すことになるためである<ref name=noe89/>。
 
 
 
もう一つの問題は、存在肯定命題(「少なくとも一人の人間がいる」)と全称否定命題(「全てのカラスが黒いわけではない」)は明確な方法(人間あるいは白いカラスを見つける)によって正しいと検証できるが、存在否定命題と全称肯定命題は正しいと検証できないということである。
 
 
 
全称肯定命題を検証することは明らかに不可能である。過去から未来までの全てのカラスを捕まえてみてみないことにはどうして「全てのカラスは黒い」などと言えようか? このことは結果として、帰納、確率、そして「確証」、つまり検証と反証を合わせたものに関する膨大な量の研究を生んだ{{Citation needed|date=September 2009}}。
 
 
 
=== カール・ポパーの批判 ===
 
よく知られた論理実証主義の批判者は[[カール・ポパー]]である。彼は[[1934年]]に『Logik der Forschung』(『[[科学的発見の論理]]』)を発表した。[[1959年]]には、彼自身の英訳により『The Logic of Scientific Discovery』が発表された。その中で彼は、論理実証主義者たちの「検証可能性」の基準は科学の基準としては厳しすぎるので、それに代えて[[反証可能性]]の基準を使うべきだと主張した。ポパーは、[[帰納的推論]]の検証に内在する哲学的問題を招かず、また、科学的に見えるのに検証可能性の基準を満たさない物理科学的な言明を従わせられるので、反証可能性はより良い基準だと考えた。
 
 
 
ポパーの関心は、有意味な言明を有意味でない言明から区別することではなく、科学的言明を形而上学的言明から区別することであった。論理実証主義者たちと違って、彼は、形而上学的言明は無意味だとは主張しなかった。彼は、ある世紀に「形而上学的」で反証不可能であった言明も([[古代ギリシア]]の[[原子論]]のように)別の世紀には、結果として形而上学的な観点も持つが反証可能な理論へと発展することができ、最終的に科学的になると主張した。
 
 
 
ポパーは、科学は帰納的推論に基づくとか、帰納的推論が実際に存在するといったことを否定したが、現在でも大多数の科学者は科学が帰納的推論に基づくことは明らかだと考えている<ref>Okasha, Samir, ''Philosophy of Science: A Very Short Introduction'', New York: Oxford University Press, 2002, p. 23. ISBN 978-0-19-280283-5</ref>。
 
 
 
=== アルフレド・エイヤーの擁護 ===
 
二つ目の批判に対する回答は[[アルフレッド・エイヤー]]の『[[言語・真理・論理]]』によってもたらされた。本書で彼は「強い」検証と「弱い」検証の区別を定義している。「言明が強い意味で検証可能だと言われるのは、その言明の真偽が経験によって決定的に打ち立てられるときであり、そのときだけである」(Ayer 1946:50)。この意味で検証可能であるとすると存在否定命題と全称肯定命題は問題を抱えることになる。しかしながら、弱い意味での検証では言明が「検証可能…であるのは経験がその言明を可能にするときである」(ibid.)ということになる。この区別を打ち立ててから、エイヤーは「[[トートロジー]]の他のいかなる言明も真である可能性のある仮説以上のものではない」(Ayer 1946:51)ので、トートロジー以外の言明は弱い検証の対象であることしかできないと主張する。この擁護は論理実証主義者たちの間で論争を呼び、彼らの中には強い検証をうるさく勧め、普遍命題は実際のところナンセンスなのだと主張する者もいた。
 
 
 
=== ヒラリー・パトナムの反論 ===
 
かつてハンス・ライヘルバッハ及びルドルフ・カルナップの弟子であった[[ヒラリー・パトナム]]によれば、観察的/理論的区別は無意味であるという。「理論の受け入れられた観点」は「観察的な術語は独特の現象や現象の特性に言及していて、理論的術語に対してなされる解釈だけが調和規則によって与えられる明確な定義である」という「調和規則」を実行する<ref name="Suppe, Frederick 1999"/>。パトナムは、観察的術語と理論的術語の区別を導入することは「どちらから始めるか」という問題を引き起こすと主張する<ref>Putnam, Hilary, Problems with the Observational/Theoretical Distinction, in: ''Scientific Inquiry,'' Robert Klee editor, New York, USA: Oxford University Press, 1999, pp. 25-29.</ref>。パトナムは4つの反論とともに、このことを実演してみせた。
 
 
 
# 何かが「観察的」だと言われるのは、それが私たちの感覚によって直接的に観察できるときである。そして観察的術語は観察できないものに適用できない。この場合、観察的術語は存在しない。
 
# カルナップの分類で、いくつかの観察不可能な術語は理論的でもなく、観察的術語にも理論的術語にも属さない。いくつかの理論的術語は主に観察的術語に言及している。
 
# 観察的術語の報告はしばしば理論的術語を含んでいる。
 
# 科学的理論は理論的術語を含むことができない(例えば[[チャールズ・ダーウィン|ダーウィン]]のオリジナルな進化論)。
 
 
 
=== クワイン及びクーンの反論 ===
 
引き続いて科学哲学はこういったアプローチの確かな面を利用する傾向があった。[[ウィラード・ヴァン・オーマン・クワイン]]は分析命題と総合命題の区別と、有意味な命題の経験に即した命題への還元を批判した<ref>{{Cite book|last=Quine|first=Willard van Orman|year=1960|title=Word and Object|publisher=MIT Press|location=Cambridge, Mass}}</ref>。[[トーマス・クーン]]の研究では、[[パラダイム]]から独立して科学的に真偽を決定することは不可能だと主張された<ref>{{Cite book|last=Kuhn|first=Thomas Samuel|year=1962|title=The Structure of Scientific Revolutions|publisher=The University of Chicago Press|location=Chicago}}</ref>。しかし、この批判も論理実証主義者にはよく理解されていない。オットー・ノイラートは科学を、外海に再建しなければいけないボートと比較している<ref>{{Cite book|last=Neurath|first=Otto|year=1921|title=Anti-Spengler|publisher=G.D.W. Callwey|location=München}}</ref>。
 
 
 
=== 哲学における現在の地位 ===
 
大多数の哲学者は、[[ジョン・パスモア]]が言っているように、論理実証主義は「死んでいる、つまり、かつて哲学的運動であったのと同じだけ死んでいる」<ref name=Routledge>{{cite book|last=Hanfling|first=Oswald|chapter=Logical Positivism|title=Routledge History of Philosophy|year=2003|publisher=Routledge|page=193f}}</ref>と考えている。1970年代までに、この思想は深刻な欠点があると一般的に考えられていて、主な支持者であるアルフレッド・エイヤーですらインタビューに答えてこう言っている:「思うに最も重大な[欠点]は[…]それがほとんど間違っているということだ」<ref name=Routledge/>。ただ、論理実証主義は分析哲学の歴史において、[[構成的経験論]]、[[実証主義]]、[[ポスト実証主義]]のような今も続く哲学の先駆者として重要な位置を占めている。
 
 
 
== 脚注 ==
 
{{脚注ヘルプ}}
 
{{reflist|2}}
 
 
 
== 参考文献 ==
 
*{{Cite book|和書|author=[[中山康雄]]|year=2008|month=10|title=科学哲学入門 知の形而上学|publisher=勁草書房|isbn=978-4-326-15398-5|url=http://www.keisoshobo.co.jp/book/b26955.html|ref={{Harvid|中山|2008}}}}
 
*{{Cite book|和書|editor=[[新田義弘]] ほか編|year=1994|month=11|title=科学論|series=岩波講座現代思想 10|publisher=岩波書店|isbn=4-00-010540-X|url=http://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/01/X/0105400.html|ref={{Harvid|新田ほか|1994}}}}
 
*{{Cite book|和書|author=[[野家啓一]]|editor=[[今村仁司]] ほか編|date=1998-01-09|title=クーン パラダイム|series=現代思想の冒険者たち 第24巻|publisher=講談社|isbn=978-4-06-265924-6|url=http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062659246|ref={{Harvid|野家|1998}}}}
 
{{refbegin}}
 
*[[Peter Achinstein|Achinstein, Peter]] and [[Stephen Francis Barker|Barker, Stephen F.]] ''The Legacy of Logical Positivism: Studies in the Philosophy of Science''. Baltimore: Johns Hopkins Press, 1969.
 
*{{Cite book|last=Ayer|first=Alfred Jules|year=1946|title=Language, Truth, and Logic|publisher=V. Gollancz|location=London}}
 
*{{Cite book|last=Ayer|first=Alfred Jules|year=1959|title=Logical Positivism|publisher=Free Press|location=Glencoe, Ill}}
 
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*{{cite journal
 
  |last=Werkmeister
 
  |first=William
 
  | authorlink =
 
  |title=Seven Theses of Logical Positivism Critically Examined
 
  | journal = The Philosophical Review
 
  | volume = 46
 
  | issue = 3
 
  |pages=276–297
 
  |publisher=Cornell University
 
  |month=May | year=1937
 
  | doi = 10.2307/2181086
 
  |jstor=2181086
 
  }}
 
 
 
== 関連項目 ==
 
{{Div col}}
 
*[[ウィーン学団]]
 
*[[経験論]]
 
*[[実証主義]]
 
*[[線引き問題 (科学哲学)]]
 
*[[分析哲学]]
 
{{Div col end}}
 
 
 
== 外部リンク ==
 
*{{Kotobank|論理実証主義|2=[[吉田夏彦]]}}
 
*{{SEP|logical-empiricism|Logical Empiricism}}
 
*{{PhilP|logical-empiricism|Logical Empiricism}}
 
*{{SkepDic|positivism|Logical positivism}}
 
  
 
{{科学哲学}}
 
{{科学哲学}}
 
+
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2018/10/18/ (木) 23:50時点における最新版

論理実証主義(ろんりじっしょうしゅぎ、: Logical positivism

特に L.ウィトゲンシュタインの影響のもとに,ウィーン学団が展開した哲学の思想とその運動。認識の根拠は経験による検証であり,命題の意味とはその検証の方法にほかならない。したがって検証不可能な形而上学の命題は無意味であると主張。自然に関するすべての認識は,一つの言語で表現され,したがって科学の統一は可能である。哲学者の任務は言語学的であり,哲学は言語の批判,すなわち言語の分析と分類を行い,理論ではなく活動であるとした。

1938年ナチスの迫害で学団のメンバーは大部分がアメリカなどへ亡命し,運動は国際的となったが,主義そのものは論理経験論へと解消した。




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